『葡萄』サザン10年ぶりの復活作

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はサザンオールスターズが2015年にリリースした15作目のオリジナルフルアルバム

『葡萄(ぶどう)』

を語っていきますよ。

『葡萄』に至るまでの流れ~『キラーストリート』からの10年~

さて、前作『キラーストリート』がリリースされたのは2005年。

そこからドームツアー、無人島フェスへの出演などの後、シングルを2006年『ダーティ・オールド・マン』、2008年『アイ・アム・ユア・シンガー』をリリースして、2008年中をもってして活動休止(無期限)を発表します。

この活動休止は1985年『KAMAKURA』の時以来2回目となるのですが、決してバンドの人間関係悪化などによるものではなく、各メンバーのソロ活動を行うためとしています。

余談ですが、サザンほどの大物バンドになると、活動休止を発表しただけでアミューズ(所属事務所)やビクター(レコード会社)の株価が下落するらしいです。

ちなみに本作のリリースも決算期に合わせて3月31日にした経緯があるらしく、このエピソードからもサザンの、いえ、桑田佳祐というお人の両肩にのしかかる責任の重さをうかがい知ることが出来ます。

ここからの桑田さんの歩みをまとめてみましょうか。

活動休止後、桑田さんはソロとして4作目となる『ミュージックマン』を制作していたところ、2010年7月に食道がんが発覚。

2008年に実姉であるえり子さん(『いとしのエリー』のエリーだと噂された)を同じくがんで亡くしたばかりだというのに。

しかし、桑田さんは例年は誕生月に受けていた健康診断を半年前倒しで受診したこともあり、おそらくがんは早期発見だったのでしょう。

2010年8月には無事、手術を乗り越え、製作途中だった『ミュージックマン』に着手。

全国民が安堵したことでしょう。

本当によかった…。

こういう話を聞くとほんと、がん保険なんかに入ることよりも、定期的に検診を受けることの重要さに気が付かされますよね。

2010年末には紅白歌合戦でも元気な姿を見せ、翌年2011年には『ミュージックマン』をリリース。

桑田佳祐完全復活!

しかしその直後である3月11日、あの東日本大震災が起きます。

日本史上まれにみる未曾有の大地震の被害は甚大で、桑田さんも被災者へのチャリティーを目的として所属事務所アミューズの福山雅治ら37組のアーティストと「Let’s try again」をリリース、単独での『宮城ライブ~明日へのマーチ~』も行います。

これらの収益のみならず、この時にアミューズアーティスト達によるライブ活動収益、ファン・スタッフ・企業からの義援金などを『アミューズ募金』として寄付した総額はなんと

7億円

にも上ります。

素晴らしい!

桑田さん、あなたアーティストの鑑ですわ。

その後、桑田ソロとしてのベスト盤『アイ・ラブ・ユー』をリリース。

2012年内はベスト盤発売に伴う全国ツアーを行い、2013年6月のシングル『ピースとハイライト』のリリースをもってようやくサザンの大復活となります。

復活直後は2013年の夏に全国ツアー、1年後の2014年にはシングル『東京ビクトリー』をリリース。

そしてその2014年の11月に紫綬褒章受賞。

年末には9年ぶりとなる年越しライブ『ひつじだよ!全員集合!』

ここで大問題が起きます。

直前に受賞していた紫綬褒章をネタに冗談をかましたところ、現代で言うところの『炎上』騒ぎに発展。

やらかしたのは3つ。

1つ目は紫綬褒章(現物)を観客に見せながらオークション的な冗談を言ったこと。

さらに天皇陛下のモノマネをした上に、最終日にはジーパンのポケットから紫綬褒章を取り出しちゃった。

この3つが大騒ぎとなり、ラジオ等で正式に謝罪するといったことにまで発展しました。

復活早々、楽しませてくれます(笑)。

あなた、ちょっと前まで全国民に心配される立場だった人(がんのこと)ですよね?

あなた、ちょっと前まで震災のチャリティーで全国民から称賛されてた人ですよね?

なんてジェットコースターみたいな人生なんでしょう(笑)。

このライブね、当時首相だった安倍さん(故人)とか、同じく紫綬褒章を受賞した高畑淳子さん家族とか、『半沢直樹』の脚本書いた池井戸潤さんといった著名人も見に来てるんですよね。

まあ、サザンというバンドは内輪であるファンだけが見に来るような小さい存在じゃなく、日本中が注目する存在ということでしょう。

紫綬褒章を受賞するってことはそういうことなのでしょう。

昔はまつたけとアワビの神輿(みこし)をドッキングさせても炎上なんてしなかったのに(観客はドン引きしてましたが:笑)。

そんな立場になってもやらかしてくれる桑田さんが大好きなんですが。

そして2015年3月に本作『葡萄』がサザンアルバムとしては10年ぶりにリリースされるに至ります。

濃いね~。

『さくら』から『キラーストリート』の7年も中身が濃かったんですが、この10年も非常に濃い。

あくまで桑田さんの話ですが。

サザンとしてのシングルは4枚、桑田ソロでシングル8枚、アルバム1枚。

そのリリースされた曲は合計で

47曲

にもなります。

これに加えて本作のアルバム曲11曲を作曲していたわけなので、この10年間で桑田さんが作曲した曲数は

58曲

という、相変わらずアルバム5枚(2年に1枚)くらいはリリースできるほどのとんでもないペースで精力的に音楽制作活動をされていたことになります。

1956年生まれの桑田さんは2005~2015年が50~60歳になるんですが、50代にしてまったく働き盛りさながらのワーカホリックぶりですね。

お姉さんも亡くし、自身もがんになって、それを乗り越えてサザンを復活させ、震災被災者たちを励まし、そしたら今度はバッシングや炎上まで起きて…

ジェットコースターのように色々なできごとが起きても、本業である『音楽制作』がまったくおざなりにならない。

素晴らしいミュージシャンシップです。

こんな人のファンであることが誇らしいし、自身の人生にサザンが存在することが良かったと心から思えますよ。

ちょっとやらかすぐらいのことはご愛嬌ということで。

開き直って日本人のルーツに回帰した作風

本作の特徴は思いっきり歌謡曲なナンバーの存在です。

ここまでの濃度の歌謡曲が存在感を放っているアルバムはサザンとしては初じゃないかな?

かつて『ヌードマン』を聴いた時に、「これは歌謡曲が強いな~」と思ったものですが、あれよりももっと強いですね。

あの頃から『匂艶(にじいろ)ザ・ナイトクラブ』や『夏をあきらめて』に代表されるモロ歌謡曲ナンバーはありましたが、アルバムにおける構成比はそんなに大きくなかったです。

構成比もそうですけど、一曲ごとの歌謡曲としての濃度がかなり濃いです。

昭和歌謡という意味で特濃級ものを挙げると、#2『青春番外地』、#7『天井棧敷の怪人』、#10『ワイングラスに消えた恋』、#13『天国オン・ザ・ビーチ』と4曲もありますね。

この流れは2011年リリースの『ミュージックマン』のあたりから少しずつ始まってます。

本作を聴いた時の印象は『ミュージックマン』に内包されていた一部の流れを拡大発展させたように感じましたから。

その意味でいうとサザンとソロが初めて交錯した瞬間というか。

ここに至って桑田ソロとサザンの区別がほぼできなくなったというか(笑)

若い頃の桑田さんって、英語を母国語としない日本人が、日本語と英語の和洋折衷を通して、日本独自のロックをどこまで追求できるか?ってところがテーマだったと思うんですが、『ミュージックマン』のあたりから意図的に日本語や日本の精神性というものに思いっきり近づいて行ってますよね。

英単語の使用頻度が明らかに減ってます。

和洋折衷と言うよりも、もともとあった古き良き日本らしさを恥ずかしがることなく追求している、という印象です。

いや、これは恥ずかしがっていないといったレベルではなく、英語を母国語としない日本人の表現の限界を感じて、和洋折衷路線を切り捨て、自分の中に流れる日本文化のルーツを腹くくって本気で探求する気概を感じるんですよね。

特に桑田ソロのシングルのB面でもその傾向が見られてました。

『おいしい秘密』は演歌そのもの、『ハダカDE音頭』に至っては盆踊りソングですからね。

一番驚いたのは『声に出して歌いたい日本文学』ですよね。

サザン、ソロ通してダントツで最長の18分を超える大作。

これらの楽曲は歌謡曲回帰という単純な話ではなく、日本の文化(言語・わびさび・風情・粋さ)を桑田流ロックにディープに注入する試みで、もはや誰も追求したことのない未開のジャンルを切り開いてます。

なので、そんな流れの中にある本作も『回帰』じゃなくて『冒険』なんですよね。

『キラーストリート』に比べるとだいぶ攻めてます。

貪欲な探究心を感じます。

このことが分かんないと、

「なんか古臭い曲が多いよね。日本人は歳とったらやっぱり歌謡曲なのね」

で終わっちゃうと思うんですよね。

一見ポップで聴きやすいけれども、実は聴き込みがいのある作風なんですよ。

そのせいか、サザンのアルバムではここ数作(『ヤングラブ』以降)の中でもかなり評価が高い印象ですね。

前作『キラーストリート』のように物議を醸すこともなく、大絶賛されております。

『葡萄』楽曲解説

既発シングルに収録されていたナンバーが16曲中5曲もあるにも関わらず、前作ほどの非難を浴びなかったですね。

『キラーストリート』の回で、「アルバム曲もシングルなみに売れ線フォーマットに整えられている」側面を指摘しましたが、それはもう今のサザンではデフォルトのようですね。

先述したようにサザンがこかせば事務所もレーベルもこけるんです。

400人を超えるスタッフが路頭に迷うんです。

そういう事情を知っているとこれも許せるという気持ちはあります。

しかし、前回も書いたように、『メロディがしっかりしたクオリティを持っていれば、フォーマットは気にならない』というのはこのアルバムが証明しているのではないでしょうか?

そのあたりが本作の評価の高さの要因でしょう。

#1『アロエ』

オープニングはデジタル路線できましたね。

この曲ってここにしか配置できないですよね。

それくらい本作の中では浮いてるので。

う~ん、あんまり好みじゃないかな。

私が最初の頃、本作をあまり好きになれなかったのはこの曲の印象が強かったから。

好きになれない人はすぐに飛ばしたほうが良いと思います。

#2『青春番外地』

大好きです。

基本、本作の特濃歌謡ナンバーは大好きです。

桑田さんって、時代劇の演劇とかミュージカルとかの監督やってもかなり面白いもの作れそうなんだけどな~。

監督経験があるとかないとかじゃなく、やっぱりこういう『観察力』とか『観点』とかが長けている人って、音楽じゃなくても人の心を打つものを作れると思うんですよね。

技術なんかは他の人がサポートできるけど、感性はサポートできませんからね。

#3『はっぴいえんど』

60歳を迎える人らしい歌ですね。

等身大というか。

ナチュラルすぎるので、何の抵抗もなく心にす~っと染み込んできます。

#4『Missing Persons』

まさかこんなロックなナンバーが本作に入ってくるとは意外でした。

ギターが目立っていると

「お?大森さんが今回は頑張ってるぞ」

って反応するのがまだ抜けきれません(笑)。

前作からいないというのに。

大森さん、何してっかな~。

#5『ピースとハイライト』

最近タバコを吸う若者が減っているので、知らない人のために、「ピースとハイライト」っていうのはこのタバコのことです⇩

ピース(通称:ロンピー)

桑田さんはこれ

だからといって「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」の続編かと期待しちゃあダメです!

ここには『別れたじいちゃん』を探して『見境なくserchin’ for him』しているセクシーばあちゃんは登場しません。

「ピース=平和」、「ハイライト=明るくする」という非常に前向きな曲になってます。

オープニングイントロで一瞬『海』かと思った人は私だけじゃないでしょう(笑)。

っていうかこれはファンサービスで狙ってやってんじゃないかな?

復活第1弾シングルですね。

歌詞が具体的で直接的な感じに受けましたが、やっぱり桑田さんは東日本震災の影響を強く受けていると思うんですよね。

メッセージ性をもった楽曲の持つ影響力というか、楽曲は人を元気づけることが出来ることを震災チャリティーで身をもって知ったんでしょうか?

もしくは日本のトップミュージシャンとしての責任のようなものを感じたのか?

#6『イヤな事だらけの世の中で』

100%日本語歌詞で、季語や古語が使われたその歌詞からは京都の風情を感じさせます。

歌詞というものがイメージの想起にここまで力を及ぼすものなんですね。

個人的に歌詞は読まない派の私なんですが、耳に入ってくる歌詞が気になってついつい読みたくなる、そういう魅力を放っています。

#7『天井棧敷の怪人』

「てんじょうさじきのかいじん」と読みます。

天井桟敷とは『劇場の後方最上階の安価な観覧席』を指します。

これも大好きです。

本作では『あ行』を『は行』で発音していることには、おそらく誰でも気がつくと思うのですが、2:32のところで

「お前らオーケイ?」

「お前らホーケイ(包茎)?」

って発音してるのは絶対狙ってますからね!

なんで「お前ら」は普通に発音しているのに、「オーケイ」だけ言い換えた?

っていうかここで「ホーケイ」言うためだけに、ここまで全ての『あ行』をわざと『は行』で発音していたとさえ思えます。

いや、もしかするとここで「ホーケイ」言うた後に、全ての『あ行』を録り直したのかも!?

これ言うためだけに『葡萄』はあるんですよ、きっと。

まあ、原さんに歌わせなかっただけギリギリセーフということにしておきましょう。

#8『彼氏になりたくて』

わちゃわちゃうるさい曲の後の静かなゆったりバラードです。

この曲は失恋ソングらしく、ウィキペディアによると

『本楽曲の主人公は小柄な男で、二枚目と三枚目の中間ぐらいで、さほどモテる方ではない歌手』

とのことです。

これなに?

ホシ(犯人)の目撃情報?

見つけたら通報したら良いわけ?

お巡りさん見つけました!

その男はサ◯ンオール◯ターズに所属してる◯田◯祐って人で、過去に何度も卑猥な言葉を大衆に流布した前科があります!

趣味はAV鑑賞です!

#9『東京VICTORY』

『ピースとハイライト』以上に直接的な表現というか、問題提起はないんですが、これはもはや日本国民応援ソングですね。

確か大問題に発展した年越しライブで初お披露目だったと思うんですけど。

なんというか、内側から自然に湧き上がってきた曲というより、結論が先にあってそれに合わせて作った感じがして余り好きになれません。

ミュージシャンとしての表現欲求で作ってる感じがしないと言うか。

でも日本に対する『愛』をくささずストレートに伝える心意気はしっかりと受け止めようと思います。

#10『ワイングラスに消えた恋』

なんていうか、『昭和』と聴いてイメージする色んなものがまとめて頭をよぎる曲です。

うちは両親が歌番組大好きで、週末の夜8時とかにやっていたNHKの歌謡曲番組を思い出しましたね~。

その時に部屋に漂う親父の飲む焼酎お湯割りの匂い(父の世代の熊本人はお湯割り主流)だとか、たばこの煙だとか、テレビ見ながら歌うお袋の歌声だとか、その頃の記憶がリアルに引っ張り出されたので驚きました。

そんな曲ってなかなかないですよ。

#11『栄光の男』

本作で一番耳に残った曲ですかね。

桑田さんが枯れてるな~。

枯れたからこその味というか、渋さも感じるけれど、一番強く感じるのは『桑田さんも永遠にシーンにいることはできない=いつかは老いで引退する』という現実に対する寂しさというか。

なんか今回は心臓に刺さってくるな~。

#12『平和の鐘が鳴る』

作曲に関しては『曲先(きょくせん)』がメインで、出来たメロディに歌詞をはめていくことが多い桑田さんですが、この曲に関してはイメージと歌詞が先に浮かんできたとのことなので、『詞先(しせん)』になるのかな?

「NHKスペシャル カラーでよみがえる東京~不死鳥都市の100年~」を見てインスピレーションを感じたことが発端となってます。

太平洋戦争の終わりを告げる昭和天皇の玉音放送時の映像(皇居前広場)を見たところからイメージが膨らんだとのこと。

あの映像って私が小さい頃なんかは白黒で見ていたのですが、現代の技術でカラーで見ることが出来る時代になってきてるんですよ。

この映像は私もなにかの番組で見ていたのですが、なんと、玉音放送がされた時の空は「青かった」んですよ。

気持ちいいほどの晴天というのがかなり意外でした。

戦争負けたイメージで白黒映像を見ていた頃は、すごく暗いシーンだと思ってました。

暗雲だと思って見てました。

そのイメージが覆された驚きは私も見ていてありましたね。

「人々がどんなに悲しみで暗く落ち込んでいようとも、空(自然)はそんなこと関係なく晴天なんだな」

私なんかはそう思うぐらいだったものですが、そこで感じたインスピレーションからこんな感動的なバラードにまで仕上げる桑田さんは天才だと思います。

こんな日本人の精神性のすばらしさを誰よりも賛美している人が、「不謹慎だ!」とかってバッシングされるなんておかしな話ですよ。

#13『天国オン・ザ・ビーチ』

まさに『お笑い時代劇』的な雰囲気なんですが、歌詞は時代劇とはカスリもしない下ネタソング。

これはひどすぎるぞ。

けど『マイ・フェラ・レディ』のような生々しい描写じゃないから、昔の桑田さんのエロソングに戻ってますね。

これこれ!

この笑いとセットになったエロさこそ桑田佳祐の真骨頂。

歌詞を無視すれば、私の場合、思いっきりドリフターズが脳裏をよぎりましたね。

「ピンクのポロシャツに白いミニスカート、そしてボンボンを持ってバックで踊っているチアリーダー」っていうイメージが真っ先に浮かんだんですけど、やっぱりMVでもチアリーダー出てきましたね(笑)。

ここまであの時代のエッセンスを再現したものを、作ろうと思ってもなかなか出来るものじゃないと思うんですが、この器用さというか、器用でないとしたら音楽的バックボーンの広さに驚きます。

原さんのコーラスが最高で、まるでチアガールのようにかわいらしさマックスなんですが、ユーコさんってたしかこの年…

還暦ギリギリですよ。

#14『道』

アコギの弾き語りなんですが、エレアコなのでちょっと普通の弾き語りと雰囲気が違いますね。

流れ星がはなかく消えていくかのようなシンセの「ピーン」という音色が幻想的。

広い大地で星空を眺めているような『絵』が浮かんできます。

弾き語り曲なのに、演者ではなく『絵』が浮かんでくるってすごいな。

#15『バラ色の人生』

「なんか聞いたことがあるような?」

と思ったのですが、実はサビのメロディが前作『ミュージックマン』に収録されていた『銀河の星屑』でバイオリンの奏でる主旋律とそっくり。

あまりバンド感を感じなかった本作ですが、最後のサビの時に松田さんがスネアロールを入れるとこが気に入ってます。

SNSで恋をする若い世代にアナログ世代の感覚のおもしろさを『敵対せずに』伝えたいんでしょうね。

オヤジ世代が上から目線でどんなに諭したところで若者の心には響きませんが、桑田さんのように歌で伝えるとか、ユーモアを交えて『伝わる形に工夫』することはすごく大事なんじゃないでしょうか?

逆に言うと「俺たちの時代はこうだった」と『かつての栄光』を語りがちな大人たちを暗に揶揄しているのかも?

#16『蛍』

本作の特徴は歌謡曲の濃さと言いましたけど、もう一つあるとすれば、ドストレートなまでのメッセージ性ですね。

色んな単語でぼかしていた昔と違って、ドストレートですよね。

今回思ったんですけど、歌詞ってのは『何を歌うか?』も大事なんですが『誰が歌うか?』のほうが重要なのかもしれません。

これをデビューしたての若いアーティストが歌うのか?それとも誰よりも日本語・日本文化を研究し、実験し、日本への深い愛情を伝えてきた桑田さんが歌うのか?

それによって説得力が全然違ってくるんですよね。

なのでこういう歌詞って桑田さんが現在のキャリアに差し掛かって歌うからこそ重みを増すんだな、と感じました。


はい、というわけで今回はえらく長くなってしまいました。

最初は全然好きになれなかった作品なんですが、本作のポイントはやはり『歌詞』であることに気がついて、歌詞をじっくり読むにつけ、どんどん心に染み込んできたんですよね。

本来、歌詞は読まない派の私ですが、今回の『葡萄』を通して桑田さんの歌詞の時代ごとの変化にすごく興味湧いてきました。

なので、また1作目から歌詞に注目しながらじっくり聴き込んで、これまでの記事もリライトしていこうかな、と思ってます。

深いな~、桑田さん。

 

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