『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』ドリーム・シアターの超大作1曲とカバーアルバム

どうもSimackyです。

本日はドリームシアターが1995年にリリースしたミニアルバム『A Change of Seasons』を語っていきますね。

EPとか言いながら全然中身は違う

本作は『アルバム』とは呼ばず『EP』という呼び方をされます。

ところで皆さん、EPって分かりますか?

これはレコード時代の名残りで、シングルよりは長く、フルアルバム『LP』よりは短い作品を指します。

CD時代で言うと『フルアルバム』に対し『ミニアルバム』と呼ばれる長さで、CDのサイズはシングルサイズではなくアルバムサイズです。

だからディスク自体の収録キャパはフルアルバムと同様78分まで入れようと思えば入れれます。

収録時間はフルアルバムが50~78分(マックス)ぐらいに対して20~30分台のものが多いかな?

収録曲は4~6曲程度といったところでしょうか?

まあ、この辺はあくまで目安であって明確な定義は存在しません。

ミュージシャン側にある意図を込めたい時にそう呼称している時があるということです。

本作の収録曲は確かに5曲なのでミニアルバムと呼ばれるように一見すると見えますが、長さがちょっと違うんですね。

なんと57分あります(笑)。

大名盤と呼ばれる2作目『イメージズ・アンド・ワーズ』と長さが同じなんです。

全然ミニちゃうやないかい。

どうしてこんな事になったかと言うと、それが先程述べた『ある意図を込めたい時』だからです。

ドリームシアターは本作をミニアルバムと呼称することであるリスクを避けているわけです。

「この作品はドリームシアターの通常の流れの中にある作品ではありませんよ。あくまで企画モノと捉えてくださいね」

つまり本作を通常のオリジナルフルアルバムの流れの中にある3作目『アウェイク』に続く4作目と捉えられると物議を醸すため、EPの長さではないにも関わらずこういう呼称にした、ということですね。

それでは本作の中身はどうなっているのでしょうか?

変則型のアルバム

本作は1曲目が23分ある大作のタイトルナンバー『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』です。

これは以前からライブで演奏されていて、ファンからCD収録を熱望されてきた背景があり、今回の収録となりました。

純然たるオリジナルソングです。

しかし、ここからが変則で、残りのナンバーはすべてカバー曲という構成になっているのです。

本作はオリジナル曲とカバー曲の構成が半々なため、オリジナルアルバムと呼ぶにはカバー曲多すぎだし、カバーアルバムと言い切ってしまうには重要な大作が入っているし…

という困ったちゃんな状況になっているわけです。

そこでちょうど使いまわしが良かった『EP』という表現にしたんだと思います。

この言葉を付与するだけで具体的な説明しなくても

「あ、今回の作品は通常作品とはちょっと違う企画モノなんだな」

という印象を与えることができます。

音楽ってCDのジャケット見て中身の音楽性が分かる、というものではないのでこういう「くくり」は非常に大事になってくるんですよ。

ミュージシャンは自分たちの音楽を「くくられること」を嫌いますが。

「俺たちを『ヴィジュアル系』の一言でくくらないでくれ。音楽もちゃんとやってんだから」

みたいな。

「だったらその口紅をやめて頭丸坊主にしてみたらいいだろ?」みたいな(笑)。

しかし、「くくり」があることで私たち消費者はある程度、ミスマッチのリスクを避けることができるわけですよ。

メタリカを好きになって

「あ、こういう激しい感じの曲が他にも聴きたいな」

と思ったら『スラッシュメタル』という呼称でくくられるバンドを買えば、大きく外すことはない。

少なくともフランク・シナトラを買うことにはならないでしょう。

分かりますか?

アーティストたちは

「俺達の音楽をメタルという先入観を捨てて音楽として聴いてくれ」

とか言います。

気持ちは分かります。

けれども『くくり』は実は消費者にとって非常に重要なんです。

だからこの「くくり」をおろそかにしてしまうと、13作目『アストニッシング』のように大ブーイングを買うことになってしまいます。

『サントラ』としてくくるべきものを『コンセプトアルバム』とくくってしまったがために起きた悲劇です。

あれは「くくり間違った」という良い事例です。

詳しく知りたい方はこちらをどうぞ⇩

本作は『EP』だと呼称することで、ファンは『企画モノ』と割り切った上で買うので

「全然思ってたのとちゃうやないかい!」

とファンの怒りを買うリスクは避けることができました。

ナイスくくり!

が、「企画モノ」の先入観があるがために、逆に正当な評価を受けなかった作品とも言えるかもしれません。

ただ、今から振り返ってみるとこの曲は、EPに落ち着くしかなかったんだと思います。

もともと2作目『イメージズ・アンド・ワーズ』制作時期にはすでに存在した曲らしいのですが、この曲のカラーは『イメージズ・アンド・ワーズ』に入れるにはキャッチーさが弱い。

浮きます。

3作目『アウェイク』のカラーなのですが、あの作品も75分もあるため、この23分もある大作を入れるには数曲をカットしなきゃならなかった。

だからといって眠らせておくにはもったいないし、何よりファンが熱望している。

シングルとしてリリースするようなタイプの楽曲ではないです。

シングルを出すっていうのはそもそもアルバムを宣伝するための側面だったり、ヒットさせてバンドの知名度を上げるためにするものであって、売れないタイプの曲を出すものではないからです。

キャッチーで2~3分の長さ、ラジオで流しやすいような曲でなければいけない。

「それならボーナストラックとくっつけてミニアルバムで出そう」と。

そしたら彼らのサービス精神が旺盛すぎてたくさんの曲を入れてしまい、

カバー曲の構成比のほうが大きくなってしまった

というところでしょうか。

・・・・・・

…うすうす気がついてはいたのですが…、あなたたちって…

ほんっと商才ないよね。

なんておちゃめな人たちなんだ(笑)。

これは褒め言葉です。

だって普通はこれ一曲でミニアルバムとして出してもいいわけでしょ?

1995年といえばCDバブル時代なので、日本では2曲で10分に満たないシングルを1000円とかでぼったくり販売していた時代ですよ?

私の大好きなXなんて1曲入りで普通に1000円で売ってましたよ。

ふざけきった時代です。

ああ、なんかフツフツと怒りが込み上げてきたけど、脱線するからやめておこう。

1曲23分で1500円でも誰も文句は言わないでしょう。

「けどレコード会社から2000円で販売しろって言われたですたい。じゃあ、もっと曲増やさないとファンに申し訳がなかですたい」

と、5分程度の曲を1,2曲入れりゃいいのに、お人好しの彼らはカバー曲を…

34分もぶち込みやがった。

タイトルナンバーの存在を食っとるやないかい。

どっちがメインか分からなくなるでしょ、そんなことしたら。

お人好しが過ぎるのでは?

あなたたち、自分をちょっと安売りしすぎちゃいませんか?

売り方に小賢しさとかやらしさがなくて、いつでもファンが喜ぶことを愚直に考えているというか。

こんな彼らが大好きです。

だからドリームシアターを聴き始めた人って中途半端な人があまりいないというか。

『イメージズ・アンド・ワーズ』で終わる人と、全部のアルバムを聴く人に分かれるというか。

やることがコアファンを喜ばせることが多いんですよね。

名曲「ア・チェンジ・オブ・シーズンズ」

先程「企画モノの先入観のせいで正当な評価を受けきれていない」と評しましたが、それは私自身がまさにそうだったからです。

ちなみに私が本作を聴いたのは大学に入学してすぐの頃、サークルの友達から『イメージズ・アンド・ワーズ』と一緒に借りた時です。

はっきり言って、全然ピンときませんでした。

というよりカバー曲ばかり聴いて、タイトルナンバーはいつも飛ばしてました。

血気盛んな若かりしSimackyにはあまりにもかったるくて。

というより今では一番好きな『アウェイク』の良さもわかっていなかった頃なので当然でしょう。

そんな私が本作を聴き始めたのは、ドリームシアターの全アルバム解説を本サイトにて開始したからです。

記事を書く度にアルバムレビューや解説ブログ、ウィキペディアなどを読み漁るのですが、この曲を名曲だと推す声が意外に多かった。

ドリーム・シアターがよくやる「20分クラスの長尺曲でアルバムのラストを締める」作品の場合、ほぼこの曲が引き合いに出されます。

そしてその時に「名曲『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』にまさるとも劣らない」みたいな表現をされていることがあったからですね。

「え?そんな名曲だったっけ?」

と聴き返してみたのですが…

「ん?こんな曲だったっけ?」

曲の途中までしか覚えてない。

つまり

いつもタルくなって途中でスキップしてた

ことを意味します(笑)。

あらためて聴き込んでみると、やはり聞き込みを要する作風ではありますね。

1回聴いてすぐにお気に入りになるような曲ではありません。

しかし、聴き込んでみると非常に作り込まれた作品であることが分かります。

曲に中だるみがない。

緊張感がずっと続くし、長尺曲で彼らが陥りがちな、ともすれば『テクニックのひけらかし』とも取れる長いインプロヴィゼイションもないし。

ラブリエの声はまさに全盛期といった感じで、凄まじい高音域までしっかり出てますね。

逆に言うとこれはもう完全再現は無理です(笑)。

その後のアルバムでラストを飾る20分クラスの大作である『オクタヴァリウム』(8作目)『イン・ザ・プレゼンス・オブ・エネミー』(9作目)『ザ・カウント・オブ・タスカニー』(10作目)といった名だたる名曲たちが生まれるきっかけになったとも言えますね。

「メトロポリス2000」というライブDVDでは「ア・チェンジ・オブ・シーズンズ」を1曲まるまるやっています。

You Tubeにも上がってますので見つけてみてください。

ラブリエがかなり苦しそう(笑)。

カバー曲は単純に楽しめる

どうして私がタイトルナンバーをすっ飛ばしてカバー曲ばかりを聴いていたかと言うと、こちらの出来がなかなか良いからです。

1995年ロンドンのライブでメドレー形式でやったものらしいのですが、これが純粋に良いんですよ。

#2エルトンジョン2曲メドレー、#3ディープ・パープル1曲、#4レッド・ツェッペリン3曲メドレー。

そしてラストの#5は『ザ・ビッグ・メドレー』と称して、ドリームシアターに影響を与えた様々なバンドの6曲をメドレーで。

順番にピンク・フロイド、カンサス、QUEEN、ジャーニー、ディクシー・ドレッグス、ジェネシスですね。

余談ですが、この中ではディクシー・ドレッグスだけがあまり知名度がないと思います(知らなかったの私だけ?)ので少しだけ解説を。

1978年デビューのアメリカのプログレ・ザザン・ジャズ・ロックバンドです。

あっちではわりとメジャーなバンドらしく、オリジナルアルバムは8作、そのうち3作目ではグラミー賞にノミネートもしております。

キーボードのケヴィン・ムーア脱退後、ジョーダン・ルーデスを初めて誘った時に一度断られるのですが、それはジョーダンがディクシー・ドレッグスのツアーメンバーになることを選んだかららしいです。

なので、本作では新キーボーディストであるデレク・シェリニアンが弾いており、次のフルアルバム4作目『フォーリング・イントゥ・インフィニティ』まで在籍します。

話がそれましたが、このカバー曲たちがすばらしいのはデレクの存在も非常に大きいです。

とくにエルトンジョンのカバーが素晴らしすぎます。

私はエルトン・ジョンは人間的に興味ないので未だにほとんど聞いたことはないのですが、この2曲のメドレーはかなり楽しめました。

かえってレッドツェッペリンの方が思い入れが強い分、納得がいかないと言うか(笑)、イライラしてきてすぐに原曲を聞き始めるという。

ツェッペリンはドラマーとして全曲コピーしてるから

「そこはそう叩いちゃくれるなよ!」

とかってそんな聴き方になっちゃうんですよ。

最後の「ザ・ビッグ・メドレー」はどれも一度は聴いたことあるようなメジャーなナンバーで、それらの曲をドリーム・シアター流のアレンジで仕上げているのが聞き所。

ジャーニーのカバー「Lovin’, Touchin’ , Squeezin’ 」が特に良かったかな。

それもそのはず!

なんとこの曲はラブリエがドリームシアターのオーディションにおいて、200人もの候補者を押しのけ見事合格を勝ち取った曲なのですから。

そんな曲を収録することができてラブリエもご満悦でしょう。


はい、というわけで今回は『 A Change of Seasons』を語ってきました。

「隠れ名盤」という表現はぴったりこないな。

「隠れ名曲が潜んでいるミニアルバム」(笑)。

ぜひ聴いてみてください。

ドリーム・シアターに関するすべての記事はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です