イエローモンキー&吉井和哉 全オリジナルアルバム解説 最高傑作はどれだ?
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本サイト『ひよこまめ』において、17回にわたって語りまくってきましたイエローモンキーと吉井和哉ソロのオリジナルアルバム解説。
というわけで今回は超ひさびさに、本サイトにおける名物企画である『全アルバム解説』をやりますよ~!
いよいよこの時が来てしまいました…。
これね、めちゃめちゃ読んでもらえるんだけど、作るのにめちゃめちゃ疲れるんですよね(笑)。
できればやりたくない!(言うなよ)
しかぁし、イエモン、吉井ソロに今後入門してく人達には、それにふさわしい『登竜門』が必要なのであります!
そう、私は「このバンド絶対聞いてもらいてぇ!」っていうバンド・アーティストの登竜門になりたいのでございます。
そしてまだそのバンドを知らなかった人に、
「Simackyのブログ読んで〇〇〇〇に入門しました!」
とか言われたいのであります。
それこそ私Simackyの生きる意味でございます。
私の好きなアーティストを100年語り継がせる
これが私のブログの野望です。
というより、音楽に感動させてもらったことに対しての、アーティストへの恩返しです。
音楽はどんどん新しいものが生まれます。
昔の楽曲はどんどん埋もれていくわけです。
スポティファイなどのサブスクを開いてみてください。
そこには何十万のアーティスト、何億もの楽曲があるんですよ?
イエモン知らない若い人が、偶然にもその中でイエモンを見つけることなんてできると思いますか?
無理でしょう?
知ってもらうためには『語り部』が必要なんです。
私は21世紀の音楽の語り部になります。
そして本サイトで語っていくアーティストを、いつかきっと音楽の教科書に載せたい。
小学生たちが、ベートーヴェンやバッハを習うのと同列で、イエモンを習ったらこんなに嬉しいことはないではありませんか。
想像してみてください、我々の子孫の世代の音楽の授業でこんなやりとりがされるんですよ?
先生「はい、それじゃあMagockyくん、『吉井和哉の歌詞の三大要素』を3つ答えて。」
Magocky「はい、先生。
スケベ・変態・アホの3つです」
先生「大正解だよ~!はい、みんな拍手~!よく勉強してるねぇ!Magockyくん」
ワクワクするじゃぁありませんか!
(いい加減怒られるよ?)
というわけで今回はイエモンと吉井ソロの全オリジナルアルバム解説やりますよ。
それぞれの作品には、すでに書いている詳細解説記事のリンクを貼っておきますので、もっと詳しく読みたい方はそちらからどうぞ。
ちなみに私の全アルバム解説シリーズは、アルバムの歴史を追いながら、アーティストをたっぷり語っていくスタイルなので、かなりの長文になります。
しかも今回はバンドとソロの丸ごと解説です。
さらに書き上げてアップした後も、加筆を1年くらいかけて加え続けますので、読み終わった後もたまに読み返しに戻ってきてください。
さらに詳細解説まですべて読むのはおそらく1日では無理だと思うので、1ヶ月くらいかけてどっぷりと浸かっちゃってくださいな。
2024年にひっさびさの全国ツアーに参戦しようと待ち構えているイエモン・吉井ファンのあなた!
これを読んでしっかり復習しておいてね!
熊本城ホールで待ってます!
これから入門しようと思っているそこのあなた!
あなたはちょっと、もうちょっと近くに来て。
・・・・・・
・・・・・・
とりあえず、これ(洗礼)でもくらいやがれ!
シュバーシュビドゥバー!!!
(何かの効果音)
ふぅ、イカ臭い洗礼も終わったところで、張り切って行ってみましょう!
- イエローモンキーの概要
- イエローモンキーのオリジナルアルバム
- 『Bunched Birth(バンチド・バース)』1991年リリース 1作目(インディ)
- 『夜行性のカタツムリ達とプラスチックのブギー~Night Snails And Plastic Boogie~』1992年リリース2作目
- 『エクスペリエンス・ムービー』1993年リリース3作目
- 『Juger Hard Pain(ジャガー・ハード・ペイン)』1994年リリース4作目
- 『SMILE(スマイル)』1995年リリース5作目
- 『Four Seasons(フォー・シーズンズ)』1995年リリース6作目
- 『Sicks(シックス)』1997年リリース7作目
- 『パンチドランカー』1998年リリース8作目
- 『8(ハチ)』2000年リリース9作目
- 『9999(フォーナイン)』2019年リリース10作目
- 『Spakle X(スパークル・エックス)』2024年リリース11作目
- 吉井和哉の概要
- 吉井和哉のオリジナルアルバム
- 最高傑作はどれだ!?
イエローモンキーの概要
イエローモンキーは作詞作曲をメインで行うボーカルの『ロビン』こと吉井和哉を中心にして、ベース『ヒーセ』廣瀬洋一、ギター『エマ』菊地英昭、ドラム『アニー』菊地英二の4人で1988年に結成されました。
1991年にはインディで記念すべき1作目のオリジナルアルバム『バンチド・バース』をリリースしてます。
1992年にメジャーデビュー後、8枚のオリジナル・アルバムをリリースし2001年1月の東京ドーム公演を最後にで活動休止、その後、活動は再開されずに2004年に一度解散しました。
なので実質的には2000年いっぱいで活動は終了したと言えます。
解散から各自のメンバーソロ期間は12年間(活動休止からは16年間)にも及び、長い長い時を経てついに2016年再結成。
その後は2枚のオリジナルアルバムをリリースしております。
というわけでイエローモンキーには
通算で11枚
のオリジナルアルバムがあるわけですね。
イエローモンキーの特徴は、デビッド・ボウイなどのグラム・ロックに影響を受けたサウンドとファッションスタイルに、昭和歌謡からの影響をブレンドした、いわゆる『歌謡ロック』と呼ばれるスタイルです。
決して小難しくなく、グルーヴィでキャッチーなサウンドと、独特の情感あふれるロビンのボーカルが合わさることにより生まれる唯一無二のイエモンサウンドは、1990年代、ヴィジュアル系ブームに席巻された日本の音楽シーンの中では、独特の立ち位置を築いていたと言っていいでしょう。
その意味では日本における『オルタナティブ(主流ではない、もう一つの)』ロックだったのかもしれません。
その反面、怪しいルックスとプンプン臭ってくるような色気から女性ファンが多いことも特徴です。
セールス規模の話をすると、イエモンが活躍した1990年代はCD市場がピークだったのですが、ミリオンセラーを連発するようなライバルたちがいる一方で、イエローモンキーにはミリオンセラーはありません(ベスト盤でのみ達成)。
しかし、イエローモンキーの時代に左右されない音楽性は、解散期間後もファンの裾野(すその)を大きく広げていたのでしょう。
2016年に再結成した時にはかなりの話題になりましたし、2020年代でドームクラスを満杯にできる数少ないロックバンドと言えます。
そう考えると、1990年代当時はセールス的にヴィジュアル系のバンドたちに一歩及ばなかったイエローモンキーが、現代においてはそれら当時のライバルバンドから頭一つ飛び抜けたのかもしれませんね(というより生き残ってるバンドも少ないのですが)。
「音楽の評価とかバンドの真価といったものは、長い年月を経てみないと分からない」
ということを教えてくれるバンド、それがイエローモンキーです。
イエローモンキーのオリジナルアルバム
『Bunched Birth(バンチド・バース)』1991年リリース 1作目(インディ)
こちらがインディでリリースされた記念すべき1stアルバムになります。
強く影響を受けたデビッド・ボウイのイメージである『両性具有(男女両方の性を持つ)』がジャケットに表現されてますね。
ライブハウスでの動員はかなり増えてきたため、ある程度のセールスは期待されたのですが、1000枚くらいしかプレスしてません。
なので1996年に再発されるまでは「持ってる人がほとんどいない」という幻のアルバムでした(笑)。
ロビンは本作をかなり気に入っており、後にアルバムをリリースするたびに本作と聴き比べを行ったといいますから、イエモンにおける『基準・尺度』と呼べる作品なのかもしれませんね。
実はロビンはこの時期、人生で3回やってくる「創作のエクスタシー」の1回目だったとのことで(2回目『SICKS』時、3回目『ブラックホール』時)、大量に作曲してます。
『バンチド・バース』=『集中出産』というアルバムタイトルはこのことから来ているんですね。
それだけの手持ち楽曲があったため、
「全てを出してしまうより、一部はメジャーデビューした後に取っておこう」
という新人としては横着すぎる計算高さで(笑)、ここで作られた一部の楽曲はその後、5作目『スマイル』までチョイ出しにされていきます。
1作目、そしてインディでのリリースとして見ると、かなりクオリティの高い作品で、解散前ラストライブ(東京ドーム)のラストに演奏された『ウェルカム・トゥ・マイ・ドッグハウス』が収録されているだけでも買いですね。
「イエモンってどんなバンド?」
って聴かれたときに、私がまず聴かせるであろう曲はこの曲です。
それほどかっこいいナンバーですよ。
ちなみにロビンは本作のことを正式には1stアルバムと認めていないのか、本来7作目である『SICKS』を6作目と呼んでるし、本来9作目の『8』が8作目と呼ばれてます。
まあメジャーデビューしてからのカウントなのでしょうが、私は本作を忘れてほしくないから本作込みの通し番号で呼んでますので悪しからず。
アルバム個別レビューは⇩
『夜行性のカタツムリ達とプラスチックのブギー~Night Snails And Plastic Boogie~』1992年リリース2作目
このアルバムでコロンビアレコードよりついにメジャーデビューしました。
イエモンは年齢の割に結成が遅かったので、実は同世代のバンドがX、ユニコーン、BUCK-TICKだったりするのですが、彼らに比べるとかなり遅いデビューです。
世間一般的な認識としてはルナシーとかラルクとかと同世代のバンドだと思われがちなのですが、実はかなり歳上(笑)。
アルバムジャケットはもはやデビッド・ボウイその人かと思うほどなのですが、ダメ押しでカタツムリ(両性具有の象徴)までおでこに乗せちゃってます(笑)。
ジャケット、そしてタイトルに見られるように、かなりデビッド・ボウイを意識している作風です。
ロビンは昔から
「デビッド・ボウイになりたかった。なるためにバンドを結成した」
と語って憚(はばか)らないのですが、その願望をかなりの部分このアルバムで叶えたのではないでしょうか?
若い頃、デビュー作っていうのはもっと血気盛んというか、ハードな作風になりがちなのですが、彼らの場合は攻撃性よりも、もっとグラム・ロックらしさの方を優先したような作風で仕上げてきました。
なので、イエモン全カタログの中でもっともピースフルな空気感が流れてます。
というより全カタログ中、屈指の美メロディを持っていますね。
とにかく美しく、心が洗われるような作風です。
とはいっても別にバラードアルバムというわけではなく、しっかりイエモングルーブの効いた「コレコレ!」っていうロックナンバーも入っているのですが、数曲の美メロディインパクトが強すぎて、そっちにひっぱられちゃう。
『新人=勢いのある作風』『元メタルバンドの出身』という世間一般的なイメージとは真逆の作風だったので、評論家筋からは徹底的にこき下ろされ、アルバムも全然売れませんでした(詳細は個別アルバム・レビュー読んでね)。
しかし、ここに込められた楽曲群は名曲揃いですぞよ。
特に『真珠色の革命時代』『チェルシー・ガール』『ディス・イズ・フォー・ユー』の3曲は、後のライブでも演奏され続ける人気ナンバーです。
ちなみに私のイチオシは『フォクシー・ブルー・ラブ』(笑)。
こんな完成度の高いアルバムがこき下ろされたり、売れなかったり…まったくどうかしてるぜ。
本当にいい音楽が売れるとは限らないんだな~(みつを)。
アルバム個別レビューは⇩
『エクスペリエンス・ムービー』1993年リリース3作目
さあ、ここからイエモンらしくなってきますよ。
前作が全カタログ中屈指の美メロディのアルバムだとすれば、本作は全カタログ中屈指の攻撃的なアルバムですね。
イエモン流ハードロックを堪能したければ、まず本作を聴いてくれ、と言いたい。
っていうか、このアルバムこそメジャーデビューアルバムのイメージにぴったりなんですよね。
サウンドもグッと本格的になって迫力が凄いし、何よりバンドとしてのグルーブが凄まじく勢いを感じます。
しかし、残念ながら本作も全然売れてません。
何十万枚かって?
そんな単位ではございません(詳しくは個別レビュー読んでね)。
次作『ジャガー・ハード・ペイン』までは全然売れていないのですが、その中でも『コンセプトアルバムの傑作』『初期の傑作』というコアファンからの熱い支持を得た次作の影に隠れて、あまりにも注目されていない残念極まりない作品です。
けど、はっきり言っておきますけど、私はイエモンで3番目に好きなアルバムです。
こういうアルバムこそ、こういう機会にクローズアップしとかなきゃですね。
めちゃめちゃかっこいいです。
断言しますが、このアルバムにハマったら、他のイエモンロックでは物足りなく感じることでしょう。
脳みそをズッコーーーーんと持っていかれる強烈なドーパミンソングが『ラブ・イズ・ズーフィリア』『バーミリオン・ハンズ』『審美眼ブギ』『アヴァンギャルドで行こうよ』。
イエモングルーブの真髄とも言えるこれらの曲はまあ、とんでもなくかっこいいのでヤラれちゃってください。
『ファンズ・ベスト・セレクション』で4位に選ばれるほど人気の、アンセムのアンセムによるアンセムのためのアンセムソング『サック・オブ・ライフ』、長尺の大作ナンバー『4000粒の恋の唄』『フリージアの少年』『シルクスカーフに帽子のマダム』と、まあ名曲ぞろいのアルバムなので、13曲1時間5分、たっぷりとイエモンワールドを堪能してください!
頭振りまくった挙げ句、泣きます…。
アルバム個別レビューは⇩
『Juger Hard Pain(ジャガー・ハード・ペイン)』1994年リリース4作目
「おいおい、とにかく売ってくれよ!これじゃあ契約も続けられないよ!」
というレコード会社からの命令に
「お願い、最後のワガママを言わせて!」
と作ったのが、コンセプトアルバムである本作です。
この話を聞いた時、
「え?この期に及んでそんなワガママが通用するって、なんてアマちゃんなレコード会社なんだ」
と驚愕したものですが、このコロンビアというレーベルは売るのは上手くないけど、バンドに人情味の厚いレーベルだったんでしょうね(笑)。
「デビッド・ボウイになりたかった」ロビンの演り残した願望は、『コンセプトアルバム』でした。
前作のラストナンバー「シルクスカーフと帽子のマダム」のストーリーを発展させ、コンセプトアルバムに昇華させました。
本作を一言でいうと、『重い』ですね。
曲調もそうなのですが、歌詞がとにかく重いです。
ただ、だからこそ、ここには痛々しいくらいの感動があります。
これまで明るくとも暗くとも、割とフィクション要素の強かったイエモンが、エグいほどのノンフィクション領域にに踏み込んでます。
『麻薬(アヘン)』とか、『売春』とか『赤線(REDLINE)』とか…、もう歌詞から目を背けたくなるほどに。
さらにロビンはジャガーのキャラクターを演じるために頭を坊主に丸めます。
まるでかつてのデビッド・ボウイがジギー・スターダストになりきったように。
そのあまりに徹底したコンセプトのため、「イエモン一見客(いちげんきゃく)はお断り」な雰囲気を放ちまくってます。
「これまではポップソングしか聴いてこなかった」
というロックにあまり免疫のない方であれば、悪いことは言わないので、ある程度イエモンを聴き込んでから聞いて下さいね。
けど、ダークでヘヴィな世界観も受け入れられるようになってから聴けば、本作の輝きに気がつけることでしょう。
コアファンからは特に人気が高い作品ですし、1990年代のオルタナティブ・ロックを聞き慣れている人であればこれくらいは許容範囲だと思います。
前作から相変わらず絶好調のハードナンバーも『ファイン・ファイン・ファイン』『A HENな飴玉』『薔薇娼婦麗奈』と充実してますし。
それからこんな作風のアルバムで見落とされがちなんですが、『ロックスター』『悲しきアジアンボーイ』といったライブでど定番のアンセムナンバーもありますしね。
おそらく噂に聞くより随分と敷居は低いアルバムと思うんですけどね。
けど、売る気はないよね…。
アルバム個別レビューは⇩
『SMILE(スマイル)』1995年リリース5作目
これは「出生作」でしょう。
前作から一転、ダークさやマニアックさがほぼなくなり、かなりポップで明るくなります。
そうです、前作もやっぱり売れなかったから(そりゃそうだろ…)、約束通り『売れる作品』を作るように方向転換をしたんですね(笑)。
「へい、YOUたちぃ、売れずにビチクソオナニー野郎で一生過ごすのか?売れてファッキンロックスターになるのか?どっちがいい?」
と迫られビビりまくった彼らは後者を選択したというわけです。
そんなジョジョの敵みたいに口汚いレコード会社はこの世にいないでしょうが(いてたまるか)。
まあ、これまで好き放題やってきたからこそ、納得した上でセールスを狙いに方針転換も出来たわけで。
これまでアルバムからは1曲のみだったシングル曲が、『熱帯夜』『ラブ・コミュニケーション』『嘆くなり我が夜のファンタジー』と3曲あることからも、セールスを意識していることは切実に伝わってきます。
しかしその甲斐あってついにアルバムはオリコンチャート4位になります。
ここにきてイエモンがようやく陽の当たる場所に出てきました。
けどね、これは結果的に良かったんだと思います。
なぜなら吉井和哉という人のヒットメーカーとしての才能がここから開花するからです。
私は個人的に吉井和哉という人の真価は『ポップさ』にあると思っている一人なので。
シングルの3曲も「取ってつけたように売れ線の曲を作った」という感じがなく、しっかりと名曲なんですよね。
だってかつてのイエモンではライブの定番ナンバーだったのですから。
特に『ラブ・コミュニケーション』はアンセムナンバーなので必聴です(このバンドってアンセム多すぎ:笑)。
ロビンってダークでマニアックな世界観を歌うよりも、「突き抜けたポップさの中にこそ本領が発揮される」、と私は常々思ってるんですが、この2曲を聞いてもらえばその気持も共感してもらえるのかな、と。
そしてそれはエマのギターにしてもそうで、やっぱりクイーンとかエアロスミスが好きな人らしく、水を得た魚のようにイキイキしてます。
『ラブ・コミュニケーション』のリフといい、『熱帯夜』での熱いソロといい素晴らしく、実はエマのプレイだけ見れば一番好きなアルバム。
このアルバムによって現在、一般的に認知されている「イエモンってこんな感じだよね」っていうパブリックイメージが作られ始めたと言ってもいいでしょう。
その意味では決して見逃せない重要なアルバムなんですよ。
「明るい」「ポップ」というイメージは、何も音楽の内容が「希薄」だとか「軽い」ということではありませんからね。
ここで確かな手応えを感じたのか?それとも勝負どころと感じたのか?
同じ1995年内にさらにもう一度アルバムをリリースします。
それが次作であり人気を決定づけた『フォー・シーズンズ』です。
次作を聴いたことがある人は多いと思いますが、作風としてはほぼ地続きと言うか(まあ同じ時期に作ってますので)
なんなら一緒にしてダブルアルバムにしても良かったんじゃないかとさえ思います(それだとまた売れないじゃねぇか:笑)。
つまりクオリティとしても次作に見劣りしないってことです。
次作が好きな人であればぜひ抑えておいてもらいたい作品ですね。
ちなみにイチオシは問答無用で『I(アイ)』です。
これはイエモン史上最高にクールなナンバーです。
若い頃は狂ったように聴いてました。
超名曲で昔はライブでもよく演ってたイメージなんですが、『アイ・ラブ・ユー・ベイビー』が生まれて以降、その座を奪われてるような(笑)。
私なんかは聴いてて一番「幸せ」な気持ちになれるアルバムです。
アルバム個別レビューは⇩
『Four Seasons(フォー・シーズンズ)』1995年リリース6作目
さあ、ここらあたりからが黄金期に入ってきますよ。
このアルバムでついにチャート1位に上り詰めます。
セールス実績もさることながら、音楽的な充実度がすごいです。
前作『スマイル』でヒットソングを生み出すことに手応えを感じ始めたロビンは、ここで過去最大のヒットであるチャートトップ10入り(9位)するシングル『太陽が燃えている』を生み出します。
世間のイエモンに対する認知度が急上昇し、『売れているバンド』と認識されるようになります。
ここまでデビューから苦節5年、ようやく名実ともにロックスターと呼ぶにふさわしいセールスを獲得したわけです。
実は私がイエモンと出会うきっかけも、この曲がテレビCMで流れているのを聴いてからです。
この曲はそれまでイエモンを聴いたことがない人たちを、根こそぎファンにするほどのエネルギーがあります。
本作は全編にわたって良質なポップ性をそなえた骨太なロックナンバーが揃っており、非の打ち所がありません。
個人的にカラオケでの18番であるタイトルナンバー『フォー・シーズンズ』、イエモンのスリリングなハードロックを体現した『アイ・ラブ・ユー・ベイビー』、るろうに剣心のエンディングテーマにもなった泣かせる激渋の『タクティクス』、スケベパワー全開ソング『ラブ・ソース』『スウィート&スウィート』、湿っぽいバラードの『ピリオドの雨』『月の歌』、『太陽が燃えている』に負けず劣らずのキラーソング『追憶のマーメイド』、そしてラストの突き抜けたような青空ソング2曲『ファザー』『空の青と本当の気持ち』、と完璧なラインナップが揃ってます。
ファン人気投票で選曲されたベストアルバム『イエモン・ファンズ・ベスト・セレクション』では、
人気上位50位に入った曲がなんと8曲!
これは全アルバムの中で最も多いことから見ても、本作がファンから最も支持されている作品だと言えるでしょう。
このアルバムリリース後には、『イエモン王国の国歌』とまで呼ばれる大名曲の『JAM』、疾走するイエモンロックの頂点『スパーク』、とヒットシングルであり代表曲を畳み掛けるように連発。
まさに黄金期。
ロックスターとしての地位を盤石にします。
イチオシはやっぱりタイトルの『フォー・シーズンズ』ですな。
イエモン版「ボヘミアン・ラプソディ」とでも呼べる曲。
非現実的な歌詞路線から、素朴でリアルな歌詞路線へと転換したことを象徴するナンバーで、単語の一つ一つが刺さってきます。
「まず僕は壊す」
これがこのアルバムを物語ってます。
アルバム個別レビューは⇩
『Sicks(シックス)』1997年リリース7作目
ロビン本人が
『最高傑作』
と呼び、評論家からは
『1990年代日本ロックのマスターピース』
とまで呼ばれるアルバム。
オリコンチャートは当然1位、セールス的にも63万枚を売上げ、これはイエモン、吉井和哉ソロを通して最高記録になります。
人生で3回訪れる『創作のエクスタシー』が訪れた2回目が、このアルバムの制作時期です。
ロビンは自己へ「1日3曲の作曲」を課し、最終的に300曲を生み出しました。
そうした潤沢な楽曲の中から13曲に絞り込むことができたため、かなり考え抜かれた楽曲配置になっていると感じました。
レコード会社の移籍があったため、先述した『JAM』『スパーク』という代表曲を収録できませんでしたが、その2曲を欠いてもこのクオリティというのは驚異的です。
いえ、仮に収録が可能だったとしても、アルバムの完成度のために外されていた可能性さえある、そう思えるほど圧巻のクオリティです。
「もはや完璧」と思えた前作との違いを一言で言うなら『感情の起伏の幅』が大きいことでしょうかね。
『レインボウ・マン』『楽園』で聴かれる突き抜けたポジティブさ、『アイ・キャン・ビー・シット・ママ』『TVのシンガー』で聴かれる渋いブルーステイスト、『天国旅行』で聴かれるどん底の暗さ、『創生児』『HOTEL宇宙船』『薬局へ行こうよ』で聴かれる悪ノリの行き過ぎ加減(笑)、しっとりと大人のジャズを聴かせる『紫の空』など、とにかく曲ごとの振り幅が非常に大きいです。
さらにアルバム曲でありながらファン投票で3位になった代表曲『花吹雪』、イエモンナンバーワンのおバカソング『見てないようで見てる』、そして最後はアルバムラストソングとしては最高傑作とも言える『人生の終わり』まで収録された日には、あぁた…もう無敵ですがな。
ちなみに本記事の冒頭で出てきた謎の効果音「シュバーシュビドゥバー」は、このアルバムの『Hotel 宇宙船』を聴いてりゃ分かりますよ(笑)。
「暗い」とか「芸術性が高い」とか、何かと敷居が高いかのような評価が付きまといますが、トータルで見るとこんなに明るくてポジティブで笑える作品はないですよ。
イチオシナンバーは『レインボウ・マン』。
なんか神々しさと風格さえまとってます。
イエモンが神の領域にたどり着いちゃった。
ギターソロに入っていくところの盛り上がりなんて、ああ…鳥肌が立ってきた…。
アルバム個別レビューは⇩
『パンチドランカー』1998年リリース8作目
前作リリース後もシングル『ラブ・ラブ・ショウ』『BURN』『球根』と、怒涛のごとくヒット曲を生み出し続けるイエモン。
よくもまあ次から次へと名曲が浮かんでくるものです。
大型ロックフェス『フジロック』でも日本人バンドとしての最後、トリであるレッチリの直前に出演。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの中で放った8作目のオリジナルアルバムは、これまでに築き上げてきたイエモンのパブリックイメージを崩しにかかってますね。
耳障りの良かった作風を、少しダーティでワイルドな方向へ持っていきました。
それはオープニングナンバーであるタイトル曲ではっきりと聞き取れます。
オルタナティブ・ロックに接近した曲調・サウンドで、生々しくラウドなサウンドだし、それまでのキャッチーな作風も抑え気味に仕上がってます。
ただいかんせんアルバム曲が渋すぎた嫌いはあるのかな、と。
このアルバムに伴う長大な100本ツアー『パンチドランカーツアー』では、本作のアルバム曲メインでセットリストを固めていたのですが、前半(ホールツアー)の途中で
「このツアーは失敗でした」
とお客に爆弾発言をして、後半のアリーナツアーではそれらの楽曲を外しましたから、それまでのファンにとってあまり受けが良くなかったとバンド側も感じていたようです。
確かにアルバムを聴いていると感じるのですが、先述したシングル曲のキャッチーさとアルバム曲のギャップが非常に大きく、聞く曲と飛ばす曲がはっきり分かれる人もいるでしょうね、かつての私のように。
ただアルバム曲のクオリティが低いということではなく、アルバム曲は『歌謡ロック』のイエモンではなく、洋楽リスナー受けしやすい作風というか。
私も洋楽リスナーなんですが、海外のバンドと同じ感覚で違和感なく聞ける、そんな希少なアルバムですね。
イチオシはタイトルナンバーの『パンチドランカー』。
シングルとしてリリースしても面白かったというか。
ロックなイエモンを聴いてもらいたかったら、こういう曲をもっと世間に出せばいいのに。
アルバム個別レビューは⇩
『8(ハチ)』2000年リリース9作目
解散前のラストアルバムです。
『SICKS』までは目指す音楽性に一切の迷いが見られなかったのに対し、前作『パンチドランカー』あたりから新たな音楽性を模索し始めたイエモン。
しかし、フジロックでの選曲ミス、パンチドランカーツアーでのセットリストの判断ミスと、挫折感が続きます。
これらから共通して見えてくるものは何か?
ずばり!
シングル曲は絶好調だけど、アルバム曲にファンが付いこれていない
ということですね。
「なんでアルバム曲の面白さを分かってくれないんだ!色々やってるのに結局シングル曲目当てでライブに来るのかよ」
本人がそう言ったわけではありませんが、ロビンの心の叫びが聞こえてきそうです。
人気の大きさとは裏腹に、アルバム曲を支持してくれるコアファン層は実はそんなに増えていない、そう感じたのかもしれません。
実はそうではなく、ちゃんとコアファンの裾野は広がっていたのですが、それは2020年代の今、東京ドームを満員に埋めているイエモンの姿を知っているからこそ分かる話であって。
ここで捨て鉢になったのか?アルバムが売れない時代になったからレコード会社からの指示があったのか?
イエモンはアルバム路線で行くことをやめ、シングル路線に切り替えます。
「当分はシングル中心にリリースしていって、アルバムができそうな曲数が揃ったら、あと2,3曲加えてアルバムにする」
というロビンの考えにメンバーは
「それはいくらなんでもファンに申し訳ないでしょ」
と猛反発。
結局アルバム曲としては6曲を収録することになりましたが、14曲中8曲はシングルでの既発曲となり、
「こういうコンセプトで出来たオリジナルアルバムを作ろう!」
という意思で作られた作品だとは感じられません。
ただ、それは本作に収録された楽曲が良くないということではありません。
これが驚くほど1曲1曲粒ぞろいなんですよ。
たくさんの楽曲を作ることよりも、1曲1曲に時間と予算をかけているため、どれも作り込まれた高水準なナンバーが並んでます。
ただ統一感などは全く考慮されていないため、ベスト盤とかシングルスのような印象が残るアルバムです。
ちなみに私の個別アルバムレビューではもっともアクセス数が多いのは本作の記事で、実はイエモンアルバム人気ランキングとかのサイトを見ると、最高傑作に推されることもあったりする作品なので侮れないですよ。
ファン人気投票であの国歌『JAM』を抑えて1位になってしまった『バラ色の日々』、『JAM』を目指して作られた疾走ロックの『パール』、これまたファンからの人気が異様に高いアルバム曲『カナリヤ』など名曲が多いのですが、個人的には『ストーン・バタフライ』がイチオシ。
オルタナティブロックを取り入れてきたイエモンのピークに達したナンバーだと思ってます。
ロビンのシャウトが痺れるし、エマの轟音リフのこの破壊力たるや…。
音楽的には新しいことに挑戦していただけで、才能に陰りが見えるということはなかったのですが、ロビンとバンドメンバーの意識にギャップができはじめ、本作制作中に一度は解散の話がでます。
その流れからか本作に伴うツアーは行われず、半年後の2001年1月の東京ドーム公演を最後に長い沈黙に入ります。
アルバム個別レビューは⇩
『9999(フォーナイン)』2019年リリース10作目
いや、長い沈黙っていってもこれは長すぎだろ…。
前作『8』の時に生まれたベイビーが成人しちまうぞ(笑)。
2016年に再結成、そして2019年に19年ぶりとなるオリジナル・フルアルバムです。
2016年の再結成までも長かったのですが、そこからさらにアルバムまでに3年も待たされるなんて一体誰が予想したでしょう(笑)。
当然のことながら解散前の作風とは大きく変わりました。
メンバー各自が20年の間に変化・成長していたとしても、その途中経過は見ていないわけなのでそりゃこの変化には驚くでしょう。
10歳くらいの時点しか知らなかった近所の子供が30歳になって眼の前に現れたら
「どちら様でしょうか?」
ってなるでしょ?
あの感覚に近いというか(笑)。
しかし、ロビンのソロアルバム7枚を追ってきていたファンにとっても、この作風は予想外だったんじゃないかな?
脱イエモン化したソロ初期の作風から、だんだんとかつてのイエモンのような華やかな作風に近づいてきていた吉井ソロ作品。
その流れともまたガラッと変わるんですよね。
「どんなにロビンが作詞作曲を担っていたって、ソロとイエモンではこうも違うのか…」
と感じましたね。
やっぱりイエローモンキーというバンドは、4人の個性によって作られていたのだということを知らしめたアルバムと言うか。
オープニングからただごとじゃないくらいでかい音にミキシングされたベース音を聞いた瞬間、
「あ、こりゃソロじゃなく間違いなくイエモンだ」
って分かっちゃう(笑)。
しかし作風としてはねぇ…、ショックを最小限にするために先に言っておきますが、『かつてのイエモン像が頭から離れない人』ほど聞き込み必要ですよ。
吉井ソロを聴いてきた人であれば、ある程度の変化には柔軟になってきていると思うのですが、そこを通ってない人にとっては『8』から20年ぶりの新作となるわけです。
その変化はあまりにも大きすぎます。
ただ、面食らってもとりあえず聴き込んでみてください。
何故かそのうち風呂場で鼻歌を歌っている自分がいるはずです(笑)。
いや、ほんとにそうなりますから。
これは次作『スパークルX』でもそうなんですが、「う~ん、地味…」とか思いながらずっと聴いているとそのメロディの中毒になっていきます。
一体これはなんなんでしょうかね?
まったく予想も期待もしていなかった角度から、ツボを刺激してくるというか。
「マッサージさん、だから俺が凝ってるのは腰なんだって。そこは背中!そんなとこ揉まれたって気持ちよくないって。だぁかぁらぁ~…気持ち、よ、く…え?…なんかそこはそこで気持ちいいぞ?え?そこってツボあったの?」
どんな例え(笑)。
まったくこれまで知らなかったイエモンの『味』が、じわじわと分かってきます。
ちなみに私のイチオシは『バルーン・バルーン』ですね。
イエモンらしいダーティな雰囲気が出ててかっこいい。
アルバム個別レビューは⇩
『Spakle X(スパークル・エックス)』2024年リリース11作目
2024年現時点での最新作です。
前作『9999』をリリースし勢いに乗るイエモンは、2019年内に全国ツアー、そしてドームツアーまで行います。
ただ名古屋、大阪までは良かったのですが、ここでコロナが始まったため残念ながら東京ドーム公演は延期されます。
再結成後は2017年に東京ドーム、ヤフオクドーム公演を成功させ、2019年にはナゴヤドーム、京セラドーム…。
この記事の冒頭でも書きましたが、昨今、音楽マーケットが縮小の一途を辿っているのに、今どきこんなにドーム公演を当たり前のようにこなすバンドはなかなかいませんよ?
そしてコロナで延期になったとはいえ、東京ドームは「キャパの50%の集客」を条件に振替公演を実現。
よく実現できたな~。
この頃はどのアーティストも無観客ライブばかり演ってた時期だし、キャパの50%とはいえ2万人くらいドームに入れるわけですよ?
これは現代におけるイエモンの人気がいかに高いのかを物語っています。
しかし、コロナがひどくなったため2020年一杯をもってバンドは活動休止を発表。
コロナ明けの2023年末には久しぶりのライブとなる武道館公演を予定していたのですが、ここでロビンの咽頭がんが公表され、公演は中止になります。
本作は喉の治療の真っ只中、喉の不調と折り合いをつけながら制作された作品となります。
そのため前作『9999』同様にロビンの声には迫力や張りは期待できませんが、もちろんそれを前提に曲を作っているので、前作よりもロビンの声質に違和感を感じなかったのはさすがです。
再結成後の『9999』『スパークルX』にはボーカル、サウンドともに統一感があり、バンドのスタイルとしては確立されてきているように感じます。
これが再結成後の新生イエモンのスタイルというわけですね。
私のイチオシは『ラプソディ』。
ライブで一緒に「オッパーオッパー」言いましょうね!
車で流してると子どもたちが気まずそうにするけど(笑)。
吉井和哉の概要
さて、ここからはロビンのソロを解説していきますよ。
ロビンは2004年のイエモン解散を発表した年に「Yoshii Lovinson」名義で1stアルバム『アット・ザ・ブラックホール』をリリースしてソロとしてのキャリアをスタートさせます。
「Yoshii Lovinson」名義で2作目まで出した後、3作目からは吉井和哉名義になりそこから5枚のアルバムをリリースします。
なので吉井和哉のソロは
通算7枚
のオリジナルフルアルバムがあります(ミニアルバムの『アフター・ジ・アップルズ』もあります)。
イエモン再結成後もソロ活動を並行して行っていくのか?
それは本人が明言していないのでなんとも言えませんが、現時点では7作目『スターライト』(2015年)を最後に10年間アルバムは出てません。
解散前のイエモン時代もソロ活動は一切やっていないので、これからもやらない気はします。
ソロを始めた初期は、慣れ親しんだイエモンというバンドでの音楽制作環境と、一人ソロ活動を行うそれは勝手が全く違い、そのギャップに苦しみます。
また、イエモンとの差別化も強く意識しているようで、ソロの初期3作はロビンの歌い方も曲調もイエモンとはかなり違うものになってますね。
内向的で、歌詞の内容を重視した作風なのでメッセージ性が非常に強いです。
この時期の歌詞は40代の私にとってグッサグサ刺さるんですよ(笑)。
イエモンの頃の華やかさとかギャグとかエロとかいう要素があまり出てきません。
「もう俺はイエモンじゃねぇし!ロックスターでもねぇし!」
っていうのは作品からもツアーからも感じられます(笑)。
ここに関しては賛否両論ありますが、個人的な見解としては、そういった試行錯誤で新しく見えてきたロビンの魅力が間違いなくあるし、だからこそ生まれた名曲もある、と思ってます。
4作目以降はそうした意地になってた部分がいい感じに抜けてきて、作風にもイエモン時代の要素が入ってきます。
歌詞は思い詰めたような内容から、リズムや韻を重視した意味のないおバカで下品な感じになってきますね(笑)。
ツアーも薄暗い照明でシックにやっていたものから、かつてのイエモンの頃のロックスター然としたパフォーマンスに徐々に変わってきます。
ぶっちゃけた話をすると、ソロの初期の頃はシーンにおいてマイナーな存在になりたくてしょうがないように見えてたのが、4作目辺りからロックスターとしてメジャーシーンの中心に返り咲こうとしているような意識の変化を感じます(本人は「ロックであるかどうかは意識してない」とか言ってますが)。
そうした意識の変化は、それまでアルバムから1~2曲しかシングルカットしてなかったのに、4作目からいきなり4曲もカットしたことにも現れてると思うんですよね。
セールス規模としては、1990年代と2000年代では音楽マーケットの規模自体がまるで違うので、イエモン時代には遠く及ばないのはしょうがないのですが、チャートの順位を見るとアルバムを追うごとに順位を上げてきて、5作目『アップルズ』でついにチャート1位を獲得します。
ソロ活動も10年を超え、現在においては「吉井和哉」という名前もイエローモンキーと同等の知名度を誇り、ロックスターとして堂々とシーンのど真ん中にいると思います。
吉井和哉のオリジナルアルバム
①『At the Black Hole』 2004年リリース 1作目
こちらがロビンが自伝で『傑作』と呼んだ1stアルバムです。
私としてはここであえて『問題作』と呼んでおきましょうか(笑)。
イエモンが解散したのは2004年ですが、2001年1月の東京ドームライブ以降まったく活動していないので、ロビンはその直後から作曲活動に入ります。
なので制作期間がたっぷり3年くらいあるんですよ。
人生で3回やってきた『創作のエクスタシー』の3回目がこの頃らしく、イエモン解散直後に田舎に引っ越したロビンは子育てに奮闘しながらシコシコシコシコ作曲活動にいそしみます。
リリース時期が決まっていない頃から作っているので、「売ること」とか「らしさ」とかを気にすることなく、かなり自由奔放に作ってます。
っていうか、本人は音楽で食っていくことを辞めようとさえ考えていた時期なので、そんなものを気にして作るわけがないですよね(笑)。
そういう自由さはアルバム全体から感じられますね。
しかし、作曲活動までは良かったのですが、これをレコーディングする段階に入って演奏技術、エンジニアリングの技術の壁にぶつかり四苦八苦します。
アメリカと日本を行ったり来たりしながらなんとか完成にこぎつけた本作は、それまでのイエモンっぽさを期待していたファンからも音楽雑誌などからもわりと叩かれました。
私も最初はこの作風のギャップに面食らった一人です。
特にオープニングの『20Go』はかなり驚くと思います。
このアルバムを聞いた時に
「『売る』ことを意識することは、楽曲に最低限のポピュラーさを含むことに繋がってるんだな」
って感じました。
当たり前っちゃあ当たり前ですけど。
ヒットチャートとかに入ってくるような音楽にはその最低限のポピュラーさは含まれているし、かつてのイエモンの楽曲にも含まれていたのですが、本作に含まれるそれは最低ラインを下回っている、とでも表現すればいいでしょうか?
まあ、本人も売ろうと思っていないわけなので。
その意味ではイエモンから通して最も『私的』な作風というか。
それと、慣れない作業までロビンが抱え込んでるんで、ちょっと音がチープに感じる時がどうしてもあるんだよな~。
ただ、この作品はこの音じゃないといけないような気がするのも確かですね。
それを特に強く感じるのが個人的にイチオシの『シャーデー・ジョップリン』です。
熱烈な支持者は本作をソロの最高傑作と呼んでます。
ソロの最初に聴く作品としてはおすすめしませんが、いつか聴いてみてください。
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②『WHITE ROOM』2005年リリース 2作目
内向的な作風が続きます。
前作はドラムだけプロに頼んで、他の楽器は全てロビンが演奏したのですが、今回はイエモンの盟友エマを含めプロの演奏で固めました。
「普通にソロに呼べるくらい仲良いんならさっさとイエモン再結成しろよ」
と思ったファンは多くいらっしゃることでしょう(笑)。
よく分からない人たちです。
本作はとりあえず全パートプロが演奏してるので、やっぱり安心感あるというか、前作のような「危なっかしさ」「ヒヤヒヤ感」がありません(笑)。
この頃になると、田舎暮らしに疑問を持ち始め、
「都会に暮らしてもいない俺が今さら何を歌う?」
っていう悩みが付きまとい、自分が表現したいものに対して確信が持てていないような印象はあります。
けれども、その悩みとは裏腹にメロディ自体は前作よりも格段に良くなってきてるんですから、やっぱりよく分からない人です(笑)。
個人的に、メロディの良さではソロアルバム中で一番だと感じます。
正直、
「1作目からたったの1年でこんな変わるか?」
ってくらい変わりましたね。
とにかく心地良いし、浸れるし、全部の曲が良い。
一度流し始めたらずっと聴いてたいもん。
でもって歌詞がとにかく染み渡るんだよな~。
別に都会に住まなくてもこんな素晴らしい歌詞が書けるんならいいんじゃないの?
あなたどうせ東京戻ったってオネェちゃんとの下品な歌詞を書くだけでしょ(笑)
これは間違いなくソロアルバムではマストの1枚です。
そしてイチオシは当然のことながら名曲『コール・ミー』です。
この1曲を聴くためだけでもアルバム聴く価値があります。
本作をリリースした後、ソロとしては初となるツアーをやるのですが、薄暗い照明でシックな装いのロビンはイエモン時代とは別人。
顔もメイクしてないんじゃないかな?
ま、これはこれでこの時にしか拝めない貴重なロビンの姿なので、ぜひ一度映像で観てみることをおすすめします。
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③『39108(さんきゅうひゃくはち)』2006年リリース 3作目
ここで名義を本名の吉井和哉にします。
名義の変更については、それがなにか音楽的な線引になっているということは一切ありません。
あくまで前作の延長上にあります。
明らかに変わるのは次作からですが、このアルバムはその中間、過渡期って感じですかね。
歌詞も内省的なものだけじゃなく、少しずつおバカな部分も出てきますし。
ただ、ロビンのボーカルスタイルに関しては、さらに挑戦を続けているというか。
『イエモンの吉井和哉』っていうボーカルスタイルから一番離れた所まで来たというか、これはこれでシンガーとしての新しいスタイルを掴めたというか。
曲によっては知らないで聴いたらロビンだと分からないような声もありますよ。
バンドメンバーに関してはエマたち日本人で固めたメンバーは全てアメリカ人に変え、レコーディングはここから数作アメリカで行うようになります。
それが影響したのか、かなりアグレッシブな印象を残すアルバムです。
なんかメロコアバンドみたいな印象を残すんですよね。
アグレッシブではあるんだけど、頭から7曲くらいは暗めの曲調が続くので
「え?夏のフェスでははっちゃけてたのになんでこうなった」
と不安を感じた人も多かったことでしょうが、後半は8曲目『ウィークエンダー』あたりからガラッと明るいナンバーが増えますので安心してください。
本作に伴うツアーでは憑き物が落ちたかのように、かつてのロックスター的なパフォーマンスを見せるようになり、あれだけ遠ざけていたイエモンナンバーも演奏するようになります。
プライベートの部分では、ロビンはこの頃、田舎の自宅を家出して東京に戻ります。
自分の人生から音楽を阻害するものは遠ざける、という結論に行き着いたんですね。
別に家族を捨てたわけではないんですが、一旦距離を置こう、と。
なんかやるせないんですが、そのやるせなさが一番現れているのがラストナンバー『ビリーブ』。
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④『Hummingbird in Forest of Space 』2007年リリース4作目
ここらあたりがソロにおける転換点になってくるのかな?
どこか内省的だったり暗かったりといった前作まで臭っていたものが、「パ~~」っと晴れたような作風というか。
本作から次作の『VOLT』で、ソロの方向性がイエモンにグッと近づいていきます。
別にイエモン風になれば全て万々歳なんてことを言いたいわけではないのですが。
絶好調なロビンは良いメロディがどんどん出てきますね。
2作目『ホワイトルーム』ばりに捨て曲がない。
そして色んなジャンルに手を出しているのに、それぞれをかなりの高水準で仕上げてきてます。
なおかつ数曲ではロビンのボーカルがイエモン時代のスタイルになってきてます。
サウンドも若干ギターロックにシフトし始めましたよね。
そして歌詞はとにかくリズミカルであることを意識してます。
韻を踏ませている箇所がかなりの部分あり、ノリがいい。
字余りとかがなくてきっちり音符にノッていると表現すればいいでしょうか?
なので必然的に言葉遊びみたいな要素も増えるし、歌詞の内容に重きをおいていない作風になったのかな、と。
しかし、だからこそロビンの本来持っていたユーモアの部分が久々に戻ってきたアルバムと言えます。
「なんかこういうロビンって久々!」
ってなること請け合いです。
そして本作の一番重要なポイントはシングル曲を『バッカ』『ウィナー』『シャイン・アンド・エターニティ』『シュレッダー』と4曲もカットしていることです。
つまり『売れ線曲』の構成比が上がってます。
私はロビンの魅力の1つに『ポップさ』があると思っているのですが、その『ポップさ』という第1の封印を解いたというか(第2、第3の封印は後ほど)。
なので、これまでのソロ作品で初めて「楽しい!」って感じるアルバムかも知れませんね。
で、私のイチオシなのですが、このアルバムほどそれが選びにくいアルバムはありません(笑)。
世間一般的には『JAM』に並んだとまで言われる『バッカ』なのでしょうが、『シャイン・アンド・エターニティ』も素晴らしいし、『ワセドン3』も強烈だし『雨雲』の美しさときたら…う~ん…悩むな~。
『マンチー』かな(いや、初めから悩んでないだろ)。
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⑤『VOLT』2009年リリース5作目
さあ、ここらからエネルギー全開でっせ。
ソロでもっともハードロックでギンギンなアルバムです。
イエモン時代の武器の1つ『ギターロック』の封印を解きました。
もう、細かいことは言わずにこの轟音ギターに浸っとけ、みたいな。
明らかにライブでのノリを意識した作風ですね。
そしてこのアルバムは何がすごいかって、さらにイエモン第3の封印である『歌謡ロック』まで数曲において復活してます。
あまりに王道な作風には「ロビン完全復活!」を印象付けますね。
かつてのウジウジしたロビンはどこへやらです(笑)。
のっけから『ビルマニア』でガツンとやられるし、バラードかと思ったら後半にカオスになる『ノーパン』も衝撃的だし、『魔法使いジェニー』はノリノリダンスナンバーだし、『ワン・デイ』はなんか分からんけどやたら気持ちいいし。
けどイチオシはやっぱり『フロリダ』。
もうね、これぐらいシンプルでノリ一発だと潔いよ。
ただ初期の内省的な作風が好きな人からは
「頭からっぽなの?」
って言われそうですが、音楽は理屈抜きに陶酔することも時には必要ですよ!
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⑥『THE APPLES』2011年リリース6作目
まさにソロの全盛期の真っ只中、といった印象です。
ここにきてついにソロアルバムでもチャートのトップを獲得します。
バンドでもソロとしても頂点に上り詰めたわけですね。
『ロビン節』はますます全開になり、さながらイエモン全盛期の凄みを放ちます。
そして楽器隊はなんと全てロビン自身。
これが味があってまた良いんですよ。
『ブラックホール』と聴き比べてみてください。
ロビンのプレイヤーとしての成長をはっきりと感じることができるはずですから。
あの頃の危なっかしい演奏と比べ、今回は演奏から自信がみなぎってます。
前作がギンギンのアメリカンハードなサウンドだとすれば、今回は1960~70年代のロッククラシックに近づいたサウンドです。
それもレッド・ツェッペリンとかザ・フーとかクリームのブリティッシュ・ロックですね。
各楽曲にも往年のスターたちのオマージュが入ってますし、とにかく楽しそうです。
もうこの段階に至って捨て曲とかあろうはずがありませんね。
アルバムラストを飾る『フラワー』は東日本震災直後のミュージックステーションで演奏され、多くの被災者を励ましました。
これね、「オアシスのパクリ」とか言う人多いけど、パクリ言うな。
ロビンに対しても被災者に対しても失礼だぞ!
『度の行き過ぎたオマージュ』だっつってんだろ!(お前が失礼だろ)
ちなみにイチオシナンバーは『クランベリー』ですね。
こういう大きく展開する楽曲ってイエモンにもソロにもなかったので新境地ですよね。
この疾走感がたまりません。
ちなみにこの半年後、本作の未収録音源を集めたミニアルバム『アフター・ジ・アップルズ』をリリースするのですが、これも6曲ですけど非常に内容濃いので必聴盤です。
そもそも『未収録音源集』じゃなくてほぼ『新録』になってるし(笑)。
そちらの解説記事も貼っておきますので読んでみてちょ。
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⑦『STARLIGHT』2015年リリース7作目
いよいよ最後のアルバム紹介となりました。
ソロ通算7作目であり、ソロとしては2024年現在、最後のオリジナル・アルバムとなっております。
そのままずっとロビンが一人で録るのかと思っていたら、またセッションミュージシャンに戻しましたね。
けど、やっぱりプロの人のプレイは素晴らしいですね(笑)。
『ハミングバード』のところで「ポップさ」という封印を解いたと書きましたが、あれは一部であって、本格的に開放したのはこのアルバムですね。
まあちょっと気恥ずかしくなるくらいポップで明るい。
『ブラックホール』や『39108』が好きだという人は、多分耐えられないんじゃないかな(笑)。
これもロビンの本来の姿の1つですよ。
デビッド・ボウイに心酔する前は、間違いなく昭和歌謡が大好きな子どもだったんですから。
こういう作風をやろうと思うこと自体が、もうなんか垢抜けているというか。
「いや、細々とマイナーにやってくからいいっすよ」
みたいだったソロ初期とは大きく違うんですよね。
メジャーシーンの一番目立つところで堂々と売れているというか。
『クリア』のMVを観て御覧なさい。
こんなピースフルで「らしくない」PVを、かつてのウジウジロビンに録れますか?(笑)
とは言っても単に明るくポップで分かりやすくなったから良いということじゃないんですよ?
かっこいいロックナンバーもあるからこのアルバムは凄いんですよ。
冒頭の『ハットトリッキン』『ライク・ア・スターライト』のロックナンバーとしてのかっこよさに打ち震えてください。
でもやっぱりこのアルバムのハイライトであり私のイチオシは『トーキョー・ノース・サイド』コレで決まり。
さて、ソロとして現在最後のアルバムとなった本作。
2013年にはイエモン再結成へ向けて動き出したので、2015年にリリースされた本作はソロとして最後にするつもりで作ったのか?
それはロビンのみぞ知るところですが、そう感じてしまうほど「たどり着いてしまった感」はありますね。
考えうる限り最高の作品を出してきてくれた感じがします。
それだけに吉井ソロが活動ストップするのはめちゃめちゃ喪失感大きいです。
『VOLT』『アップルズ』『スターライト』ときた3作の完成度は非常に高く、正直な本音を言わせてもらうと、再結成後のイエモンの『9999』『スパークルX』よりも好きなんですよね。
できればサザンにおける桑田ソロのように、バンドも続けながらソロ作品も継続して生み出してもらいたいところですね。
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最高傑作はどれだ!?
さあ、それでは私にとっての最高傑作をイエモン、ソロとそれぞれで発表しようではありませんか。
まず、イエモン。
私にとっての最高傑作はこれ⇩
『SICKS』とは甲乙つけ難く、時期によっては『SICKS』のほうが上に来る時もあるのですが(笑)、やっぱりこれかな。
全曲良いにも程があります(笑)。
そして何よりこの頃の空気感というか、なんか作品が放っている雰囲気が好きなんですよね、透明感というか。
そして吉井和哉ソロの最高傑作はこれ⇩
これもね、『VOLT』『スターライト』とは僅差というか、その時によって変わりますね。
この作品にはロビンの昭和歌謡の情念を一番強く感じられて、やっぱ鳥肌立ったんですよね。
それにロビンの各楽器のプレイが味があって、昔のロック聴いてるみたいでワクワクするんですよ。
それからついでに『ぜひ聞いてもらいたい作品』を発表しておきます。
これは『入門編』という意味合いではなく、あまり注目されない傾向があり、なおかつ個人的に大好きなアルバムと言う意味です。
「イエモン・吉井ソロは代表作(売れたアルバム)だけしか聴いていない」という人にぜひともオススメしたいということですね。
まずイエモンからは⇩
これはね、聴いたことない人が多いからぜひ聴かせたい(デビュー作も同様に)。
売れる前のイエモンだってめっちゃかっこよかったし、凄い水準で作品を作っていたんだってことを知ってほしい。
『エクスペリエンス・ムービー』の完全再現ライブとかやったら、若い子たちは腰抜かすと思うんだけどな。
フェミニンな装いの時期なのに、めっちゃ男を感じさせる骨太ロックですよ。
次に吉井ソロでは⇩
『コール・ミー』は吉井ソロの代名詞のような名曲なのですが、その曲が収録されている『ホワイトルーム』が「名盤」だとは認識されているように感じません。
これはね、「イエモンらしいか?吉井和哉らしいか?」とかいう議論がどうでも良くなるほど、問答無用の普遍性を持ってます。
「めっちゃ好きなメタルバンドがいて、そのバンドが全然メタルじゃないアルバム出したけど、メタルとか抜きにしてとにかくいい!」
みたいなものです(笑)。
はっきり言って、このアルバムが生み出されただけでもソロをやった意義があったと言えます。
そこまで言ったら、もうなんか熱が入りすぎて、表現の仕方が最高傑作かのようじゃないか(笑)。
このまま語りだすと何がなんだか分かんなくなるのでこの辺でやめときましょう。
というわけで今回は久々に全アルバム紹介でした。
ここまでで軽く2万文字を超えてます!
ここまで読んでくれた人、長々とお疲れ様でございました。
I LOVE YOU BABY! いつもありがとね~。
『NO MUSIC NO LIFE』
Simackyでした。
それではまた!