『シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス』ドリームシアターがかつてない実験を行った規格外の2枚組

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はドリームシアターの6作目アルバム

『シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス』

を語っていきたいと思います。

ドリームシアター初の2枚組!でもただの2枚組じゃない

前作はコンセプトアルバムだったのに対し、今作はちょっと変わった2枚組という変則型できましたね。

2枚組というのはプログレとか聞き慣れていない人にとっては、あんまり手に取りたくない敷居の高さじゃないかな。

実は私もプログレは別に得意な音楽ではなく、このジャンルではドリームシアターくらいしかまともに聞いてませんから。

5大プログレバンドなんて各バンド代表作を1,2枚聴いた程度です。

ピンク・フロイド『狂気』、イエスの『危機』、クリムゾンの『宮殿』といった超名盤くらいしかピンとこないくらいの人間です。

けど、そんな私でも楽しめましたので、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。

そもそもドリームシアターはプログレメタルと呼ばれてはいても、やはりヘヴィメタルのバンドなのだと思います。

っていうか『マスターオブパペッツ』完全再現ライブとかやるくらいなので、かなりのメタルヘッズです。

メタルからのオマージュもしょっちゅう盛り込んでありますし。

しかし、さすがにのっけから14分近くの長尺曲が始まったと思ったら、4曲連続で続くのには面食らいましたが(笑)。

今回改めて思ったのは、ドリームシアターの楽曲は1曲の中で別々の曲かのように展開して飽きさせないから、1曲が長くても「これは3曲だ」と思えば気になりません。

そんな乱暴な(笑)。

いつものようにレビューやブログをたくさん読んだ上で書いているのですが、あんまり批判的な意見がなかったのが意外でした。

特に

「前作が最高に良かっただけにどうなることかと心配していたが」

という枕詞で始まるレビューが非常に多く、前作「メトロポリスパート2」がいかに高い評価だったかが伺えましたよ。

私は世間一般的に『イメージズ・アンド・ワーズ』が最高傑作という意見が90%くらいを占める思っていたのですが、これは人気を二分している、というより『メトロポリス2』が一番人気なのかな?って感じましたね~。

私はどちらでもないですが(笑)。

それだけ評価の高い前作と比べられても批判的な意見が少ないということは、今作の内容がいかに充実していたかを物語っていますよね。

ざっくり大まかに説明すると、この2枚組アルバムは全6曲を収録したコンセプトアルバムです。

人生の苦悩や精神疾患に関する題材を全6曲で取り扱ってます。

そして1枚目に5曲、2枚目に1曲を配置しており、タイトルナンバーは2枚目のこの1曲なんですね。

1枚目がプログレメタル好きが好むであろう長尺ナンバーを集め(各曲平均タイム11分)、実験的で、テクニカルな内容となっており、初心者が裸足で逃げ出すこと請け合い。

1曲1曲が個性的で賛否の分かれる作風なので、1枚目だけで発売したら『アウェイク』のように問題作と呼ばれていたかもしれません。

それに対し、2枚目は1曲で42分とさらに長大な曲で、素人は逃げ出した足でそのまま海に飛び込む内容(笑)。

というのは冗談で、実はこの2枚目は8つのパートに分かれており、それぞれのパートが曲みたいなものです。

この2枚目を『1曲』と呼ぶのは、ドリームシアター的ルールで言えばいつものことと感じるかもしれませんが、一般リスナーの普通の感覚として少し無理があるというか。

そもそも純然たる一曲というのはトラックは分かれませんからね。

なので2枚目を『1枚のコンセプトアルバム』と表現するほうが伝わるんじゃないかな?

つまり全体のコンセプトアルバムの中に部分的なコンセプトアルバムを含んでいるような構成というわけですね。

ですが、2枚目は1枚目とは同じアルバムと思えないほどカラーが違います。

予備知識無しで聴いた人はあまりにも変わるので多分びっくりしたと思います。

「あれ?間違えてゲームサントラ入れちゃった?」って(笑)。

各パートも長尺のものはなく、明るくキャッチーなのでスイスイ聴けます。

こういう作りって、実はすごく理にかなっていると思うんですよ、今更ながらに。

ドリームシアターの『ダーク・ヘヴィ・テクニカル』という特徴を1枚目に、『明るくキャッチーで美しいメロディ』を2枚目へと棲み分けさせることで、どちらの音楽性に対しても中途半端に妥協せずとことんやれているというか。

リスナーに2つの選択肢を与えてるというか。

「こういうタイプのあなたはこっちのディスク聴いてね」みたいな。

1枚目が苦手な人は2枚目で満足、2枚目がものたりない人は1枚目で満足できるというわけです。

なるほど、批判が少ないわけだ(笑)。

これが1枚のCDに混在していると、苦手な側面の曲が足を引っ張ってアルバムの全体イメージを悪くしたかもしれません。

賢いな~ドリームシアター!

レビュー全体を見渡すと2枚目が人気高いですね。

私ですか?

私はかつてゲームサントラマニアだったので断然2枚目(笑)。

DISC1レビュー

長くなるので普段はあまりしないのですが、今回は全6曲と少ないので全曲レビューいってみましょう!

まず1枚目は初めて聴いた時に『アウェイク』が頭をよぎったのは私だけではないでしょう(笑)。

2枚目でちゃんとキャッチーなナンバーを多数収録していることによる安心感からか、彼らのミュージシャンとしての冒険心が強く出た5曲ですね。

『アウェイク』以来の実験色の強いナンバーが並びます。

「迷いなく思いっきり振り切れたな」という印象です。

こういうことができるのも2枚のカラーを明確に分けた恩恵だと思います。

#1『The Glass Prison』13:52

ファンにはかなり人気の高い曲です。

2枚目で「これはドリームシアターとしては物足りない」と感じるファンの不満を一身に受けて、この1曲で黙らせているというか(笑)。

例によって前作の最後の音から始まる作風で、『メトロポリス2』のラスト曲『ファイナリーフリー』の最後で、レコードが「ザー」っていう音から始まります。

この曲は約14分ある大作で3パートから成ります。

マイク・ポートノイがアルコール依存症を克服するメソッドを楽曲にした全12スートのうちの最初の3つで、その後の作品に数曲ずつ登場することになるのですが、その最初がこのアルバムというわけです。

まあ、私は歌詞読まない派なので、共通点はあまり見いだせないのですが。

オープニングはまさにメガデスの「In My Darkest Hour」の雰囲気で幕を開け、序盤、ドラムのスネアとバスが裏表ひっくり返るリズム的ギミックがメタリカ(ラーズ)みたい。

メタルバンドの先人たちへのオマージュが見られますね。

「これ分かる?」みたいな。

前作からちょっと多いよ(笑)。

疾走感もあり、序盤からワクワクします。

6分辺りから曲調が一変。

Part2に入っていきます。

そしてドリームシアター初?デスヴォイスが入ります。

レビューを見ていると、ドリームシアターのデスヴォイスは概ね不評で(笑)、その後わりと叩かれてるのを見かけるのですが、そんな言うほど悪いかな?

そして9:40あたりからパート3に入り、一気に疾走。

やっとらしくなってきたぞ~気持ちいいね~。

前作で始まったギターとキーボードのバトルが始まります。

その後は「これぞドリームシアターのインスト!」って感じのカオスな盛り上がりを見せます。

#2『Blind Faith』10:21

お~?

こ、この雰囲気は?

まるで3作目『フォーリング・イントゥ・インフィニティ』のような透明感でエキゾチックな雰囲気!

ルーデスのピアノがいい味出すことに一役買ってます。

途中からワイルドなギターで一変。

5分すぎからギターソロ、7分くらいから今度はルーデスのソロ。

で、前曲に続きまたしてもギターとキーボードバトル。

このパターンはルーデス加入以来の鉄板になっているみたいですが。

ソロは譜面でメロディを固めるというより、よりライブっぽくインプロヴィゼーションでバトルする雰囲気をそのままパッケージングしているように感じます。

#3『Misunderstood』9:34

この曲は1枚目のハードルをぐ~っと上げることに貢献しているといえます(笑)。

最初は静かで美しいアルペジオから始まり癒やされるんですよ。

もう、牧歌的とも表現できるほど、のんびりとした平和な雰囲気なのですが、3分過ぎから不穏な空気感になります。

このアルバムの1枚目は最後まで安心させてくれません(笑)。

4:30くらいからはダークで超サイケ。

この雰囲気もこれまでのドリームシアターにはなかった。

こうした曲を聴くと、ドリームシアターってメロディを捨てた表現ってこれまであんまり使ってこなかったんだな、と感じますね。

この1枚目ね、いつもこの曲の途中のダーク部分が苦手で、いやーな気持ちになるんですが、散歩とかしててふと頭の中に蘇ってくるメロディがこの曲のサビだったりするんですよ。

苦手意識があるのに曲が頭から離れない。

そう、このパターンはあの『アウェイク』ですよ(笑)。

中毒性がレッドゾーンです。

まあ、あんまり好きっていう人多くなかったですが。

#4『The Great Debate』13:43

これまたかなりの長尺曲。

普段わりと存在を忘れ去られがちな(笑)ベースのジョン・マイアングがグイグイ引っ張っていきます。

そこにポートノイのドラムが入ってくるのですが、民族打楽器的な響きを持ちますね。

すごくダークで神秘的な雰囲気です。

実際これは通常のドラムセットに普段入れないものを使ってますね。

う~ん、序盤のこの前衛的な雰囲気…ダークだ…いいね(笑)。

9分過ぎからドリームシアターらしくなってきます。

ジョーダンルーデスのソロからペトルーシのソロが交互に聴かせてイエスばりのピークを迎えた後に、アウトロはかなりサイケデリックですな。

#5『Disappear』6:46

1枚目の締めはアコギとピアノで彩る物悲しいバラード。

これもなかったな~、この色は。

この曲も#3同様、1枚目をすごく実験的に感じさせる所以なんでしょうか?

サイケな雰囲気はこの1枚目のテーマなのか?

これまでが長いのばっかだったから、「え?もう終わり?」って感じで終わります。

だいぶ感覚が麻痺してますね、ここにくるまでに(笑)。

DISC2レビュー #6『Six Degrees of Inner Turbulence』(42:04)

そして全体の6曲目にあたる2枚目は表題曲です。

さあ、だいぶ難易度の高かった1枚目が終わり、ここからはサービスタイムです。

もう、小難しいことを考える必要はありません。

思う存分気持ちよくなってください(笑)。

とはいえ案外、ドリームシアターのガチガチのファンである人ほど、このノリ(軽さ)についていけないのかもしれませんが。

いちおう2枚目は1曲としての扱いが公式的なのですが、ここでは便宜上、各パートを曲として扱って話しますね。

小難しいことは考えないで良いと言っておきながらなんですが、今日はずっと言いたかったことをちょっとだけ言わせてもらいます。

冒頭の1曲目『Overture』に関してです。

Ⅰ.『Overture』

このオーケストレーション、日本人なら誰もが脳裏をよぎった単語を言い当ててみせましょう。

ドラクエ

ですよね(笑)。

FFという人もいますが、全然違います。

これはドラクエです。

いかにもドラクエのオープニング、戦闘(戦争)、町/村、エンディングといった各BGMの雰囲気をもったメロディがダイジェスト・メドレー的に流れ始めます。

私は昔かなりのゲームサントラマニアだった時期があり、相当聴き込んでいましたので、以前からドリームシアターを聴いてて

「日本のゲームサントラから影響受けてるんじゃないか?」

と思われるメロディが何回かありました。

そして本作のこの曲を聞いてほぼ確信しました。

奴らはドラクエやってる(笑)。

じゃないと、あの「いかにもドラクエの町で流れるBGM」は出て来ないと思うんだよな~。

戦闘のBGMなんか雰囲気モロじゃない?

「オーケストラっぽいナンバー作ったらたまたまドラクエのオープニングの雰囲気に似てるよね」

とか言うレベルじゃないよこれは。

しかも、これ2枚目を数回聴くと分かってくるのですが、ダイジェストみたいに流れていたメロディは、実はこの後の展開を予告しているんですよ。

これってドラクエ3のエンディングテーマがやってる手法なんですよ実は。

主題となるメロディが流れながら、全編でのBGMを取り込んでいくっていう手法。

私はクラシックは詳しくないので、その業界ではわりとよくある手法なのかどうかは知りませんが。

でもね、『Overture』で戦闘のBGMに聞こえる部分が、3曲目『War Inside My Head』に該当しているので、これはもう確信犯というか(笑)。

まあ、当たっているかどうかはどうでもいいんです。

こういうことを色々考えさせてくれて楽しませてくれるのがドリームシアターの真骨頂。

知的な遊びというか、インテリジェンスさが他のバンドとは全然違う。

Ⅱ.『About to Crash』

あ…明るすぎるぞ。

冒頭のピアノからまるで天国に来たような雰囲気で、爽快なギターからは青空が見えてきます。

青空の下のお花畑が見えます。

それほど爽快な世界観。

ドリームシアターってやっぱこういうの作らせたらピカイチだよな~。

ただ後半は少しマイナー調になり不穏な空気感になりますが、最後のギターソロはじっくりたっぷり聞かせてくれます。

ペトルーシのこういう泣きのギターは大好きです。

Ⅲ.『War Inside My Head』

一変してアグレッシブな曲調になります。

先程『Overture』の中で「ドラクエの戦闘の時の音楽」と評した部分に該当するのがこの曲になります。

わずか2分しかなく、なんか曲の途中でブツっと切れるかのように次の曲へ入っていきます。

Ⅳ.『The Test That Stumped Them All』

前曲の途中をいきなりぶった切るように、まるでドラクエの『敵と遭遇』したときのようなサウンドで始まります。

2枚目で最も激しい部分ですね。

ユニゾンに次ぐユニゾン。

私は歌詞を読まない派なので良く分からないのですが、ヴォーカルが非常に独特で、1人で何役かをこなしているかのように声色を使い分けてます。

そしてそれがフレーズに割り込んでくるようにいきなり変わるので、これライブで歌うのは難しいんじゃないでしょうか?

Ⅴ.『Goodnight Kiss』

美しく安らげますが、1枚目のように不穏な空気に変化することはありませんのでご安心ください(笑)。

Ⅱ「about to clash」に続きいいな~このギターソロ。

「心で弾くようなペトルーシのギターソロを待っていた」人はかなり嬉しいんじゃないかな~。

Ⅵ.『Solitary Shell』

これまた凄まじく明るく美しい。

地中海的な雰囲気をまとったクラシックギターソロもセンス抜群ですが、その後のルーデスのクラシックピアノの旋律も美しすぎます。

この世界観は大好き、モロに好みです。

『アウェイク』大好きっ子なのに矛盾していると思われるでしょう。

あのアルバムはダークでヘヴィな世界観の中に、この曲が持つような明るく希望に満ちたメロディが同居していることが素晴らしいんです。

言ってみれば『アウェイク』における『イノセンスフェイデッド』のような雰囲気ですね。

なのでこの2枚目を1枚目の曲の合間に入れ込めばすごく『アウェイク』に似た作風になったと思うんですよね。

またもや問題作になったでしょうが(笑)。

Ⅶ.『About to Crash (Reprise)』

Ⅱ「about to clash」を単純に繰り返す(reprise)わけではなく、冒頭のイントロの主旋律はキーボートからギターに変わってます。

突き抜けるように明るい爽快ギターリフで始まります。

ここまでくるとなんかもうエクストリームのカヴァーやってるみたいにさえ感じます。

ゲームやっている人向けに表現を変えるならば、

「格闘ゲームでキャラを選んでいる時に流れてそうな音楽」

ですかね。

しかも2:00くらいからは「飛空艇発進!」の場面で使われそうなBGMに感じます(笑)。

最後にⅢ.『War Inside My Head』のフレーズが登場します。

Ⅷ.『Losing Time”/”Grand Finale』

6分ある曲ですが、実質的には4:10あたりで終わって、残りは2分近く残音の余韻を味わってください。

この音が次の7作目『トレイン・オブ・ソート』のオープニングに繋がります。

この曲は単独で存在する曲ではないですね。

ここまでの流れがあるからこそ締めくくりに相応しいナンバーです。

この曲だけがベスト盤に入っていたとしてもさほど感動はしないでしょう。

分かりやすいくらいコテコテなグランドフィナーレですが、しっかり感動しちゃう私は単純(笑)。


はい、本日は『シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス』を語ってまいりました。

こういう作りになっているのでなんとなく全曲レビューやってしまったのですが長過ぎましたね(笑)。

これはかなり楽しめる2枚組ですよ。

『とっつきやすさ』と『スルメさ』を両方持った作品ってあんまりないですからね。

2枚目はかなり無邪気に楽しめるので、興味が湧いた方は是非とも聞いてみてくださいね。

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