【桑田佳祐のおすすめアルバムはどれだ!?】全アルバム紹介
この記事はプロモーションを含みます。
こんにちはSimackyです。
本日は日本が誇る『キング・オブ・ポップス』桑田佳祐の全オリジナルアルバムを解説していきたいと思います。
私は個人的に桑田ソロはサザンとまったく線引きがありません。
なぜならサザンでもソロでもいろんな音楽的チャレンジをしているし、サザンにもメンバー以外のミュージシャンの影響が色濃く、「これサザンっぽくないよね?」という曲もサザンの中にたくさんありますし、「これが桑田ソロの特徴だ」と言えるほど同じことをやっていることはほぼほぼないからです。
いつだって、”その時代の音”に合わせて変化を続けている。
それが『トップ・オブ・ザ・ポップス』として走り続ける桑田佳祐の真骨頂ではないでしょうか?
本日はそんな桑田佳祐のアルバムをあらためてストリーミングで一気に聴いてレビューをしてます。
1枚だけKUWATA BANDの作品もありますが、これも私の中で線引をしていないためです。
また桑田ソロを語る上でサザンのアルバムを引き合いに出すことが多くなるため、サザンとソロのリリース順が頭に入っていないと混乱をきたします。
なのでまずは時系列を箇条書きで書いておきますので、参考にされてください。
桑田ソロとサザンの時系列を頭に入れよう
1985年サザン8th『KAMAKURA』発表後活動休止
1986年KUWATA BAND『NIPPON NO ROCK BAND』
1988年桑田ソロ1st『KEISUKE KUWATA』
1990年サザン9th『サザンオールスターズ』10th『稲村ジェーン』
1992年サザン11th『世に万葉の花が咲くなり』
1994年桑田ソロ2nd『孤独の太陽』
1996年サザン12th『YoungLOVE』
1998年サザン13th『さくら』
2002年桑田ソロ3rd『ロックンロールヒーロー』
2005年サザン14th『キラーストリート』
2008年サザン無期限活動休止を発表
2010年桑田の食道がんが発覚する
2011年桑田ソロ4th『ミュージックマン』
2015年サザン15th『葡萄』
2017年桑田ソロ4th『がらくた』
2021年桑田ソロミニアルバム『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』
それでは時系列順でレビューしていきましょう!
各ジャケット画像はレビューサイトにリンクしてますので、そちらでみんなのレビューも参考にしてみてください。
「それそれ!」と共感できるものから、びっくりするくらい真反対の感想を持つ人まで様々いますので、非常に面白いですよ(笑)。
KUWATABAND『NIPPON NO ROCK BAND』1986年
これは桑田ソロではなく、KUWATA BAND名義になります。
サザンの活動停止後はソロの前にこっちが先なんです。
全員真っ黒。硬派ですねー。
いきなり全編英語(笑)。
これは桑田佳祐名義と何が違うかというと、あくまでバンドなんですね。
サザンからもドラムの松田さんを連れ出して。
サザンの活動休止して新しいバンドを始めたのなら、当時のファンはそりゃあ「サザン解散」は絶対に頭よぎるでしょう。
桑田さんは思いのほか気に入ったらしく、1年の期限付きというのにずるずる伸びていたらしいし、サザンファンは気が気じゃなかったのでは?
この時期はハードロックをやりたかったんでしょうね。
桑田さんの世代は我々の世代以上に「洋楽コンプレックス」があるみたいですから、「アメリカのロックを日本が超えてやる」みたいな気概があったんでしょうね。
それまでのサザン作品は
「洋楽の要素を歌謡曲の中に取り入れて日本流のロックを作り上げよう」
って感じに見えるのですが、このバンドの場合は
「海外の土俵で勝負できるものをそのままやってしまおう」
という意思が見えますね。
日本のフォーマットではなく、海外のフォーマットというアウエーの土俵であえて勝負している意欲作と言えます。
海外でリリースすることももしかしたら念頭に入れていたのかもしれません。
そのため残念ながら、普段洋楽を聞いている人からすると、特に真新しくもない当時のハードロックやLAメタルっぽいサウンドになってしまっているっていうところでしょうか。
まだ時代がオルタナティブ主流にもなっていない、中途半端な時期というか。
ハードロックのサウンドもかなり本格的でギターとドラムがゴイゴイ攻めてきます。
こういったサウンドをバックに歌う桑田さんはかなり新鮮ではありますが、彼のヴォーカルの魅力が出ているかと言われれば「うーーーん」と言わざるを得ないですかね。
桑田さんは日本ポップの最先端にはいた人だけども、「ハードロック」の最先端にいたわけじゃなかったんだなって思いました。
ただ、この時期にどういった戦略なのか、シングルだけは日本語でかなりキャッチーなもの出していて、これがことごとく傑作だったりします。
私が初めて聴いた「メリークリスマスインサマー」もそうですし、他にも「スキップ・ビート」「バンバンバン」など、桑田佳祐のポップな魅力が満載のシングルは大好きになりました。
なので、このあたりを聴きたければベストの「フロムイェスタデイ」、もしくはライブ盤の「ロックコンサート」だとまとめて聴けますよ。
「NIPPON NO ROCK BAND」 は内容的には悪くはないんですが、正直「別にこの手の音楽なら桑田さんで聴かなくてもいいのかな」ってハードロック・ヘヴィメタル畑から流れてきた私なんかは思いました。
しかし、私のような普段からハードロック・ヘヴィメタルに免疫のない人は、このアグレッシブな作風は新鮮に感じると思います。
そして今度は桑田ソロへ。
『KEISUKE KUWATA』1988年ソロ1作目
KUWATA BANDとは思いっきり真逆の方向へ振られました(笑)。
このアルバムのテーマは「ポップ」とのことです。
「NIPPON NO ROCKBAND」からの流れでくるとインパクトは弱いですね。
「極端にこの方向に振り切っている」とか「サザンとの明確な差別化」って感じはなくて、その後の1990年代のサザンを暗示している路線というんですかね。
というか「この方向性にその後のサザンが飲まれていった」という表現が近いかもしれません。
これは本作から「世に万葉の花が咲くなり」まで制作に関わっている小林武史さんの影響なんでしょうね。
この人に関してはキーマンなのでここで簡単に説明しておきます。
このアルバムで初めて桑田さんと仕事を始め、その後サザンの「みんなのうた」「真夏の果実」「希望の轍」「シュラバラバンバ」「涙のキッス」「クリスマス・ラブ」などの名だたる大名曲を生み出し、
アルバムでは9th「サザンオールスターズ」10th「稲村ジェーン」11th「世に万葉の花が咲くなり」とミリオンセラーを連発する黄金期(と私が勝手に思っている)を作り上げたお人です。
とんでもない人ですね(笑)。
ミスチルやマイリトルラバーのプロデュースも務め、1990年代は小室哲哉さんと双璧をなす業界の売れっ子プロデューサーになります。
あまりにもすごい才能のため、桑田さんは小林さんを『起用しすぎて』しまった。
それが先程書きました「サザンがこの方向性で飲まれていった」という意味です。
桑田さんと小林さん二人のすごく『密室的なサウンド』になってしまったというか。
そのため
「え?サザンの他のメンバーいる意味なくない?」
というと、言いすぎかもしれませんが、存在感が薄くなってしまった。
そのため1993年の「クリスマス・ラブ」を最後に一緒に仕事をすることをやめたとのこと(そりゃそうでしょうね)。
特徴としては各メンバーの個性やバンド感があまり感じられず、かなりコンピューターを駆使したプロデュースで洗練されたポップな音に仕上がっています。
しかし、とにもかくにもメロディがいいんですよね、この人が関わっている時期の作品は。
私はハードロック畑の人間なので本来はバンドサウンドに重きをおくのですが、この期間のメロディのもつ説得力の前にはひれ伏してしまいます。
ただこの1stアルバムではまだお互いの共同作業に慣れていない感じなんでしょうか?
全盛期ほどの突き抜けたメロディをあまり感じませんでした。
この後のサザンシングル「みんなのうた」あたりから完全に本領発揮している印象を受けます。
さて、このアルバムの内容はというと、1980年代的な音使いが初っ端から全開で、AORの雰囲気が漂います。
#1「哀しみのプリズナー」を聴いた最初は「あー、俺この手の音使いちょっと苦手なんだよな」って思ったんですが、今ではかなりお気に入りの曲です。
わりとサザンの『カブトムシ(サザンオールスターズ)』に近い音世界だと感じました。
この1stアルバムって完成度高いし、人によっては最高傑作に挙げる人もいるくらいですから、かなり内容的には充実していると思いますよ。
一気聴き当初はとにかく印象の薄いアルバムで一番聞く回数が少なかったのですが、
だんだんと曲そのものの持つメロディの良さに気が付き始めて、最近では反動から一番聞いてますかね。
ワタシ的には嫌いな曲が無いアルバムというか、その代わり特に「これが大好き」っていうのも残念ながら弱いのですが、
そんな中お気に入りの曲をピックアップするとすれば#5「ハートに無礼美人」でしょうか。
今振り返るとこの曲の方向性ってサザンの1998年作品「さくら」までなりを潜めているんですが、1988年のこの時点ですでにやっていたことに驚きましたね。
音がザックザクでかっこいいんですよね。
『孤独の太陽』1994年ソロ2作目
はい、これが桑田佳祐の問答無用の
『最高傑作』
です。
ちまたでもそう呼ばれてますし、私もまったく100%同感です。
桑田さんに神が舞い降りてます。
でも、中学の時にこれ聴いても全然分かんなかったですね。
結構努力して聴き込んでみたんですけどお子ちゃまが理解できるアルバムではないですね、今思えば。
「世に万葉の花が咲くなり」のきらびやかでお祭り騒ぎのポップさに比べ、いきなりアコギの弾き語りで始まるこのアルバムですからね。
ただこのアルバムからのシングルカット曲「真夜中のダンディ」はわりとキャッチーで、これもまた当時のカラオケでの持ち歌になりました(笑)。
今回の一気聴きで28年をまたいでのこのアルバムとの再会は衝撃的でしたね。
なんかこの曲の「味」が入ってくる入ってくる。
砂漠の砂が水を吸収するかのようにスイスイ入ってくるではないですか!
とにもかくにも1曲目「漫画ドリーム」。
衝撃を受けた理由の半分はこの曲にあるといえます。
弾き語りの名曲。
後半にエレキギターも入ってくるし、歌っている桑田さん自身がギター弾いているわけではないので、
正確には『弾き語り』とは呼べないのですが、まあ、便宜上こう読んでおきましょう。
中学の時は「なんかいやだなー」って感じのアコギの渋い弾き語りに感じたんですよね。
なんでかって言うと、当時の自分がサザンに求めていたものとは明らかに真反対の音楽だったので、抵抗があったってだけの話なんですが。
それが今回はやられましたね、、、。
このアルバムのほぼ全曲でギターは小倉博和って人が弾いてるらしいんですけど、この人一体何者なんでしょうか?
そりゃこんな凄腕ギタリストをサザンのツアーでサポートメンバーに入れられた日には、ギターの大森さんもプレッシャー半端なかったでしょう。
まずそれまでのサザンや桑田ソロでありそうでなかったアコギの弾き語りだけでもかなり新鮮なんだけど、こんな弾き語り見たことも聴いたこともない。
このスピード感と強弱の躍動感、凄まじい表現力です。
そのかき鳴らされるアコギに乗っかるのが、直近のサザンのアルバム「世に万葉の花が咲くなり」に収録されている「ニッポンのヒール」で覚醒した『がなり立てまくし立ての風刺ボーカル』。
なんていう歌唱力、なんていう歌詞、、、、。
荒っぽいフレーズがアコギのビートにガンガン乗っかってくる感じ。
超個性的なギターに超個性的なヴォーカル。
究極の個性のぶつかり合いでありながら究極の融合というか。
「リズム隊(ベースとドラム)のない弾き語りでこんなにもビート感やグルーヴ感って出せるんだ」っていう衝撃。
「ギターだけでも、いや、アコギだけでもロックできるんだ、、、、」みたいな。
勘弁してほしいです、ドラマーの私としては(笑)。
聴いた瞬間に鳥肌がゾワワワーっと。
この1曲で完全にノックアウトされました。
凄みが伝わってくるんですよ。
余計なものを全て排除して、芯の部分だけで勝負するような、本格派・実力派ならではの凄み。
「今回は包み隠さず生身で勝負するぜ」みたいな。
その辺の路上アーティストが裸足で逃げ出す圧倒的な弾き語りの傑作です。
イメージで例えるならば『挨拶代わりの左(ジャブ)は世界を制する左(ジャブ)だった、、、』みたいな感じですかね。
なんでもない弾き語りと思って「ああ、ちょっと今作は一風変えてきたのね」ぐらいに聴き始めたら、
『なんでもない』どころか『とんでもない』。
この1曲ですべてをねじふせてくるようなアルバムを象徴する曲です。
こうして凄まじいギターが加わった桑田ソングを聴くとちょっと想像してしまいます。
「もし、サザン・オールスターズに桑田佳祐に並び立つスーパーギタリストが存在していたらどうなっていたのか?」
と。
そのありえない「if」が実現したのがこのアルバムなのかもしれません。
決してサザンのギタリストである大森隆志さんを批判しているわけではないのですが…。
ギタリストとしてのスタイルの違いというのもありますからね。
あえてこのアルバムからはこの1曲だけの紹介にとどめておきましょうか。
それぐらい1曲目のインパクトが大なのですが、他の曲も全てもれなく大名曲。
あと1曲を紹介するならばあれもこれもと結局のとこ全曲紹介にならざるを得ないので(笑)。
全曲紹介はまた別の記事で書きましょう。
サザンの最高傑作と私が思う「世に万葉の花が咲くなり」でさえ後半少し疲れて「この曲は外しても良かったのでは?」と思う曲が2~3曲あるのですが、
「孤独の太陽」にそれはありません。
完璧です。
生身で勝負もあり、サザン並みのポップナンバーもあり、哀愁や痛々しさもあり、、、、色んな感情がリアルに表現されています。
そして全編に渡ってギターが暴れまくってます。
エレキだろうがアコギだろうが『達人は得物を選ばない』状態です。
歌に絡みつく絡みつく。
そして邪魔しない。
より引き立てる。
要はギタリストエゴでのプレイではなく、曲を良くするためのプレイに徹していると。
歌心のあるギタリストのなかでもこれは凄いレベルですね。
スーパーギタリストだと私が表現したのは何も目立つギターソロやリフをガンガンに弾くという意味合いではなく、
『そのプレイによって楽曲をもう一段階上に引き上げることができる』という意味合いです。
そして御大:桑田佳祐その人の歌詞世界は
『日本語の歌でどれだけの表現をすることができるか?』
という、他の追随を許さない領域、誰もたどり着けない前人未到の領域に踏み込んでます、もはや。
『ロックンロールヒーロー』2002年ソロ3作目
これは1970年代的なサウンドですね。
ギターが全面に出てきている印象がかなりあります。
「孤独の太陽」ではアコギの印象が強かったですが、エレキギターが存分に堪能できるアルバムでしょうね。
このアルバムを聴いたときの印象で「’70年代ロック的」というのがまずあるのですが、
それはどうしてなのかよくよく聴き込んでみると、理由の一つがフレージングですかね。
「あ、この部分イエスっぽくない?」
とか
「あ、このキーボードはサンタナっぽいな」
とか
「この音ジェフベックっぽい?」
みたいな。
そういうのがよくあります。
あってるのかどうかは分かりませんが(笑)。
理由のその2がバンド一発撮り的な音であること。
特にドラムの音の響き方なんかがそれを感じさせますね。
空間がシンセ音で埋め尽くされておらず、隙間をそのままにしておくというか。
だからライブっぽい。生音っぽい。
ただ、’70年代ロックだけを目指して作られているかというと、そこは桑田さんなので色々やってます。
「どん底のブルース」ではサザンの「さくら」収録「私の世紀末カルテ」以来の重いテーマの弾き語りですね。
この『暗い』路線はこれで最後じゃないかな。
その後20年経ちますがこの方向性の楽曲は出ていませんからね。
「東京」なんかはすごく評価の高い曲で
「この曲で衝撃を受けた」
「桑田佳祐の最高傑作」
という声が割と多く上がっているのですが、この曲はワタシ的にはそこまで響かなかったですね。
このアルバムは「Simackyのハートを鷲掴みにするメロディ」という点では少し弱い印象でした。
サウンドはかっこいいのが多いので最初聴いた時は「これが一番合うかも」とも思ったのですが、聴き込んでいくとイマイチ琴線に触れませんでした。
『ミュージックマン』2011年ソロ4作目
レコーディングの途中で桑田さんのがんが発覚し、発売が4ヶ月ほど遅れることにはなりましたが、本当にそれだけで済んでよかったです。
このアルバムではよく私が書くところの「ハートを鷲掴みにするメロディ」が少しづつ戻ってきたなと感じさせる曲が数曲あります。
2002年ソロ作「ロックンロールヒーロー」、2005年サザン作「キラーストリート」と続いてきた2作は全体的に秀作ではあるんですが、
「この曲ヘヴィロテ!」っていう曲がなかったんですよね、あくまで私個人の好みの話ですが。
それは桑田さん本人もそう感じていたのか、wikiで調べると
「ここ数年、どうも手元で作ってしまうようなところがあるっていうか、歌っていてエクスタシーを得られるような感覚が稀薄な感じもしてね」
みたいなコメントもしてますしね。
どの曲でも秀逸なメロディとポップさが味わえるのですが、特に私が気に入ったのが#1「現代人諸君」#2「ベガ」#7「銀河の星屑」でしょうかね。
「現代人諸君」はのっけのイントロからやられますね。かっこよすぎです。
「ベガ」のこのほわほわした雰囲気はかなり癒やされますし「銀河の星屑」は完全にボーカルを喰っているバイオリンがナイスです。
あとこれだけはまだ聴いていない人のために注意しておきます。
#11「アーリー・イン・ザ・モーニング」を流す際は、周囲に人がいないか確認し、完全に一人である時以外は流さないようにしてください!
「ドキッ!!」キョロキョロ・・・」みたいなことになりますよ(笑)。
でも曲としてはかなり好きなんですよね、困ったことに。
「ミュージックマン」は曲数が17曲とかなり収録数も多いのですが、無駄打ちの印象がないので、どの曲のクオリティも高いのでしょうね。
そして次が傑作「がらくた」ですね。
『がらくた』2017年ソロ5作目
これはもう大傑作ですね。
「よしよしキタキタ戻ってきたー!」
って感じでかなりテンション上がりましたよ。
時系列で順番に聴いてきて直近のサザンアルバム「キラーストリート」「葡萄」がワタシ的にはイマイチピンとこなかったので、正直まったく期待はしておりませんでしたが、「さくら」以来にガツンと来ました。
いきなりピアノロックンロール!
これはやられた。
ロックンロールって1950年代あたりの物を聞くと、例えばジェリー・リー・ルイスとかギターリフではなくリズミカルなピアノがガンガン引っ張っていくものが割と多いのですが、そういうったものもを思い出させますね。
「そういえば、ロックって別にギターでリフやらなくても成り立つんだったよね」みたいな。
これはかなり新鮮でした。
続く#2「若い広場」。これ当時まだサザン聴いていなかった時期に朝の連続ドラマの主題歌で毎日聴いていたのですが、結構好きでした。
アルバムでこうして聴くと思った以上に名曲でしたね。
古き良き歌謡曲でもありながら新鮮さもある。
「ミュージックマン」あたりから思い切りのいい歌謡曲の構成が少しだけ増えてきたかな?という印象がありましたが、
まったく躊躇なくど真ん中の歌謡曲というか、サザンの「葡萄」ではさらにそれが濃厚になった感があるのですが、
このアルバムでもその路線は引き続きと行ったところでしょうか?
#13「イヤン」もかなり濃厚な歌謡曲です。
ほんと昔NHKで日曜の夜にやってた時代劇風歌謡曲番組を思い出します。
なんか桑田さん歌謡曲もだんだん進化してきているような印象がありますね。
それからこのアルバム凄いのは私のハートを鷲掴みにする曲が復活してきてます。
#7「君への手紙」#9「百万本の赤いバラ」#11「オアシスと果樹園」#14「あなたの夢を見ていました」あたりは極上のポップメロディが完全復活していると感じました。
琴線に触れてくるというか、ハートの響き方が全然これまでと違うというか。
ガツンときましたね。
いやー、「がらくた」はめちゃめちゃ楽しめた。すごい。
2017年って桑田さん61歳なんですよね。還暦迎えてるのに無難なところに落ち着いていないというか。
#4「簪(かんざし)」#10「ほととぎす」にしてもこれまでになかったピアノ弾き語り的な感じで新鮮な試みだし、歌謡曲の要素も古き良きものをただ再現したり、セルフコピーっていうんじゃなくて、新しい歌謡曲を生み出しているというか。
桑田さんの場合、プレイやジャンルなどのやってきたことの全部が、後の作品にスケールアップしてモロに反映されるのがすごいなとは以前から思っていました。
サザンのデビューアルバムの時から色んなジャンルが混在していましたが、そのすべてのジャンルにおいて表現の幅と深さが増しているんですよね。
同じブルースナンバー同じレゲエナンバーでも後期に行くにつれすごみが増していきます。
しかもそれが60歳越えても続いているって感じです。
「この人って死ぬまで成長していく人なんだな」っていう。
どうしてこんな事を言うかというと、さらにその次のミニアルバムが凄いことになってるからです(笑)。
『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』ソロミニアルバム
これ最初はシングルかと思って聴いていなかったんですよ。
サザンの「葡萄」リリース後の未収録シングルもあまり響かなかったから期待はゼロでした。
開いてみたらシングルなのに6曲も入ってるから調べてみるとミニアルバム(EP)扱いだと。
で、聴いてみてぶっ飛びました。
何なんでしょう。たったの6曲なのにアルバム1枚聴いたくらいのこの満足感は(笑)。
このアルバム(EPですけど)を聴いていると、フルアルバムっていうのは「あんまり好きではない曲」によって評価がかなりダウンしていたんだなって思ったりします。
フルアルバムCDなので10数曲を収録するっていうのは、あくまでかつてのレコード会社の販売フォーマットでしかなくて、アーティストにとっての都合ではなかったわけです。
本当に厳選された「これ聴いておけば間違いない」って曲しか入っていなければ傑作と言われたであろう作品は山ほどあるんでしょうね、きっと。
そしてこれからの世の中、CDという販売形式はどんどん廃(すた)れていくので、「曲数」というしばりもなくなっていくんでしょう。
どんどんやってほしいですね、こういうの。
はっきり言って6曲全部すごいクオリティなんですが、1曲挙げるとすれば#5「炎の聖歌隊~choir(クワイア)」ですかね。
昔のサザンを思わせる久しぶりのバリバリの夏感と突き抜けるようなポップさ。
ビーチ・ボーイズばりのコーラスが来たときには「やられた!」ってなりました。
使い方がうますぎる。
オリジナルアルバム未収録曲にお宝の山!!
はい、以上ここまでが桑田ソロ+KUWATA BANDのアルバム6枚、ミニアルバム1枚のレビューでした。
毎回満を持しての作品というか、必ず何かしらの目的と意欲的な実験性のある素晴らしい作品ばかりです。
メインがサザンであるため桑田さんのソロ活動(KUWATA BAND含む)は1986年~2021年の35年間に7作品。
つまり5~6年に1枚のペースですね。
まあまあ間が空いているように感じるのですが、実はこの間にけっこうたくさんのアルバム未収録曲があります。
シングルのみ発表曲、シングルB面曲、ベストアルバムのみの収録曲などなど。
現在私がストリーミング(Spotify)で集められるだけ集めて、驚くなかれ、その数43曲(サザンは62曲でした)。
なのでオリジナルアルバムを全部聴いたという方は是非ともこの43曲をマイリスト登録して聴くことをおすすめします。
というのも『43曲のベスト盤といってもいいほどのクオリティの高さ』だからです。
ヒットシングルの「祭りのあと」「波乗りジョニー」「白い恋人達」などの大名曲もありますが、それ以外にも名曲だらけです。
ミスチルや奥田民生さんとのコラボ、美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」カヴァーなど見どころてんこ盛りですが、ワタシ的に強くおすすめしたいのはシングルB面曲ですかね。
ユースケ・サンタマリアさんとのテレビ番組主題歌「MUSICTIGER」や「HONKYJILL」など
「あんた達いい加減にしといたほうがいいぜ」
ってツッコミ入れたくなるほど、やりたい放題やっております(笑)。
ある意味桑田佳祐というお人の本当の音楽の幅というか懐の広さが垣間見えること請け合いの未収録曲たちです。
この未収録楽曲群が私にとって「孤独の太陽」の次に来た「びっくり」でしたね。
最後の最後に不意打ちでした。
このあたりの未収録楽曲を聞きたければベスト盤『アイ・ラブ・ユー』がわりと網羅してますよ⇩
サザンとソロを合わせると膨大な作品数
今回実はサザンの一気聴きも同時進行でやってます。
膨大な作品数です。
サザンのオリジナルアルバム15枚、桑田佳祐ソロ(KUWATA BAND含む)7枚、サザンオリジナルアルバム未収録62曲、桑田佳祐オリジナルアルバム未収録43曲。
オリジナルアルバム未収録曲をアルバム1枚12曲で換算するとアルバム約8~9枚分になります。
つまりサザン+桑田ソロの全作品は
オリジナル・アルバム30枚分以上
にもなるわけです。
これって洋楽でいうと伝説の大御所クラスであるローリング・ストーンズ(23枚)やデビッド・ボウイ(28枚)さえ上回る枚数なわけです。
ひえ~…でしたね。
もうここから上はプリンス(40枚)やフランク・ザッパ(100枚超え)なんかの『天才』と呼ばれる人たちの領域ですね…。
こりゃ大変なわけだ(笑)。
最初は
「サザンって思ったよりアルバム少ないな。桑田さんって意外に寡作の人なのかな?」
とか思っていたんですけど、聞き終わってみて桑田さんの創作意欲の凄まじさが分かったというか。
創作意欲もですけど、セールスは一度もズッこけることもなく常にシーンのトップだし、セールスと音楽表現を両立させたままでずっと走り続けているのは奇跡に近いです。
ポップシンガーとしてだけじゃなく、偉大なる作曲者、偉大なるロッカーとしてもっと認知されて然るべき人だと思うんですよね。
はい、というわけで本日は桑田佳祐の全アルバムを一気聴きしての解説&レビューをやってまいりました。
私の解説記事は
『ストリーミング配信時代に失われたライナーノーツを蘇らせる』
をコンセプトに執筆しております。
なので、本記事を読んでいただきながら、桑田佳祐の音楽をストリーミングでどっぷり楽しんでいただけたら幸いです。
ストリーミングがよく分からない方には分かりやすく解説してますで参考にしてください⇩。
ポップス アコースティック ロックの流れでロックンロールヒーローで桑田佳祐のソロワークスは個人的には完結してるな^ ^
「Keisuke kuwata」(ポップス)、「孤独の太陽」(アコースティック)、「ロックンロールヒーロー」(ロック)というわけですね。
なるほど!その『三部作的』視点で見たことはありませんでした。ありがとうございます。