『ヌードマン』サザン初期の集大成を語る

本記事はプロモーションを含みます。

どうもsimackyです。

本日はサザンが1982年にリリースした5作目のオリジナルアルバム

『ヌード・マン』

を語っていきたいと思います。

さて、やってまいりした。

ここでついに初期サザンの名盤のほまれ高い1枚のご登場です。

ちまたでは『サザン=夏』のイメージを決定づけたアルバム、とも呼ばれております。

ジャケットが海だし、夏に関する歌詞が頻繁に出てきますしね。

このジャケットって昔は桑田さんが裸で飛び込んでるんだと思ってました。

おそらく情報が少なかった時代はそう思っていた人って多いと思うんですよね。

だって、桑田さんってこういうことをする人っていうイメージで見てましたからね。

私の世代から見ると、そりゃ『シュラバンラバンバ』『エロティカ・セブン』の時期にサザンに入り始めた世代なので、このジャケ見たらそう思うでしょう(笑)。

当時、サザンの曲をダンスリミックスにしてメドレーにして繋げた『江ノ島』(z団プロジェクト)というシングルでもこのジャケットが使われてたもので、本作と『江ノ島』を間違って買った人もいるのでは?

レビューを見ても非常に人気の高さが伺え、1985年の1回目の活動停止までの8作品では最も大きなセールスを記録しております。

それでは本作に至るまでのセールスの流れから見てみましょう。

『ヌードマン』に至るまでのセールスの流れ

サザンのデビューからのアルバムセールスは発表順に以下の通り。

1.『熱い胸さわぎ』10万枚

2.『10ナンバーズからっと』68万枚

3.『タイニイ・バブルス』40万枚

4.『ステレオ太陽族』48万枚

5.『ヌードマン』97万枚

それまでのシングルのセールスを大きいものだけピックアップすると

『勝手にシンドバッド』80万枚

『いとしのエリー』72万枚

『C調言葉に御用心』37万枚

『チャコの海岸物語』58万枚

という流れですね。

2作目のアルバム『10ナンバーズからっと』、およびそこからのシングルカット『いとしのエリー』でのビッグヒット以来、アルバムはともかく、シングルではセールス的に話題に登るほどのヒットがない時期が2年ぐらい続いていました。

それが、3作目『タイニイ・バブルス』4作目『ステレオ太陽族』、そして『ファイブ・ロック・ショウ』と称してシングル5ヶ月連続リリースをしていた時期ですね。

さらっと並べてますが、『C調言葉に御用心』から『チャコの海岸物語』の間には、実はシングルが8枚も出ているのですが、その8枚の平均セールスはなんと

6~7万枚!

あのサザンがうそでしょ!?

我々90年代の世代が知る『ミリオンセラー(100万枚)が当たり前サザン』というイメージはこの頃は微塵もありません。

3作目『タイニイ・バブルス』あたりから、シングル先行・メディア先行のバンドとしてのパブリックイメージを払拭しようという傾向が見え隠れしているのですが、トップテンに入ることがほぼなくなったため、当時のファン以外の一般人達からすると

「サザン最近見なくなったね。どうなった?」

みたいな状況だったみたいです。

しかし『チャコの海岸物語』で久々にビッグヒットを飛ばし、なおかつ桑田さんと原さんが結婚した話題性もあり、世間からの注目度が上がった状態で満を持しての力作を出したのが本作ということですね。

2作目『10ナンバーズからっと』以来2回目となるレコード大賞も獲得しました。

こうしてみると、ここでサザンがミリオンクラスの販売力を持ったバンドであることを証明し、名実ともにロックシーンの頂点に上り詰めた時期だと言えるでしょう。

ベスト盤みたいな内容

私が最初に本作を聴いたときの印象は

「なんかベスト盤みたいだな」

っていう印象。

どうして私がそう感じたのかを分析してみます。

サザンって、1枚のアルバムの中で色んな要素の音楽があってバラバラのカラーの曲が混在してます。

でも、それはデビューアルバム『熱い胸さわぎ』の頃からそうで、別段この『ヌードマン』で特にその傾向が強い、ということはないと思うんですよね。

ましてや『ヌードマン=夏』というイメージを想起させるトータルコンセプトが歌詞からも感じられますし。

その意味では一番「バラバラではない作品」に仕上がってなきゃいけないはずなんですよ。

なのに私が『ベスト盤』のようにまとまりのなさを感じたのは、

『各楽曲におけるそれぞれの要素での完成度が高い』

ということなんじゃないかな?

「あれ?この曲ってシングルカットされたと思ってたら違ったんだ。意外」

みたいに感じる楽曲が多い。

シングルカットできそうなクオリティ、しかも出したら売れそうな楽曲がそれまでのアルバムに比べて圧倒的に多いんですよ。

なのに『匂艶 THE NIGHT CLUB』しかシングル・カットしなかったのが、この時期のサザンならではというか。

『夏をあきらめて』なんて研ナオコがシングルで出したらヒットしたというのにもったいない(笑)。

私がこの『ヌードマン』を考える際に、まず頭に浮かぶのがデビュー作『熱い胸さわぎ』ですね。

『熱い胸さわぎ』は「俺たちはこれだけの要素の音楽を引き出しとして持ってるよ!」っていうことをバラバラの楽曲群で宣言したアルバムだと私は思ってます。

「ロックもバラードもポストパンクもラテンもサンバもブルースもレゲエもジャズもソウルもフュージョンもポップも歌謡曲もなんでもござれでございます!」

って。

しかも1作目にしてこれがかなり高い水準で出来上がってしまった。

そうだとするならば、この『ヌードマン』は『熱い胸さわぎ』で見せたそれぞれの要素を、現時点での最終完成形に仕上げてきていると言うか。

「このアルバムだったら『熱い胸さわぎ』を超えれただろう」

と(勝手な憶測ですが:笑)。

なので1978年にデビューしたサザンがデビューから4年でどれだけ成長したのかを確認するために作ったアルバムということでしょうかね。

その意味では集大成、決定版と言えるかもしれません。

ひとまずやりきった感、出し尽くした感がすごく伝わってきますね。

その証拠に、この次の6作目アルバム『綺麗』からは

「よし、次のステージに進もう」

っていう作風に感じるんですよ。

コンピューターサウンドを導入した実験期へと突入していくんですね。

6作目『綺麗』7作目『人気者で行こう』8作目『KAMAKURA』の3作を、私はデビッド・ボウイの『ベルリン3部作』みたいなノリで、勝手に

『サザンのデジタル3部作』

と呼んでいます。

ってわけなので、この『ヌードマン』は初期サザンの終焉を告げる、節目となるアルバムなんだと思いますよ。

『ヌードマン』楽曲解説

それでは楽曲解説いきましょう。

私個人的には結構好きな1枚なのですが、これまででもっとも歌謡曲臭いアルバムですね。

ベタな歌謡曲の匂いがプンプンするんで、ロック好きな私なんかからすると、本作を好きということに若い頃は抵抗があったのですが、さすがに40歳も超えてくると

「良いものは良い!」

と開き直れると言うか(笑)。

#1『DJ・コービーの伝説』

ギターリフが引っ張るナンバーで、サザンでは実はあんまりこういう曲ってないですね。

女性コーラスがかっこいい。

#2『思い出のスター・ダスト』

2曲目ではやくもバラード。

しかもまたもや女性コーラスでかなりソウルフルですね。

#3『夏をあきらめて』

研ナオコがシングルカバーして大ヒットを記録しました。

まさに親たちの世代が聴いていた昭和歌謡の懐メロですね。

イントロ終わった後なんて、雰囲気的に美空ひばりが歌い出しそうですもんね(笑)。

このメロディって日本の原風景を感じますね。

#4『流れる雲を追いかけて』

昭和歌謡どころか大正まで回帰したかのような歌謡曲です。

というよりもはや、童話とか民謡のレベルじゃないのかな、これ?

昔、軍人だった私のじいちゃんが、終戦記念日に流していた歌とかを思い出すんですよね。

こういう曲をかける桑田さんって普段どういう音楽聞いてんでしょうね?

メチャメチャ好きですこういうの。

#5『匂艶(にじいろ)ザ・ナイト・クラブ』

昭和のナイトクラブです、完璧に。

夜、ダンス、ホール、酒、女、化粧の匂い。

頭の中でそんな連想ゲームが始まってしまうような雰囲気もってます。

悔しいけど、このコテコテの歌謡曲はいつだっていくつになったって心を打っちまうんだから仕方がない。

この曲を好きになる気持ちに抗えない(笑)。

#6『逢いたさ見たさ病める マイ・マインド』

いきなり電話のプッシュ音で始まるので、スマホが誤動作したのかとソワソワする曲です(笑)。

サビの1フレーズ目「逢いたさ見たさで病めるMY MIND」という部分が非常に秀逸なのに、決してそれを繰り返さないので、なんかもったいないと感じてしまうのは私だけでしょうか?

名曲になりそうなのに「やっぱベタだからや~めた」みたいに感じるんですよね。

#7『プラスティック・スーパースター』

大学時代のライブ音源とも言われてるし、大学サークルの後輩たちの歓声を被せただけとも言われていて、どちらが本当かは分かりません。

こういう時系列がリアルタイムでない曲が入っていることも本作が『ベスト盤』みたいに聞こえるゆえんでもあるんですよね。

とっつきやすいけど、そこまで好きじゃないかな。

#8『Oh! クラウディア』

『海』『慕情』なんかと並んで、シングルカットされていないのが信じられないほどの人気を持つバラードです。

『いとしのエリー』と雰囲気がそっくりですね、こうして聴き返すと。

大森さんのギターソロがつんのめってる感じが、キース・リチャーズぽくて味があります。

わざとやってんのかな、これ?

中学の時、カラオケで必ず歌った私の持ち歌(笑)。

#9『女流詩人の哀歌』

CMでよく流れてたな~。

本作では一番歌謡曲から遠い曲で、AORのおしゃれな雰囲気を持っているのですが、ギター、ピアノにしてもホーンにしても色気があるんですよね。

私はサザン以外ではAORなんてあんまり好きじゃなくて聴かないのですが、この曲は本作で一番好きかも。

ウ~ン、トレンディドラマ。

#10『ヌード・マン』

たった1分で終わるけどコミカルでファンキーで、プリンスとかの曲を聞いているような感じですね。

これたったの1分で終わらせるのもったいないな~。

ダンディ桑田のボーカルと最後の「ガッガッガッ」が最高(笑)。

ここからの3曲はよく本作の評価を下げる文脈で語られるのですが、ここからの3曲の存在が本作を奥行きある作風にしているんですよね。

私は3曲とも大好きです。

#11『猫』

ギターの大森さんが作詞作曲でボーカル。

なんだこの素人丸出しの歌い方は…

と最初は思っていたのですが、だんだんハマってくるんですよね。

ギタリストなのにギターロックじゃない発想がおもしろい。

#12『来いなジャマイカ』

『レゲエに首ったけ』『恋するマンスリー・デイ』に続くレゲエの名曲ですね。

私なんかはレゲエのアーティストを積極的に聴くことはあまりなく、サザンやローリング・ストーンズというロックのフィルターを通してレゲエを聴いてきた感じです。

ミック・ジャガーの名前も歌詞に出てくるから、やっぱり桑田さんもストーンズを入り口にレゲエに入ったのかな?

しかしサザンのレゲエは最高だな~。

歌詞は最低ですけど(笑)。

よくこんな面白い歌詞を考えつけるな。

作詞の才能に脱帽です。

#13『ジャスト・ア・リトル・ビット』

かなり人気の高いバラードなのですが、個人的にはそこまでピンときてませんね。


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