【X JAPAN全アルバム解説!】これがXの全てだ!
この記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はX JAPANのオリジナルアルバム4枚や私のおすすめするアルバムを解説しながら、Xの歴史を語り尽くしますよ~。
Xの歴史は”革命”の歴史だ!
X JAPAN(以下:X)は日本のロックシーンに大きすぎる影響を与えたバンドです。
正確に言えば、後進のアーティストには『影響』を、音楽業界には『革命』を与えたと言えるでしょう。
やることなすこと型破りなXは、それまでの音楽シーンの既成概念を破壊し、新たな常識を生み出しました。
それは音楽性のみならずビジネスのあり方に至るまでです。
それはどんなものだったのか?
■『聴かせる』だけではなく『魅せる』ことにも重きを置いた過激なヴィジュアル
■過激なヘヴィメタルに歌謡曲の聴きやすさを加えてロック以外の一般リスナーにまで届けた
■6分以上の長さのシングルを何度もヒットさせた
■レコード会社ではなくバンドが主導権を握った活動スタイル
当時はすべてが前代未聞で前人未到です。
社会というのはそれまでの流れと違ったことをする者を排除しようと働きます。
「そんなことはやっては駄目だろう。やめなさい」
って言われます。
そういった圧力を跳ね除けるエネルギーというのは誰でも持ち合わせているものではありません。
上記のような前例のないことを推し進めたXには、保守的なリスナー・業界からも相当な偏見やバッシングや反対があったであろうことが想像できますよね?
しかし、それを跳ねのけるほど圧倒的なセールスを獲得し、音楽業界に革命を起こすことに成功させます。
それだけのファンの熱量と数を獲得できていたからこその快挙と言えます。
そしてその由縁は彼らの音楽性の中にこそあるのです。
全ては本質的に楽曲が優れていたことに帰着します。
というよりその楽曲の魅力が少し異常なんですね。
それを裏付けるお話をしていきましょう。
恐ろしく寡作!もっと作ってよ!
Xの活動期間は1988年にインディデビューを果たしてから1997年に解散するまでに9年間。
そして2007年に再結成を果たしてから現在2023年までが16年。
つまりインディデビューしてから現在までの通算活動期間は25年にもなります。
しかし、リリースしたアルバムは
たったの4枚。
1曲30分の『ART OF LIFE』はシングルにカウントしてます。
シングルのみの曲や、再結成後のシングルリリース、および配信された曲を合計してもたったの
50曲ちょい。
Xってたったこれだけしか曲を発表していないんですよ?
それなのにこの曲数に見合わないほど多くのベスト盤とライブ盤がリリースされてます(笑)。
で、それら全てのCDの総セールス枚数はなんと
1000万枚
を超えています。
よくネットで調べると3000万枚とかいう誇張された数字が出てくるんですが、あれは絶対にありえません(笑)。
まあ、たったこれだけの楽曲で1000万枚ということも凄いのですが、Xが突出しているのはコアファンの多さですね。
楽曲の持つ普遍的な魅力が世代を飛び越えて、未だにファンを増やし続けていることが本当の凄さでしょう。
ここまで来ると楽曲がまるで意思を持った生き物かのように独り歩きをしているというか。
アルバムなんて1996年の『DAHLIA』以来、30年近く出していないのにですよ?
それではその破格の魅力を放つオリジナル・アルバムたちをご紹介していきましょう。
アルバム紹介
1.Vanishing Vision(1988年4月)
長い長いメンバーチェンジ期間が終わり、TAIJI、HIDE、PATAという黄金ライナップが出揃っての快進撃が始まります。
伝説になっているメンバーチェンジ、酒・ケンカ・出入り禁止、会場破壊、度肝を抜く破格のプロモーション、常軌を逸したパフォーマンス、観客動員記録やセールス記録などなど…数々の逸話はほぼこの頃に集中していると言ってもいいほど、やることなすこと型破りで無茶苦茶。
『事実は小説より奇なり』を地で行ってます。
インディー時代だけでXの伝記が出来上がってしまうくらいおもしろいエピソードの宝庫ですよ。
誰か映画化してくんないかな(笑)。
また、この頃の人気がいかにすごかったのかは、後のYou Tubeの登場によって世に出てきたライブハウス時代のビデオ音源の多さで分かります。
ライブハウス時代の、しかも1980年代の映像がこれほどアップされているアーティストは他に類を見ません。
私が他に好きなLUNASEAやイエモンのインディ時代の映像探してもここまでの数は出てこないんですよ。
Xの場合は桁が違う異常な多さ(笑)。
それほど当時は大量のブートレグ音源が市場に出回っていたことを意味していますし、それはコアなファンの多さを物語っています。
個人的に一番大好きな時期で、そんな中リリースされたアルバムが本作です。
「レーベルの誘いを断ってあえてインディで出した」
とかかっこよく言われてるのも見かけますが、YOSHIKI曰く
「どこもレコードを作ってくれなかったから自分で会社立ち上げて作っていたら、後になって話が来たからもう断るしかなかった」
とのこと。
このせっかちな行動力こそYOSHIKIの真髄でしょう。
今でこそ珍しくもない自主レーベルの設立なんてこの時代に誰もやってません。
思いつきもしないと思います。
自主制作のため当然のことながら音質は悪い本作ですが、それはこの作品の質を下げる理由にはなっていません。
後の名曲『紅』の英語版『KURENAI』もこっちのバージョンのほうが好きっていう人は結構います。
音楽性としてはXの持つトレードマークはすべて完成してます、この時点で。
メロディの美しさ、強烈な速さ、高い演奏力、クラシック要素、ハイトーンボーカル、大作主義などです。
後の『ART OF LIFE』にも繋がる大作主義が、このメジャーデビュー前の時点で見られるのは特筆すべきで、ベートーヴェン『月光』のフレーズを取り入れた#7「ALIVE」などには音楽に対する造詣の深さが現れています。
音楽のバックボーンがすごく厚いというのが伝わってきますね。
派手なだけでなく、しっかりとした実力に裏付けされた音楽性の高さを感じることでしょう。
この頃は音楽的主導権をTAIJIも握っており、YOSHIKI5曲、TAIJI3曲。
うち1曲はTAIJIとHIDEの共作で、このコンビは次作でも1曲やります。
この二人のアレンジャーがまだこの頃は結構アンダーグラウンドな趣味をもってて、それがこの作品しか持っていないマニアックさにつながっている気がします。
なので、一般リスナーには敷居が高いかな?
しかし、ロックリスナーであれば全然行けると思いますよ。
そしてTOSHIのハイトーンが高い高い。
全アルバムで一番高いです。
この高さをこの太さで歌えるTOSHIは稀代のボーカリストなんだと思います。
ただこれをライブハウスで歌って回るのは地獄でしょう(笑)。
TOSHIってアルバムごとに見事に声が変わってるんですけど、このアルバムの荒々しい声が一番好きです。
まだまだHIDEのカラーは本作にはそこまで強く出ておらず、『Sadistic Desire』の提供のみなのですが、この曲って最後の最後までライブのセットリストに残り続ける隠れ名曲。
実はHIDEがリーダーをしていたサーベルタイガー時代の曲です。
HIDEがXで残した楽曲の中で一番好きかな。
それから本作は、インディでの販売記録をやすやすと塗り替えた後にも売れ続けたモンスターなアルバムなんですよ。
何かのキャッチコピーで
「一体コイツはいつまで売れ続けるんだ!?」
ってのがありました。
どんなキャッチコピー!?(笑)
詳細レビューはこちら⇩
2.BLUE BLOOD(1989年4月)
「インディシーンの頂点にXがいる」
と言われていたXが鳴り物入りでメジャーデビューします。
彼らのそれまでがすべて詰まった最初から最後まで完璧なデビュー作です。
ガンズ&ローゼズのデビュー作が『ロック史上最高のデビュー作』と呼ばれていますが、その称号は本作に譲ったほうがいいでしょう。
デビュー作にしてゴールドディスク(50万枚)や有線大賞(新人賞?)を受賞。
また本作に伴うプロモーションでは様々な音楽イベントにも出演し、ロックを普段聞かないようなお客が集まる場所で演奏することにより市民権を得ていきます。
まあ、どの会場でも浮きまくってて、ファンと他の観客の温度差が笑えます(笑)。
今となっては信じられませんが音楽番組だけでなくバラエティ番組などにもかなり出ていた時期です。
作品をプロモーションする際のYOSHIKIの姿勢には、「ロッカーはテレビに出ちゃ駄目だ」という気取りなど全く無く、この既成概念に縛られない活動がさらなるファン獲得に繋がっていきます。
そもそもロックの世界での頂点なんてチンケなものを目指そうとしていませんね、これは。
発想のスケールが違う。
「なんならたけしやタモリ、さんまよりも目立ってやる!」っていうか。
全ての日本人が自分たちだけに注目していないと気がすまないと言うか。
強烈過ぎる自己顕示欲(笑)。
日本中が『X旋風』状態ですね。
しかしプロモーションを焦るあまり、過酷なツアーでYOSHIKIは過労がたまり、ライブ中に失神。
それが逆に
「失神するまでドラムを叩くの!?どんだけ!?」
という話題にも繋がり、Xは社会現象となっていきます。
音楽内容としては、とにかく全曲にわたって溢れ出るメロディが美しくスリリングなアルバムです。
『WEEKEND』『紅』『オルガスム』『X』『ENDLESS RAIN』など、ライブの定番曲になる超有名なアンセムソングが目白押し。
前作よりも音楽的な幅がぐんと広がり、喜怒哀楽の『喜』や『楽』さえも顔を出します。
これは主にHIDEが新しく持ち込んだ要素で、『セレブレーション』に見られるコミカルさだったりパンキッシュさです。
非常にコマーシャルな印象を残す作りになっており、前作にはあったマニアックさはほぼ減退。
唯一#8『エクスクラメーション』でHIDEとTAIJIの実験インストゥルメンタルが聴けるのみです。
今回はメジャーレーベルの資金の後押しがあるため、大作はより本格的になり、#11『Rose of Pain』ではオーケストラを導入してます。
1つだけ本作に物申すならば、残念ながら今回も音質はよくないです。
ミックスのバランスも良くない。
ドラムが大きすぎ、ギター、ベースの音が小さすぎますね。
「そのせいで全く受け付けない」とまではならないでしょうが、一応そこはお伝えしておきます。
ま、そんなものは楽曲の持つパワーがねじ伏せてきますけど。
本作のツアーが終わると次作の制作のためにアメリカに渡ります。
詳細レビューはこちら⇩
3.Jealousy(1991年7月)
YOSHIKIのヘルニアによる入院、TOSHIの声帯の手術などなどのトラブルが重なり、様々なことを諦めなければならなかったアルバムです。
当初は『ART OF LIFE』『Sadistic Desire』『Standing Sex』も収録したダブルアルバム構想でしたが、上記のトラブルで間に合わず、収録を見送ります。
また本作のラストを飾る『Say Anything』も、YOSHIKIは最後まで納得がいかず、レーベルにマスターテープを渡す直前まで仕上げ作業を続けたとのこと。
前作を超えなければならないプレッシャーの中、さまざまなトラブルを乗り越えてようやくリリースにこぎつけます。
記者会見で新作が完成したこと、日本に戻ってくることの日程まで喋っちゃったものだから、当日の空港はXの帰りを待つファンでごった返し、さながらビートルズの来日かという様相を呈します。
You Tubeで探してみてください。
前作の2度に渡るツアーやテレビ出演などのプロモーションが功を奏し、アメリカに渡っていた間にも水面下でファンは急増していたのでしょう。
なんとリリース初週売上で60万枚を超え、あっという間にミリオンセラー(100万枚)を達成します。
この頃はアルバム発売後にシングルをリリースするやり方だったので、先行シングルも出さずにこのセールスを記録したことになります。
とんでもないですね(笑)。
自分たちの持っていた全てを吐き出した前作だったため、今回はアメリカで充電してきたものが発揮された作品となってます。
新しい要素としてはTAIJIの持ち込んだアメリカンハードロックの要素#4『Desparate Angel』。
骨太でグルーヴィなアメリカンハードロックがそれまでのXには全く無かった雰囲気を放っています。
YOSHIKIの激しい曲が好きになれないという人も、この曲を好きだという人は結構います。
TAIJIはさらにアコースティックの要素まで持ち込みました。
ギタリストであるHIDEですら「あんな難しいの弾けない」というクラシックギターの名曲『Voiceless Screaming 』を生み出しました。
「100年聴き継がれる永遠のメロディ」
とまで言われるYOSHIKIのバラードに匹敵するほどの名曲中の名曲。
TOSHIの魂の叫びを心に刻みつけてください。
HIDEは『HIDEワールド』の陰と陽とも言える2曲『Miscast』と『JOKER』で、キレッキレのセンスを見せており、この頃からYOSHIKI、TAIJIに続く『X3人目の天才』として才能を見せつけ始めます。
また、実験性の強いインダストリアルロック、つまり打ち込み要素が強い『Love Replica』では、時代の最先端を取り入れる意欲が見てとれます。
前作の『エクスクラメーション』はTAIJIとの共作でしたが今回はHIDEが1人で行っており、この流れは後のソロ活動の伏線となっていきます。
当初の計画だった『ART OF LIFE』『Standig Sex』が収録されなかったことにより、YOSHIKIの色は前作から大幅に減退。
小曲の『Es durのピアノ線』を除けばYOSHIKI作曲がたったの3曲というのはかなり驚きで、その意味では『BLUE BLOOD』とは真反対のアルバムと呼んでも良いかもしれません。
ただ、YOSHIKIの世界観を1曲に集約したような神曲『silent jealousy』の存在感がすさまじく、いわゆる『Xらしさ』を求めるファンの気持ちをこの1曲で満たしているのはすごい。
狂気のスピードによる高揚感と、次から次へと襲いかかる波状のメロディによる恍惚感。
「Aランクの数曲」で得られる満足感を「超Sランク」のたった1曲で得られる、と表現するのは言いすぎでしょうか?
さらに最初で最後になるのですが、PATAが作曲したギターインストまで1曲入っていたりして、メンバー全員のカラーが出たアルバムとなっております。
そして最も重要なのが、3作目にしてようやく音質が劇的に改善したこと。
本作の音は2020年代の今の耳で聞いても「古臭い」とは感じないでしょう。
これはYOSHIKIをして「Xのサウンドプロデュサー』と言わしめたTAIJIの貢献度が非常に大きい。
明確な目的意識を持って渡米し、当時の最先端サウンドを貪欲に吸収した結果でしょう。
こうしてみると本作におけるTAIJIは七面六臂(しちめんろっぴ)の活躍を見せています。
そんなTAIJIは本作後のツアー終了後、東京ドーム3デイズ『破滅に向かって』をもってバンドを去ります。
今思えばTAIJIが抜けるのってXの根幹を揺るがすほどの事件だったと思うんですよね。
ちなみにあらゆるインタビューでTAIJI解雇の理由に対しYOSHIKIは口を閉ざし、ただ
「TAIJIが自分との約束を破ったから」
としか言いません。
ここまで頑なだとTAIJIの名誉を守っているようにしか思えないのですが、当時は『独裁者』と言われようが一言も言い訳しなかったYOSHIKIは偉い。
『Xのメンバーが固く結束し、メンバー全員の“魂“が込められているアルバム』
という意味では最高到達地点であり、最後のアルバムとも言えます。
次作『アート・オブ・ライフ』以降は、メンバーが『ソロ活動』という自己表現の場を持ったことで、エネルギーがバンドに集約しきれず、YOSHIKIのソロ・プロジェクトの様相を呈していきます。
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ART OF LIFE(1993年8月)
これが『JEALOUSY』収録を見送られた問題の大作です。
YOSHIKI曰く
「『ART OF LIFE』が他の曲との共存を拒んだ」
とのことですが、曲自体が運命をまとっているとしか思えないようなトラブル続きだったということを揶揄(やゆ)しているのかもしれません。
『BLUE BLOOD』の頃からその存在を知られており「幻の大作」と呼ばれていた作品がついにヴェールを脱ぎます。
純然たる1曲29分。
以前は私の中でアルバム扱いでしたが、最近レビューを書いたドリームシアターには1曲20分を超える曲が普通にアルバム内に収録されているので、やはりシングルとして扱う時代でしょうね。
詳細レビューでもじっくり解説しているのですが、本作はエンターテイメントの範囲を超え、芸術作品の領域に達していると言ってよいでしょう。
それは音楽が素晴らしいから、クオリティが高いから芸術だということではなく、『自己表現の度合い』という観点においてです。
それまでは全てを美に昇華させてきたYOSHIKIが、内にある全てをありのままにぶちまけているというか。
バンドサウンドはX以外の何物でもないのですが、明らかに異質の作品であるため、感度の高い人にとっては重すぎるでしょう。
太宰治の『人間失格』を読んだ後のような気分、という例えで伝わるかな?
大きく4つのパートからなっており、中間は10分はあろうかというピアノ・ソロ。
通称『不協和音の嵐』。
このピアノ・ソロで多くの人が発狂すること請け合い(笑)。
前作のオープニング『Es durのピアノ線』のラスト部分のようなピアノをぐっちゃぐっちゃに叩いているだけのような印象に見えて、幾パターンものピアノによる音の洪水が押し寄せてきます。
即興演奏とは言えどもかなり考え抜かれていることが分かります。
また膨大な時間をかけてボーカル録りとエディット作業を行っているため、TOSHIの声が洗練されすぎて怖いほど。
TOSHIが自分自身の表現をしている様子は全く感じられず、完全にYOSHIKIによって生み出された声ですね。
これは他のメンバーも同様です。
『Xのすべてが詰まった』と表現されることが多いですけど、Xの集大成というには他のメンバーの色が出ておらず、100%YOSHIKIの作品なのでアルバム『JEALOUSY』の延長上の作品ではありません。
というより真反対ですね。
今にして思えば、この曲が『JEALOUSY』に収録されていたら、かなり違和感あります。
この1曲のみに向き合うくらいの聴き方でないと聴けない。
それを作品が求めてきます。
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4.DAHLIA(1996年11月)
前作『JEALOUSY』から5年。
待たせて待たせてようやくリリースされた本作は大ヒンシュクを買います。
『ART OF LIFE』後からの3年間で6枚リリースされた先行シングルをそのまま収録。
10曲中6曲が既発シングルという、シングルス、もしくはベスト盤的な作品になってしまったからです。
悪夢です。
そら3年前にリリースされた『ティアーズ』なんかが収録されたアルバムを「ニューアルバムです!」って言われて納得するファンはいないでしょう。
この頃にはあまりにもビッグな存在になり、バンドやメンバーがブランド価値を持ち始めたため、様々な活動が入り乱れています。
メンバー各自のソロ活動が活発でXとして集まることができず、レコード会社からの契約履行をするためにできた曲を次から次へとシングル化するしかない状況でした。
なのでアルバムを買ったファンは
「ほとんど知っとる曲やないかい!」
っていう憤りが大きすぎて、まともにアルバムとして評価されるアルバムではありませんでした。
私を含めた当時のファンからすると苦い思い出ですが、それもとっくに時効でしょう。
メンバーがバラバラの状況の中、孤軍奮闘していたYOSHIKIの苦労はいかばかりか…ですよ。
レコード会社からの予算をオーバーしたため、YOSHIKIは車などを売ってレコーディング費用を捻出したんですから。
まあ、自業自得の面もあるのですが(笑)。
しかし、後追いでこの作品を聴く人にとっては、先行シングルが何曲出ていたかは関係ありません。
なので凄まじいクオリティを感じられると思います。
先程は『既発シングル6曲でがっかり』みたいな表現をしましたが、そのシングル楽曲は
全てチャートで1位もしくは2位を獲得した
大ヒット曲なんですよ?
ということは、
『シングルチャート1位と2位になった曲だけで全体の6割を占めているオリジナルアルバム』
とも言えるわけで、そんなオリジナルアルバムなんてB’zやサザンにさえないですよ?
『TSUNAMI』クラスのヒット曲で6割が構成されているサザンのオリジナルアルバムがありますか?
ないでしょ?
どれだけ凄いクオリティか分かりますよね。
かつてYOSHIKIは『ブルーブラッド』を評して
「すべての曲がシングルカットできるクオリティを持っている」
と評しましたが、Xのオリジナルアルバムのクオリティが恐ろしいほど高いという事実を、皮肉にも証明することになってしまいました。
だって、制作遅延のせいで仕方なくシングルカットしただけで、本来であればアルバム用として制作した楽曲たちなんですから。
つまり本作は、『出し方さえ間違えなければ』モンスターアルバムとして歴史に名を残す作品になりえたということです。
新しくファンになった世代である20~30代の人たちで人気投票したら本作がナンバーワンなんじゃないかな?
また、メンバーがソロ活動を制御し、時間を作り、きちんと集中して作品を作りさえすれば、これだけのクオリティのものをまだまだ作れるし、もっと短いスパンでリリースすることも可能だということを証明していたとも言えます。
やはり並のバンドではない…。
しかしバンドとしての活動はもはやここまで。
既発シングルが出すぎていたために、セールスは期待されたミリオンセラーには遠く及ばず…。
レーベルとの関係は悪化の一途を辿ります。
この後の流れは御存知の通り、TOSHIが脱退、X解散記者会見、ラストライブ、TOSHI洗脳騒動、そしてHIDEの死…。
本作リリースの1996年11月から1998年5月のHIDEの死まで、わずか1年半でXは完全崩壊していきます。
2007年に再結成をしますが2023年4月現在、ニューアルバムはついぞ出ず。
実質、X JAPANのラストアルバムとしての立場を27年守り続けています。
詳細レビューはこちら⇩
番外編:SINGLES(1993年11月)
こちらはなんとベスト盤(シングルス)ですが、超重要アルバムなので紹介しておきます。
はっきり言って今回紹介してきたアルバムの中で一番重要なので
これは絶対聴いてください。
Xで最初に聴く一枚としても最高ですが、全部のオリジナルアルバムを聴き尽くした後でも必ず聴いてください。
デビューシングル『紅』~6枚目シングル『Say Anything』までのA/B面全12曲を順番に並べて収録しただけ。
何の芸もないシングルの羅列。
曲順さえ工夫せんのんかい!
まあ、デビュー以来ベスト盤を出していなかった当時のXとしては初のベストアルバムのような扱いでしたね。
しかし侮るなかれ。
時期としては『ART OF LIFE』の3ヶ月後にリリースされ、なんと約60万枚を記録しており(『ART OF LIFE』は52万枚)、数あるXのベスト盤の中でも一番売れたし認知度が高いアルバムです。
で、なんで私がこのアルバムを推すかというと、最大の理由が『X』の日比谷野外音楽堂(通称:日比谷野音)ライブの音源が入っているからです。
これだけたくさんのライブアルバムやDVDがあるXにおいて、『X』もそれと同様の数の音源があります(必ず『X』は演るので)。
それら『X』の数ある音源の中で頂点に君臨するのがこの日比谷野音ライブになります。
時期としては『BLUE BLOOD』でのデビューから2ヶ月後。
オリジナルメンバーの5人が大暴れしていた頃になります。
演奏力、テンション、音質の高さが凄まじく、この『X』を聴いたらオリジナル盤はもとより、他のライブ盤『X』は聴けたものではありません。
「Xの全盛期はいつか?Xの一番すごい曲聞かせて」
と尋ねられたら私は
「これがXです」
と言ってこの音源を聴かせます。
『Xとは何か?』の核心部分がこの1曲に詰まっていると言ってもいいです。
さらにこのアルバムを推すもう一つの理由があります。
音質が極端に悪かった1~2作目『Vanishig Vision』『BLUE BLOOD』に収録されていた代表曲の『Week End』『Sadistic Desire』の2曲が、『Jerousy』クオリティの音質とリアレンジで蘇ってます。
『良曲』が『名曲』に生まれ変わってるんですよ。
この2曲がめちゃめちゃかっこよくてたまらない。
この2曲のリアレンジバージョンを1枚の中で聴けるのは本作のみ。
これら他のアルバムでは決して味わうことのできない決定的な付加価値がありながら、『紅』『Endless Rain』『Silent Jealousy』『Say Anything』『JOKER』といった初期代表曲も網羅されているため、初心者も玄人も満足させられる究極の一枚になっているのですから!
ベスト盤舐めちゃいかんですよ。
番外編:東京ドーム3days~1992破滅に向かって~(CD or DVD)
1992年当時、日本のアーティストとしては初となる3日連続の東京ドーム公演です。
今では当たり前のようにドーム3日間なんて行われていますが、当時は
「東京ドームを3日間も満杯にするなんてマイケル・ジャクソンやマドンナクラスの世界的大物の来日くらいでなけりゃ。とても日本人アーティストには無理だ」
と思われていたんですよ?
こういう『常識を覆して常識にする』ことを成し遂げてきたから今の日本ロックシーンがあるんだと思います。
ビジュアル系ムーブメントが起きて、そのマーケットが拡大した後に後進のバントたちが20万人動員ライブだ、200万枚セールスだと言われても、それはマーケット規模が全然大きくなってる中ではそんなに難しいことではない。
Xの時代はそのマーケットが小さかったのを何か無理やりなエネルギーで拡大していってるんですよね。
時代が変わるその歴史的なライブがこの東京ドーム公演です。
実は『JEALOUSY』ツアーの途中で1回ドームでの初ライブはやってます。
で、一旦終わった半年後の年明けに前人未到の3日連続公演に挑戦したというわけです。
本作には3日目が収録されており、たっぷりCD2枚に入っています。
残念ならが『Rose of pain』『Say Anything』の2曲はCD、映像音源ともにカットされているので、You Tubeで探してみてください。
映像ビデオからかなり遅れてCD音源がリリースされたため、私は本作の前にビデオを穴が空くほど見てましたね。
TAIJIが1週間前にクビを宣告され、Xでの最後の仕事となったある意味メモリアルともいえるライブのため、らしくないほど静かで淡々と、どこか重苦しさと独特の叙情性のある雰囲気で進行していくのですが、まさかこの時点でTAIJIはクビを宣告されていたなんてファンは誰も分かっていませんからね。
「音の鳴りが悪い」と言われる東京ドームを使いこなすノウハウが、まだ1992年段階ではでき上がっておらず、音のバランスはほんと悪いです。
PATAのギターは大きくて、hideのギターは小さかったり、YOSHIKIのドラムはいつも以上にうるさかったり(笑)。
3日目なのでTOSHIの喉もボロボロで、TAIJIは葬式にでも出てるように落ち込んでてほとんどコーラスしませんし、YOSHIKIはいつ倒れても不思議じゃない状況と、いつものエネルギー全開のXではありません。
しかし、肉体的にも精神的にもボロボロのメンバーたちがほぼ気力だけで演奏している姿には心を打たれます。
お客との一体感はもう究極のところにまで行っており、東京ドームがまるでライブハウスかのように見えます。
こんな芸当はX以外にできませんよ。
このアルバムを推す理由の1つ目は『Unfinished』がピアノ弾き語りバージョンで聴けること。
これってライブでは昔から定番なのですが、実は公式音源では本作でしか聴けないし、その中でも本作のは最高の出来です。
2つ目の理由は『Desperate Angel』の唯一のライブ音源が収録されていること。
TAIJIが脱退してからは演奏されることがない名曲でライブ盤は特にかっこいい。
そして最後の理由は『MCの帝王TOSHI』のかつてないほどの名台詞てんこ盛りのMCが聴けること。
ラストの『Orgasm』でのアオリは尋常じゃないし、『X』でのビデオカメラマン全員に服を脱がさせて気合い入れさせるパフォーマンスなど…もう、やばいです。
名言がかっこよすぎてXコピーバンド(X Hiroshimaとか)の人たちは、この台詞を自分たちのライブでもまんましゃべってて笑えましたが、私も今でも全部のセリフ覚えてます。
それほど名言のオンパレードです。
ちなみに映像盤(ビデオ・DVD)とCDでは映像盤をおすすめします。
CDでは曲が途中カットされていたり、曲間のTOSHIのMCが大幅カットされていたりするからです。
Xの数あるライブ作品の中で最高峰に位置するのは間違いないでしょう。
ちなみに、おそらくソニーがこのライブ音源の原盤権をもっているため、その後のベスト盤などにこのアルバムからの曲が選曲されることはありませんし、配信されることもないし、You Tubeでも公式に公開されることはないでしょうね。
まだYou Tubeが緩かった10年前くらいは、誰かが違法アップしてBANされての繰り返しでした(笑)。
⇩こちらは映像ビデオのレビューです
はい、本日はXJAPANのおすすめのアルバムをご紹介してまいりました。
この記事や、リンク先の詳細レビューなどを読んでいただきながらストリーミングでがっつり聴いてみてください。
おそらく日曜日が丸一日X漬けで過ごせます(笑)。
皆さんにとってこのSimackyブログが『ストリーミング時代のライナーノーツ』になれたら、この上なき幸せです。
ストリーミングがよく分からない方には分かりやすく解説してますで参考にしてください⇩。
BLUE BLOODのデジタルリマスター版が最強です。
これぞXの全盛期。
コメントありがとうございます!
BLUE BLOODはリマスター版でホント良くなりましたよね。
個人的には1作目もやってもらいたいところです。