アリス・イン・チェインズ 最高傑作からおすすめまで 全アルバム解説 

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

今回はアリス・イン・チェインズの歴史、メンバー、アルバム作品を熱く語っていきます。

紹介する各アルバムの詳細解説記事はすでにアップしておりますので、そちらの解説記事のリンクも張っておきますね。

これを読んで、アリス・イン・チェインズという稀代の天才バンドに入門するきっかけにしてみてください。

オルタナティブ・バンドの紹介をここまで本格的にするのは、本サイト始まって以来なのですが、アリスは私の中では別格です。

これまではメタルのバンドばっかり解説してきたんですけど、私の青春時代のリアルタイムは実はオルタナ全盛期でね。

青春時代には一人暮らしの部屋に引きこもって、当時ブームになっていたホラー小説を読み漁りながら、このくら~い音楽を夜通し聴きまくったものです。

もう病的にのめり込みましたね。

REM、ニルヴァーナ、サウンドガーデン、ジェーンズ・アディクション、パンテラ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、マリリン・マンソン、ナイン・インチ・ネイルズ、コーンなどなど…

90年代オルタナ系、ヘヴィ・ロック系のバンドで語りたいバンドはあまたありますが、このジャンルを語っていくにあたって、最初に書くのはアリス以外に考えられませんでした。

そんくらい好きですね。

しかし、世界のトップに君臨してもおかしくないほどのポテンシャルを持ちながら、ニルヴァーナ、パール・ジャムに比べると知名度がかなり低いです。

私の中では、初代ボーカルのレイン・ステイリーのカリスマ性は、当代きってのカリスマであるカート・コバーンを凌ぎます。

もうこれは、1990年代に舞い降りたジョニー・ロットン(セックス・ピストルズ)の生まれ変わり状態と言っても過言ではありません(ジョニー・ロットンを勝手に殺すな)。

ただ、世間、いや、この日本ではでそういう認識をされているとはとても思えないんですよね。

世間の皆さんの’90年代に対する認識を、“自分に都合よく“書き変えたくてこの記事を書いてます(笑)。

っていうより、そもそも今の世代の人から見ると、1990年代のロックって“病んで“見えるじゃないですか?(アメリカのロックシーン以外はそうでもないけど)

まあ、実際病んでるし、おそらくどの10年間を切り取っても、’90年代よりもハードルの高い10年はないのかな、と私のようなリアルタイムの人間でさえ思います。

もう、『ロックシーン全体がデビッド・ボウイ『LOW』状態』とでも表現すれば分かりやすいでしょうか?(笑)

まるで難解さを競い合っているようなノリも当時はありましたからね、間違いなく。

マニアックな実験をしすぎというか、ポピュラーから遠ざかり過ぎというか。

「なんで憂鬱になるために音楽聴かなきゃなんないの?」

そう思う人の気持ちは分かります。

しかし、こんなサブスクの時代において、未だにかつてのロックを遡って漁っているようなヘヴィリスナーのあなたであれば、こんなマニアックなサイト『ひよこまめ』にたどり着いた変態のあなたであれば(笑)、きっとこの憂鬱の先にある本質的な良さに気がつけるはずです。

そしてその入門としては、ニルヴァーナではなく、是非ともこのアリス・イン・チェインズで入っていただきたい、という思いです。

オルタナティブ・ムーブメントの中心的存在でありながら、時代を超えた普遍性を持ち合わせたその音楽性は稀有(けう)のものです。

あなたはきっと、アリス・イン・チェインズをきっかけに『90年代ドロドロ・ロック』の中毒にハマっていくことでしょう。

アリス・イン・チェインズのドロドロ沼へようこそ~…

オルタナティブ/グランジという現象って何?

アリス・イン・チェインズは、ジャンルとしてはオルタナティブ/グランジ・ロックの範疇で語られるバンドで、1980年代後半のアメリカ・シアトルの音楽シーンの中からのし上がってきました。

いや、正確に言うと

シアトルシーンが丸ごと出てきて、アメリカ全土を食っちゃった。

「今、シアトルのバンドが熱い!」

みたいなブームになっちゃって、それまで人気だったバンドとか、ジャンルそのものが『ダサい物扱い』されちゃった。

ここで『オルタナティブ』とか『グランジ』っていう言葉に関して軽く説明しておきますね。

まず、シアトルのバンドたちがやっていた『グランジ』って音楽はなんだったのか?

パンクのシンプルさと初期衝動をもって、憂鬱で面白くなさそうな歌詞を歌い、ブラック・サバスみたいなヘヴィなサウンドで頭振って、華やかさとは敵対するかのような小汚いファッション(グランジ)でライブを演る、といったものでした。

ま、実際は各バンド音楽性はバラバラで、パンクじゃなくメタルみたいなバンドもいましたので、共通しているのは『ヘヴィ』『小汚い』くらいですかね(笑)。

いちばん有名なバンドがニルヴァーナですよね。

それが『リアル』で『新しかった』んですよ。

それまでの10年間(’80年代)は、テレビに出てくる人が皆、『頭の中ハッピーでパリピになってるセレブ』みたいな人たちばっかりだったから。

テレビでそういうものがもてはやされてる裏では

「こんな世の中大嫌いだ!」

って毒づいて、クラスの人気者にもなれない若者たちがたくさんいたんです。

サッカーが下手で、クラスの隅っこでJOJO読んでるような奴らがね(笑)。

そういう若者たちを代弁してしまったんですよ、シアトルの彼らの音楽は。

カラッカラに干からびた田んぼの藁に火を付けたみたいに燃え広がりました。

めっちゃ雑な表現をすると、これがグランジムーブメントです。

皆、若者たちが試合前のボクサーみたいにカラッカラに干からびてたんですから、それはもう、燃える燃える(笑)。

そうすると燃え広がって、違う田んぼにまで飛び火しちゃうんです。

で、一緒に燃え広がってしまったジャンルの音楽が『オルタナティブ・ロック』だと思ってください。

『ジャンル』と言うよりは、当時のアンダーグラウンドな音楽につけられた総称だと思ってもらっていいです。

REMとかソニック・ユースとか、全然メインストリームでは誰も知らないんだけども、’80年代の初期からアンダーグラウンドでカリスマ的な人気を誇っていた彼らのようなバンドにさえもスポットライトが当たるようになった。

売れ筋のメインストリームに対して『オルタナティブ=もう一つの』潮流が地下に流れていたのが、大地を破って一気に噴出しちゃった、みたいな。

だから『オルタナティブ/グランジムーブメント』っていう言い方をされるわけです。

そしたら世の中には地下から出てきたマニアックな音楽で溢れて、パンテラみたいなデスメタル地味た音楽までチャートの1位を取るような狂った(病んだ)現象が起き始めるわけですね。

パンテラが出てくるとちょっと長くなるので、このへんで辞めますが(笑)、ここは大事な話なので抑えとかないと意味がわかんないと思って。

これら全ての始まりはシアトルっていう、いち地方都市だったんですよ。

信じられます?

このシアトルって街は80万人くらいの規模で、ロスやニューヨークほどの大都会では全然ないのです。

せいぜい私の地元の熊本市くらいじゃない?

いや、でも一応、熊本は政令指定都市で100万人はいるらしいから…、

へっ、熊本以下!(見下すな)

そんな小さい都市のいちブームが、アメリカ全土のシーンをひっくり返すなんて現象が本当に起き得るの?

にわかには信じられません。

この現象を、日本に置き換えてイメージしてみてください。

「最近、熊本のライブハウスシーンが熱いらしいよ。とんでもなくヘヴィでクールなバンドが目白押しなんだ!その中でも特にワニマはかっこいいらしいよ!」

’90年代、ヴィジュアル系全盛期の日本で、地下(熊本)ではひっそりとブームが始まる。

その中からワニマが出てきて、日本全土で大ブレイクしちゃって、熊本の後輩バンドたちもそれに続いてブレイク。

それが日本全体を覆す『KUMAROCKムーブメント』(ダサッ)になっちゃった、みたいなイメージ。

「もう時代はKUMAROCKだよ!ヘアーメタルバンド(ヴィジュアル系)はもう古い古い」

って、昨日までバカ売れしてたヴィジュアル系バンドが皆売れなくなる。

カウントダウンTVでは、からし蓮根食ってるMVばっか流れてる、みたいな。

「なんか最近テレビに出てるバンドって、みんな熊本弁しゃべってない?

みたいな。

こうして日本に置き換えてみると…そんなことが現実に起き得るのか!?

う~ん・・・・

熊本にその影響力はない。

奇跡でも起きない限り、無理。

・・・・・・

まあ、熊本には無理とかいう話は置いといて、結局はそこにいたバンドたちの音楽性が本物だったから、こんな奇跡が起きたってことですよ。

で、シアトルで活動していたバンド達なので、ニルヴァーナ以降に売れたあのバンドもあのバンドも、全部、もともとはシアトルというイチ地方都市のライブハウスシーンで『しのぎを削ってた仲』ってわけです。

『ブルーロック』くらいの激烈な競争ですよ(みんな見てるかな?)。

アメリカ全土をひっくり返すほどのエネルギーを持ったシーンの中で、生き残って売れていくバンドたちは…半端じゃないんです。

そのあまたあるバンドたちの中で、頂点に君臨する、申し子みたいな存在がニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、いわゆる『グランジ四大バンド(四天王)』と呼ばれる人たちで、アリス・イン・チェインズも四天王に名を連ねるバンドなんです。

はい、ここでようやっと今回の主役の登場(笑)。

前フリ超長ぇ。

こうして盛り上げないと、彼らの凄さが伝わらないですからね。

アリス・イン・チェインズの概要

アリス・イン・チェインズは’80年代までに築かれてきたアメリカの音楽シーン=ヘアーメタル勢を覆す『グランジムーブメント』の中核をなすバンドとして大活躍します。

そのアルバムセールスは驚異的で、デビューからたった3作のオリジナルアルバムで

1700万枚

を記録しており、

1作あたりの平均が570万枚。

数字を聴いてもピンとこない人のために分かりやすく例えを出すと、

B’zで一番売れたベストアルバムくらいのセールス(日本歴代2位)を、毎回軽く超えてくるイメージです。

これに加え、2枚のミニアルバムやアンプラグドも各アルバム、ゴールドディスク(50万枚)~数百万枚のセールスを記録してます。

とんでもないじゃん…。

しかし、とんでもないのは、彼らの音楽がB’zのような一般大衆に受け入れ易い音楽ではないにも関わらず、このセールスを記録していることです。

その音楽性は、まるで念仏のようなボーカルスタイルと’70年代ブラック・サバスが’90年代に蘇ったかのようなドロドロのヘヴィなサウンドが合体し、しかしそれでいて非常にメロディアスでキャッチーという、本来相容れないものが同居したような突出した個性を持っています。

ニルヴァーナが『ブラック・サバスとビートルズの結婚』(だったかな?)と呼ばれたのに対し、アリス・イン・チェインズは『鬱病のビートルズ』と形容されてましたね。

四天王の中でも、この2バンドはどちらもビートルズに形容されるように、その音楽性には時代を超越した普遍性がありました。

つまり多くの人を虜にするキャッチーさががあったということですね。

グランジ/オルタナティブとは、敵対関係にあるように見えるヘヴィメタルの雄:メタリカなどからもリスペクトされ、’90年代の後進のバンドたちにかなりの影響を与えました。

’90年代の中盤になると、ボーカルのレイン・ステイリーのドラッグ中毒によって活動が困難になり、アルバムを出しながらもツアーはできない状況となり、自然に制作活動も停滞します。

そして3作目のオリジナル・アルバム以降、活動は再開しないまま、2002年にボーカルのレイン・ステイリーのオーバードーズでの死により、2004年バンドは解散(契約終了)。

ニルヴァーナのカート・コバーンと同様、グランジ・オルタナロックのカリスマの、あまりに破滅的な死に世界が衝撃を受けます。

しかし、解散から2年後の2006年にはボーカルにウィリアム・デュヴァールを迎え、アリス・イン・チェインズは再結成します。

2009年には新バンド体制での新作アルバム『ブラック・ギブズ・ウェイ・トゥ・ブルー』をリリース。

その後2枚のオリジナルアルバムをリリースして現在に至ります。

メンバーと音楽的特徴

オリジナルメンバーは

レイン・ステイリー(Vo)

ジェリー・カントレル(Gt)

マイク・スター(B)

ショーンキニー(Dr)

の4人。

ベースのマイク・スターは2作目『ダート』に伴うワールドツアー中の1993年に脱退し、オジー・オズボーンバンドのマイク・アイネズが替わって加わり、現在まで担当しています。

このバンドで超重要なのは2名。

まず、全ての作曲を行うギターの

ジェリー・カントレル。

彼がアリス・イン・チェインズの核です。

彼は全ての曲を作曲しながら、レインのボーカルと絶妙のハーモニーを生み出すコーラス、そして自らのリードボーカルも取ります。

初めてアリスを聴く人は

「ボーカルの声もすげぇけど、なにげにコーラスやってる人も只者じゃなくね?」

って驚くこと必至です。

ギターはヘヴィでうねりを伴う轟音リフで、なおかつ典型的なリフの方法論から逸脱した独特のスタイルをとります。

ギター、リードボーカル、コーラスまでなんでも一流にこなす万能の天才ですが、他の才能が霞むくらい、やはり彼の真価は

ギターリフですよ。

まあ、この人のリフの快感指数が高い高い。

’90年代を代表するリズムギタリスト、リフメーカーだと私は思っていて、私の中では

’70年代=トニー・アイオミ(ブラック・サバス)

’80年代=ジェイムズ・ヘットフィールド(メタリカ)

’90年代=ジェリー・カントレル(もしくはパンテラのダイムバック・ダレルも捨てがたい)

っていう位置づけにいるくらいすごい人です。

勝手に『3大リフマスター』って名付けてます(笑)。

はっきり言って過小評価されすぎですね。

そして、ボーカル兼作詞担当が

レイン・ステイリー。

これまた天才。

「この世に存在していることが奇跡」と思えるほどの声を持ってます。

上手い下手ではない自分だけの表現ができるボーカリストであり、その怨念のこもった独特の歌世界は聞くものを地獄の底へと誘いながら、中毒性のある快楽をもたらします。

あまり多くを語らない姿勢、そしてそのスタイル、ファッション、佇まいなどから発せられるカリスマ性はアリス・イン・チェインズのアイコンと呼んでもいいでしょう。

まさに『ロックスター然』とした生き様と死に様で、麻薬に溺れ、ボロボロになりながら、それさえも魅力に変えるような、人生を賭けたボーカルラインを生前に残しました。

この2人の化学反応こそアリス・イン・チェインズの個性で、レインの念仏ボーカルとジェリーのうねるリフ、あるいは美しいコーラスが融合したサウンドは、マジックがかかったかのような唯一無二のインパクトがあります。

スティーブンとジョー(エアロ)、アクセルとスラッシュ(ガンズ)、デイブとエディ(ヴァンヘイレン)とかに代表されるボーカルとギターのアイコニックな関係性は割と多いですけど、それらはどれも

『華のあるフロントマンとギターヒーロー』

っていう対比構図になっていると思うんです。

けど、レインとジェリーは対比構図っていうよりも完全に

『一体化・融合』してます。

これって意外にいないんですよ、他に。

もうここまでのシンクロ率っていうのはロック界で他に見ることは出来ないレベルで、あえて他のジャンルで探すならば、

エヴァが暴走した時のシンジ君と初号機くらいのシンクロ率を誇ります。

「し、シンジ君!!!」

「エントリープラグ内の画像出します!」

「こ、これは!!!…って、溶けていなくなってるし!どんだけっ!?」

みたいな。

ミサトさんもビックリですよ…。

音楽ちゃうやん。

いや、エヴァネタを持ってくるしかないくらい、他に前例がないんですよ、彼らが生み出したスタイルは。

もはや2人で1人。

レインの声にジェリーの声とギターが絡みついて、誰がどのパートやってんのかもう分かんなくなるんだけど、別の何かになっちゃってる。

それだけに、レインの死後、『再結成』という選択肢を彼らが決断するとは、おそらく世界中の誰も予想していなかったし、期待もしていなかったのかもしれません。

しかし、レイン在籍時のオリジナルアルバム3枚に対し、ウィリアム・デュヴァール加入後のオリジナルアルバムも3枚に達しており、アリス・イン・チェインズを『レインありき』で語ることにもさすがに無理があると思います。

アルバム枚数もさることながら、すでにウィリアムの在籍期間がレインを超えているのですから。

「レインのいないアリスなんて偽物。受け入れられない」

とか思っているファンは世界中に多いでしょうが、このブログでは全部のオリジナルアルバムを平等に紹介します。

そのために私もウィリアム期の3枚も聴き込んできましたので、ぜひ解説を読んでみてくださいね!

全アルバム解説

『Facelift』(フェイスリフト)1991年リリース 1作目フルアルバム

こちらが彼らのデビュー作です。

一般的なバンドのように『デビュー前インディー版』のアルバムは、実は彼らにはありません。

それくらい、ライブハウスシーンで爆発的に人気が起こり、それによってレーベルが契約に動くまでが早かったということでしょう。

デビュー作にしてすでに彼らの魅力のすべてが詰まっています。

なので、一回アリス沼にはまり込んで3作目あたりが一番好きには一旦なるのですが、最後はここに立ち返ってくるんですね~。

あくまで私の場合ですけど。

さっきから彼らの音楽性を『ドロドロ』と表現してきましたが、このアルバムには『ドロドロ』だけではなく、王道のアメリカンハードロック感があるのが特徴で、おそらく彼らの作品の中では最も聴きやすいと思います。

聴きやすいんだけれども、飽きやすいとかいうことはなく、ずっと聴ける中毒性もあるというか。

私なんかは今でも本作が一番聴きますね。

この普遍性のあるメロディセンスこそ彼らの武器で、単にヘヴィなだけの『色物』ではありません。

その音楽性は後輩のバンドのみならず、ロックシーンの先輩バンドたちからも多くのリスペクトを集め、メタリカなんかはすでにこの頃から「アリス・イン・チェインズが好き」と公言していました。

グランジ勢の中では珍しくパンク要素をほとんど感じず、メタルやハードロックに近い匂いがするので、ヴァン・ヘイレン、オジー・オズボーンなど、一見すると畑違いに見える大御所バンドのツアーにサポート・アクトとして参加することが多かったです。

このアルバムは最初は全然売れなかったのですが、MTVでシングル「マン・イン・ザ・ボックス」がヘヴィロテでかけられるようになってからセールスを伸ばし、約1年かけてゴールド・ディスクを獲得します。

そのタイミングでニルヴァーナの『ネヴァーマインド』がリリースされ、彼らも同じ売り出し方を踏襲したところ、MTVで『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』がヘヴィロテされることにより人気が爆発。

グランジムーブメントがシーンを席巻することになります。

その意味では、本作こそ、グランジ勢にとってシーンに風穴を開けた作品だと言えるでしょう。

「本当の釣り好きは最後にフナ釣りに戻る」ということが言われますが、私もアリスに関して言いましょう。

「本当のアリス好きは最後に『フェイスリフト』に戻る」

アリス・イン・チェインズを聴くことの醍醐味がここにはあります。

傑作です。

詳細解説記事はこちら↓

 

『SAP』(サップ)1992年リリース ミニアルバム

映画『シングルス』への楽曲提供のついでに、サクッと作った4曲入りミニアルバムです。

なんとあの蠢くようなヘヴィリフを封印し、アコースティックナンバーで固めました。

まあ、“アンプラグド“というほどではなく、エレキも使ってますが。

これが驚くほど素晴らしい内容で、私は若い頃聴きまくりましたね。

『不穏なアコースティックソング』っていう未体験ゾーンの音楽ですよ(笑)。

「え?こういうのって成立するんだ」

みたいな軽い驚きがありましたね、当時。

「こいつらって音楽的なバックボーンが広い本格派だよな」

っていうことを世間に認知させることになったというか、カリスマ性がさらに増したというか。

私は本作を聴いた時に「ジェリーは本物の天才だ」って思いましたもん(笑)。

ちょうど『ネヴァーマインド』が半年くらいチャートの1位に君臨し、グランジブームを巻き起こしていたおかげで、シアトル出身のグランジ・バンドは大注目されていたんですよね。

そういう追い風もあって、ミニアルバムだけどあっという間にゴールドディスクを獲得しちゃいます。

影のうすすぎる作品ですが、本作はアリス・イン・チェインズを知るうえでは必聴盤と呼びたいです。

後にリリースされるもう1枚のミニアルバム「Jar of Flies」も良いのですが、私は断然こっちが好きです。

5曲目にシークレットトラックとして「ラブ・ソング」というおふざけソングが入っていますが、こちらのナンバーには今は亡きサウンドガーデンのクリス・コーネルがコーラスで参加してます。

ほんと、笑っちまいますよ(笑)。

詳細解説記事はこちら↓

『Dirt』(ダート)1993年リリース 2作目フルアルバム

彼らの“最高傑作“と名高い1990年代における大名盤です。

これは「1990年代の音楽を掘り下げて聞いてみよう」と思う人にとっては避けて通れない作品と言えるでしょう。

本作を絶賛しないミュージシャンを見たことがないってくらい、プロ達を唸(うな)らせた作品です。

前作『フェイスリフト』に比べ、オーソドックスなアメリカンハードロック感がほぼなくなり、『アリス流ヘヴィ・ロック』としか形容できないほどのオリジナリティにまで昇華させました。

サウンドも世界観も完璧で非の打ち所がありません。

アリスに入門するならやっぱりこのアルバムが入口になるでしょうね。

素晴らしい作品に理屈は無要です。

何も考えず、ただただこの津波のように押し寄せてくるリフの洪水に飲まれてください。

何も考えず、このボーカルと一緒にどこまでも落ちていく浮遊感に身を委ねてください。

画期的なのが、かなりヘヴィで攻撃的であるにも関わらず、そのボーカルスタイルも、このリフも、決して『メタル』じゃないんですよね。

けれどもそれがパンク・ハードコアかと言われれば…それもまったく違う。

メタルにもパンクにも『かぶれていない』。

そういうフォーマットは使っていない。

純粋なまでに自分の感性に忠実というか。

サウンドガーデンにも言えることなのですが、1980年代っていう時代をまったくルーツとせず、まだパンクだメタルだという言葉がなかった時代の音楽(ブラック・サバスなど)を直接のルーツに持っているような感じ、とでも表現したらいいでしょうか?

しかし、ただ影響を受けるだけではなく発展させてます。

こういう音楽こそ、

『先人たちの築いてきたものに新たな1ページを加えた音楽』

と呼べるのではないでしょうか?

本作のツアー中にベースのマイク・スターがドラッグ中毒で解雇になり、オジーとのツアー同行で仲良くなったオジーバンドのマイク・アイネズが加わります。

詳細解説記事はこちら↓

 

『Jar of Flies』(ジャー・オブ・フライズ)1994年リリース ミニアルバム

「ダート」が大ヒットしたことによる長大なツアーが終わるなり、スタジオに入ってサクッと1週間程度で作った7曲入りEPです。

『SAP』と同じくアコースティックですがアンプラグドまでは行かないといった作風。

例によって『不穏なアコースティックソング』が多いのですが、この『静かな暗さ』が病みつきになります。

そして『SAP』よりもだいぶ明るい曲もありますね。

その中には隠れ名曲『ノー・エクスキューズ』『アイ・ステイ・アウェイ』が潜んでおり、これにはやられますよ、絶対。

アリス・イン・チェインズという人たちは、ヘヴィだダークだという個性以前に、素晴らしいメロディセンスを持った基本スペックが異様に高い集団であることが分かるでしょう。

ドラマーのショーンもちょっと信じられないほどの多彩さを見せてます。

これまた『SAP』同様の必聴盤です。

ジェリー・カントレル曰く

「今の自分達がアコースティックをやったらどうなるのか試してみたかった」

とのことですが、クリエイティビティが溢れんばかりだったんでしょうね、この頃のジェリーは。

しかし、マイク・スターがドラッグ中毒により解雇されたことにも見られるように、実はバンドは長大なツアーで疲弊しており、ボーカルのレインもドラッグでボロボロなんですよ。

本作が『アメリカ史上初となるミニアルバムとしてのチャート1位獲得』という偉業を成し遂げたにも関わらず、レインの体調悪化のため「Jar of Fliesツアー」計画が白紙になりました。

ここでもし、このツアーが決行されていれば、歴史に残る名盤として名を残せたのかもしれません。

コアなファンでも本作を一番のお気に入りに挙げる人が多いという、凄いミニアルバムです。

ツアーしなくたって300万枚も売ったんですよ?ミニアルバムのくせに(笑)。

世間がアリス・イン・チェインズをどれだけ求めていたか?

ヒシヒシと伝わってくるようではありませんか。

内容自体は問答無用に良いですよ。

なんでこんなものをたかだか1週間で作れてしまうのか、理解に苦しむほど(笑)。

詳細解説記事はこちら↓

 

『Alice In Chains』(アリス・イン・チェインズ)1995年リリース 3作目フルアルバム

結局、「Jar of Fliesツアー」は開催されずじまいのまま、ほぼ解散状態になってしまいました。

レインのドラッグ中毒はさらに悪化の一途。

当時はそういうことは明るみにならないから、なんでアリスが何もしないのか謎でしたよ。

ジェリーやショーンもインタビューでは

「活動したいのは山々なんだけどさ、レインのヤツがやる気出すまで俺達も動けないんだよ。俺達がこうして日本まではるばるプロモーションに来てるってのに、あいつは今頃アメリカの田舎でトラックなんか運転してんだろうよ」

みたいなこと笑いながら言ってたので、『気まぐれ天才ボーカリスト』のモチベーションの問題だとばかり思ってました(笑)。

まさか深刻な状況だったなんて、当時のファンの誰も気がついていなかったでしょう。

で、周りもレインを必死に説得・サポートして、無理くりでなんとか本作の制作に着手します。

そうした背景があるので、あれだけの個性を放っていたレインのボーカルの存在感が本作では希薄です。

つまり、まともにレコーディングなどできる状況ではなかったということです。

ボロボロのレインの声量は、『ダート』の頃のそれには及ぶべくもなかったのでしょう。

それを悟られないかのように、半分くらいはジェリーが歌っているイメージだし、『リードボーカル二人体制』のような作風になってます。

まあ、ジェリーのボーカルに関しては2枚のミニアルバムを通してやってきたことなので、いきなり取って付けたかのような違和感はなかったですけどね。

この人ってなんでも器用にこなすんだよな~。

レインは病んでいるからこそのボーカルとでもいうか、まるで本物の死神を連れてきたかのような歌を聞かせており、これがアルバム全体に呪縛をかけてます。

ボロボロの己のコンディションさえ、傑作のための供物に捧げてます。

なんていうアーティスト魂だ…。

レインが“カリスマ“と呼ばれる所以(ゆえん)はこういう生き様にあります。

どういう理由でドラッグを抜け出せないのかは分かりませんが、音楽に向き合う時の真摯な姿勢は最後までぶれてません。

存在感は希薄になってもレインがいなきゃ駄目なんです。

ジェリーのリードボーカルだけだと、どうしても『小綺麗過ぎる』んですよ。

そこにレインの低音ボイスが効果的に絡められていて、ジェリーでもないレインでもない合体した『ジェリン』っていうボーカリストが存在しているようなシンクロ加減ですよ。

この手法には脱帽です(再結成後の1作目ではこの手法を踏襲してます)。

さらにジェリーが凄いと思うのが、この時のレインの声量とかキーの高さの限界とかを分かったうえで、レインの声の状態に合わせた作風を意図的に取っているフシがあることです。

そもそも楽曲のキーが低いし、合間合間に入ってくるジェリーのリードギターも、死神レインの声に合わせたかのように、絶望的でヒステリックで、これまでになく不穏で…救いがありません。

背筋に冷たいものが走りますよ。

天才にしか出来ない所業です。

このアルバムとサウンドガーデンの『スーパーアンノウン』は、ロックシーンのトレンドにかなりの影響を与えましたね。

どちらもドラム・ギターサウンドが思いっきりローファイになっており、このあたりの影響を受けてメタリカもあの問題作『LOAD』を作りますし、後進のバンドたちもこの手のサウンドを追いかけていく流れになります。

あのエアロスミスまで、この頃の新作『ナインライブス』では同様のサウンドを目指していたので、当時の影響力たるや凄いものがありますね。

レイン期のアリス作品ではもっとも病んでいて邪悪な作品ですが、ここには『破滅の美学』とでも呼べるものがあります。

美しい。

私もかつてそうでしたが、アリスの深みにのめり込んだ人が『最高傑作』と呼ぶ作品であり、これを「美しい」だなんて思った日にはあなたもだいぶ病んでますので、ちゃんと目を覚ましてくださいね(笑)。

本作のリリース後も、やはりレインのドラッグ癖はおさまらず、そのまま活動休止に入ります。

アルバムは数百万枚のセールスを記録しながらも、またもやツアーは出来ませんでした。

もったいなさすぎ…。

詳細解説記事はこちら↓

『UNPLUGED』(アンプラグド)1996年リリース MTVアンプラグドライブ

完全に活動停止中だったアリスがいきなりテレビに出てきます。

もう何が何やら…。

ガリガリだし、病的なまでに一点を見つめて歌うレインはやはり病んでいます。

おそらく映像見たら、

「こんなヤツ引っ張り出してきていいの?」

って思いますよ(笑)。

このアンプラグドを観て、世界中のファンがレインの身に起きている異変に気づき始め、ザワザワしだします。

けど、観客にジョークも飛ばすし、ジェリーとアイコンタクトも取っているし、完全に心を閉ざしているという感じでもなさそうなので、ここらあたりがシラフに戻れるかどうかの最後の分岐点だったのでしょう。

御存知の通り、彼は数年後にオーバードーズで亡くなりますので、これが最後の作品、つまり『遺作』ということになります。

アンプラグドライブなので、セットリストは主にアコースティックナンバーなのですが、「アングリー・チェア」のようなドヘヴィナンバーまでもアコギバージョンにするのは新鮮です。

聴きどころとしては、あまり目立った扱いを受けていなかった「SAP」「Jar of Flies」からの楽曲でしょう。

あの2枚のミニアルバムが名盤だということを再認識できました。

レインはボロボロだけど、まるでロウソクの最後の灯火のように、その生命を燃焼させるかのように歌います。

声が裏返ったりかすれたりといったことはなく、しっかり役目を果たしてて、それをジェリーが見守りながらコーラスしている姿は泣けますよ。

レインの生前最後の勇姿をその心に刻みつけてくださいな。

詳細解説記事はこちら↓

『Black Gives Way To Blue』(ブラック・ギブズ・ウェイ・トゥ・ブルー)2009年リリース 4作目フルアルバム

レインの死から4年、解散から2年後となる2006年に、アリス・イン・チェインズは再結成します。

もともとジェリーのソロツアーにて前座を務めてくれていたComes with the Fallというバンドの、ウィリアム・デュバールを新ボーカルに迎えての再始動です。

まさかの黒人ボーカリストで、映像見てもらうと分かるように、レニー・クラヴィッツを細身にしたような印象を受けますね(笑)。

オルタナティブ/グランジの中でもアリスのようなかなりメタルに近い音を鳴らすバンドと、普段はソウル、R&B、ファンクなんかのイメージが強い黒人という組み合わせがかなり意外なのですが、違和感はありません。

それは今作のボーカルのメインがジェリーだからです。

レインがいなくなった違いをいきなりガツンと食らわすと、ファンが動揺してしまうことを配慮したのか?

それとも3作目からの既定路線なのか?

それは分かりませんが、ボーカルのあり方は3作目『アリス・イン・チェインズ』のように、リードボーカルの大半をジェリーが取り、それ以外の部分は『正規ボーカリストとジェリーのコーラスの融合』という手法を取っていますね。

3作目の時のような

「もうどっちがどっちだか分かんない!」

みたいなシンクロ率というわけです(笑)。

本来はレインとまったく声質の違うウィリアムの声を「レインと声が似ている」と多くのクチコミでコメントされているのは、そのためだと思われます。

実際、ライブ映像を見るとレインとウィリアムの声はまるで違うことが分かりますよ。

ウィリアムの声質・個性は、この後にアルバムを重ねるごとにはっきりしてきます。

で、その音楽内容はというと、ある種の敬意を払っているかのように、かつてのアリスに忠実です。

そしてかなり作り込んだ力作という印象を受け、再結成・復活に向けたジェリーの気合の入りようを強く感じます。

耳に残って口ずさんでしまうようなメロディの中毒性は健在で、最初は地味に感じるかもしれないけど後からキますね。

再結成後にはここから3作のアルバムを出すのですが、色んなレビューやクチコミ読んでても、3作の中で一番評価が高いです。

私も今のところそう思いますね。

『The Devil Put Dinosaurs Here』(ザ・デヴィル・プット・ダイナソーズ・ヒア)2013年リリース 5作目フルアルバム

『Rainier Fog』(レイニア・フォグ)2018年リリース 6作目フルアルバム

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