「サイエンス」ソロで開花したhide(X JAPAN)がさらにやりたい放題に垢抜けた傑作

どうもSimackyです。

本日は1996年にリリースされたhideのソロ2作目のフルアルバム「PSYENCE」を語っていきますよ。

人生の中でも特に思い入れの強い前作「HIDE YOUR FACE」の後なだけに、

「あれほどの作品をもう一度作ることなんてできるのか?」

と心配していましたが、まったく心配無用でした。

前作に勝るとも劣らない傑作が誕生してます。

いや、すごいです。

私の中ではいまだにどちらが好きか決まってないんですよね(笑)。

それほど素晴らしい作品です。

さらに”あか抜けた”hide

前作「HIDE YOUR FACE」のジャケットはギーガーが手掛けたインパクト抜群のジャケットでした。

多彩なボーカルやブラックミュージックという意外な一面も見せた作品ではあったのですが、ジャケットやブックレット、ツアーでのステージ衣装ではまだまだ「XのHIDE」を感じさせるマニアックテイストが残っていました。

 

「セレブレーション」のMVから続く魔法使いのようなイメージですね。

前作までのhideはイメージカラーがまだ『黒』とか『赤』でした。

しかし、本作はジャケットからしていきなり蛍光色(初回限定版)。

ちなみに私のは緑のやつでした。

「おもちゃ箱みたい」と音楽的に評された前作だったのが、今回は本当に「おもちゃの缶詰」になっているではないですか(笑)。

そしておそるおそる中のブックレットを開いてみると…

「あ…あんた誰?」

っていうサイバーなグラサンを付けたhideの姿。

燃えるように毒々しい赤いロングヘアーはピンクに変わり、バッサリと髪も切っているではないですか!

着ている服も蛍光色で、なんというか近未来の少年みたいな。

ゲーム「ジェット・セット・ラジオ」のような世界観というか。

もう、開き直った感がすごい。

「小さなこだわりなんて捨てちまったぜ!」

みたいな。

「うっわ~…なんか垢抜けてはるわ…」

今から振り返ってみるとこれってデビッド・ボウイにも見えるので、hideとしてはルーツ回帰なのかもしれませんが、ゲーム好きな人なので影響受けてるかもしれませんね「ジェット・セット・ラジオ」(笑)。

正直、このヴィジュアルの変化には相当不安になりましたよ。

なんかXに続いてhideまでどこか遠くに行っちゃった感じがして。

けれど、そんな不安を吹き飛ばしてくれるまたしても痛快な作品になっていますのでご安心ください。

『PSYENCE』楽曲レビュー

本作と前作の大きな違いは、全体的にラフな感じで録られています。

カチッと作り込んだ感じがしません。

理由の1つとしては、打ち込みを大大的に使ったサイバーな雰囲気がかなり弱まったところかな。

というより生ドラムと打ち込みを併用している。

ここすごく重要ポイントで、前作は打ち込みの曲と生ドラムの曲を使い分けていたのに対し、今回はサイバーな雰囲気とロックバンドの生々しさが1曲の中で絶妙なブレンドをされているというか。

今回のドラマーは前作のツアーからチームに加わっている元44マグナムのジョーで、前作のテリー・ボジオに比べ音がまろやかで曲調とマッチしてます。

インパクトはないけど非常に気持ちいい。

hideのボーカルに関しては前作でいくつか確立したスタイルを基本的には踏襲しておりますが、中には前作に見られなかったスタイルもあります。

ギターに関しては前作ほど表に出てこず、いよいよhideも「ギタリスト」ではなく「シンガー」になってきた感があります。

もはや「ギターロック」ではないかもしれません。

全ての楽器が均等にバランスよく配合されている感があります。

また、ギターサウンドのメタル色が薄れ、かなりパンク寄りになってきてますね。

前作でもかなり「垢抜けた感」はありましたが、本作はそれが更に強くなり、これまでロックの範疇の外にいた人たちにも『届く』作品になっていると思います。

この頃のhideってもはやロックというカテゴリーに縛られていませんね。

#1『PSYENCE

「ロックはエンターテイメントだ!」と言ってはばからないhideが、いかにもブロードウェイの雰囲気をもつオープニングを作りました。

実はこの流れってXの東京ドームライブにおけるHIDEの部屋や、前作のツアー『HIDE OUR PSYCHOMMUNITY』のオープニングにもすでに見られていたんですね。

いかがわしくてアダルトで華やかで、でもなんかおしゃれっていう。

そして今回のオープニングはひときわスパイ映画を想起させるホーンセクションを導入してます。

私なんかは映画「007」をもろにイメージしたのですが(笑)。

#2『ERASE

これね、地味にあと引きます。

いかにもな名曲・代表曲ってわけじゃないんだけど、最初っから好きだしずーっと好きなんですね。

ビートの強弱による揺さぶりがすごく気持ちいいんですが、そこにボーカルをガンガン乗せてくる攻撃性があります。

なんかリズムがサンバっぽくも聴こえる変わったロックナンバーです。

#3『限界破裂

これは言ってしまいましょう。

名曲です。

本作中ピカイチのメロディを誇っています。

派手さがなくて、パッと聴き強い印象を残しませんが、じわじわと虜になっていきます。

パンキッシュで哀愁を身にまとってて。

ボーカルスタイルとしては『DICE』や『TELL ME』に近いように感じます。

また、前作ではTMスティーブンスに任せたベースは、本作ではhide自身が弾いており、この曲ではhideのベースがいい仕事をしています。

よほどベースラインが気に入ったのか、結構ギターの音量を下げてまでベースをしっかり聞かせてますね(笑)

というのは冗談で、ベースも弾くようになったことで、ギタリスト視点ではなく全体的な視点を持つようになったことが、本作をギターロックから卒業させたとも言えます。

ベースで参考にしているのはTAIJIが基本にあるみたいで、ミュージシャンとしてかなりリスペクトしているのがインタビューからも伝わってきていたのですが、喧嘩別れしたままで終わってしまったことは残念でなりません。

そのあたりの顛末に関してはYOSHIKIの自伝に書いてあります。

#4『DAMAGE

前作における「SCANER」や「DOUBT」からの流れをくむインダストリアルなラウドロックではあるのですが、この曲は打ち込み+生ドラのリズムという点で違います。

この作品は前作ほど密室感が強くないということを一番感じる曲ですね。

さらにギターが後ろに下がったことで歌モノに寄せてます。

かなりヘヴィでラウドなのにかなり聴きやすいというhideにしかできない名人芸ですよ。

今回3曲入ったラウドロックの中では一番聞きやすいと思います。

ボーカルラインはシャウト系なのにしっかりメロディがあるんですよね。

#5『LEMONed I Scream

当時hideがインタビューで「このアルバムで一番かっこいい」と言っていたナンバー。

初めて聴いた時は目が点になりましたが。

「オカマなの?これギャグなの?」って(笑)。

若い頃は血気盛んなんでこういうのは「タルいや」って思ってたのですが、年を重ねるとhideの言う「かっこよさ」が分かってきたりします。

今では私まで「本作で一番かっこいい」と思ってしまってるんで、hideの思うツボですね。

唯一無二のボーカルスタイル。

#6『Hi-Ho

#2「ERASE」のようにサンバを感じるリズムですが、今回はスピードをぐっと落としめちゃめちゃポップに仕上げてます。

本作においてhideの「脱・ロック」を最も強く感じるナンバーで、これなんかかなり振り切ってると思います。

hideがその方向性に本気だと思ったのはこの曲を第3弾でシングルカットしたときですね。

「え?『BEAUTY & STUPID』に続いてまたしても?正気かhide?」

って思いましたもん。

まあ、偏見や先入観がなくなった今聞いても、あまりお気に入りではありませんが。

#7『FLAME

実は#15「MISERY」のリアレンジヴァージョンです。

しかし単なるアレンジを変えただけと思うことなかれ。

バラードの名曲になってます。

この独特の哀愁が好きで好きでしょうがなくて、hideのバラードでは一番好きかな。

秋の冷たい風に吹かれながら聴いてみてください。

#8『BEAUTY & STUPID

先行シングル第2弾でリリースされた時にミュージックステーションで聴いた時は

「次のアルバム終わった…」

と思いました(笑)。

それぐらい衝撃的だったのは私だけじゃなかったはず。

「垢抜けるのはいいけど、そこまでは行くなよ」っていう。

「Hi-Ho」同様、ロック/メタルとかいう「こっち側」にいたhideがあっち側に行ってしまったように感じた曲です。

「ジャンルにはこだわないとか言いながらも、お前だってまだまだこだわってるんだろう?」

と問いかけてきた踏み絵のような曲(笑)。

こだわりはなくなっても未だにそこまで好きではないかな。

#9『OEDO COWBOYS

ファミコン世代なら絶対に頭をよぎったでしょう。

「がんばれゴエモンカラクリ道中」が(笑)。

いかにもゲーム好きhideのシャレですね。

#10『BACTERIA

「DAMAGE」に続くラウドなロックナンバー。

ザックザクのダウンピッキングでメタリカみたいに攻めてきますが、これをスラッシュメタルと感じさせないのがやはりhideなんですよね。

「DAMAGE」と甲乙つけがたいくらいかっこいい。

さらにハードなエッジが効いてます。

hideの速弾きが聴ける数少ないナンバーですが、そこからのシャウトがかっこよすぎる。

後半のクライマックスは圧倒されます!

それからMVはモノクロで超かっこいいのでYou Tubeで是非見てください。

初期のライブでつけていたメッシュのようなものを顔につけているhideが怪しかっこいい。

#11『GOOD BYE

実はバラードの名曲だと私は思っていたのですが、扱いがあまり大きくない。

シングルでも「Hi-Ho」のカップリングという扱いでした。

皮肉にもこの曲が注目されるのがhideが亡くなってからなんですよね。

hideの死後によく流されていたのですが、別に死別の歌というわけではなく、かつての自分に語りかけるような歌ですね。

#12『Cafe Le Psyence

夜のジャズバーの雰囲気ですね。

酒好きのhideらしいというか。

好きすぎてツアーのステージにバーを作っちゃいました。

どんだけ(笑)?

で、カウンターでマスターやってるのって絶対あれ網タイツのダンサーたちですよね?(笑)

#13『LASSIE

ここからの後半3曲は畳み掛けますよ。

すごい勢いとスピード感です。

ほぼデモ音源の音質をそのまま使ってます。

すごくラフで生々しくバカバカしいほどのパワーを秘めてます。

hideのパンクの側面がここまでストレートに出たのは、思えば初じゃないでしょうか?

まるで3ピースのパンクバンドの持つようなかっこよさで、この曲聞くとギター兼ボーカルに猛烈に憧れるんですよね。

私ドラマー目指していたんですけど、ギター兼ボーカルへの転向を本気で考えました(笑)。

歌詞が皮肉っぽくてかなり笑えます。

前作の「D.O.D」のようなお笑い担当のナンバーです。

まるで桑田佳祐を見ているような悪ノリしすぎ感が好きです(笑)。

#14『POSE

本作におけるラウドロック3部作の中で、もっとも激しいナンバー。

本作中で最も密室感が強いです。

エッジが尖っててhideのシャウトも容赦なく凶暴。

しびれるほどかっこいい。

1993か1994年のXの東京ドームライブにおけるhideの部屋で、すでに披露されていました。

バージョンが13パターンくらいあるとかないとか。

まさか卓球の音をサンプリングするなんてhideじゃないと思いつきませんよ(笑)。

hide流ラウドロックの貫禄たっぷりな名曲です。

この張り詰めた緊張感といかがわしさがたまらない!

#15『MISERY 

前作における「TELL ME」のような爽やかさのある曲です。

突き抜けるような青い空がイメージされます。

これは生ドラムに見せて実は全て打ち込みなんですよ。

hideの打ち込みの自信作で、「騙されたろ?」とニヤニヤしているhideが浮かんできます。

こういうロックはhideの真骨頂!

#16『ATOMIC M・O・M

おそらく前作の「壊れたレコード延々ループ20分」というラストが大ヒンシュクだったのでしょう(笑)。

あれは遊びすぎましたね。

今回はその反省からか、地獄は続かず2分30秒程度のエンディングです。

あ~よかった。


はい、というわけで本日はhideの「PSYENCE」を解説しました。

hideの1,2枚目はロックファンならマストです。

絶対に聞いて損はない作品ですので聴いてみてくださいね!

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