『Sicks』(シックス)イエローモンキー 1990年代日本ロックのマスターピース
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はイエローモンキーが1997年にリリースした通算7作目のオリジナルフルアルバム
Sicks
(シックス)
を語っていきます。
「シックス」というのはメジャー6作目という意味で、同様に『8(ハチ)』もメジャー8作目なのですが、私のブログではインディ時代の『バンチド・バース』を1作目ということで統一して話しております。
なので、本作は「通算7作目」と表記しております。
さあ、前作『フォー・シーズンズ』に引き続き名盤の登場です。
なんかもう神が降臨してますね。
「Sicks」…たしかに病的です。
この時期のイエモンはまさに全盛期といえるのではないでしょうか?
究極の名盤と思えた前作を上回らんばかりの勢いで襲いかかってきます。
いつもよりもちょいと長く語りますので覚悟してくださいね!
私と『Sicks』の出会い
私が本作と出会ったのは、1998年、大学1年のときです。
当時、私はバンドサークルに入っていて、そこではキッスやツェッペリンのカバーをするバンドを組んでいたのですが、その時にボーカルだったM君というのがイエモン狂だったんですよ。
なので、キッスやツェッペリンと同時にイエモンもちょっとだけカバーすることになっちゃって。
「イエモンなら俺、『フォー・シーズンズ』しか持ってないんだけど。『太陽が燃えている』は最高の名曲だよな」
「いやいやSimacky、その次に出た『Sicks』が最高なんだよ!あれ聴いてないってありえないよ!ってかイエモンはアルバム全部いいよ!ちょっと聴いてくれ」
とか言ってインディ盤から当時最新作だった『パンチドランカー』までの8枚を全部持ってきやがんの(笑)。
おまけにライブビデオまで。
で渡す時に、
「これはもうめっちゃいいから絶対聞いてね」
と念を押していたのがこいつというわけです。
当時の私は邦楽ロックを否定はしないまでも、完全に90年代オルタナティブと70年代ハードロックにどっぷりだったので、どうしてもそっちを演りたかったんですよ。
「やばい!こいつここで俺をイエモン漬けにしてバンドをイエモンバンドにする気だ!」
と危惧した私は、
「まあ、あれだけ推してるんだから『Sicks』だけは真面目に聞いて他のアルバムはサラッと流し聴きしておこう。まあ、ビデオは観てもいいかな」
ということで『Sicks』だけは真面目に聞いて、他のは流し聴きしました。
けどね、『フォー・シーズンズ』のポップさが気に入っていた私は、『Sicks』がなんか地味で暗く感じたんですよね。
『楽園』は飛び抜けて良く、『太陽が燃えている』にまったく引けを取らない名曲だと思ったのですが、他の曲はあんまりピンと来なかったんですよ。
かえって流し聞きするだけだった『パンチドランカー』の方が気に入っちゃって、『パンチドランカー』『バーン』『球根』『ラブラブショウ』と気に入る曲が多かった(あとインディの『ウェルカム・トゥ・マイ・ドギーハウス』も)。
「これとこれはまあまあ気に入ったから演っても良いんじゃない?」
ということで『ラブ・ラブ・ショウ』『パンチドランカー』の2曲はセットリストに組み込みました。
そういうわけなので、セットリストに入れるからにはちゃんと持っておこうということで、この時に『パンチドランカー』は自分でも買うんですよね。
そして、それからしばらくしたある時、散歩していたらめちゃめちゃ良いメロディが頭の中で流れ出して。
「うわ、なんじゃこりゃ!?これめっちゃいいメロディじゃん。俺ってもしかして天才?…いや、どっかで聴いた曲だったけ?」
とそのメロディを克明に思い出していくと、
「あー!『Sicks』の1曲目だ!」
そう、それがあの名曲「レインボー・マン」だったんですね。
「あれ?あの時は別にそんなに好きになれなかったのになんで?」
こういう経験ってありません?
自分の中で音楽が熟成されると言うか、しばらく月日が経つと自分の中で好きな音楽になっているっていう経験。
この時、頭の中で鳴っていたメロディがあまりにも素晴らしかったので、どうしても聴きたくなって自分で『Sicks』を買いました。
本作にハマるのはこの時です。
「なんじゃあ、こりゃあ!全部いいやんけ!M君があれだけ推してた意味が分かったな」
ってなりました。
それ以来、本作は私の中で『フォー・シーズンズ』と甲乙つけがたいお気に入りになりました。
あと、ここからは余談なのですが、こういう話になったついでにお話しておきたいことがあります。
先程、「レインボー・マン」のメロディを自分で思いついたと勘違いしましたが、オリジナルの楽曲を作り始めると頭の中で流れてくる(降りてくる)メロディが自分の中から湧き出たものか、どこかで聴いたものかが分からなくなることはままあります。
そりゃめっちゃ好きなバンドのメロディであればすぐに分かりますけど、そのメロディがそんなに好きで聴き込んだわけでもないバンドのものだった時は思い出せないものなんですよ。
普段から広範囲なジャンルの音楽を大量に聴き漁っていると、もうほんとに分からなくなります。
ある時、「これは良いリフだ!」と思いついたメロディをメンバーに弾いて聞かせた時に
「それニコチンじゃない?」
って言われたことがあります。
大学の頃に友だちに借りてほんの一時期だけ聴いていた日本のメロコアバンド・ニコチンのリフだったんですよ。
ニコチンを自分がかつて聴いていたことさえ忘れてました(笑)。
私でさえそういうことが起きるので、私よりももっとたくさんの音楽を聴き漁っているプロのミュージシャンであれば、こういうことは頻繁に起こると思うんですよね。
なので、音楽を聴いていて
「これってあのバンドのあれに似すぎじゃない?これはパクリでしょう!」
って感じることは多いと思いますが、作っている本人には自覚がないというケースが実は多いのだと思います。
なので、そう感じることがあっても温かい目で見守ってあげましょう。
いや、これは別にイエモンの話じゃないですからね?(笑)
イエモンで一番売れた問答無用の最高傑作!
1995年はシングル4枚にアルバム2枚という怒涛のリリースラッシュ。
アルバム『フォー・シーズンズ』(1位)とシングル『太陽が燃えている』(9位)でついに日本ロックシーンの大スターに上り詰めたイエモン。
その人気は盤石のものとなり、続く1996年は『JAM』6位、『スパーク』3位、『楽園』3位と快調にシングルヒットを飛ばします。
そして虎視眈々(こしたんたん)と自己表現の極みであるアルバムを作るべく水面下でアルバム制作を続けていました。
なんとロビンは本作の制作に当たり「1日3曲」の作曲を自らに課し、なんと
300曲
ほどを作ります。
は?人ってそんなに曲作れるものなの?
一般的なミュージシャンはせいぜい30曲、多くて50曲とか作ってそれを10~15曲に絞って収録すると思うのですが。
300曲作ったっつってもアルバムは13曲しか入っていないし(笑)。
しかもこれはロビン1人で300曲なわけで、エマやヒーセの楽曲が収録されているところから見ても、他のメンバーが作ってきた楽曲も合わせたらもっとあるわけでしょ?
どんだけ切り捨てたの?
もったいなさ。
まあ、『バンチド・バース』の時もそうなのですが、ここで使わなかったとしても以降のアルバムでいつか使ってやろうという腹積もりではあるのでしょうが(笑)。
海外のミュージシャンみたいに『未発表音源集』とか出してくんないかな。
それだけ厳選に厳選を重ねて収録された本作は、当然のことながら捨て曲などあろうはずがありません。
本作がリリースされた1997年という年は、アルバムの収録タイムはどんどん伸びていた時代です。
私の好きなレッチリやメタリカは79分というCDの容量限界ギリギリまで16~18曲とか収録し始めた時代。
そんな時代にもかかわらず安易に楽曲を詰め込まず、70分13曲で収めているとことなんかにも、アルバムとしての完成度にこだわりまくっている姿勢が感じられますね。
クオリティだけで言うなら十分に収録水準を満たす楽曲ではあっても、カラーや雰囲気がアルバムに合わない曲は容赦なくボツにしたんでしょう。
だから『未発表音源集』出してほしいって話なんですよ(笑)。
1997年にリリースされた本作は前作同様チャート1位のみならず、バンドの歴史上最大のヒットである
63万枚
を記録します。
正直、私はこの事実に驚きますね。
「売れやすい」という面で言うなら『スマイル』『フォー・シーズンズ』に分があると思ってたので。
これにはディレクターや他のメンバーも驚いたらしいですが、ロビンは100万枚売る気でいたらしいです(笑)。
しかし、宣伝となる先行シングルが『フォー・シーズンズ』では2枚だったのに対して、今回は『楽園』の1枚のみでここまで売るのはすごいですよ。
しかも大ヒットシングル『JAM』『スパーク』はレーベル移籍のため収録されていないにも関わらず。
人気投票でトップ10に入るような人気シングル2曲を収録しなくても、このクオリティでアルバムが完成してしまうところに当時のロビンの勢いを感じますよね。
ロビン自身も本作を「最高傑作」と言い切っています。
『Sicks』楽曲解説
名曲だらけにしようと思えば出来た。
しかし、彼らはそれを良しとしなかったんです。
アルバムを『楽曲の寄せ集め』ではなく『一つの作品』と捉える姿勢が強く感じられるという意味では、4作目『ジャガー・ハード・ペイン』に似ているとも言えます。
本作を明確に『コンセプトアルバム』とまで言うのは大げさすぎますが、ストリーミングの時代となった今ではこういうことにこだわった作風はもはやお目にかかれないでしょうね。
レビューを読んでいると「暗い」「芸術性が高い」という表現が結構見られるんですが、『ジャガー・ハード・ペイン』よりも全然暗くはないですよ。
むしろおバカソングが前作以上に増えて、悪ノリ加減がすごいことになってます。
楽曲の作りを見ても、アルバムの曲順・流れなどを見ても、基本的なフォーマットは前作『フォー・シーズンズ』を踏襲してます。
前作、前前作で築き上げた『万人に届く』フォーマットなので、『天国旅行』のような非常に重く、暗いテーマの楽曲を扱っていても、実は『ジャガー・ハード・ペイン』の時よりも明らかに聴きやすい。
それが本作が売れた理由でしょう。
#1『RAINBOW MAN』
神秘的でオリエンタルな雰囲気でアルバムが始まります。
私を本作に引き込んだ罪深いナンバーです。
派手さがないので最初は私のようにピンとこないかもしれません。
この曲の良さが分かると、何故か本作全体の良さに気が付き始めるんですよね。
なんなんでしょうね、この神々しさ。
イエモンが完全に別次元の領域に達したように感じました。
アニーのスネア4つ打ちでテンポよく進行していきます。
これがなんだかポジティブな行進なんだよな~。
一度幻想的にスローなテンポになった後、「願いが全部叶う」のところから盛り上がってギターソロにいく流れのところで鼻血が出そうになります。
エマさん、あんた曲に求められるプレイを完ぺきにこなしてらっしゃる。
#2『I CAN BE SHIT, MAMA』
「I can be shit,mama」発音すると「あいきゃんびーしっとまま→あっかんべ~したまま」らしいです。
今回ウィキ読んで初めて知りました(笑)。
くっだらねぇ!
めっちゃざっくり意訳すると
「何が正しくて何が正しくないのかなんて分かんない。他人がなんて言おうとそんなもんにはアッカンベーして勝手に楽しむぜ」
みたいな感じで、要はロックな歌詞なのですが、反骨の精神を「拳を突き上げろ!」とかいう使い古された表現をするのではなく、「アッカンベー」で表現するのがロビン流ってわけです。
「戦え!」ではなく「スルッと流しなさい」みたいな(笑)。
「どストレートな反骨ロックは寒い。どこかに冷静さ、ニヒルさっていう視点がある方が自分はかっこいいと思う」
みたいなことを昔インタビューで言っていたのですが、この曲のスタンスなんかがある意味ロビンの美学なんだと思います。
結構ダークな雰囲気を放っているんですが、サビでパ~っと明るくなるのが快感。
ポップじゃないのにかなりポジティブな曲ですね。
#3『楽園』
唯一のシングルカットナンバーで代表曲です。
これね、やっぱり名曲ですよ。
自分の中でずっと1位に君臨してた「太陽が燃えている」を蹴落とし、一時期は絶対王者のように君臨してました。
カラオケで歌った回数もダントツでしょうね。
イエモン王道ソングの頂点に位置する楽曲ではないでしょうか?
初っ端からエマの切り裂いてくるリフがかっこよすぎるんですが、ヒーセのベースがスライドしてうねってるのが気持ちいい。
友だちに借りた最初っから好きだし、自分で買って聴き込むほどもっと好きになりましたね。
これね、本人は『ドラッグ・ソング』って呼んでいるんですが、直接的な表現に色々と修正を加えていった結果、「決意表明みたいな楽曲になってしまった」とのこと。
確かに、ドラッグソングというほど生々しい表現はないし、『ドラッグ』を想起させる言葉がいちいちダブルミーニングみたいになってて、『希望』や『決意』を想起させる言葉にもなっているんですよ。
ほんの一例を挙げると、『楽園』はドラッグでラリった状態だとも取れるし、「自分にとっての幸せな場所」とも解釈できます。
『スプーン一杯分の幸せ』は「ドラッグスプーン1杯分で得られる快楽」とも取れるし、「壮大な夢ではない等身大の幸せ」とも受け取れます。
なので、一度ドラッグという先入観を頭から外して自由に解釈してもらいたいですね。
#4『TVのシンガー』
おいおいおいおい…。
2024年の現在、この歌詞を読むとまるでジャニーズタレントや松本人志らお笑い芸人を皮肉っているとしか思えない(笑)。
これまで60年間、テレビが作ってきたイメージが跡形もなく瓦解した2023年だったですからね。
26年も前にすでにロビンによって盛大に暴露されていたとは。
いい曲だよな~この『暴露のシンガー』(笑)。
#5『紫の空』
う~む、ジャズだね。
イエモンでジャズテイストは初じゃないかな?
けど、イエモンが演るといかがわしくなるね。
なんと、第1回フジロックで日本人としてのトリを飾った際(大トリのレッチリの直前)、この曲を演奏しちゃいました。
え~!!!!
台風直撃の大雨で観客はズブ濡れで震え上がっている最中、ファン以外誰も知らないアルバムソング、しかもその中でも特にマニアックなこのナンバーを演るなんて、そりゃあお客もちょっとノリ切れないでしょう。
さっきまでレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンで頭振ってたお客達でっせ?
え?他にも『天国旅行』も演ったって?
ちょっ…
客を凍死させる気ですか?
いや、狙いは分かりますよ、私はどれも大好きなナンバーです。
じっくりと聴き入れるナンバーではあります。
けど、まずお客ノせんかい!
ここはフジロックであってブルーノート東京ではないんだから。
そこは『見てないようで見てる』しかないでしょ(笑)。
ロビンはここでの失敗に落胆して解散も考えたとのこと。
う~ん、そこまで落ち込まなくても。
#6『薬局へ行こうよ』
『最高傑作』という触れ込みを聞いて本作を手にした人は、この曲でズッコケること請け合いです。
この適当でダラダラした感じ…
完全に人を食ったような曲です。
エマのギターは、もうこれ酒飲みながら弾いてるでしょ?
アニーのスナッピーを外したスネア音の間抜けなこと。
ロビンも絶対飲んでますね。
途中笑ってんじゃん。
「バカにしてるよね?俺のことバカにしてるよね?」
って気持ちになります。
あんたらいい加減にしときなさいよ?
最高じゃねぇか…。
#7『天国旅行』
前曲とのギャップが凄すぎてとても付いて行けないくらいシリアスなナンバーです。
『遊び』としか言いようのない曲から『遊び一切なし』の曲が続きます。
本作が「芸術性が高い」とか「暗い」とか言われるのは、そういう楽曲が多いからでは全然ありません。
この『天国旅行』が、たった1曲の存在感が、アルバムの印象を決定づけてしまうほど強烈だからです。
ロビンの感情移入はこれまでの作品でも凄かったのですが、これはもう『呪怨』のレベルですよ。
楽曲の中にこれだけの強い感情を込めることができるシンガーを他に知りません。
また、本作の雰囲気をメンバーが最大限引き立てるために、余計なプレイは一切加えず、楽曲を活かすためだけにプレイしてます。
それが顕著なのがエマのラストのギターソロで、おそらくギタリストの本音としてはもっと弾きたいでしょう。
ドラマーの私でさえ、もうちょっと弾いてしまいそうです(笑)。
けれどもかなりストイックにただ同じフレーズを捻りなしに繰り返す。
これがすごいんですよ。
この曲で震え上がるのか、涙が出るのか、絶望的な気持ちになるのか?
それは分かりませんが、あなたの魂が震わされることだけは確かです。
#8『創生児』
これまた前曲からの落差が凄くて、ズッコケた挙げ句、ドブに落ちてしまいそうになります。
前作『フォー・シーズンズ』の『ラブ・ソース』から始まったちょっぴりエッチでおバカなコミカルシリーズです。
漫画でよくある、自分の中の天使と悪魔がせめぎ合うやつですね。
いや、内容はマジでどうでもいいくだらない話(笑)。
前作から日本語の比率が上がり、歌詞が分かりやすく、印象の残るフレーズが増えたのですが、この曲でさらにパワーアップした感すらあります。
好きなフレーズが
「アホのソテーができるぜ」
「『たてまえ』じゃねぇ 立たせてもらえ」
もう最高(笑)。
影響されて友達とかに
「お前さ、アホすぎてアホのソテーができるぜ」
とかって使ってたのは私だけじゃないはず(笑)。
そもそもタイトルが秀逸。
「創生児」は自分の中の双生児(天使と悪魔)でもあり「ソーセージ=●●●」にかけてるっていう。
なんかロビンにスケベ神(桑田佳祐)が乗り移っているような。
男っていうのは下ネタ考える時に天才になる生き物なんですよね(笑)。
#9『HOTEL宇宙船』
まさかの2曲連続で下ネタソング(笑)。
実はこのアルバムって前半戦の#7『天国旅行』までは数曲だけ暗かったりダークだったりもあるんですが、#8『創生児』からの後半戦は明るいんですよ。
おバカで陽気に突っ走ります。
しかし、前作もそうだったけど、楽曲のクオリティが寸分たりとも落ちないな~。
なんていうアルバムだ。
で、この曲は珍しくヒーセが作曲してます。
「メキメキ太くなれ我が望みよ」
「シュバーシュビドゥバー」
あんたらいい加減にしときんさいよ(笑)。
#10『花吹雪』
2013年のファン投票では本作から最高の3位になるほどの人気ナンバー。
この雰囲気は以前のイエモンにまったくなかった雰囲気で、ロビンの歌唱法としても新境地ですね。
初めて聴いた時は
「なんて歌謡曲度が高いんだ」
って思いました。
なんかロビンのボーカルの雰囲気がちょっと中島みゆきに似てるんですよね。
けど、妙にこのメロディが耳に残って、好きじゃないんですけど頭の中で流れてくるからイライラするんですよ(笑)。
まあ、今は結構好きですけど。
#11『淡い心だって言ってたよ』
爽やかだな~。
この歌い方もまた新境地じゃないかな?
リバーブのせい?重ねてあるから?
怪しい響きがちょっとデビッド・ボウイのように感じたり。
なんか日本語で歌ってるにも関わらず、70年代の洋楽を聴いているような気持ちになるんですよね。
このセンスと放っている雰囲気は日本人離れしてますね。
本作では影が薄いんですが、これかなり考えて作り込まれてますね。
#12『見てないようで見てる』
怒られるかもしれませんが、本作で…いや、もしかするとイエモンで一番好きかもしれない曲です(笑)。
渋谷駅近くの喫茶店で、ただ斜向いに座っただけの女性客をネタにしてここまでのギャグソングを生み出せるか、普通?
一言も会話していないのに、勝手に妄想だけで話が進んでいく感じが最高すぎる。
「自信が化粧したようなプライドの奥は深いぜ」
いや、余計なお世話だ。
「動物のアンテナは空気で読み取る 瞬時に秘密やクセや弱みや好きな体ぁ~位とか」
もう店から出て行ってくれ。
「君の正直な瞳の動きに 敏感なんだよ血が集まるのさ」
誰かこいつ逮捕してくれ。
斜向かいに座ったお姉さんもこんなこと考えられてるなんて思いもしないだろうぜ。
皆さん、音楽で爆笑したことありますか?
私は「見てないようで見ている」が最後に「見てないようで見ていた」に変わる瞬間にいつもこらえきれずに爆笑してしまいます。
っていうかロビンもちょっと笑ってない、これ?
本作が最高傑作と呼ばれるのは、楽曲ごとのクオリティはもちろんのことながら、楽曲のバリエーション、つまり『振り幅の大きさ』というポイントにあると思います。
そしてこの曲はその振り幅を大きくするのにもっとも貢献しているという意味で、『天国旅行』『楽園』に匹敵する重要ソングと言えるのではないでしょうか?
完全にアルバムの『格』を上げていますよ。
おバカだけど。
#13『人生の終わり』
さあ、最高傑作のラストを飾るのはこの曲です。
なんて表現すれば良いんでしょう。
理屈ではなく、ただただ、心に染み入ってくるんですよ。
ただただ感動する。
ただただ涙が出てくる。
安らぐけど、切なくて、寂しくて、嬉しくて…色んな感情が複雑に絡み合ってます。
歌詞の内容としてはロビンが亡くなった祖母のことを歌っているとのことですが、これは歌詞のストーリーとは関係なく、それぞれの言葉が独立して突き刺さてくるんですよね。
ワンセンテンスの持つパワーがすごい。
歌詞の意味を無視して、この言葉とグルーブに身を委ねたくなるんですよね。
いいじゃないですか、勝手な解釈でも。
作者の意図通りに汲まなきゃいけないっていうルールなんて存在しないんで。
音楽は自由なんですから…。
はい、というわけで本日は「Sicks」を語ってきました。
あれ~?
確か『フォー・シーズンズ』が一番好きだったはずなんだけど、いつも聴き出すと「やっぱりこれが一番かな」ってなるんですよね(笑)。
まあ、このあたりは脂が乗りまくってる時期なんで、どれも素晴らしいのですが。
イエモン好きだな~。
最近、アルバム解説をしてる毎日が幸せすぎる…。