『S&M』~シンフォニー&メタリカ~セットリストが意外な実験的ライブ
どうもSimackyです。
今回はメタリカが1999年にリリースしたライブアルバムであり、DVDでもリリースされた
『S&M シンフォニー&メタリカ』
を解説していきますよ!
当時リリースラッシュだったメタリカ~出すもの全てが大ヒットしていた
最近ではめっきりリリースペースが大御所になってしまったメタリカ。
最新作『72シーズンズ』も前作から7年振りでしたし、その前は8年空いてます。
そんなペースからは信じられないのですが、私がちょうど大学生の頃は堰(せき)を切ったようにリリースラッシュが続いていました。
『ブラック・アルバム』から5年ぶりとなる大問題作『LOAD』のリリースが1996年。
なんとここから1997年に続編の『RELOAD』、1998年にカバーアルバム『ガレージ・インク』、そして1999年の本作『S&М』と、4年連続でアルバム出してます。
ファンとしてはウハウハな時期だと思うでしょ?
けどね、やっぱり当時としてはメタルから大きく舵を切った『LOAD』『RELOAD』と続いて、正直
「ああ、もうメタリカは戻ってこないんだな…」
っていう一抹の寂しさはあったんですよ。
『RELOAD』はわりとすぐにお気に入りになったし、『ガレージインク』は文句なくかっこよかったのでなんとか気持ちを繋ぎ留めてはいたのですが、プロモーションビデオなどに見られる妙におしゃれになってしまったファッションや、パーリーピーポーのようにノリノリで映っているジェイムズにどうしても違和感を感じ、本作をリアルタイムで手にすることはありませんでした。
けどね、なんか知らんけどこのアルバムって結構周りの皆が買ってました。
メタリカをそれまで聴いていなかったような友達が最初の入口で買っているパターンが多かったです。
当時はかなり話題に上がりましたし、雑誌でも評価高かったんですよ。
それもそのはず。
なんとこのアルバム、2枚組でお値段も結構するのにもかかわらず
全世界で800万枚
も売ってます。
『LOAD』『RELOAD』『ガレージインク』は500~600万枚くらいなので、この4年のリリースラッシュの中では頭一つ飛び抜けています。
っていうかメタリカ作品群では人気がワーストに位置づけられることの多い『LOAD』『RELOAD』、カバーやライブ盤などの『企画モノ』でさえ500万枚をことごとく超えてくるこの時期のメタリカは、本当にモンスターバンドだったのだということが分かる数字です。
1999年と言えばアメリカではituneに代表されるダウンロード配信も開始されていて、CDのマーケットが縮小し始めた年ですよ?
いろんなアーティストの売上データ見てても1999年からガクッと落ちるんですよ。
そんなタイミングで、しかもライブ盤の2枚組を800万枚も売るか普通!?
CDセールスがピークだった1998年にリリースしていたら1000万枚を超えていたのでは!?
誇張ではなくロック界の頂点に本当に君臨していたんですね。
で、話を戻すと、本作を買った友達たちが口を揃えて
「めっちゃかっこいいよ」
って言うんです。
ある時友達に借りて聴いてみたのですが、序盤の『マスター・オブ・パペッツ』とシンフォニーの組み合わせにあまりにも違和感を感じて序盤で聴くのを辞めました。
そんな私が数年前になってようやく聴く気になったのはジョジョの荒木飛呂彦先生が好きなアルバムに挙げていたからです。
「尊敬する荒木先生が良いと言うならそりゃそうだろう!」
と。
それプリンスの時と同じやがな、単純だな。
まあ、スタンド名に『メタリカ』と名付ける荒木先生が、メタリカを全然知らないズブの素人なわけがないはずで、
「ちゃんとメタリカを分かってる人で、それが荒木先生であるのならば間違いないだろう」
というわけでその日から本作は私の中で大名盤となりました。
んな訳あるかい(笑)。
そこまで単純にはなれなかったですね。
その日からはまあ、けっこう聞き込んでみましたよ。
違和感の正体
けれどどうもこの違和感を払拭できない。
「俺ってシンフォニーあんまり好きじゃないのかな?でもXが好きなんだからメタルとシンフォニーの組み合わせはさんざん聴いてきたはずなんだけどな?ナイトウィッシュも好きだぞ」
ある時、この謎の原因が分かりました。
それは『もともとメタリカの楽曲がシンフォニーを想定して作られていないから』
ですね。
Xは作曲の段階でYOSHIKIがシンフォニーも含めて全部譜面に書いてますからね。
シンフォニーってあれだけの人数で楽器を奏でるわけですから、がちゃがちゃする。
なのでそれを聴かせる場面ではギターやピアノは後ろに引いてるんですよ。
ボリュームもそうですが、フレーズ的にも音を抜いて重ならないような工夫がされています。
けれど、このメタリカの場合は原曲のプレイをほぼそのままに、そこにシンフォニーを真っ向からぶつけてある。
個性を主張してくる。
だからジェイムズ・カークの二人のギターがシンフォニーとガチガチぶつかるんですよ。
食い合っている状態です。
綿密な打ち合わせをした上で原曲のアレンジに手を加えた形跡が余り見られず、わりとまんまやってます。
「お!かっこいいじゃん!」
と思う瞬間はあっても、それはメンバーが原曲をそのままやっているんだから当然で、シンフォニーと混ざりあった相乗効果でグッと来る部分というものがほとんどの楽曲で感じられませんでした。
シンフォニーと合っている楽曲~2曲の新曲の存在~
まあ、そうは言ってもすべての楽曲が合っていないというわけではなく、中には合っている曲もあるし、そのために若干アレンジを変えている楽曲もあります。
もともと原曲にシンフォニーを入れていた『ナッシングエルス・マターズ』は言うまでもなく、『ホエアエバー・アイ・メイ・ローム』のようにギターリフが細かく刻まずに「ジャーーーン」ってサステイン長めに聞かせるような楽曲とは相性がいいみたいですね。
『ワン』や「ヒーロー・オブ・ザ・デイ」のようなクリーントーンのギターでのアルペジオ部分なんかでも、すごく雰囲気よくなるんですよ。
他の曲もアルペジオのバラードにアレンジを変えた上でシンフォニーと融合させていたら、もっと面白かったのにと思わなくもないですね。
いや、っていうよりもはや『MTVアンプラグド』のようなステージにした上で、そこに「ゲストで管弦楽団がコラボしました」みたいなやり方すればバラードの名曲が生まれた可能性があったと思うんですよね。
時々、ピカリと輝く瞬間があるのは間違いないので。
っていうかぶっちゃけ「YOSHIKIとやれば良かったのに」と思うのはXファンの身勝手でしょうか(笑)。
だって世界中見渡しても彼ほどそれに長けたキャリアを持っている人はいないと思うので。
スラッシュメタルとオーケストラですよ?
Xそのものじゃないですか。
Xはデビューアルバムからすでにオーケストラ入ってるし、デビュー3年目ですでに『X with オーケストラ1992』やってますしね。
『S&М3』でメタリカとYOSHIKIのコラボ期待してます(笑)。
それと、本作には実は2曲の新曲が入っています。
これ知らなかったんですよね、当時。
シンフォニーとのコラボのために作られた楽曲になるのかな?
やはりこの2曲は全然違います。
違和感がありません。
『ノー・リーフ・クローバー』『ヒューマン』の2曲です。
特に『ノー・リーフ・クローバー』は異常なまでに人気が高く、
「とにかく涙なしでは聴けない。この曲を聴くためだけにこのアルバムを買う価値がある」。
とさえも言われるほど。
『S&М2』にも収録されますし、最新のツアー『M72ワールドツアー』ではシンフォニー無し(冒頭だけありますが)で演奏されている動画が公式でアップされてます。
そこでもお客が大合唱しているので人気の高さが伺えるし、『S&М』シリーズにしか収録されていないのにあれだけお客が歌っているっていうことが、この『S&М』シリーズの人気の高さを印象付けます。
つまり皆持ってるわけですよ、このアルバム。
ラーズは大丈夫だったのか!?
まずメタリカファンならこれは頭をよぎったでしょう。
「あんなにクセのあるラーズのリズムに80名ものシンフォニーが付いてこれるのか?これはとんでもない事故が起きるのでは?」
ヒヤヒヤしたことでしょう(笑)。
しかし、今回のラーズは一味違いますよ!
ちゃんと服着てます。
いや、そこなの!?
まるでセレブ住宅街に住んでいる社長が朝の森林公園で犬の散歩をしている時に着るような真っ白なトレーナーを身にまとい、優雅な余裕を漂わせてドラム叩いてます。
「こりゃ会社への出勤時間は昼過ぎくらいだろうな」
っていうくらいの朝の優雅さです。
鼻くそほじって中指立てて「ファ●ク!」ばっかり言ってるいつものラーズさんではございません。
冷静すぎます。
なんならシンフォニーの指揮者であるマイケル・ケイメンばっかり見て叩いてるくらい生真面目です。
ずっとそっち見てんだもん(笑)。
ファンならお馴染みの『マスター・オブ・パペッツ』におけるキメの部分とか、いつもよりちゃんとしてる!
おお!普段のリズムがおかしいことをちゃんと自覚して修正している!
やればできる子です。
なんか最近ラーズいじるのが鉄板になってきたな(笑)。
はい、本日は『S&М』を語ってまいりました。
正直、「シンフォニーが加わったからこそめちゃめちゃ良くなった」というほどのものは感じておりませんが、映像はなかなか普段見れないメタリカが見れるので面白いですよ。
You Tubeでも上がってますのでまだ見たことがない人は探してみてください。