『エクスペリエンス・ムービー』イエモン屈指のハードロック路線がかっこいい!
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はイエローモンキーが1993年にリリースした3作目のオリジナルフルアルバム
エクスペリエント・ムービー
を語っていきます。
ちなみにこのジャケは次作『ジャガー・ハード・ペイン』の主人公・ジャガーの恋人マリーをロビンが演じてます。
すでにこの頃から次作への伏線がはられていたのか?それともこの流れから次作が生まれたのか?
それはロビンのみぞ知るところであります。
プロっぽく攻撃的な作品
本作は通算3作目のアルバムであり、メジャーデビュー2作目です。
イエローモンキーは本作でいきなりサウンドがガラッと変わります。
いわゆる皆さんがよく知る「イエモンってこんな感じだよね」っていうサウンドになります。
なにも事前情報がない状態で1作目から聞いてきたら、この作品こそメジャーデビュー作に感じるでしょうね。
前2作にあったインディ感、B級ロック感が完全になくなります。
どこか「グラムロックに憧れてるんだろうな~」っていう素人臭さがなくなって、『自分たちの音』を持ったメジャーのバンドっていうイメージになりますね。
グラムロックの音から独自の音世界へ。
具体的に言うとハードロックに寄ったゴツゴツした骨太なサウンドになります。
自分たちの確立した音をしっかり鳴らしているというか。
以前よりも攻撃的で、そもそもアップテンポなナンバーが目立ちます。
これ昔からちょっと思っていたことなんですが、イエモンって同じハードロックをやっても、
暗い曲調の時より明るい曲調の時の方が、明らかに勢いのあるグルーブが出ているんですよ。
本作と次作『ジャガー・ハード・ペイン』は”ハードロック“としての度合いで言えば同じくらいなんです。
けれども、本作のほうがぐいぐいスイングしているんですよ、グルーブが。
次作よりも本作のほうが明るい作風になっていて、明るい=ポジティブなエネルギーがそう感じさせるのかもしれませんね。
次作にはない『ウキウキする感じ』が間違いなく本作にはあります。
そのグルーブ感たるや凄まじく、『聴いていて思わず体をゆすりたくなる』度合いで言えば、イエモン全作品中で最高地点に到達していると思います。
エマが、ヒーセが、アニーが…すごい!!!!
息がピッタリというか、楽器隊が一丸となって襲いかかってくるイメージ。
ロビンのボーカルも前作より自信がみなぎってるし、なによりエキセントリックでクレイジー。
でもバラードでは情緒的で、感情が振り切ってる。
『シルクスカーフに帽子のマダム』なんて、ボーカリストとしての新境地に達してて、ここでの開花が後の『JAM』とかにも繋がっていくんだと思うんですよね。
『売れる前のイエモン』、『世間一般的に認知されるイエモンになる前の姿』である初期4枚の中では『ジャガー・ハード・ペイン』が一番インパクトが強くコアな作風であるため、そちらがスポットライト当たること多いですけど、皆さん…
侮らないでね。
『エクスペリエンス・ムービー』はsimackyランキングの中では『フォー・シーズンズ』『SICKS』に次いで
第3位です。
これは単にハードロック好きな私だからというわけではなく、全体的なクオリティも非常に高いからです。
アルバム通して緩急の落差が大きいので、スピードナンバーからのバラードが映える映える。
そしてそれらバラードの質も実際に高い。
やばいですよこのアルバム。
これだけのクオリティでどうして
5000枚
しか売れてないの?
デビューアルバムでも8000枚は売ってんのよ?
本気で売ろうと思ったら、ツアーしながら、
「今日はCD買ってくれた人にサインするので皆買って帰ってください」
って地道にサイン会やっていけば1万枚くらいは届きそうなものだけど。
これは内容が悪いと言うよりも、売ることに対する執念が足りていないような気がしないでもないのですが。
まあ、そんなことしても根本的な問題の解決にはならないのでしょうけど。
う~ん、なんか歯がゆい!
例年開催されるコンサート『メカラウロコ』では、初期からの楽曲を優先的にやっているのですが、その気持ちもわかります。
これだけの作品が生まれていても、ファンにさえまだまだ浸透していないのだから。
ちなみに『イエモン・ファンズ・ベスト・セレクション』での人気投票では50位以内にランクインした楽曲が5曲です。
これって実は凄いことで、『FOUR SEASONS』8曲、『SICKS』6曲についで3位なんですよ(『8』も3位)。
ほーら!侮ってたでしょう?
しかし!この5曲の中には私の大好きな『ラブ・イズ・ズーフィリア』も『審美眼ブギ』も『バーミリオン・ハンズ』も入っていない!?
・・・・・・・
なんて日だ!
とにかく売れない初期イエモン
本作はメジャー2作目、通算3作目になるのですが、ライブ動員数は伸びてきているとは言えCDセールスはさっぱりです。
シングルもアルバムも両方。
イエモンがある程度売れだすのは通算5作目となるアルバム『スマイル』、そしてシングル『太陽が燃えている』あたりで、人気が爆発するのは6作目のアルバム『フォー・シーズンズ』とその後のシングル『JAM』『スパーク』からです。
本作のセールスが不振に終わったあとにいよいよレコード会社から
「もういい加減、売れる音楽を考えたらどうだ?」
と言われ、
「最期に1回だけ好き放題させてくれ」
と頼んで、念願だったコンセプトアルバムを作ったのが次作『ジャガー・ハード・ペイン』になります。
なのでそこまでの初期4作はあまり知名度がないというか、スポットライトを当てられない作品達なのですが、これが聴き込むと面白い面白い。
私も『フォー・シーズンズ』からファンになった人間で、初期作品は売れていない印象があったので
「初期は音楽がパッとしない。まだ彼らが本当の実力を発揮していない時期」
という偏見を持っていました。
なのですが、この初期4作にはその後のイエモンの基盤となっていく音楽スタイルがすでに確立されているし、実に幅の広い音楽性に挑戦してます。
売れる音楽こそ演っていないもののそのクオリティは非常に高い。
っていうか売れても不思議じゃない曲も実際たくさんあるんですよね。
やっぱり売れる売れないっていうのはイメージ戦略だったりプロモーション費用だったりと、音楽性以外の部分が左右するんだと思います。
1曲の中でコロコロと展開が変わったり、ちょっと馴染みにくい独特のメロディセンスだったり、後期のイエモンにはほぼ無くなる要素が盛りだくさんで聴きごたえがあるので、私のような『遡(さかのぼ)り組』からするとちょいちょい裏切られます(笑)。
長い目で見ると初期作品の方が気に入ってきたりするから不思議なものです。
『エクスペリエンス・ムービー』楽曲紹介
#1『MORALITY SLAVE』
ベートーヴェンの『月光』のピアノフレーズに始まり、本編は幻覚的な女性の語りが入ってきます。
ロビンのボーカルがのっけからダークだな~。
このエマのギターの歪ませ方もかなり強めでギターソロでは狂気っぽくていいですね。
歌詞も狂ってます(笑)。
この全て統一された世界観は見事で映像的ですらあります。
You Tubeで探すと1993年のライブが見つかると思います。
やゔぁいです、この以上なテンション。
なんか頭に麻袋被ったSM女王みたいなのが、オッパイ丸出しで柱にくくりつけられてます(2名)。
この頃のイエモン、過激だな~。
しかし…、異常にかっこいいです。
ロビンの自伝『失われた愛を求めて』によると、
「本当はオッパイ揉みたかったけど、嫁さんが怒るだろうからやんなかった。お客もドン引きするだろうしね」
とのことですが、是非ともステージでオッパイ揉みしだいて、SM女王にマジモンの平手打ちを食らうロビンを見たかった(笑)。
#2『DRASTIC HOLIDAY』
不倫の歌ということですが、個人的にはあんまりそう感じませんね。
いかにも2曲目といったミドルテンポのナンバー。
サビのハッピーメリーゴーランドのようなノリになんか幸せになります。
なんだそりゃ(笑)。
しかしこの弦はいい仕事しとりますな。
このスパニッシュなアコギでのギターソロが激シブなんですが、これってロビンか?
#3『LOVE IS ZOOPHILIA』
かなりパワフルなナンバーですね。
もう初っ端のエマのギターリフで大好きになります。
本作のエマのリフは強烈に引き付けるパワー持ってるんですよね。
イエモン屈指のギターアルバムと呼んでも良いのかもしれません。
また、アニーのドラムの決めが頻繁に出てくるため、グルーブがかっちり決まってます。
オカズの嵐ですな。
ロビンの
「ワゥっ!ロックンロール!」
の卑猥な響きにこの頃の勢いを感じます。
ラストのエマのギターソロは盛り上げてくれるくれる。
#4『仮面劇』
イエモン節の曲だな~。
歌詞の意味はさっぱり分かりませんが、意味なんて求めていないのかもしれません。
なんていうか、「そのフレーズにこのワンセンテンス」っていうインパクトが強く残る楽曲で、意味は分からずとも、その単語の何となく持っているイメージだけで妄想させるというか。
やっぱロビンはこのシャウトだな~。
#5『VERMILION HAND』
本作で一番アグレッシブなハードシャッフルナンバー。
このアルバム、前半はパワーでゴイゴイ押しまくってきますね。
ハードロック全開でやばいよ、このアルバム。
攻撃性というよりも、もはや『殺気』さえ感じますね。
キレッキレでかっこよすぎです。
なんか
「バーミリオンバーミリオンバーミリオンは~ん」
のフレーズが中毒性が高すぎる(笑)。
後の『“I“』や『アイ・ラブ・ユー・ベイビー』なんかに通じる攻撃的ナンバーですね。
本作で一番痺れました。
この曲こそ、当時の勢いを表していると思います。
#6『DONNA』
本作のクレジットを見るとエマは『エレキギター』のみとなっていて、ロビンの方に『アコースティックギター』と表記されているので、このアコギはロビンなのでしょうか?
じゃあ、エマはなにしてんの?
ロビンによる弾き語りなのかな?
押しまくってきた前半からちょっと休憩しましょう。
#7『審美眼ブギ』
のっけからロビンの
「俺は怒ってんだぞ~!」
っていう怒りが伝わってきます(笑)。
前作のメジャーデビューアルバム『夜行性カタツムリ~』をヘヴィメタル専門誌であるBURRN!にこき下ろされたことを歌詞にしてあります。
メンバー全員が元ジャパメタバンド出身ということでBURRN!が取り扱ったのでしょうが、そもそもイエモンはBURRN!読者が好んで聴くような音楽性は微塵も目指しておりません(笑)。
ヒーセのベースが非常にファンキーで、この跳ねたグルーブ感を生み出してます。
バックサウンドがとにかく強烈で、この疾走感が痛快なナンバーです。
ちょいちょい入ってくるエマのリードギターがツボをついてて気持ちいい!
で、最期にライター、リスナー、DJに悪態付くところが最高にかっこいい(笑)。
この曲も、#5『バーミリオン・ハンド』もそうなんですが、どうして『イエモン・ファンズ・ベスト・セレクション』の50位以内に入っていないのか意味が分かりません。
#8『4000粒の恋の唄』
ついに8分台に突入した長尺曲が登場します。
前作あたりからちょっと大作主義っぽいのが出てきてましたが、本作にはこのような長尺曲が3曲もあります。
後にアルバム『フォー・シーズンズ』のオープニングを飾るタイトルナンバーの原型のような曲ですね。
決して急がず、ひたすらクリーントーンアルペジオでゆったり進み、5分を過ぎたあたりから歪ませたエレキギターが出てきます。
徐々にストリングスが導入され、アウトロはエマのギターで締めくくります。
#9『「アバンギャルドで行こうよ』
セカンドシングルとしてリリースされました。
ブギーもここまでハードになってくると、もはやT-REXから完全に離れてイエモンブギーとも呼べるオリジナルとして確立されてますね。
ポイントはアニーのドラムのパワフルさです。
アウトロがもろにロキシー・ミュージックで超かっこいい(笑)。
#10『フリージアの少年』
7分近い長尺曲で、かなりダークな感じで始まり…、ん?
なんとこれはレゲェ調ですよね。
それがアンニュイな雰囲気をうまく演出してます。
しかしサビでは雨がパ~っと晴れ上がるように明るく転調します。
十代の暗かった頃の自分が、ロックに出会って今日もショーを演じる、という自伝的な歌詞です。
ロビン曰く「水仙(花の名前)がナルシストを表すのならば、自分はそれじゃないからフリージア」ということで、自分をフリージアの花に例えています。
確かに彼がいわゆる『ヴィジュアル系』と呼ばれる人たちとちょっと違うのは、YOSHIKIやGacktみたいに傍(はた)から見ても明らかにナルシストっていう雰囲気がないからですよね(笑)。
パフォーマンスやアートとして美を表現してはいても、普段からそうじゃないんでしょうね。
#11『SUCK OF LIFE』
かつて2012年の人気投票でイエモン全楽曲中3位に選ばれたこともある、屈指の人気曲です。
『イエモン・ファンズ・ベスト・セレクション』(2013年)でも4位と、安定の人気を誇ってます。
実はこれも「メジャー後のアルバム用に温存された楽曲」の1つで、インディでのアルバム『バンチド・バース』の時点で存在していましたが収録を見送られた曲ですね。
同性愛の楽曲です。
あれ?なんかこの前もあったような?
ロビンはノーマルな人だったと思うんですが、インディ時代はオカマのパフォーマンス(MCなど)してたみたいで、誤解されがちですけどデビッド・ボウイのようなホンマモンとは違います(笑)。
言われてみれば、なんというかJロックって感じがプンプンしてるんで、やはりインディ時代に作られたものだと感じます。
#12『PUFF PUFF』
「ゲストミュージシャン登場か!?」
と思うのですが、これはロビンのファルセット(裏声)です。
1分程度の小曲で「サック・オブ・ライフ」の大仰な大作からの箸休めの1曲といったところでしょうか?
まるでフランス語で歌っているようで実は日本語というなかなかに笑える趣向です(笑)。
そういえばどっかの地方自治体が、一時期流行った町のプロモーション動画で、フランス人が語ってるんだけど、実は日本の方言だった、みたいな洒落の効いた動画がありましたが、実はこの曲が影響与えていたりするのかも。⇩
#13『シルクスカーフに帽子のマダム』
8分に届こうかという長尺曲です。
「波止場女の曲を洋楽チックにやってみたかった」
とのことで、『波止場』を調べてみると、『港・埠頭』と出てくるので、『漁師やってる女』ということになるのかな?
『海女(あま)ちゃん』ってやつになるのかな?
この曲の主人公は次作『ジャガー・ハード・ペイン』の主人公・ジャガーの恋人・マリーです。
恋人ジャガーは戦場で死んだので、マリーは行くあてどもなく彷徨い、あるバーで出会った男にジャガーを重ね、行きずりの男と寝る、といったところでしょうか。
名前がジャガーとかマリーとか言ってんのに漁村っていうシチュエーションがよく分かんないのですが、マリーは生まれ故郷のフランスへ帰るのか?
まるで桑田佳祐が書くような泥臭い歌謡曲の歌詞と洋楽を合体させたような新境地の楽曲です。