メガデスメンバー:デイブ・ムステインを語る
どうもSimackyです。
本日はメガデスの大佐ことデイブ・ムステインを語っていきたいと思います。
メガデス結成に至るまでの経緯~メタリカへの加入と脱退~
今さら言うまでもないのですが、メガデスの中心人物、というよりメガデスそのものとも言える『デイブ大佐』ことデイブ・ムステインは元メタリカのメンバーです。
彼がメタリカに加入した頃のメンバーはラーズ、ジェイムズとベースのロンです。
ロンはジェイムズの高校でのクラスメートで、かなり黎明期に在籍したベーシスト(初代かな?)なんですよ。
で、そのロンが昔ある雑誌のインタビューで自分がメタリカにいた時の思い出話を語っていたことがあります。
なのでここからは昔読んだロンのインタビューの記憶をもとにお話します。
ロンの話では、クラスにはジェイムズくらいしかNWOBHMの話を詳しくできる友達がいなかったらしく、二人はレコードを貸し借りしあっては音楽談義したりふざけ合ったりしていたそうです。
ロンはお金持ちの裕福な家庭で育っており、メタリカが始動してからは、家のガレージをメタリカのスタジオ代わりに使ってました。
デイブ大佐はそこでオーディションを受けてメタリカに加入します。
しかし、デイブ大佐はシングルマザーに育てられ貧乏な生活を送ってきたので、ロンのような金持ちボンボンは大嫌いで、始めから反りが合わなかったみたいです。
で、ラーズ、ジェイムズ、デイブの3人は凄腕ベーシストのクリフ・バートンを見つけて加入するよう説得に成功すると、今度はロンの存在が邪魔になったため、3人は執拗で陰湿ないじめをロンに対して行い、追い出しにかかります。
ロンが辞めたのはデイブ大佐と反りが合わなかったからとか言われてますが、大佐だけが悪者というわけではないんですよ。
ジェイムズもラーズも共犯者です。
私の記憶ではかなり具体的ないじめを語っていて生々しかったです。
ジェイムズなんて「友達だったのに普通そんな事するか?」っていう内容でした。
まあ、要はパシリみたいなことをさせ始めたんですよ。
それに耐えきれなくなったロンはメタリカを脱退し、クリフが加入。
このラインナップでの映像はクリフの死後にリリースされたドキュメンタリー『クリフ・エム・オール』で確認できますが、フロントの3人が180センチを軽く上回る長身でやたらかっこいいですよ。
少なくともステージを見る限りではチームワークは抜群で、デイブ大佐とジェイムズが1つのマイクを2人でコーラスしているとこなんて、その後からは考えられないような仲の良さが見えます。
後にジェイムズとラーズの二頭政治になるメタリカですが、この頃は4人平等で横並びな感じが凄く伝わってきます。
この頃のライブは他にもYou Tubeで探せば見つかりますが、MCを半分くらいリードギタリストであるデイブがやっているのは驚きましたね。
この時点で1作目『キル・エム・オール』の楽曲はほぼ全て出揃っており、「『キル・エム・オール』のギターは俺が作った」という大佐の談は本当なんです。
しかし、デイブ大佐の酒グセの悪さ(暴力)、ドラッグの常習、生来のクセのある性格のため、徐々にメンバー関係に亀裂が入ります。
まあ、酒・ドラッグはメンバー全員がやっていたみたいで、それを問題視されるのはデイブ大佐としては心外だという気持ちは当然分かりますが、彼の場合は対外的なトラブルを起こしてしまうことが大問題だったんですね。
で、ロンが言うには、ある日ロンのガレージ(スタジオ)でジェイムズとロンが遊んでたら(いじめとかしていたのにどうなってんだこの二人の関係)、そこにへべれけに酔ったデイブ大佐が愛犬を連れて現れます。
で、この犬がガレージのそこら中に小便したりうんこしたりするので、困り果てたロンもデイブに文句を言うのですが、デイブはお構いなし。
かつては虐めていたくせにロンを庇おうと思ったのか、ジェイムズが怒って
「おいデイブ!そのくそったれの犬を連れ出せ!」
と言ったところ、デイブが
「俺様の犬様になんてこと言ってくれやがんだ!?」
とブチ切れ、ジェイムズをぶん殴ります。
で、ガレージの壁までふっとばされたジェイムズは激昂して
「お前なんかクビだ!クビだ!!」
翌日、ロンのガレージでメンバーミーティングとなり、ラーズもジェイムズをなだめますがジェイムズは全く聞く耳持たず。
デイブ大佐は泣きながら謝罪したらしいですが、最後まで許してもらえませんでした。
これは私の想像ですが、あのプライド高そうな、しかも最年長のデイブ大佐が泣きながら謝るくらいなんですから、メタリカへの想い入れはかなりのものがあったのでしょう。
後に「すべてを失った」と語る大佐の表現は誇張でもなんでもないのかも知れません。
しかし、ジェイムズとしてはケンカの件に限った話ではなく、普段からの素行の悪さに目をつむることにもはや限界が来ていたと、ロンは語ってます。
と、ここまでが、現場に居合わせ続けたロンの証言です。
実はこの話には続きがあって、その後、なんとかデイブは在籍が許されたそうです。
しかし、ジェイムズは心の底では許していませんでした。
ジェイムズとラーズは(もしかするとクリフも?)水面下でデイブをエクソダスのカーク・ハメットと交代させることを画策します。
そしてついに、1stアルバムのレコーディング地であるニューヨークへの到着と同時にいきなり解雇を言い渡します。
デイブはアメリカの東海岸から西海岸までトンボ帰りをする羽目になりました。
理由も告げられない、弁解の余地もないまま一方的に解雇を告げられ、1時間後に出発するバスに乗せられた、と。
「そんなことしたらニューヨークでのレコーディングはどうするの?」
と思うでしょう?
実はすでにかなり前からカークにはギターを覚えてもらっていたんですよ。
なんと!
つまり、カークが加入したと同時に『キル・エム・オール』のレコーディングに望めるほど、かなり以前の段階で話は決まっていたことになります。
ひょえ~~。
デイブのことは嫌いだし、解雇する日取りまで決めてるけれども、それでも結構な期間を何食わぬ顔して一緒に活動していたことになるんです。
だからデイブにとっては寝耳に水のような形で解雇を告げられた印象なんですよ。
だって、解雇を告げられた前日の夜に、ライブ後の楽屋でラーズと一緒にマリファナ吸って談笑していたんですよ?
この話はメタリカのドキュメンタリー映画『サム・カインド・オブ・モンスター』でラーズとデイブの会話の中で語られます。
「クビを告げる前の晩に、俺と楽しそうに話していたあの時、お前(ラーズ)は一体どんな気持ちだったんだ?」
これはトラウマになるというか、人間不信になるくらいの衝撃だったのかも知れません。
大佐は自分がどれだけメンバーにヒンシュクを買っているのか自覚がなかったんでしょうね。
自分に悪い所があれば遠慮なく指摘してくれるという信頼関係もあったのかも知れません。
家族同然の関係だったんだから問題があれば言ってくれる、言わないってことはうまくいっているということ、と。
けど、ジェイムズもラーズも言いたいことは言わずに、「言ってももはや無駄だ」と諦めていたのでしょう。
それほど、当時の大佐のクスリと酒の悪癖はひどかったみたいなので。
それは今では本人も認めていますが、それでも大佐としては「せめて何か言ってほしかった」というやりきれない思いがあったでしょうね。
そして失意の大佐は
「この恨み晴らさずにおくべきか!」
と自身のバンド結成へ執念を燃やします。
クビにされる原因を作ったのは間違いなく大佐本人なので、これは逆恨み以外の何物でもないのですが、その逆恨みパワーがスラッシュメタル界における至宝とも呼べるバンドを生み出す原動力となったことは間違いありません。
西海岸に戻った大佐はアパートの下の部屋に住んでいたデビッド・エレフソンと出会い、メガデスが始動します。
そしてそこから約2年をかけてようやく1作目『キリング・イズ・マイ・ビジネス』リリースにこぎつけたというわけですね。
メガデスが後に生み出す数々の傑作、そしてヘヴィメタルの発展への貢献度を考えれば、彼がメタリカを脱退したことはメタル業界にとって運命だったと言わざるを得ないでしょう。
ミュージシャンとしてのデイブ・ムステインの実力
大佐はメタリカ時代にリードギタリストだったこともあり、当然のことながら速弾きの腕前はピカイチです。
しかし、リフも天才的で発想も演奏も一級品です。
毎度のことながらメンバーチェンジの多いメガデスで、新加入するギタリストはドキドキものだと思いますよ。
リフの腕前もすごいのにソロまですんごいのをもってきますから、ライブ見てても
「あ、歌ってる人がソロまで持ってっちゃうんだ」
みたいな光景はザラですからね。
初期のクリス・ポーランド在籍時のライブハウスの映像見ると、
「え?ギターソロはほぼ大佐じゃん!?」
みたいな状態です(笑)。
メタリカのジェイムズも
「そのリフ弾きながら歌っちゃうの?」
って思うことはありますが、大佐の場合はさらにリードギターまで弾く化け物っぷり。
私がギタリストだったら一番加入したくないバンドです(笑)。
やっぱりプレイヤーとしてもメロディメーカーとしても根本的な実力が異様に高いんだと思います。
大佐はさらっとこう言い放ちます。
「その時のギタリストがそのリフを弾けなければ俺が弾くし、ソロを弾けなければ俺が弾く」
い、嫌すぎる…。
そんな大佐なので、生半可な実力のミュージシャンはオーディションで落とされるんだと思います。
メガデスがあれだけコロコロとメンバーが入れ替わっても、プレイの質が異常に高いのは、この大佐の審美眼の高さゆえだと思いますよ。
逆に言えば、その大佐の審美眼をパスして加入できるミュージシャンはよほどの実力者だということですよ。
なのでエレフソンなんかはただ一番古い付き合いだから惰性で残っているわけではなく、やっぱりかなりの実力者だから残れている、と考えるほうが妥当でしょう。
ちなみに、メタリカのジェイムズをリズムギタリストへと導いたのは実は大佐なんですよ。
大佐が加入した頃のメタリカはジェイムズがボーカル専属をやるから、リードギタリストとリズムギタリストの二人を募集していたらしいです。
で、大佐が加入した後にリズムギタリストが見つからないから、ジェイムズが試しに弾いてみたら
「お、おい!うめぇじゃねぇか!お前が弾きながら歌えよ」
となったらしいです。
ジェイムズがメタリカ黎明期からリズムギタリストとしての才能を秘めていたことが伝わるエピソードですよね。
大佐が言わなかったら「マスター・オブ・パペッツ」を始めとする伝説のリフの数々はこの世に存在していなかったかもしれませんね(笑)。