『ヴァニッシング・ヴィジョン』(Xjapan)を解説。インディー時代の伝説の数々・・・

どうもSimackyです。

ここのところオリジナルアルバムで2作目、3作目ときたので、ここで書かないわけにはいかないでしょう。

そう、記念すべき1stアルバム、伝説の幕開け『VANISHINGVISION』です。

本日は伝説のファースト・アルバムが世に生み出されるまでのインディー時代の紆余曲折を語っていきますよ!

すでに『ダイヤの原石』は揃っていた破格のインディー時代

いいですね~。しびれますね~このジャケット。

私にとってXで買った初のCDということになります。

他のは借りたCDをテープに録音してきいてましたので。

本日はこの1stアルバムを通してインディーズ時代のXを語っていきたいと思います。

このアルバムを聴いた時の第一印象。

暴走族

「それ音楽の感想じゃないじゃん…」と思われた方、仰りたいことはごもっともです(笑)。

ただ、このアルバム、暴走族を想起させるアイコンがなんか多い気がします。

『I‘LL KILL YOU』の冒頭でギターがギャンギャンいってるのは族がバイクふかしているみたいだし、その後の掛け声にしても「テメーら今日もしめて行くぞ~!」と掛け声をしているように聞こえるし(笑)。

この時期の写真でHIDEが族っぽいマスクを付けていたり、TAIJIがバイクにまたがる写真もあったりして。

曲のタイトルも『I‘LL KILL YOU』なんて、ヤンキーのたまり場になってる廃ビルの落書きみたいじゃないですか(笑)?

『KURENAI』も族の名前っぽいし。

ただ、内容はと言うとヤンキーがいきがっているだけの薄っぺらい作品では当然ないということです。

音はともかくやっている内容はかなり本格派。

表現する方向性が固まっていて、求める世界観の大きさを表現するだけの音楽的な実力が当時の時点で備わっている。

疾走するビートとツーバス、ツインリードのユニゾン、テクニカルなベースのチョッパープレイ、トライバルなインスト曲、ハイトーンボイスとシャウト、リズムチェンジの多い組曲的な展開、本格的なクラシックピアノプレイの導入…

後のXの要素がこの時点で全部入っているし、かなり高いレベルで確立されている。

後の「ART OF LIFE」に繋がるような「ALIVE」も入ってますしね。

つまりXは『デビュー後にどんどん実力をつけたバンド』ではなく『デビュー前から完成されていた』ことを物語っています。

だからメジャーデビュー用に『KURENAI』を撮り直した『紅』は大ヒットしたんです。

実力はすでにあり、ダイヤモンドの原石たる楽曲群も揃っていた。

ただいかんせん音があまり良くなかった。

まあ、『BLUE BLOOD』も今から振り返るとかなり音悪いですが、インディー版よりはよくなってるかな?

Xの最初の2枚は3作目『JEALOUSY』後に全部取り直すべきだと思ってますから私は(笑)。

その後撮り直ししたのは残念ながら『KURENAI』と『SADISTIC DESIRE』『Unfinished』の3曲だけだったのですが。

そんな、インディー時代に怪物じみた実力を身に着けていたX。

さぞかし、破竹の勢いだったことかというと、、、これが苦労しているんですね(笑)。

一度は完成を見たラインナップの崩壊から黄金メンバー勢揃い

もともとXは千葉から上京してきたYOSHIKIとTOSHIに、先に上京していた先輩の徳王アツシなど同郷のメンバー4人組で結成しています(まあ、高校時代からXはありましたが)。

で、当時はYOSHIKIのプロ志向が強すぎてスタジオでの練習時間が異常に長い。

本人談によると毎日夜の12時とかからオールナイトの格安枠を使って朝の9時までバンド練習をしていたとか。

つまり練習だけでもかなりのお金を使うんです。

これに対し、実家からの仕送りがあるメンバー(YOSHIKIとTOSHI)はいいのですが、ロックやっている人たちは大概が親との関係性が良くないものです。

「ロックなんて勝手にやってる奴に出す金はない」と仕送りもしてもらえず、家出同然で上京している人も多かったことでしょう(TAIJIもその一人)。

仕送りのないメンバーはとてもじゃないがついていけない。

それもあって当時は『もとX』の人が20人以上はいたとかいないとか(笑)。

それくらいメンバーチェンジが激しかったXが音楽性がかなり固まった時期があります。

ジュンとヒカルが加入していた時期です。

大学の頃、海賊版VHSビデオで目黒鹿鳴館と大阪のライブが出回っていて、友達がくれました(笑)。

ちなみにあくまで海賊版なので今回は詳細を割愛しますが、この2人が脱退を表明した後の最後のライブが撮影されたものです。

これまた違法アップロードになるので、You Tube動画も貼り付けられません(笑)。

ご自身でYou Tubeで探してみてください。

私が衝撃を受けたのが、「TAIJI、HIDE、PATAの3人がいなくてもこんなレベル高かったの⁉」と感じる演奏レベルでした。

『Orgasm』は今に結構近いかたちのコール&レスポンスがすでに出来ています。

他にも『Stab Me In The Back』『紅』なんかの後のオリジナル・アルバムに含まれる代表曲も演奏しています。

ただ、『紅』はかなりテンポも遅く、歌謡曲っぽい感じは否めません。

セットリストの中にいきなり『北斗の拳』の主題歌が流れ始めたような錯覚を起こします(笑)。

音楽性がかなり固まっているし(かなりジャパメタな感じではありますが)、オリジナルメンバーほどの曲の多様性や複雑な構成はないものの、メジャーデビューしても十分通用する実力と完成度の高さを感じました。

すでに熱狂的なお客さんがかなりついている。

何より1本見た私が結構感動して「うるっ」てくるくらいいいライブだった。

この海賊版、お気に入りになってかなり繰り返し見ましね。

2人が脱退の意思を表明したことで、この時期メンバー間がかなり険悪だったことはまったく感じられないほど、チームとしてのまとまりや勢いを感じましたし、ライブパフォーマンスが板についている。

YOSHIKIが自伝でこの時期かなりの手応えがあったと語っていたのも分かります。

それだけに、この二人が抜けたときはかなりショックだったといいます。

YOSHIKIの自伝によると

「ヒカルが抜けたがってるから『辞めたいならさっささと辞めちまえ!』って思ってたけど、まさかジュンまで一緒に連れて行かれるなんて誤算だった。しかもライブ中に次に移るバンドのライブなんかを告知したりして凄くショックだった」

ということです。

その二人が抜けることになってXはこの時ばかりは完全に手詰まりの状態になります。

メンバーはいない。

イカれた奴らと悪い噂が立ち、メンバー勧誘も断られる。

これまでのパフォーマンスのせいでライブハウスからは総スカンをくらい、インディー専門誌ではボロカスに叩かれる。

もうどん底。

さすがのYOSHIKIもTOSHIに「もうやめようか…」とこぼすほど落ち込みは激しかったといいます。

TOSHIは超楽観的な人なので、「大丈夫だよ」とか言っているうちに、救世主TAIJIが

「やっぱYOSHIKIとならなんかできそうな気がする」

とか言って戻ってきます(2回目の加入)。

「音楽的には俺Xの方向性が大嫌いでさ。で、一回脱退してるんだけど、なんか二人(YOSHIKIとTOSHI)のこと思い出すとめちゃくちゃ懐かしくなってきちゃってさぁ。もう愛しいっていうか。だから音楽的なことはどうでもよくなって、音楽は全然関係なしにまたやりたくなったのね、あの二人と」

みたいなことをインタビューで語っていました。

この時のTAIJIの踏ん張りは自伝にも書いてあるのですが、

「とにかくどん底の状態だったからやるしかないって腹をくくった」

らしいです。

TAIJI、HIDEの加入でアレンジが飛躍的に向上

TAIJIはまだまだ歌謡曲っぽさの残るロックアレンジの足りない楽曲群を片っ端から作り直していきます。

もう死にものぐるいです。

この時期TAIJIはYOSHIKIの家に転がり込み、昼は「あーでもないこーでもない」と曲を手直しし、夜は他のバンドのライブ打ち上げにメンバー勧誘に二人で出歩く(で、乱闘騒ぎになる)という毎日を送っていました。

YOSHIKIとTAIJIはうまが合わなかったとか音楽的に対立してたとかなんとか色々言われますが、

簡単に一言で済ませられるほど浅い関係性ではないんですよ、この二人。

もう命をかけた戦友とでもいいましょうか。

音楽的衝突を物ともしない家族愛のようなものさえ感じます。

この時期にXのそれまでの楽曲群はグレードアップします。

『X』や『Orgasm』『I‘LL KILL YOU』『Stab Me In The Back』などの超ハイスピード楽曲群がそうですね。

それからサーベルタイガーを抜けて人生に挫折したHIDEをYOSHIKIが誘い、周りからの反対を押し切ってHIDEが加入。

PATAは千葉の高校の頃のYAMAHAコンテスト時代からお互いを知っていたよしみで、かなり初期からずーっとヘルプで付き合いがありました。

HIDEの加入を機にYOSHIKIはツインギターバンドで行くことを決意。

おそらくTAIJIのアレンジで曲が厚みを増すことにより、シングルギターでの限界を感じていたんだと思います。

で、PATAに正式に加入を頼み、あっさり二つ返事でオリジナルメンバー5人が固まるという流れです。

ところで、なんと『元気が出るテレビ』のあの笑える企画『やしろ食堂を盛り上げろ』への出演はこのオリジナルメンバーが固まった直後なんです。

確か『元気が出るテレビ』への初出演時はYOSHIKIが20歳と表示されていたので、『やしろ食堂』までに結構な期間に渡り数回出演しているようですね。

私が知る限り、『ヘヴィメタ最強の男』『ヘヴィメタ運動会』『やしろ食堂』の3回ですが、他にも出ている可能性はあります。

話がちょっとそれましたが、HIDEの加入した直後、練習中にHIDEが

「ところで『紅』ってやんないの?俺けっこう好きだったんだけど」

とメンバーに尋ねます。

この頃、『紅』は手持ちの曲の中で一番歌謡曲っぽかったので、そういうのが大嫌いなTAIJI加入後は陰を潜(ひそ)めていたんでしょう。

そして、TAIJIとHIDEで思いっきりスピードメタルのアレンジの構成を施した『VANISHINGVISION』のバージョンへと生まれ変わった英語歌詞の『KURENAI』になります。

インディー時代の『紅』もバージョン多いですよね。

日本語バージョンと英語バージョンがどっちが先だったかわからなくなるくらい、二転三転してる。

さて、オリジナル5人組編成になり、ここからは皆さんご存知の快進撃ですね。

1stアルバムは初動で1万枚というインディー記録をあっさり塗り替え、その後もインディーとしては異常なほどモンスターのように売れ続けます。

しかし、ここで海賊版のトラブルが勃発します。

昔読んだX関連本(噂も混ざっているようなやつ)では、その後に海賊版が出回ってかなり売れた後に差し押さえ回収するのですが、その時点で推定20万枚売れていたとかいないとか、、、。

LUNASEAがメジャーデビュー『IMAGE』で11万枚ということを考えると異常な数字です。

出自の怪しい本だったので、まゆつばかもしれませんが本当だとしたらすごいですね。

CDバブルでもなければインディーズのバンドが注目を集める時代でもなく、メジャーでもハードロック/ヘヴィメタルというジャンルで10万枚売れれば大ヒットと言われていた時代ですからね。

音質の問題など、まだまだ不満足な部分はあるにせよ、色々言われてきた評論家連中を問答無用にねじ伏せる力作に仕上がったことで、メンバーはかなり自信を持ったといいます。

「なんだかんだ人気はあってもXはインディーズで何も残していない」

とYOSHIKIも言っていましたし、なにか自分たちがやってきたことの総決算をしてからメジャーに行きたかったんでしょうね。

黄金メンバーでの異常なまでの成長スピード

この時期のライブも当然のことながら沢山You Tubeで見つかりますので、探してみてください。

特にファーストアルバムをリリース後の目黒鹿鳴館でのライブは、カメラアングルやセットリストが冒頭で紹介したジュン・ヒカル時代の映像と近いので、違いがすごく分かります。

そのライブ全体の感想を言うと、ジュン・ヒカルの時代にあれだけの高いパフォーマンスと完成度をもっていたのに、それをさらに大きく越えてスケールアップしている姿がそこにはあります。

なんといっても曲のスピードがぐんと速くなっている。

シンプルなハードコア色よりもっと複雑で深いアレンジになっている。

やはりTAIJI、HIDE、PATAの加入は大きかったんだと思います。

『BREAK THE DARKNESS』の絨毯爆撃機のようなタム回しも、PATAのレスポールネックをしならせて鳴かせるギターソロも鳥肌モノです。

激烈な猛練習により、YOSHIKIが完全にアスリートのように鋼の肉体になっています。

もうキレッキレでバッキバキ。

ジュン・ヒカルとの別れから1年ちょい。

人って1年でこんなに変わることできるんですか・・・。

なんか大御所感がすごい(笑)。

凄まじい勢いで変化・成長しているのが伝わってきます。

この時代がXの全期間を通して一番ライブで揉まれていた時期だけに、演奏能力、パフォーマンスともに最高。

これを見た後だと、1993年の東京ドームライブ『リターンズ』あたりから以降の演奏は、どうしてもリハーサル不足を強く感じてしまい、あまり見ようとは思わなくなってしまうんですね(それ以降のライブを否定しているわけではありませんが)。


はい、というわけで、今回はファーストアルバム完成に至るまでの紆余曲折を書いてきたわけですが、いかがだったでしょうか?

Xはインディー時点ですでに『最高』だったんです。

私は勝手にそう思っています。

後のキャリアも好きですが、紆余曲折の物語が詰まったこのインディーズ時代は特に好きです。

色々読んだり、見たりしてくうちにどんどんハマっていきますので、これを機会に深堀りしてみてはいかがでしょうか?

X大好きな皆さんからのコメントお待ちしてます!

no music no life! 

”音楽なしの人生なんてありえない!”

Simackyでした。

それではまた!

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