メタリカ・ボーカル:ジェイムズ・ヘットフィールドの職人リフと歌唱を語る
どうもSimackyです。
本日はメタリカのツートップの1人であり、ヘヴィメタルのアイコンとも言えるジェイムズ・ヘットフィールドをたっぷり語っていきますよ!
ジェ「OOOOOOHHHHH!YEEEEEEAAAAAHHH!?」
意訳)テメェらギターの練習ちゃんとやってっか!?
ジェイムズ・ヘットフィールドとは“リフマスター”だ!
ジェイムズ・ヘットフィールドはメタリカのボーカリストであり、リズムギターを担当するギタリストでもあります。
1980年代の初期ヘヴィメタルシーンで主流となったニューウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル、通称『NWOBHM』。
そのムーブメントから強く影響を受け、そこにハードコアの強烈なスピード感と攻撃性を加えた彼らの音楽は後に『スラッシュメタル』と呼ばれるようになります。
『スラッシュメタルってどういう音楽?』
と尋ねられた時には、彼らの1作目『キル・エム・オール』を聴いてもらえば間違いありません。
この1作目こそがこの世で最初のスラッシュメタルなのですから。
このアルバムで聴けるとんでもなく速いザックザクのリフ、引きずるような重さ、それらのもたらす強烈な恍惚感、若者たちがヘッドバンギングをせずにはいられない高揚感…それこそがスラッシュメタルの定義です。
そして、スラッシュメタルという音楽を象徴するのはその『ギターリフ』に他なりません。
それを生み出したのはデビュー前のメタリカのツインギタリスト。
天才リフメーカーであるジェイムズ・ヘットフィールドと、後にメガデスを結成するこれまた天才リフメーカーのデイブ・ムステインなんです。
デイブはメガデスでもその天才ぶりを発揮しますし、デイブ解雇後のメタリカも依然として名リフを生み出し続けますので、これはどっちが凄かったという話ではなく、奇跡的に二人の天才が同じバンドに在籍していたとしか言えません。
それではデイブとジェイムズの違いは何か?
それはリードギターも演るかどうか?
時にはギターソロまでも担当するデイブに対し、ジェイムズはリードギターをほぼカーク・ハメットに任せ、リズムギターに専念します。
これはリードギタリストがパーマネントであるメタリカに対し、メガデスの場合はリードギタリストが安定しなかったこともあります。
しかし、一番大きな要因はジェイムズがリフに特化することに対し美学を持っている、という点ではないでしょうか?
スラッシュメタルのギターリフは、いかに低音のザクザクリフを切れ味良く高速で、そして安定して弾くことができるか?
つまりピッキングする右手が重要なのですが、彼のはそのために特化したスタイルなんですよ。
弦をしっかり震わせるために硬めのピックを使用し、またしっかりピックをホールドするため、通常人差し指と親指で挟むところを中指まで添えています。
またスピード感と弦の鳴りにこだわるため、肉体の限界の許す限り、オルタネイトピッキングではなくダウンピッキングで弾き倒します。
このためギターの位置はダウンピッキングをする右腕が疲れにくいように、かなり低位置になっており、はっきり言ってギターソロなんて弾ける位置ではありません。
ここがたまにソロを弾く必要のあるデイブとの大きな違いです。
別にそれでいいんですよ。
リードはカークに任せているから。
そして長い足を大股に開き、腰をぐっと落として、右足に乗せながら力強くゴリゴリ弾いていくあの独特の立ち姿は、全て極上のスラッシュリフを弾くことに特化したものなんですよ。
そう、あのジェイムズの立ち姿こそがまさにスラッシュメタルのアイコンなんです。
メタリカのリフをコピーすると右腕のキツさに驚かされます。
「よくこんなもの何曲も弾けるな!このテンポの曲を全部ダウンピッキングで弾き倒すの!?」
はっきり言って慣れていないと1曲弾ききることはできないほどキツイ。
けれど、ビデオで見ながらジェイムズの弾き方を真似してみると初めて分かるんです。
「あ、だからこんなに低位置に持つのか!だからピックをこの持ち方するのか!」って。
そして彼があのリフを平然と弾くためにどれだけのトレーニングの積み上げがあるのかを知ることになるのです。
もうね、ほぼ筋トレですよ(笑)。
そんなジェイムズのリフ特化型のスタイルから生み出される数々の名リフは、まさに芸術品。
とにかくスムーズだし粒が揃ってて切れ味抜群でなおかつヘヴィ。
あの音を出すためにはブリッジミュートの抑え加減も絶妙でなければいけませんが、彼はいつだって完璧に弾きこなしています。
そんなリフ職人ジェイムズの繰り出すリフは『スラッシュメタルビッグ4』と言われる4バンドの中でもピカイチだと思っています。
ボーカリストとしてのジェイムズ
スラッシュメタルという激しい音楽でありながら、メタリカのボーカルラインにはいつだって耳に残るキャッチーさがあります。
これは1枚目の時からです。
1枚目『キル・エム・オール』ではNWOBHMばりのかなりハイトーンのボーカルでシャウトしてましたが、近年のニューメタルなどに比べるとデスボイスなども使わず、メロディが耳に残るんですよね。
2作目『ライド・ザ・ライトニング』からはワリと低音で野太い声を出すようになるのですが、実際歌ってみるとあれ意外にもキーがかなり高いんですよ、実は。
そしてそれは現在2023年の最新作『72シーズンズ』に至っても衰えていないところがすごい。
もう60歳だと言うのに、あの声量を維持し続けることができるのも影の努力を感じます。
メタリカと言えばリフという印象が真っ先に挙がりますが、リフがかっこいいのも、ボーカルが耳に残るのも、そもそもメロディメーカーとしてのセンスが卓越しているからで、それが証明されたのが5作目の『ブラック・アルバム』です。
吐き捨てるようにシャウトしていた歌唱法を限りなく『歌う』ことに近づけた結果、彼のボーカリストとしての魅力は更に開花しましたね。
スラッシュメタルどころかヘヴィメタルからも飛び出してしまった問題作6作目『LOAD』と続く7作目『リロード』では、この『歌う』路線をさらに押し進め、すごくハートフルな歌唱法になってきました。
より人間味のある歌い方と言えばいいでしょうか?
ただMVなどで見せるノリノリのジェイムズには当時かなり違和感がありましたが(笑)。
8作目『セイント・アンガー』から9作目『デス・マグネティック』では以前のシャウトする『怒れるジェイムズ』に戻り、10作目『ハードワイアード~』、そして最新作の『72シーズンズ』では『LOAD/リロード』期の歌唱法とそれ以前の歌唱法をブレンドしたような、まさにボーカリスト・ジェイムズの集大成のようなボーカルスタイルを確立したと言えます。
ちなみに歴代のジェイムズのボーカルスタイルで一番私の好みなのは4作目『アンド・ジャスティス~』。
あの冷たさと物悲しさがたまりません。
ジェイムズ・ヘットフィールドの人間性
ジェイムズは一見豪快さんに見えますが、ラーズと違い物怖じしないタイプではなく意外と繊細です。
デビュー前のライブ映像などを見ると、なんとリードギターのデイブ・ムステインがMCしてるくらい、もともと引っ込み思案というか、シャイというか。
バンドのスポークスマンはほぼ全てラーズがやっており、グラミー賞授賞式でもスピーチしたのはラーズでしたね。
その繊細さと深い精神性はメタリカの歌詞を非常に難解なものにしています。
歌詞を読んでいて共感したことがあまりないというか、誰にでもある日常などを扱っていないことは伝わります。
そんなジェイムズですが実は私、この人から誰よりも影響受けてます。
同じドラマーなので普段はメタリカの記事でもラーズのことばかりが長くなるのですが。
ここまで私の人生に影響を与えた人はジョジョの荒木飛呂彦先生かYOSHIKIかくらいです。
それは何か?
私がバンドマンとして駆け出しの頃(別にその後プロになったわけじゃないけど)、ある時ギター・マガジンのインタビューで読んだ彼のセリフ。
「自分の弾きたいように弾け!誰の言うことにも耳を貸すな!」
ガガーーーーーン!
なんですとおおおおおおおお!?
雷に打たれました。
これは強烈でした。
ちなみに私ドラマーなのに(笑)。
楽器やってる人なら分かると思うんですけど、上手くなりたい時って色々悩みますよね。
「皆どんな練習方法やってるんだろうか?」
「俺こんなやり方してて大丈夫なのかな?」
「なんかあいつ俺より遅くドラム始めたくせに俺より上手くなってない?」
雑念だらけです(笑)。
「やっぱ謙虚になって色んな人の話聞いたほうが良いんじゃなかろうか?」
「ドラム教室に行ったほうがいいんじゃなかろうか?」
「一人で上手くなれるって考えること自体がそもそも傲慢(ごうまん)なのではなかろうか?」
けれどそんな私にジェイムズは
「それは傲慢でもなんでもない。お前がやりたいように演ることが唯一の道なんだ」
って言ってくれた気がしたんですよね。
これ読んで速攻でドラムマガジンや教本を燃やしました(何かあるたびにいちいち燃やす人)。
「こんなもん読んでるから駄目なんだ!俺が本当にやりたいことは何だ?」
と自問自答しました。
で、どういう練習を始めたか?
見様見真似です。
かっこいいと思うドラマーのライブビデオを目に焼き付くくらい見まくる。
自宅でエアードラムしながら。
スタジオでは頭に徹底的にインプットされたそれを再現する。
「なんか違う」と試行錯誤しながらひたすら頭の中の理想のイメージ近づけていく。
そもそも私は
「かっこいい!YOSHIKIになりたい!チャド・スミスのように叩きたい!」
がモチベーションの源泉なので、まっしぐらにそこを目指せばよかったんです。
ここからの成長スピードはそれまでの比ではありませんでしたし、何より楽しいので練習時間が増えました。
ライブ後のお客やバンド仲間からの反応もガラリと変わりました。
世間に声を大にして言えるほどでもない些細な成功体験ですが、私にとっては人生を変えるほどの事件でした。
それまで練習方法で悩んでいた私は、要はゴールが見えてなくて手段ばかり見ていた、ということです。
これって楽器を練習することのみならず、人生のありとあらゆることに通じる真理で、
手段というのはゴールが明確に見えた時に自ずと導き出される
ということに気が付きました。
意外に深い話でしょ(笑)。
そんな大きな気づきを与えてくれたジェイムズは私にとって人生の師匠であり、もっとも崇拝するギタリストであることは言うまでもありません。
皆さんによき音楽ライフがあらんことを!