『稲村ジェーン』(サザンオールスターズ)サントラではなくオリジナルアルバムです
本記事はプロモーションを含みます。
どうもsimackyです。
本日はサザンオールスターズが1990年にリリースした10作目のオリジナルアルバム
『稲村ジェーン』
を語っていきます。
『稲村ジェーン』が不可解な理由
この『稲村ジェーン』なるものが一体何なのかが、中学生当時はよく分かんなかったですね。
「え?これ音楽なの?ゲーム?映画?アニメ?」
みたいな。
なんかの企画モノであることは分かるのですが、少ない小遣いでハズレは引きたくないので、CDショップで見かけても買おうとは思わなかったんですよね、当時は。
今でこそ、こうしてスマホでウィキペディアとかがパパッと見れるから理解できますが、本作はちょいと複雑なので当時の私が理解できるはずはありませんでした。
知らない人に説明しますね。
桑田佳祐が最初で最後の映画監督を手掛けた『稲村ジェーン』という映画作品が1990年に公開されました。
『サザン=夏』というイメージどおりの、夏の青春物語ですよ。
で、その映画の中の主題歌・挿入歌だったりっていうのは当然のことながら桑田さん自らが手掛けるわけで。
それらの音楽を1枚のアルバムに収録したのが音楽作品としての『稲村ジェーン』、つまり本作というわけです。
しかしこれがサントラとして扱って良いものかオリジナル・アルバムとして扱って良いものかがよく分からないシロモノなんですよ。
それを分かりやすく説明するために今日はミルクボーイ風の漫才でやってみましょうか。
駒「昨日うちのオカンと話しててな~、『稲村ジェーン』はサントラかオリジナルアルバムかって話になってん。オレ『稲村ジェーン』聴いてないからな、ちょっとお前が教えてくれや」
内「あ~、桑田さんが監督した『稲村ジェーン』のね?あれは映画『稲村ジェーン』とタイトルが同じだからやっぱりサントラちゃうん?」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『歌モノだった』
って言うのよ。」
内「歌モノ?それじゃあサントラじゃないか~。普通サントラっていったらBGM集だからほとんどインスト曲やもんな~。」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『映画のセリフみたいなのも入ってた』
ってことなのよ」
内「映画のセリフ?そりゃサントラで決まりやがな!ええか?サントラっていうのはやめときゃいいのにそういう余計な趣向を入れたがるんよ。あんなもんは
入ってて音楽的には1つもプラスには働かない
にもかかわらず入ってるのがサントラなんやから!もう繰り返し聴いてるとだんだんスキップすんのがかったるくなってくんのよ!そりゃサントラで決まり!」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『サザンで3番目に売れたアルバムで133万枚セールス』
らしいねん」
内「133万枚ぃ!?立派なミリオンセラーやないかい!そらサントラちゃうやろ!?いいか?サントラっていうのはそんなに売れるもんじゃないの!サザンの、桑田佳祐のネームバリューと販売力があるからこそ届く数字やぞ?そりゃオリジナルアルバムに決まりや!」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『名義がサザンじゃなくて稲村オーケストラになってる』
らしいのよ?」
内「稲村オーケストラ!?なんやその
取ってつけたような胡散臭い名義は?
そらサザン名義でないのんなら、オリジナルアルバムやあらへん!サントラで決まりやろ!」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『希望の轍と真夏の果実が入ってる』
って言うんや」
内「『希望の轍』と『真夏の果実』やと!?そりゃサザンを代表する大名曲やないかい!ええか?夏にビーチで女の子と恋に落ちるなんて、実際にそんなファンタジーな経験したことない全国の根暗男子が、
まるで自分もそういう青春を送ったかのように錯覚させる
ことが出来る必要悪なドーパミンソングなんや!そんなもんはサザン、いや、桑田佳祐にしか作れへんねん!そら間違いなくサザンが作ったオリジナルアルバムと呼ぶしかないやろ!」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『何曲かはその前のアルバムにも入ってた曲』
らしいねん」
内「何ぃッ?その前のアルバムにも入ってた!?そらあかんやろ?どないにネタ尽きたかて、前作のアルバムに収録したもんをまた入れるなんてミュージシャンの風上にもおけんやろ!?そんなんが許されるなら虎舞竜は全アルバムに『ロード』を入れとるやろ?さすがの一発屋の虎舞竜でもそれはやっとらんで!そんなことあの桑田さんがするわけないでしょ~?だって自分で『トップ・オブ・ザ・ポップス』言うとる人なんやでぇ?そら絶対オリジナルじゃなくてサントラで決まりやがな!」
駒「そう思うやろ?けどな、うちのオカンが言うには
『サザンは公式的に10作目のオリジナルアルバムと認めている』
らしんや」
内「ほなオリジナルアルバムに決まりやないかい、ボケェ!サザンが公式的に認めてるんなら議論の余地無しやないかい!なんだったんやこれまでの話?わいが記憶から虎舞竜のネタを必死に引っ張り出してきた時にお前どない思って見とったんや!」
・・・・・
とまあ、これが『稲村ジェーン』という作品でございます(笑)。
つまりまとめると本作は、
①名義がサザンじゃない
②映画のサントラでもある
③前作と同じ曲が入ってる
といった理由で、他のオリジナルフルアルバムと同列で評価して良いものかどうかが微妙なラインに立っている作品なのです。
ということは?
はい、そうです。
著しく評価が低いですね。
というより対象外として見られているというか。
人気アルバムランキングとかを見てもかなり低いです。
なんかみんな本作をちゃんと評価してはいけないような空気感になっているというか。
「そもそもこれは別物だからまずはどけておいて…」みたいな(笑)。
映画『稲村ジェーン』はどうだった?
そもそも私などの『世に万葉の花が咲くなり』あたりから入った人間が、どうしてこの『稲村ジェーン』を手に取ろうとも思わなかったのか?
それはね、『世に万葉の花が咲くなり』リリース時点の1992年の段階で、
『稲村ジェーン』なる映画の評判をちらっとでも聞いたことがない
という理由が挙げられます。
この『稲村ジェーン』はプロモーションに力が入っていたのか?桑田佳祐が初監督ということで注目を集めたのか?
様々な理由があるとは思いますが、興行収入自体は1990年度の
年間売上4位
なんですよ。
こけてないんです。
めっちゃ売れてます。
そんなに売れたんであれば、1992年の時点でもちょっとは余韻とか余波が残っているものだと思うんですよね。
ワイドショーとか見てても
「あの『稲村ジェーン』でブレイクした〇〇さんが云々カンヌン」
「あの『稲村ジェーン』をヒットさせた桑田佳祐が云々カンヌン~」
とか、耳に入ってくると思うんですよ。
そういうのがあれば、
「ああ、なんかつい最近ヒットした『稲村ジェーン』なる映画があるのか」
って分かるんですけど、まったく評判を耳にしないからすっごい昔の映画かと思ってました。
そう、当時の私にとってはもう「スクールウォーズ」くらい昔の作品かと思ってました(笑)。
これははっきり覚えている中学時代の私の確かな感覚ですね。
誰も触れない空気感というか。
なんでそんな空気感だったのか?
実は、『稲村ジェーン』は売れたのは売れたんですけど、ビートたけしを始めとする映画関係者にボロッカスに酷評されてしまって、まるで黒歴史のような扱いになって、誰もその話題に触れないし、桑田さんも2度と映画に手を出さなくなったからなんですよ。
VHSやらDVDも廃盤になって手に入りにくいし。
けどね、これをサザンの43周年(どんな区切り?)となる2021年になぜか再発することになったんですよ。
30年以上経ってですよ?
で、これを芸人でYouTuberである永野チャンネル(ちょいちょい観てます)がべた褒めしてました。
それをなんと桑田さん御本人が見たらしいんですよ。
嬉しかっただろうな~、桑田さん。
というわけで一度見てみてくださいな。⇩
『稲村ジェーン』楽曲解説
さてそれでは楽曲解説いってみましょうか。
本作は映画のサントラという側面も持っていますので、サザン全カタログの中でもっともコンセプト性が高い作品となっております。
『海・夏・恋』といういわゆるサザンの3大テーマにどストライクな雰囲気なんで。
考えてみると、サザンのアルバムってホントに色んな音楽性が詰め込んであるから、曲ごとにバラッバラでしたよね。
こういう風にカラーが統一されたアルバムが実はないんですよ。
なので、映画『稲村ジェーン』とはまた別の、1つの映像作品を観たような気分にもなれる作品ですね。
また、先程ミルクボーイのネタでは「名義が稲村オーケストラになっている」と書きましたが、正確にはCDが「サザン・オールスターズ&オールスターズ」、ストリーミングでは「稲村オーケストラ」と表記されてます。
内訳を見てみるとかなりショックなことに、サザンメンバーが全員揃った曲は
たったの4曲しかありません。
「マンボ」「真夏の果実」「愛は花のように」「忘れられたビッグウェーブ」の4曲だけ。
その内、2曲は前作「サザン・オールスターズ」収録の2曲なので、今回サザンとして制作した楽曲は実質
たったの2曲。
つまり、本作はサザンとして作った作品とはとても言えない作品なのですよ、実は。
そら、この実情を知ってれば人気ランキング対象外にもしますわな。
あの超名曲「希望の轍」もメンバーでは桑田さんと松田さんしか参加してません。
ショック!
知りたくなかったそんな事実。
では一体誰が主に参加したのかと言うと、桑田ソロから一緒に仕事をするようになった小林武史さん(プロデューサー・キーボード)と小倉博和さん(ギター)の二人です。
この二人はこの後、『世に万葉の花が咲くなり』『孤独の太陽』あたりまでがっつり参加し、サザンのバンドっぽさがどんどん無くなっていく、という流れになるのですが、その流れは本作からすでに始まっていたんですね。
関口さんなんて、この後の『世に万葉の花が咲くなり』にも参加していないので、華やかなセールスの裏で、実は解散の危機も迫っていたのかもしれません。
#1『稲村ジェーン』
映画『稲村ジェーン』を見に来た若者達っていう設定でセリフが始まります。
思いっきりスパニッシュなナンバーで、陽気ではなく哀愁を漂わせてます。
手拍子なんかも入ってて、いかにもフラメンコのバックで流れそうですよね。
ギターは専門じゃないので詳しくはないのですが、これはアコギではなくクラシックギターとかフラメンコギター使ってんじゃないかな?
ピックではなく指で弾くあれです。
そしてそれを奏でるのは桑田ソロ『孤独の太陽』で天才的なギターセンスを発揮する小倉さんです。
ホントになんでも弾けちゃうんだなこの人。
#2『希望の轍』
出ました、サザンと言えばの大名曲。
しかし、演奏しているのは桑田、松田、小林、小倉の4名だけ(笑)。
ちくしょう、このキーボードは原さんががっつり弾いてる姿をイメージしていたというのに、小林さんだったなんて…。
この曲と出会って30年経って初めて知る驚きの事実ってやつです。
こんなにも青春の爽やかさとか甘酸っぱさとか夏の空気感とかを想起させる曲を他に知りません。
日本が誇る青春ナンバーですね。
#3『忘れられたBig Wave」(サザンオールスターズ)』
前作『サザン・オールスターズ』にも入っていたゴスペル調の楽曲ですね。
この路線って『世に万葉の花が咲くなり』の『イフ・アイ・エバー・ヒア・ユー・ノッキング・オン・マイ・ドア』にも繋がってきますね。
バージョンも一緒なので、2作連続で収録した理由は分かりません。
#4『美しい砂のテーマ』
ついにサザンのメンバーが1人たりとも参加していないナンバーのご登場です(笑)。
小林・小倉コンビに加えて、パーカッションは北村健太さん。
そこはせめて毛ガニ使ってやれよ、桑田さんよぅ…。
常夏のハワイアンナンバーですね。
#5『LOVE POTION NO.9』
さて2曲続けてハワイアンなナンバーです。
ここではがっつりとウクレレの登場です。
先程はフラメンコギターをかき鳴らした小倉さんが今度はウクレレの腕前を披露します。
やっぱギタリストとしての引き出しの多さが凄まじいな、この人。
#6『真夏の果実』
これまた説明不要なサザンと言えばの大名曲。
こちらはちゃんとサザンメンバーがクレジットされてますのでご安心ください。
まるでオルゴールのように昔の思い出を想起させるようなハープの音は小林さんによるシンセハープとのこと。
このハープのメロディが非常に秀逸。
やっぱ90年代に小室哲哉と双璧をなすプロデューサーになるだけのことはあります。
サザンメンバー全員がクレジットされているとはいえ、この曲を聞いているとほぼ桑田さんと小林さんの存在しか感じないんですよね。
#7『マンボ』
これまたサザンが全員参加してますが、今度はホーンの存在感が強すぎてまたもやバンドの音には聴こえませんね。
っていうかこれホントに関口さんと大森さん参加してる?
ベースはシンセベースっぽいし、ギターの音は途中と最後のソロでちょびっと聞こえるだけ。
楽曲としては良いと思うのですが、サザンは感じません。
まあ、サントラなのでそらそうでしょう。
#8『東京サリーちゃん』
「ん?なんでこの曲入れた?」
っていうほど本作の中では浮きまくっているナンバー。
これは『世に万葉の花が咲くなり』に入るべきナンバーじゃないかな?
いまいちピンときませんね。
#9『マリエル』
再び、陽気にラテンソング。
ちょっとレゲェっぽい雰囲気も持ってます。
3分近い表記にはなってますが、最後の1分はセリフなので、実質2分足らずの小曲ですね。
#10『愛は花のように (Olé!)』
前作収録曲の2曲目です。
落ち着くべき場所に落ち着いたと言うか、本来このアルバムに入れるべきナンバーですからね。
しかし、今回は趣向が違って、最後にDJの楽曲紹介が入り、ラスト曲に突入していきます。
#11『愛して愛して愛しちゃったのよ』
最後はゆったりとバカンスしているかのような極上のハワイアンソングをカバーしてます(和田弘&マヒナスターズ原曲)。
国民の誰もが知る曲、というよりも私の世代だと原曲知らなくて、ドリフがネタでやってた方しか知らないのですが(笑)。
このスチールギター好きだな~。
というより原曲の方の和田弘さん御本人が弾いてます。
原さんの声が素敵すぎる…。
それではまた!