『がらくた』サザン・桑田佳祐の完全復活作!

本記事はプロモーションを含みます。

どうもsimackyです。

本日は2017年にリリースされた桑田佳祐ソロ5作目のオリジナルフルアルバム

がらくた

を語っていきます。

当サイト『ひよこまめ』における『サザンカテゴリー』の記事としてはついに20記事目になります。

いや~、長いようで短いようで。

しかし、アルバム解説をするっていうのはいいもんですよ。

アルバム1枚解説するごとにあらゆるレビューやブログ、You Tubeの解説動画、時には自伝本なんかまで片っ端から目を通すので、めっちゃ詳しくなります。

音楽だってとことん聴き込みますしね。

なんていうか、娯楽っていうより『歴史の勉強』をしている気分になってきます。

でも考えてみると、これも時代がすぎれば文化研究の一種として学問になる日が来るんでしょうからね。

海外アーティストよりも日本のアーティストの方が情報量が遥かに多いので、サザンなんかを題材にすれば、同じ解説記事1本でもメタリカやオジーの記事1本より大変なんですよ。

しかし、その分愛着もひとしお。

あ、皆さんも、私の記事をお供に、あ、隅の隅までぇ!、あ、髄の髄までぇ!

ズズズいぃーーーーっとぉ、

サザン・桑田佳祐を味わい尽くしてまいりやしょう!

本作に至るまでの流れ

本作がリリースされたのは2017年。

2009年からサザンが無期限の活動休止に入り、4作目のソロアルバムであり前作の『ミュージックマン』の制作に取り掛かります。

ここで食道ガンが発覚し、入院・手術・治療のすえ、ようやく『ミュージックマン』のリリースにこぎつけたのは2011年。

前作である『ロックンロールヒーロー』のロック路線から、歌モノ路線に大きく舵を切った作風は、17曲もの多様な楽曲をパンパンに詰め込んだ大作となりました。

それまで『ロックンロールヒーロー』『キラーストリート』の制作で、「歌っていてエクスタシーを感じられるものが弱かった」という反省から、「自分が歌って楽しくて心地良いもの」を目指して作られました。

桑田さん本人としても、ガンになることとは関係なく、最初から『集大成を作る』という意識で取り組まれているだけあって、そのメロディは久々に感性の深いところまでガッツリ鷲掴みにしてくるクオリティに仕上がっており、最高傑作と呼ばれる『孤独の太陽』に迫るほどの評価を得ています(私はそうでもないですが)。

そして『ミュージックマン』リリース直後の東日本大震災と復興応援のチャリティ活動を経て、紫綬褒章の受賞、年末ライブ『ひつじだよ全員集合!』での炎上騒ぎ。

すったもんだを乗り越えて2015年にはサザン15作目のアルバム『葡萄』をリリース、ツアー終了からの本作の制作という流れですね。

『ミュージックマン』から思いっきり歌モノに振った流れは『葡萄』でも継続され、それに加え歌謡曲要素が強くなりました。

本作でもその歌謡曲要素は継続されていますね。

なのでここ2作はソロ・サザンという違いがあるとは言え、一連の流れの上のことだと私は捉えています。

『葡萄』からは極端に英語歌詞が減って、日本語の歌詞に対するこだわりのみならず、音楽性に関しも古き良き日本歌謡を掘り返すような作風になります。

昔から大好きだった歌謡曲を「恥ずかしがって周りに好きだとも言えずに」ロックを追求してきた桑田さんが、「葡萄」以降、開き直ったというか。

「恥ずかしがってた過去の俺ってバカだったな」

みたいなことを桑田さんも言ってましたしね。

表現が適切なのかは分かりませんが、小学生で川釣りに目覚めた人が50年釣りを追求して、色んな海で色んな釣り方を追求したけど、最終的には川でフナ釣りという原点に戻る、みたいなのに近いのかもしれません。

「なんだかんだでこれこそ釣りの醍醐味でしょ!」

みたいな。

どんな例え?(笑)

評価が思わしくない理由

この『がらくた』は私の中で

「久々にキタ~!これぞ桑田佳祐のポップセンス爆発!」

と拳を握るほど満足度の高い作品でした。

ソロとしては最高傑作『孤独の太陽』(1994年)以来の傑作だと思いましたね。

サザン含めてということであれば『さくら』(1998年)以来ですかね。

実は私、2000年代に入ってからの作品はソロ・サザンを通してあんまり感動しなかったんですよ。

正確には1990年代以前の作品ほどぐっとくるものがなかったというか。

『ロックンロール・ヒーロー』(2002年)『キラーストリート』(2005年)、『ミュージックマン』(2011年)『葡萄』(2015年)、の4作品ですね。

クオリティは文句なしだし、好きなのは好きです。

けれども『KAMAKURA』『世に万葉~』『孤独の太陽』『ヤングラブ』『さくら』レベルでハートにぶっ刺さってくるようなものを感じられなかったんですね。

それが久々にガツンときました。

なのに本作はレビュー読んでもそこまで評価が高くありません。

別に酷評されているわけじゃないけど、大絶賛されているわけじゃあないですね。

『ミュージックマン』の評価はかなり高いのですが、それに比べるとかなり低いです。

おや~?なぜ?

確かに『ミュージックマン』は本人が「音楽人生の集大成を作るぐらいの執念で作り上げた」というだけあって、数曲はグッと来るものがありましたが、あとひと押しという手応えで、本作の方がインパクト強かったです。

それじゃあ、どうして本作のレビューがぱっとしないのか考えてみました。

まあ、理由はたくさんあると思うのですが、私流に勝手に考察してみました。

一番大きな理由、それは

満足度

が足りないんじゃないかな?と思いました。

本作は残念ながら、全15曲中7曲と、約半数の楽曲がシングルでの既発曲となってしまったんですよ。

これはサザン『キラーストリート』(2005年)以降の作品としては、もっとも既発曲の構成比が大きいです。

なんと46%になります。

あれだけ

「既発曲入れすぎ。ベスト盤やシングルスじゃないんだから」

って叩かれた『キラーストリート』ですら既発曲は全30曲中12曲で

40%です。

12曲も既発曲が入ってしまった『キラーストリート』よりも本作の方が割合が大きんですよ。

前作の『ミュージックマン』は全17曲中3曲で

17%だったということを考えると、これはやりすぎです。

だって初お披露目の楽曲がたったの8曲なんですから。

さらに言えば、#13「Yin Yang」に関してはシングルリリースされてから本作リリースの時点で4年が経ってますからね。

これどういうことかというとですね?

例えば、学生ファンだったら

「それ私が小6の時発売された曲じゃん!私もう高3なのに今さらこれ収録すんの!?」

って感じですよ。

高3にとって小6ってのは大昔なんですよ。

私のような40代の男と若い10~20代の人の4年は全然違います。

大昔の曲持ってきて今さらニューアルバム言われてもって感じでしょう。

これも良くなかったと思うんですよね。

『ミュージックマン』での初お披露目曲が17曲中14曲で、たっぷりお腹いっぱい大満足だった人にとって、今回の初お披露目曲が8曲というのはミニアルバム掴まされたようなものでしょう。

別にそのことを直接的に非難しているレビューはありませんが、聴き終えた後の満足感が小さいということが、本作の評価の低さに繋がっているのではないでしょうか。

私も昔Xの『ダリア』というアルバムで同じような思いをしたことがあるので、これはすごく気持ちが分かります。

待ちに待たせた5年ぶりのアルバムで、

10曲中6曲が既発シングル

という神をも恐れぬ所業でした(笑)。

しかも全部A面曲ですからもっとたちが悪い。

しかし、⇧の記事でも書いたのですが、これはシングルを買っていなかった人や、後追いでファンになってアルバムから入った人であれば完璧な作品に感じられたことでしょう。

なぜなら既発シングル曲は全てオリコン1位と2位を獲得した名曲たちなのですから、そんな楽曲が6割を占めるアルバムのクオリティたるや凄まじいものがあるわけですよ。

なので、リアルタイムの私はブチ切れましたが、後追いファンには非常に人気の高い作品です。

これは本作『がらくた』にも同じことが言えると思うんですよね。

今回は私の立場が逆で、シングル全く聞いてなかったので、15曲たっぷり楽しめましたよ。

私のような人にとっては『ミュージックマン』を超えてきた、という話なんです。

かつてはガンというミュージシャン生命の危機にさらされながらも、そこからさらに飛躍を続けている桑田さんに恐れを覚えるほどの、いや、呆れ返るほどの才能を感じた快作であり、本当の意味で『桑田佳祐完全復活!』を感じました。

『がらくた』楽曲解説

#1『過ぎ去りし日々 (ゴーイング・ダウン)』

のっけから『いなせな』ロックンロール!

これはシビレました。

『いなせな』ってどういう意味なんだ?(笑)

60歳を超えた桑田さんのロックンロールスピリッツをとくと味わえます。

この曲の存在だけで本作の“格“が3段階くらい上がりますね。

どうも、サザンよりソロの方がバンド感が出ていると感じるのは私だけでしょうか?

『ロックンロール・ヒーロー』でもそう感じたのですが、なんかソロになるとバンド感が自由に開放される傾向がありますよね?

自分で「トップ・オブ・ザ・ポップス」言い始めたかと思えば、「ワン・オク・ロック 妬むジェラシー」ですぐさま落とす自虐ネタ。

最高っスね。

しかし韻の踏み方すげぇな。

#2『若い広場』

桑田歌謡ナンバーの頂点が出来上がりました。

いかにも演歌、いかにも昭和歌謡、いかにも時代劇風…という試作を繰り返してきた桑田さんがオリジナルの歌謡曲を生み出した感があります

NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』の主題歌になったので、あの頃は毎朝聴いてたな~。

う~ん、有村架純が浮かんでくる…。

「お前朝ドラとか見るやつだったの?」

っていう声が聴こえてきそうですが(笑)。

朝ドラの主題歌ってやっぱこういうのがいい!

世界観が昭和だから見事なまでにハマりすぎ。

他のアーティストのはうるさすぎなんですよね。

#3『大河の一滴』

『シュラバラバンバ』や『エロティカ・セブン』を思い起こさせる雰囲気を持ったナンバー。

つまり「いかがわしい」ってことです(笑)。

どうも『不倫』を歌っているようにも思えるのですが。

罪悪感だとか躊躇(ためら)いだとかも世間にとっちゃ何の意味もないもので、そんなものは時代の流れとともに風に吹かれてなくなっちまうのさ、と。

それでいて背徳感の甘い蜜をを楽しんでいるようにも思えます。

なんなんでしょうね、昔から感じるこの桑田さんの不倫肯定的な感じは(笑)。

桑田さんのエロの根底に流れる強烈な妄想癖が垣間見えるようです。

ボブ・ディランが歌詞に出てきますが、『Dylan』と書いて『神』と読むのには吹き出してしまいました(笑)。

おそらく桑田さんと原さんによるものと思われる語りはなんか怖いんですけど。

#4『簪 / かんざし』

暗い静かなバラードです。

またしても『禁断の愛』なのか?

前曲から雰囲気的に『さくら』みたいな流れになってきてますけど、大丈夫か?

また『マイ・フェラ・レディ』とか出てこないだろうな?(笑)

『まゆらに萌ゆる』『独り言(ご)ちた』など、日本文学風の単語が散りばめられ、日本独特の背徳感や情念が醸し出されます。

こういう歌詞からはもはや貫禄を感じます。

#5『愛のプレリュード』

ああ~軽い…癒やされる(笑)。

友達以上恋人未満の歌でしょうかね?

平和だ。

少なくとも身投げとかはしなさそうで(笑)。

#6『愛のささくれ~Nobody loves me』

下心満載のどうしようもないスケベ男。

これが男です。

みじめです。

思わず、

キャバクラ行っとけ

と言いたくもなるのですが、このタイプはキャバ嬢から見たら、鴨がネギ背負って歩いてるようなもの。

全てをむしり取られるから行かないほうが良いでしょうね。

で、結論。

ソープ行っとけ。

#7『君への手紙』

シングル曲で、ウッチャンこと内村光良の監督映画『金メダル男』の主題歌に提供した曲です。

ウッチャンとはお互いのテレビ番組に出演しあっていた仲で、今回の映画主題歌を桑田さんに依頼。

映画DVDを同封した手紙を送ったらしく、これに対して桑田さんが作った曲を1週間で返送したとのこと。

そういったわけで、この曲の歌詞の内容は映画本編のストーリーに関係したものとなってます。

いくつになっても『一番になるために』挑戦を続ける主人公の物語です。

その生き方は無様そのもので、『羽のない鳥』『櫓(ろ)のない船』に例えていますが、「やり方分かんないけどとにかくがむしゃらに前に進もうとする主人公」に自分を重ねたかのような歌詞ですね。

#8『サイテーのワル』

現代におけるネット社会の負の側面、『暴露』や『炎上』『誹謗中傷』といったものの恐怖を歌ってます。

桑田さんのような著名人であれば、こういう世の中は恐怖でしょうね。

おそらく『ひつじだよ全員集合!』の時のバッシングで味わった恐怖を歌にしたのではないかと思います。

昨日までは称賛してくれてた人たちが、ほんのちょっとした落ち度を見つけるなり、いきなり手のひら返したようにバッシングしてくるという体験は人間不信に陥ってしまいそうですよね。

私もこうして書いているブログが、いつ何の原因で炎上することやら。

ただ、最近はこれも社会問題になってきていて、人間には誰にでもあるちょっとした失敗に対して個人情報をさらされるなど、社会的に抹殺されるような攻撃はやりすぎだと思います。

#9『百万本の赤い薔薇』

まるでAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』みたいな始まり方をします(笑)。

来ましたね~、グッドメロディ。

しっかし、前向き加減と後ろ向き加減の振り幅がすごいな、このアルバム。

一瞬、原さんが歌い出しそうな雰囲気も持っているのですが、それもそのはず。

作曲は桑田さんですが、編曲は原さんに任せているとのこと。

やっぱり個性って雰囲気に出るものなんですね。

情報番組『ユアタイム』のテーマ曲で、歌詞に出てくる『紗椰(さや)』とは番組キャスターの市川紗椰さんのことです。

タイアップの影響が歌詞に出てくることが増えましたね。

#10『ほととぎす[杜鵑草]』

静かなるピアノバラード。

『かんざし』と違いこっちは中性的な世界観ですね。

人の営みはこの宇宙の大きな時間軸の中では一瞬の儚いものだけれども、その一瞬だからこそ愛おしく感じるという、まさに死地(ガン)から生還した人ならではの死生観というか。

この曲は「本作で一番好きだ」という声多数です。

#11『オアシスと果樹園』

アルバム発売前から色んな番組で歌われていたので知名度が非常に高いですね。

やたら南国を感じるのはこのパーカッションですね。

これシングルで出さずに『ヨシ子さん』出すっていうのが面白い(笑)。

#12『ヨシ子さん』

はい、大問題作のシングルです。

こういうのをシングル・カットするのが桑田佳祐というお人です。

なんか後期のプリンスっぽくも感じるのですが、桑田さんがプリンスの音楽に影響を受けたとかいう発言は全く無いので気のせいでしょう。

歌詞も音楽も自由すぎますね。

エキゾチックでワールドミュージック的でダンサブルでゲームサントラ的というごった煮な音楽の上に、ふと思いついたようなどうでもいいつぶやき歌詞が入ります。

普通だったらこれってシングルのB面にしてる奴ですよね(笑)。

#13『「Yin Yangイヤン

またしてもシングル曲。

後半に集めてきましたね。

タイトルの「Yin Yang(いん・やん)」は中国語「陰陽」を中国語で発音したもの。

これを日本ジョークで「イヤン」にしてあります。

バリバリの昭和歌謡な世界が広がっており、MVもまさにそうなってます。

主題歌提供先のドラマ『最高の離婚』からも綾野剛や真木よう子、瑛太ら4人が登場しており、仮面レスラーと化した桑田佳祐が瑛太にコブラツイストをかけ、綾野剛がマスクを剥がしにかかっているシーンが笑えます。

っていうか真木よう子の妖艶さがビキニギャルを上回ってているのがすごい。

#14『あなたの夢を見ています』

本作でダントツ一番好きな楽曲ですね。

これは名曲でしょう。

シングル『君への手紙』にカップリングで収録。

まあ、この曲までシングルですでに聴いていたら、そりゃアルバム聴いてもワクワクは半減でしょう。

そりゃメインディッシュ先に食べた後に前菜が出されるようなものですよ。

それにしてもすごい完成度だ。

サビの「ライラ ライラ」で鳥肌がゾワ~っと立ちました。

ギターソロからピアノリフが入ってくるところもです。

これこれ!

この我々凡人の想像の上を行くメロディが襲いかかってくるのが桑田佳祐というお人です。

『アルバムバージョン』とは表記されているものの、シングルバージョンとの違いが分かりませんが(笑)。

#15『春まだ遠く

このエンディングはサザンの『ヤングラブ』『さくら』でのエンディングを思い出しますよね。

やたらディズニーというか、やたらビートルズというか(笑)。

弦楽隊が必要なためか、ツアーでは演奏されませんでした。

「いつまでも無邪気に生きようよ 女はその言葉が我慢できないのさ」

う~ん…心当たりが有りすぎる(笑)。

 

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