『トレイン・オブ・ソート』ドリームシアターが「思いっきりメタルやっちゃいました」っていうアルバム

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はドリームシアターの2003年リリースの7作目アルバム『トレイン・オブ・ソート』を語っていきたいと思います。

ここまでメタルに振り切ったアルバムは初かな?

このアルバムは支持する人としない人が両極端に分かれます。

好きな人は「ドリームシアターで一番好き」とか言います。

好きな人は3作目『アウェイク』が好きという傾向があります(笑)。

それがなぜなのか?

たっぷり解明していきましょうぞ!

ドリームシアター史上もっともニュー・メタルへ近づいた作風

ドリームシアターは『プログレメタル』の先駆者と言われます。

デビュー当時は『メタリカ・ミーツ・ラッシュ』、つまり『メタリカ(メタル)とラッシュ(プログレ)が合体したような音楽』と呼ばれていました。

であるからこそ、ラッシュ、ピンク・フロイド、イエス、キングクリムゾンが好きなプログレ・ファンと、メタリカやメガデスが好きなメタルファンが混在している不思議なバンドなんです。

しかし、私の印象としてはやはりメタルファンが多いイメージではありますよね。

そもそも音楽雑誌『BURRN!』に登場するバンドという時点で『お墨付き』的なところはありますね。

いや、あえて『メタルの烙印』と呼びましょうか(笑)。

そして彼らのスタンスもどちらかというとそっち寄りというか。

メタリカの『マスター・オブ・パペッツ』の再現ライブをやったり、毎回アルバムの中にメタルバンドのオマージュを入れ込んでみたりと、メタルへの敬愛が感じられます。

ただ、彼らは本能で突っ走る単なるメタルヘッズとは言えないような深淵なる知性が感じられ、込めているコンセプト、精神性はやはりプログレバンドの持つそれです。

変態的に複雑怪奇な展開からも、やはりイエスやELPを感じたりする時ありますもんね。

そんなドリームシアターのメタルへの傾倒の度合いが、シリーズ中最高潮に達したアルバムが本作だといえます。

それもただ正統派メタルではなくKORNなどの『ニューメタル』に接近してます。

もともとメタルファンが主に聴いているバンドなので、こういう作風になれば喜ぶ人が多いのは道理ですね。

しかしね、このアルバムがすごいのはすごくアグレッシブになったとか、スラッシーになったとか、ヘヴィになったとかいう浅い話ではないことなんですよ。

本当の意味でメタルの持つ魅力を再現していることが凄いのではないでしょうか?

それは『叙情性』ですね。

単にヘヴィにしただけじゃなく、そこに『泣きのメロディ』がある。

この『破滅の美学』的な美しさこそ本作の魅力だといえます。

3作目『アウェイク』の一部分だけを突き詰めたような作風ですね。

こうして見るとやはり『アウェイク』はその後の作品に影響を与えている非常に重要な作品であることが伺えます。

ファン目線で作った初めてのアルバム

このアルバムは「メチャメチャ大好き!」というコアなファンが付く傾向が見られるんですよ。

ドリームシアターは常に、色々な音楽性を一つの作品に込めてきたバンドです。

実験性もあるしバラードもあるし。

でも、ファンとしては色々な願望があって、その中の一つに

『ヘヴィで思う存分スーパープレイを詰め込んだドリームシアターが聴きたい!』

っていうのが間違いなくあったのかな、と。

ここ2作、『メトロポリスPart2』『シックス・ディグリーズ・オブ・インナータービュランス』では、コンセプト・アルバムを立て続けに作ってきました。

理屈とかコンセプトがありきだったんですね。

それが、今回は

『ライブで思いの外ヘヴィなナンバーを求めるファンの声が大きかった』

から、その求める声に応じて方向性を決めたという経緯があります。

『サウンドの方向性が先にありき』という意味でやはり『アウェイク』に近いものを感じます。

当時はグランジオルタナティブが隆盛を極めていたので、7現ギターを使ったヘヴィ路線に進んだわけですが、あの時と似たような状況下で生まれた作品なのかもしれません。

そして今回はもっとコアです。

余計なことはせずに「これをやる!」というのが極めて明確な分、リスナーを選びますが好きな人にとってはこの上ない作品と言えるわけですね。

それに7曲70分というタイム感もいいんですよ。

ダレさせない。

いやー、しかし私もメタル好きの人間とは言え、あんまりヘヴィだと食傷気味になるというか(笑)。

オジーのアルバムでも、ギタリストのザック・ワイルドがまるでブラック・レーベル・ソサイアティみたいに仕上げてしまった『ブラック・レイン』には、最初の頃に拒否反応が出たくらいなので、このアルバムに対しても最初は

「うわ~、ちょっとやりすぎちゃってない?」

っていう印象でした。

『ブラック・レイン』

けれどもこのアルバムもまた『ブラック・レイン』同様、スルメみたいに噛むほど好きになっていくんですよ。

このヘヴィでダークな音楽が持つ中毒性ってすごいですね。

思えば、パンテラもマシーンヘッドもKORNも昔聴いたてた頃には、「こんなの音楽じゃない!」とかって思いながら、気づくと病みつきになっていたものですから、そういうものなんでしょうね。

このアルバムを苦手な人のレビューによくある

「ちょっと序盤からヘヴィなのが続くときついかな」

っていうのも気持ちは十分わかりますが、もう少し辛抱強く付き合っていただくとこのアルバムの良さが分かってくるのかな、と。

それでは全曲レビューいってみましょう!

『トレイン・オブ・ソート』アルバムレビュー

#1『As I Am』7:47

例によって前作のエンディングの音から始まります。

あの感動の余韻からこんなダークなオープニングになるなんて、前作のラストで想像した人は一人もいないでしょう(笑)。

ウ~ン…メタリカだぞ、これは…猛烈にメタリカを感じる。

なんでかは分かりませんが。

このアルバムは「メタリカの匂い」が最後まで続きます。

なにかのレビュー記事でメタリカの『マスター・オブ・パペッツ』と『メタル・ジャスティス』を合体させたような雰囲気と書いている人がいましたが、ほんとにそうなんですよ。

歌いまわしもそれっぽいんだよな。

前作のオープニングもメガデス、メタリカへのオマージュ的な始まり方だったのですが、今回もバリバリ出てますよ。

思い余ってこのアルバムの翌年に『マスター・オブ・パペッツ』完全再現ライブをリリースするくらいなので、この頃はメタリカに取り憑かれていたのではないでしょうか(笑)?

リズム的なギミックをまたしてもオマージュしちゃってます。

#2『This Dying Soul』11:28

前作『シックスディグリーズ~』に収録の『The Glass Prison』から続くアルコール依存症を克服するメソッドの続編になります。

これは印象的な主旋律が病みつきになりますね。

粘っこっくて、オリエンタルでサイケな雰囲気がかなり不穏な空気です。

メタリカの『ブラッケンド』のフレーズっぽいのを使っている部分があることで有名なのですが、彼らは同時代のいろんな音楽に触発されて貪欲に吸収していることが分かる曲だと思います。

序盤にちょっとKORNっぽさが出てて、粘っこいヘヴィリフ(これがまたKORNぽい)にラップ的ヴォーカルが乗ってたりもするんですよね。

CD持ち寄って皆で「この部分入れ込んでみない?」とかってやってんのかな?

で、最後はルーデスのヒステリックなキーボード、ペトルーシのカオスのような速弾きで締めくくります。

最後はカオスすぎじゃね(笑)。

ドリルでも使ってんの?

#3『Endless Sacrifice』11:23

ゆったりと、そしてしっとりとバラード調で始まります。

物悲しいね~。

なんだこの荒廃感…。

暗いバラードだ。

しかしサビではドカンとヘヴィリフで一変。

このスイング感たっぷりのグルーブってドリームシアターでは珍しいかも。

パンテラやマシーンヘッドらヘヴィロックのノリというか。

なんかヘヴィなリフに「ピー」ってハーモニクス入るのマシーンヘッドぽいよね。

中盤から大きく展開していき5:00~9:00の4分間はかなりカオスなインストです。

6:30では劇中曲みたいなのまで流れます。

ペトルーシとルーデスのバトルがすごくて、もう途中からギーターソロなのかキーボードソロなのかユニゾンやってんのかよく分からなくなってきます(笑)。

曲を追うごとに変態度が上がってきている気が…。

2曲続けて11分超え。

さらに次も長尺が続きます。

#4『Honor Thy Father』10:14

頑張ってください。

ここを乗り越えれば一息つけます(笑)。

1:50からのキーボードでの主旋律いいね~。

途中でレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのザック・デ・ラ・ロッチャがゲスト参加したかのようなヴォーカルには笑いました。

「え?ご本人登場じゃないの?」って。

この人達って「影響受けた」=「すぐに取り入れる」になるんでしょうか(笑)。

どんだけ?

3:40からは先程の主旋律にツーバスが地鳴りのようになって凄まじい緊迫感。

ここ一番鳥肌立つかも。

5:00過ぎからはまたがらっと雰囲気が変わります。

ここから全曲に続き4分ほどのインストパート。

ヘヴィリフからルーデスのキーボードソロ。

2つの旋律がユニゾンして美しい。

あとは9:00手前までルーデスの独壇場です。

堪能してください。

やっぱりこのアルバムはインストたっぷりのツユダク状態ですね(笑)。

#5『Vacant』2:58

たった3分しかないバラードです。

暗いクラシック調で、旋律は次の曲を予告しています。

暗いのに安らげる、冷たい中だからこそ温かみが感じられる、そんな曲ですね。

#6『Stream of Consciousness』11:16

ドリームシアターのインスト曲としては最長ナンバーです。

しかしこれが全然長く感じない。

凄い緊張感。

これまたのっけからメタリカの『welcome home』や『Orion 』みたいな雰囲気。

あの初期メタリカの持つ叙情性がいたるところで顔を見せるアルバムですね。

こんな雰囲気、本人たちでさえももう再現できてないのに、凄いメロディセンスだな~。

そして最後のギターユニゾンは必ず泣きます。

やばいってこれ…。

#7『In the Name of God』14:16

最後の最後はアルバム中で最も長い曲で締めます。

「せっかく最高に泣けたと思ったらまたヘヴィになっちゃうの?大丈夫?」

と少し不安になりました。

このアルバムは最後までダークでいきますよ(笑)。

しかし2:20あたりでいきなりドラマティックな展開を見せます。

鐘が鳴り出した時は『メトロポリス2』のラストを思い出しますね。

9:00くらいから蚊が飛んでいるようなギターロソに続きキーボードソロ、そしてユニゾンへ昇華。

もう変態度マックスです(笑)。

てか、どういう風にギター弾いたらそんな音出るんですか?

これ徹底してますね、今回は。

そしてラストはまた鐘がなりドラマティックに終わります。

この曲すごすぎる…。


はい、本日は『トレイン・オブ・ソート』を語ってまいりました。

ドリームシアターがメタルへの愛を全開にした本作は、賛否が分かれる作品となりましたが、15枚の全カタログを通して見ると、1回ここでこうした作風をやってくれたことは非常に大きかったのだと思えます。

「この方向性でお腹いっぱいにしてほしい」と願っていたファンにとっては一生手放せないことでしょうね。

逆にそんなドリーム・シアターを求めていたわけではない人にとっては、ちときついかも。

『アウェイク』や『シックスディグリーズ~』の1枚目のようなダークさやヘヴィさが苦手だと感じた方は、後回しにしたほうが良いでしょうね。

しかし、苦手でも聴き込めばきっとこの奥深い叙情性に心打たれる日はいつか来ると思いますよ。

他ならぬ私自身が好きになるまでにかなり聴き込みましたからね。

ドリーム・シアターのこの手の音楽は中毒性がありますから(笑)。

 

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