『ラウダー・ザン・ラブ』サウンドガーデン2作目 “魔作“と呼ばれる中毒性!

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はサウンドガーデンがメジャーデビュー作として1989年にリリースした2作目のオリジナルフルアルバム

『ラウダー・ザン・ラブ』

をたっぷり語っていきたいと思います。

シアトルシーンにおけるサウンドガーデンの立ち位置

本作はグランジ勢であるシアトル・シーンのバンドたちにとって、初のメジャーレーベルからのリリースとなりました。

つまり、グランジ・シーン初のプロデビューというわけです。

サウンドガーデンは、あの化け物ひしめくシアトル・アンダーグラウンド・シーンの頂点に立ったのです。

いや、プロデビューが早かったからということではなく、もともとライブハウス時代から、サウンドガーデンこそグランジのど真ん中にいたバンドだったと言えるでしょう。

それは音楽的な実力はもとより、人脈においてもシアトル人脈の中枢にいたからです。

もともと、サウンドガーデンは1984年の結成で、シアトル・グランジ勢の中では一番の古株。

この1984年というバンド結成時期は、『グランジ』という言葉の語源となったことで有名なグリーン・リヴァーと同じ年なんですね。

サブ・ポップレーベルからの記念すべき最初のレコードリリースとなった『ドライ・アズ・ア・ボーン』

ちょっと話がサウンドガーデンから離れますが、付いてきてくださいよ?

ちゃんと戻りますから(笑)。

このグリーン・リヴァーというバンドもシアトル・シーンを語る上で重要なんですよ。

グリーン・リヴァーの音楽が重要ということもありますが、それ以上に重要なのはそこにいたメンバーたちです。

そのメンバー達が後に凄くなっていくからです。

なんだかヤードバーズの三大ギタリストみたいな話なんですが(笑)。

ヤードバーズがとんでもなく凄くて売れたバンドというわけではないですが、たまたまそこに在籍したギタリストたちが後に開花して世界三大ギタリストと呼ばれていく、みたいなものです(ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジね)。

グリーン・リヴァーに在籍した人たちが、後にグランジを代表するバンドたちを生み出します。

かたや、このバンドを作ったボーカルのマーク・アームは、グリーン・リヴァー解散後、あのマッド・ハニーを結成します。

このマッドハニーもシアトル勢の音楽的指針となった重要なバンド。

影響力絶大の『スーパーファズ・ビッグマフ』

かたや、グリーン・リヴァーでギターとベースだったストーン・ゴッサード、ジェフ・アメンの二人はその後、マザー・ラブ・ボーンを結成。

けど、マザー・ラブ・ボーンはアルバム出す前にボーカリストが死んじゃったんで(オーバードーズ)、そのボーカルの人とルームメイトだったサウンドガーデンのクリス・コーネルがトリビュート企画を行います。

さぁ、ここでサウンドガーデンが絡んでくるわけですよ。

シアトル人脈に人望のあるクリスが

「ダチの追悼のために、いっちょアルバムでも作るか!ちょっとお前らも手伝えよ」

とメンバーを集める、と。

それが

テンプル・オブ・ザ・ドッグ

というバンドです。

クリスは本業のサウンドガーデンがあるから、もとから一発限りの企画バンドだったんですよ。

ここに集めたメンバーは先述した元マザー・ラブ・ボーンの二人、ジェフとストーン、ジェフの幼馴染であるマイク・マクレディ、そして引っ越してきたばかりのエディ・ヴェダー。

なんか耳にしたことのある名前がパラパラ出てきましたね(笑)。

この1発だけの企画バンド、テンプル・オブ・ザ・ドッグで出した、たった1枚のアルバム『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』が、後に大ヒットします。

意外に良いんだこれがまた

こんな実績も何も無いほぼ無名の人たちが組んだ一発限りの企画バンドが、なんでヒットしたのかは後述します。

この『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』も、音楽的には非常に素晴らしい充実作だと私は思います。

ほぼ全ての楽曲をクリスが作っているにも関わらず、サウンドガーデンとは全然違うんですよ。

2000年代に入ってクリスのソロで見せ始める音楽性を、すでにこの時に見せているんだから驚きです。

音楽的実力の底が見えない…。

で、実はこのアルバムを完成させた直後、よっぽど手応えを感じたのか、テンプル・オブ・ザ・ドッグのメンバーたちも

「おい、なんか作ってる時も楽しかったけど、俺らならいけんじゃね?いっそのことバンド組んじまおうぜ!」

となります。

そう、テンプル・オブ・ザ・ドッグに集めたメンバーが、その直後にパール・ジャムを結成することになるんです。

で半年後、あの大ヒットアルバム『ten』が生まれていくわけですね(1991年8月リリース)。

『ten』JOJO4部でも使われた有名なジャケ

ここからのシアトル勢の勢いは怒涛ですよ。

1991年4月にこの『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』が出て以降、同年8月パール・ジャム『Ten』、同年9月ニルヴァーナ『ネヴァーマインド』、同年10月サウンドガーデン『バッドモーターフィンガー』!?

90年代のグランジ・オルタナティブの『名盤トップ5選』に選ばれるような名盤たちが1ヶ月毎にリリースされます。

す、凄い…。

これらの名盤たちもリリース当初からいきなり売れたわけではなく、『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』がMTVでブレイクし、1991年12月あたりからチャートを急上昇します。

そして1992年に入り『ネヴァーマインド』がチャート1位に君臨し続け、シアトル勢に注目が集まってくる中で『Ten』『バッドモーターフィンガー』も引っ張られるようにどんどんチャートを駆け上がっていきます。

そんな中、

「なんとパール・ジャムとサウンドガーデンが合体して出来上がったアルバムがあるらしい」

ということで、『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』が後発的にブレイクし、全米5位まで急浮上しちゃったんです。

なんと最終的には

プラチナ・ディスク(100万枚セールス)

まで獲得しちゃいました。

1992年の春頃で、『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』のリリースから1年ぐらい経ってから。

凄い話ですよね。

組んだ当時はスーパーバンドでもないほぼ無名の人たちだったんですけど、今から振り返るとサウンドガーデンとパール・ジャムの合体とういう超スーパーバンド!(サウンドガーデンからはドラムのマット・キャメロンも参加してるからね)

こんなことをやってのけるクリス・コーネルって人はやっぱりただもんじゃないですよ。

サウンドガーデンが、というよりはクリス・コーネルこそ、あの伝説的なシアトル・グランジシーンの中心人物だったことを物語ってます。

そして、サウンドガーデンのマニアックな音楽性とは別に、彼がヒットメーカーとしての才能をかなりの初期段階から持っていたことを証明しています。

どういう性格なのかは分かりませんが、とにかくすぐ行動する人ですね。

いろいろ打算を考える前に、

「一緒に演っちゃえばいいじゃん」

みたいなノリというか(笑)。

テンプル・オブ・ザ・ドッグの結成だけでも人生で1回あるかないかの奇跡なのに、もう1回奇跡的なプロジェクトを始動させるんですよ?

そう、それが2001年に結成される

オーディオ・スレイブです。

『オーディオスレイブ』伝説のスーパーバンドの記念すべきデビュー作

ザック・デ・ラ・ロッチャの抜けたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとクリス・コーネルの奇跡の合体!

しかも今度は一時的なプロジェクトに終わらず、オリジナルアルバムを3枚も残します。

もうレジェンドです、この人。

世の中に音楽的な才能のある人はたくさんいますが、それらが上手くまとまるためには『人間的な器の大きさ』がいるんです。

だから実力とネームバリューがある人たちが一緒になったって、ほとんど上手くいくことはありません。

それを人生で2回も成し遂げることの凄さ。

クリス…あんたやっぱり死ぬのが早すぎたよ…。

兄貴分でオラオラなタイプではないようですが、皆に人望の厚いフランクな人だったようです。

こういうところはグランジの象徴とも言えるニルヴァーナのカート・コバーンとは真反対ですよね。

けれども、そのフランクな人望の厚さとは似ても似つかない『エゴの塊のような音楽』を表現していたのがこの頃のサウンドガーデンなんです。

魔作『ラウダー・ザン・ラブ』

本作『ラウダー・ザン・ラブ』は『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』より2年前(1989年)にリリースされており、

サウンドガーデンで一番売れなかったアルバム

なんですよ。

メジャーデビュー作なのに、累計では前作『ウルトラメガOK』よりも売れてないってどんだけ?(笑)

インディ盤『ウルトラメガOK』1988年

そしてそのセールス実績にも納得してしまうだけのマニアックさを持っています。

というよりも

サウンドガーデンをサウンドガーデンたらしめている“核”の部分が一番濃厚に詰まったアルバム

と言えます。

私の場合は、これを買った大学生当時、

「これはインディのB級メタルなんかを漁っているような、超ヘヴィリスナー向けの作品だぞ。俺には無理…」

って感じました。

リスナーとして行き着くとこまで行き着いちゃった人が聞く音楽というか(笑)、普通の『かっこいい音楽』には飽きてきた人たちが聞く音楽というか。

けど、大ヒット作であり最高傑作とも呼び声の高い次作『バッドモーターフィンガー』に打ちのめされて、

「こういうエッセンスがもっと欲しい。サウンドガーデン中毒ですがな!もっと毒をくれ!」

ってなってくると、徐々に本作の凄さが分かってきます。

「これってサウンドガーデンらしさっていう意味では『バッドモーターフィンガー』よりも濃くね?まさに俺が欲しかった“毒”がこのアルバムにはある!」

って気がつくんですね。

以前、アルバムを解説したアリス・イン・チェインズにおける3作目『アリス・イン・チェインズ』みたいな位置づけですね。

アリスで一番“邪悪“なアルバム

「4オクターブの音域が出せる」

と言われたクリスの高音の凄まじさは、この時期がやっぱり全盛期ですね。

このアルバムからの楽曲なんて絶対30代以降は歌えません(笑)。

「え?声変わりしてないんですか?」

みたいな。

甲高く、音圧も太いし、「お前はAC/ DCか!?」ってくらいですが、クリスにはシャウトだけじゃなく“伸び”もあるから凄い。

ガンズのアクセルみたいにファルセット(裏声)でもないのが凄い。

もうね、歳とったらこんなの歌えるはずがありません(笑)。

「グランジ・バンドにしてはボーカルがやたら上手くて、演奏も上手い。グランジのパンクっぽさはなくてメタル寄り」

という世間のサウンドガーデンに対する印象そのままのアルバムですね。

キム・セイルのギターソロなんて

「お前はドリームシアターか?」

ってくらい超絶スピードの変態テクニック。

で、ベースも変。

コード的に「ちょっとズレているのでは?」っていう居心地の悪さで(もちろん狙ってやってる)、より不穏かつソワソワしてくるベースラインを弾いているのは日系人のヒロ・ヤマモト。

この人のベースラインが本当に不愉快なんですよ(笑)。

実は本作の不穏な雰囲気はこの人の存在が大きいです。

ブラックサバスにおけるギーザー・バトラーのように、場の雰囲気を陰ながら支配してます。

次作『バッドモーターフィンガー』からはベン・シェパードに替わりますが、この不穏なベースラインはかなり弱まりますので、ヒロ・ヤマモトがどんだけマニアックな嗜好の持ち主だったのかが分かりますよ。

サウンドガーデンらしさは確かに特濃級ですが、初心者が最初に手にとっていいわけがありません(笑)。

特にニルヴァーナでグランジに目覚めて、サウンドガーデンに流れてきた人は「オエッ」って“もどす“んじゃないかな?

前作『ウルトラメガOK』にあった、パンクのルーズさ(適当さ)とか、作り込まないラフな感じとか、そういう印象は本作ではかなり弱まってます。

その意味では「脱・グランジ」「脱・インディ」的な意味合いのあるアルバムかも知れません。

より玄人的で洗練されていて、エネルギーを衝動的にぶつけていると言うより、絵画的・視覚的なイメージ世界を表現しようとしてます。

それじゃ楽曲紹介いってみましょうか。

『ラウダー・ザン・ラブ』楽曲紹介

#1『Ugly Truth(アグリィ・トゥルース)』

オープニングナンバーはまさにサウンドガーデンっていうイントロのギターで始まります。

メタルのリフっぽくならないのは、キムのギターブラッシング的な「キンキンする金属音」的なリードギターが重なってくるからでしょうね。

もう1曲目からクリスのボーカルが前作と全然違うのが分かります。

前作ではもっとパンク的に“わちゃわちゃ“歌っていたのですが、本格派のボーカルラインになったというか。

しっかしこの曲でのキムのギターはやたらスペーシーというか。

いや、この曲ではもはやスピリチュアルと表現したほうがいいのかも。

聴いてると『宇宙の真理』にたどり着きそうです(笑)。

#2『Hands All Over(ハンズ・オール・オーヴァー)』

クリスの声がさらに上がります。

まるで上限知らず。

相変わらずスペーシーな印象がついて回るのですが、意外とジェーンズ・アディクションの1作目とかと共通点を見つけられたりします。

凄く空間の広さを感じる音作りというか。

で、その裏でベースがブインブインとグルーブを引っ張ってます。

けっこうかっこいいんですよね、この曲。

このビデオクリップねぇ、なんかズレてるよ、センスが(笑)。

その全身白塗りの女は一体何を表してんだ?

なんか変態的でフランク・ザッパとかの世界観というか、初期のレッチリのビデオ見てるみたいというか。

クリスなんて良い服着て黙って立ってりゃいいとこの坊っちゃんみたいな小綺麗な顔立ちしているのに、長所を活かさないビデオと言うか、やってることがもったいなさ過ぎると言うか(笑)。

#3『Gun(ガン)』

スーパーヘヴィ級チャンピオンの登場です。

これが最初の頃は憂鬱で仕方がないナンバーだったのですが、『バッドモーターフィンガー』聴き込んでから戻ってくると、

「うおっ!?これめっちゃかっちょいいぞ!」

ってなる曲です。

今は一番好きかもですね。

『バッドモーターフィンガー』の#2#3なんかの超スロー&超ヘヴィナンバーが気持ちよく感じだすと、おそらくハマります。

この毒っ気はヤバい。

で、そっからいきなり突っ走る、みたいな。

ブラックサバスじゃん。

このキムのギターソロなんかメロディ無茶苦茶なんだけど、やたらかっこいい。

#4『Power Trip(パワー・トリップ )』

まったりと憂鬱で気だるい曲です。

これなんて、ライブでどんな聴き方すれば良いんだ?って感じなんですが。

もう、酒のんで待ったりするしかない(笑)。

#5『Get on the Snake(ゲット・オン・ザ・スネーク)』

やたらポップな曲が登場。

けど、よくよく冷静になると、別に全然ポップじゃない。

ただ、本作に並ぶ楽曲たちがあまりに悲惨なので(笑)、不思議とそう感じてしまう。

「シングルいけんじゃね?」

と勘違いしてしまいそうです。

いや、いけねぇって。

9/4拍子だかなんだか変なリズム使ってるらしいぞ?

変態リズムだぞ?

聴きやすそうでいて、意外にノリ辛い。

嫌がらせ?(笑)

#6『Full on Kevin’s Mom(ケビンズ・マム )』

なんてアングラな雰囲気を放つ曲でしょう。

忙しなく疾走します。

なにかに追い立てられるかのような焦燥感を煽りますが、コーラスがなんかのんびりしていてクスッと笑えます。

ギターソロでいきなり雰囲気がガラッと変わるとこがかなり好きです。

ここの時のマットのドラムがたまんないんですよね。

#7『Loud Love(ラウド・ラブ)』

タイトルナンバーの登場です。

これは名曲ですね。

本作の中で最も完成度の高い楽曲というか、変態性の低い楽曲というか(笑)。

リズム的にはひねくれまくってきた彼らが、いわゆる『王道』で勝負してますよ。

4/4拍子で、しっかり歌を聴かせてきます。

これもこの時でないと歌えない名曲ですね。

↑なんかこの頃のクリス・コーネルって、ライブ映像見てもいつも裸で、むっさ苦しいフェロモンが出てるんですよね(笑)。

あんまり知られていないけど、初期のレッチリのビデオもまさにこんな感じだったな。

アンソニーとかわけのわからないフェロモンが出ていたものですが、この頃のクリスも後のオーディオスレイブとかソロとかのビデオがセレブに見えるくらい、ストリートの匂いプンプンさせてますね。

ほとんど野生児(笑)。

#8『I Awake(アイ・アウェイク)』

スーパーヘヴィ級チャンピオンに挑戦を挑んだ楽曲です(笑)。

いや、チャンピオンだった#3『Gun』よりももっとヤバいですね。

サウンドガーデン史上、最重量級でしょう。

もはや絶望しかない。

アリス・イン・チェインズよりよっぽど酷いです。

本作を『魔作』たらしめているナンバーですね。

クリスの声はこの重量リフとは逆で、サウンドガーデン史上一番高い声を出してますね。

この声を余裕で、あれだけ伸びやかに出せるなんてどうかしてます。

気持ちが落ち込んだ時には絶対に聴いてはいけない曲ですよ!

ただ、このあたりのナンバーこそ本作の醍醐味ですよ。

私は結構好きです。

#9『No Wrong No Right(ノー・ロング・ノー・ライト)』

ベースのラインが怖い。

不気味すぎる。

けど、聴き込むと色々演ってて面白いですよ。

前曲からの流れがもう暗すぎて暗すぎて、このへんでこのアルバムを聴くのがかなり辛くなってきますよ。

覚悟しといてくださいね(笑)。

中毒になってくると

「俺をもっと奈落のどん底に落としてくれ…」

って気にもなってきますが、それは末期症状ですので気をつけてくださいね(笑)。

ファッションとかルックスとかは全然普通の人たちなのに、こっちのほうがマリリン・マンソンなんかよりよっぽど怖い。

#10『Uncovered(アンカヴァード)』

まるで4作目『スーパーアンノウン』とかにボーナストラックで入ってそうな雰囲気の曲ですね(笑)。

ボーナストラックになるといきなり肩の力が抜けた曲になるから、この人たちって。

#11『Big Dumb Sex(ビッグ・ダム・セックス)』

「ん?何?10曲目からは全部ボーナストラックなの、このアルバム?」

っていうくらい、これまた肩の力が抜けたというか、悪夢が終わったというか。

でも、アルバムの毒素を中和するほど明るい曲調でもなく、わりと中途半端な存在というか、救いになれそうで救いになれてない曲(笑)。

海に溺れて死にそうな私に

「これに掴まれ!」

って差し出されたロープが

短すぎて足りなかった

みたいな曲ですね。

#12『Full On (フル・オン)』

3分に満たない小曲で静かにフィナーレを迎えます。

うん、今気がついたけど、この人たちって、いわゆる

エンディング的な曲を作るセンスはない

かもですね。

よく考えてみると、彼らのアルバムはエンディングで感動したことがないというか。

「ああ、この曲で終わるからこのアルバムは良いんだよな」

っていう気になったことがないと言うか。

酷いときなんて『1分間無音』のナンバーで終わったときもあります(『ウルトラメガOK』ね)。

そう考えると、この曲はそれら『ラスト曲』の中では一番まともかもしれないです。

なにやら「オーオー」言うて大団円的な演出も試みてますし。

#9までが怒涛のように暗かったので、#10にこの曲を持ってきて潔く10曲で終わらせれば、暗さからのギャップでこの曲だってもっと光ると思うし、アルバムがビシッと締まるので、聴き終わりの印象がガラッと変わると思うんですよね。

1989年という、ちょうどレコードとCDの切り替わりの時期ということもあって、『収録時間の上限が伸びている』ということが、作風に影響を与えたものと思われます。

8~10曲でアルバム1枚完成していたのが、12~15曲必要とされる時代になってくるんですよ。

収録楽曲数(時間)を伸ばすようにレコード会社から要望があり、それまでであれば収録を見送るはずのクオリティの楽曲まで入れ込まざるを得ない、という弊害が、この時期は多くのアーティストにも見られるんですよね。


はい、というわけで本日は『ラウダー・ザン・ラブ』をたっぷり語ってきました。

最初に聴いちゃあ駄目ですよ。

本作を聴くのは最後のお楽しみに取っておいてくださいな。

それではまた!

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