『Jar of Flies』アリス・イン・チェインズ ミニアルバムと言う名のフルアルバム

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はアリス・イン・チェインズが1994年にリリースしたミニアルバム

『Jar of Flies』

を語っていきますよ。

ちょっと読み方がよく分からないタイトルなので説明しましょう。

読み方は「じゃー・おぶ・ふらいず」で、意味は「ハエの入った瓶」ということになります。

つまり、ジャケットまんまの意味です(笑)。

アリス・イン・チェインズにしては珍しく(いや、唯一?)邦題がついた作品で、邦題のタイトルは「アナザー・サイド・オブ・アリス」になってます。

この邦題が気に食わないんだよな~。

なぜなら「アナザーサイド」という言葉が“番外編“的なイメージを与えてしまうためです。

本作はオリジナルフルアルバムと同格に扱ってもなんら問題ないほどの作品であることを、説明していきますよ!

ミニアルバムでさえ大ヒットした理由

本作はアリス・イン・チェインズが2作目のオリジナルフルアルバム『ダート』でトップスターに上り詰め、1993年のワールドツアーが終了した直後に制作されました。

制作からレコーディングまで、

たったの1週間です。

初期のブラック・サバスかて。

やはり、バンドがノリにノッている時というのは、クリエイティビティが凄まじいですね。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの中でリリースされた本作は、ミニアルバムのくせにチャート1位になっちゃいました(くせに言うな)。

アリス・イン・チェインズ初のナンバー1はなんとミニアルバム。

これも異例なのですが、なんとミニアルバムでナンバー1を獲得したこと自体が

アメリカ史上初

なんですよ。

でもって、実は本作、2024年現在の累計で

400万枚以上

のセールス実績を持ちます。

化け物かて・・・。

いや、アリス・イン・チェインズが化け物であることに異論はないのですが、このセールスはそれだけではで説明できない部分が実はあります。

こういう言葉は私の愛するアリス・イン・チェインズに当てはめたくないのですが、これって完全に

産業オルタナ現象

の影響を受けてますよね、大なり小なり。

もともとはメインストリームチャートで売れているポップ(マイケル・ジャクソンとか)だったり、ヘアーメタル(ボンジョビとか)だったり、そういうものとは別の、若い大学生たちなんかに人気のチャート=『オルタナティブ(もう一つの)チャート』というのが起源だったのに、そこら辺に属していたニルヴァーナやらREMやらが1000万枚を超えるセールスを記録しだして、オルタナがブームになっちゃった。

「みんな、今はオルタナティブロックが熱いぞ!」

というわけで、有象無象のオルタナバンドが湧き溢れてきて、バカみたいに売れていく、と。

メインのヒットチャートでちやほやされている売れ筋の音楽に対して、アンダーグラウンドで本物志向の音楽を追求している人たちが本来オルタナティブロックだったはず。

オルタナのほうが売れてどうする?

本来商業的ではなかった側の音楽であるオルタナが、商業的になっていった。

すなわち産業オルタナ化したわけです。

日本でもX、LUNA SEAの後に起こったヴィジュアル系ブームみたいなものです。

ハードロックがまだ全然ヒットチャートに入ってこない時代に、アンダーグラウンドでしのぎを削っていた実力派バンドたち。

それらのバンドがX、LUNA SEAのブレイク以降、一気にメジャーシーンを席巻していったのですが、それに便乗したファッションだけを模倣したようなバンドが出てくる出てくる。

その後はまったく見なくなったような一発屋、どうでもいいくだらないバンドが、ブームの後押しで100万枚を当たり前に売ってた時代が日本にもあったでしょ(シャズナとかペニシリンとか知ってます?知らないでしょ?)。

あの辟易(へきえき)するような状況がアメリカでも起きてたんですよ、1990年代の初頭に。

「とにかく今はオルタナ的なサウンド出しとけば何でも売れる!」

みたいな。

もちろん中にはストーン・テンプル・パイロッツとか、日本で人気高いスマッシング・パンプキンズとか、『本物』と呼べるバンドもいましたが、うんざりするような便乗組も毎日テレビを賑わせていたわけですよ。

テレビもそうだけど、MTVで毎日毎日そういう便乗組のMVが流れ続けるわけでさぁ。

その頃のアメリカに住んでいたら発狂すること請け合いです(笑)。

本作がミニアルバムでありながら400万枚も売れてしまったのは、アリス・イン・チェインズの実力だけでなく、そうした時代背景があったということです。

まあ、アリス・イン・チェインズのようなバンドを私が知ることが出来たのも、日本にオルタナムーブメントが押し寄せてきたからこそだし、一概にブームが悪いとも言えませんけどね。

まあ、売れすぎたとはいえ、本作はそれだけ売れても堂々としていられるだけの名盤です。

隠れ名盤とはこのアルバムのことだ!

ミニアルバムといって侮るなかれ。

このアルバムは7曲入りで30分あります。

ビートルズの時代であれば普通にフルアルバムと呼べるボリュームがあるんですよ(ビートルズの初期アルバムは32~3分なんですよ?)。

そこが最初のミニアルバムである『SAP』と違うとこなんですよね。

なので、本作はフルアルバムと思って扱ってもらいたい。

少なくともあなたの心の中ではフルアルバムと同列に扱ってください(笑)。

で、肝心のその内容なのですが、邦題に『アナザーサイド・オブ・アリス』と付けていることからも分かるように、これまでのオリジナルフルアルバムとは作風が全く違います。

アリス・イン・チェインズがこれまでに見せてこなかった側面という意味ですね。

まあ、実際は『SAP』(1992年)ですでに見せていた側面なんですが、あれはホントのミニアルバムで4曲しか入ってないので、存在があまり知られていないんですよ。

バンド側も「ホントのアリスファンかどうかを確かめるための作品」として捉えていたようで、ほとんどプロモーションをかけていないんですよね。

だから本作の邦題もこうなったのかな、と思います。

ノイジーでハードでエッジの効いたギターリフや、ドラッグに取り憑かれたような狂気だったり、念仏シャウトだったりという、アリス・イン・チェインズらしい攻撃性がなりを潜めてます。

しかし「狂気」はなりを潜めても「怪しさ」はしっかり残ってます。

分かりやすく言うとアコースティックアルバムなのですが、それだけでは済まされない魅力を持っているのが本作なんですよね。

アコースティックだからといって、安心して聴ける類のものではない。

なんかダークなんですよね。

そこにディストーションのギターは使われていなくても、やっぱり重いんですよ。

こうした作風になったのは、作曲者であるジェリー・カントレルが、ロックバンドの作曲方法を変えずに、持つ楽器をエレキからアコギに変えただけだからなのかもしれません。

アコギを持っていることを忘れて、いつものプレイをしているという表現は失礼でしょうか?

「あれ、なんか音がおとなしいな。あ、そういうやアコギ持ってたんだった。まあ、これはこれで良いからいいや。」

みたいな。

んなオッチョコチョイがいるか。

そんなんでこんな名盤が出来てたら、他のバンドたちはやってられませんよ。

まあ、こういう表現を使いたくなるくらい

「普通そういうコードをアコギでやるか?」

っていうコードのオンパレードなんです。

こういうのって『ダーク・アコースティック』とでも呼んだらいいでしょうか?

そしてそのダークな怪しさの隙間から、チラチラと美しい旋律やポップセンスが垣間見える、と。

そんなかつてないジャンルの音楽が誕生しています。

いや~、“オリジナリティ“って本来こういう作品のことを言うはずなんだよな~。

それから、1993年のワールドツアー中にベーシストがマイク・スターからオジーバンドのマイク・アイネズに交代してます。

本作はアイネズが公式的にアリスに参加した最初のアルバムというわけです。

アイネズは渡り鳥的なミュージシャンで、色々なバンドを渡り歩いてきたのですが、アリス加入後は骨を埋める覚悟なのか?再結成後もメンバーとして2024年現在まで残り続けてます。

本作はほとんどがジャムセッションで作られているので、7曲中の4曲で作曲に参加してます。

『Jar of Flies』楽曲レビュー

さて、今回はたったの7曲だから楽チンですね(笑)。

楽曲レビューです。

#1『Rotten Apple』

はい、いきなりきましたダーク・アコースティックナンバーです。

こんな不穏なコードは、本来、オルタナバンドがアンプラグドに出演した際に、普段やっているコードをアコギに持ち替えた時に生まれるものであって、最初からアコギを手にしてこういう作風をするというのは…私の記憶では他にありません。

まあ、アコースティックとは言っても、エレキギターのクリーントーンだったり、エレアコだったりと、電子の要素はたくさん入っているのですが。

レインの声が音階違いで重ねてあって、すごく幻覚的でサイケ。

次作『犬』での方法論が、実はこの時点で取り入れられてますね。

#2『Nutshell』

激シブですな、この曲は。

たんたんと演奏するアリス。

クール過ぎるぜ…。

後にMTVアンプラグドでオープニングナンバーとして演奏されました。

激しないレイン、感情を抑えに抑えたレインがかえって泣かせます。

そこに合間合間に挿入されるジェリーのリードギターもブルージーだな~。

この曲好きすぎる。

#3『I Stay Away』

おいおい、ずっと良い曲だぞ。

このあたりで、本作のやばいクオリティに気がつくんじゃないでしょうか?

2作目「ダート」でアリスにハマりまくった私はMVクリップ集のビデオを買って見まくっていたのですが、この曲のMVも入ってて、かなりお気に入りだったです。

当時は本作の存在を知らなくて、

「なんでこんな良い曲がオリジナルアルバムに未収録なんだ?」

って不思議がっていたものです。

この曲は本作の中でもアンプラグド色が薄めかな。

#4『No Excuses』

これでもか!とダメ押しの名曲です。

なんとグラミー賞にノミネートされました。

これも先述したビデオ・クリップ集に入ってました。

アリスお得意のレイン&ジェリーのツインボーカル曲です。

レインとジェリーの声ってどうしてこう相性がいいんだろ?

ツインボーカルスタイルをここまで完成させているのって、ロックバンドではそうそうないよ?

それからこの曲でのショーンのドラミングは非常にパーカッシブで、高めのタムを使います。

で、それプラス細かいハイハットプレイが絶妙!

普段はノイジーでビッグなギター音に埋もれてしまうせいで、こういうプレイってなかなか出来ないものですが、アコースティックナンバーを演るに際してすぐさまこういうプレイを出来てしまう、ショーンのドラマーとしての引き出しの多さには感服します。

当然、ドラマーの私としてはすぐに耳コピしましたね(笑)。

「だからなんでこのクオリティでアルバム未収録なんだ!!?」

って思ってビデオ観てたんで、本作の存在をかなり後になって知った時は愕然としました(笑)。

なんなら「SAP」のようにここまでの4曲で本作を終わらせたとしても、これは名盤でしょう。

#5『Whale & Wasp』

ギターのみのインストナンバーです。

アリスらしい物憂げさをギターのみで表現します。

そしてアリス作品においてまさかのストリングスの導入まで。

中盤からはギターのユニゾンで明るく展開。

なんかhideのソロ1作目のオープニング『サイコミュニティ』みたい。

#6『Don’t Follow』

や、やさしい!

やさしいアリスだ!

なに?レインがいない?

どうりで(いや、途中から出てくるけど:笑)。

前半はジェリーの弾き語りで、後半がレインに交代するという、珍しいパターンの曲です。

これもシングルカットできるクオリティでしょう。

最初から最後までダークさはなし。

ジェリーのアルペジオに絡みつくこのハーモニカが絶品です。

#7『Swing on This』

おう?もうラストか!

物足りない(笑)。

ラスト曲はなんとなんと…ジャズ!?

可哀想に、アイネズは加入したばっかでウッドベース弾かされてます(笑)。

いや、ベースはベースだけど、エレキのベースとウッドベースはほぼ別の楽器だからね?

演奏の仕方ぜんぜん違うからね?

まあいうてもそんなに難しいフレーズじゃないから弾けるんでしょうが、なかなかな無茶振りだなおい。

こんな曲でもすぐにジャズプレイを対応できてしまうショーンのセンスには脱帽。

で、ジャズだったのにいきなりいつもアリス節が入ってくる、と。

こんな組み合わせがどうしてできてしまうんでしょう?


はい、今回は『Jar of Flies』を語ってきました。

それにしてもレインが楽しそうですな。

こういう風にもっとアリスが色んな音楽性を試せば試すほど、レインのボーカリストとしての魅力がもっともっと発掘されたと思うんですよね。

『SAP』でもちょっとおふざけ要素みたいなのがありましたけど、レインがはまるんですよね、意外にも。

次作『犬』では残念ながらもうイキイキしたレインは全く見ることが出来ません。

その意味でも本作は貴重だな~。

ミニアルバムという名のオリジナル・アルバム!

これは聴いとかなきゃ!

それではまた!

 

 

 

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