アンジェラ・アキ全オリジナルアルバム解説&ヒストリー
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はアンジェラ・アキの
全オリジナルアルバム解説をやっていきますよ。
いや~、最近、アンジーが私の中で注目度No.1なんで、今日はその出会いから徹底的に語っていきますよ!
くっそ長くなるかもしれませんが、それはいつものことなんで(笑)。
それでは張り切って行ってみましょう!
イェイイェぇぇぇぇぇ~~~~~!!!
アンジーとの出会いは“隠れ名曲”
まさか私がアンジェラ・アキをこの全アルバム解説で取り扱う日が来るなんて、感慨深いです。
一番音楽にどっぷりだった1990年代の青春時代と違い、社会人になって仕事が忙しくなり、もう音楽をほとんど熱心に聞かなくなった日々が続いていた頃、単身赴任で転勤して、テレビもない社宅兼事務所で娯楽と言えば会社用ノートパソコンで観るYoutubeのみという生活。
「X(JAPAN)のレア動画はほとんど見尽くしたし、かと言って最近の音楽を開拓するほどには音楽に興味ないし、アニメ観てたほうが音楽よりよっぽど楽しいよね」
と、違法アップロードされたアニメを観まくっていたある日、レコメンドでなぜかアンジェラ・アキの『ある曲』が表示されていたんです⇩
これはマジで雷に打たれたような衝撃を受けましたね。
ロックにおいてさえ久しく味わっていなかったほどの、魂が揺さぶられる瞬間っていうんですかね?
「この天才は誰だ!?」
って思いました。
ごくごくシンプルなピアノの弾き語り。
しかし、あまりにも現代の音楽からかけ離れた、いや、あらゆる時代のトレンドを飛び越え、100年、200年と残っていけるような普遍性を持っていました。
その曲名は『KISS FROM A ROSE』。
なんとシールというイギリス・ソウルミュージシャンの曲をカヴァーしたものだったんですよ。
「あ、じゃあ、このアンジェラ・アキって人が天才なんじゃなくて、この曲を元々作ったシールって人が凄いだけなのね。なあんだ、興奮して損した。」
と、シールの原曲を調べてみます。
「ふむふむ、シングルリリースして『ネバーエンディング・ストーリー3』の主題歌ね。そこそこ売れる、と。で1年後に今度は『バットマン』のサントラとしてシングル再リリースされて、今度は大ヒットする、と。さらにグラミー賞にもノミネート、と。」
なるほど、かなりのヒット曲のようですな。
で、聞いてみるのですが…
「おや?原曲はピアノ弾き語りじゃないんだ。うーーーん、良いのは良い。けれど、ここには俺の心を芯から震わせるほどのマジックが起きていない」
と思いました。
つまり、原曲を超えていたんですよ、このカヴァーは。
確かに、アンジェラ・アキが作った曲ではなかった。
その意味ではアンジェラ・アキという人が天才作曲家というわけでは、どうやらないようだ。
けれども、いや、だからこそ、
こりゃ天才だな…
と再認識しました。
ピアノ弾き語りにおける表現力のお化けだ、と。
世の中では『名曲を作曲する才能』ばかりが評価されがちですが、『曲をアレンジ(編曲)する才能』というのもこの世には存在するんです。
曲を名曲たらしめるのはアレンジ次第っていう部分が大きい(ただ、『KISS FROM A RPSE』は原曲も大ヒットしているので、「アレンジこそ全てだ!」とまでは言いませんけどね)。
私の大好きなXで代表曲の『紅』を例に挙げましょう。
もともとYOSHIKIがインディ時代に作曲した『紅』は歌謡曲みたいなものだったんですけど(しかも客受けが悪いから一時期ライブハウスでは演らない曲になってた)、メンバーのHIDEやTAIJIがアレンジすることにより、怒涛のスピード感とドラマティックな展開を持つX屈指の人気曲に生まれ変わりました。
アンジーの場合もこれみたいなもので、『KISS FROM A RPSE』の持つエネルギーを、作曲者とは違った観点からより深く見出し、それにオリジナリティを加えて具現化してます。
それをピアノ弾き語りという表現手段でやるということに特化した才能です。
かなりガチなカヴァーで、安直な雰囲気は微塵もなく、ひたすら緊張感が張り詰めています。
そう思った理由の1つが、歌詞の前半が日本語であること。
普通、カヴァーってそのまま英語で歌おうとするはずなのに
「日本語で歌ったらハマるかも」
って考える発想がすごい。
で、実際、字余りとかも一切なく、見事なまでにフレーズが音符にぴったり合っているこの奇跡!
こういうのって普通は「もう聴いちゃいられない!」ってくらい、かなりダサくなります。
それが分かっているからか、これはかなり真剣に考え抜かれている印象。
言葉の選び方にものすごくセンスがある。
安易に言葉を選ばず、フィーリングもぴったりでありながら譜割りにも当てはめるのは、かなり大変なはず。
日本語にすることで、原曲になかった魅力をプラスさせ、曲を生まれ変わらせている。
さらに圧巻なのが、後半の英語歌詞部分。
ほぼほぼネイティブの発音で、しかも囁きからシャウトまで、強弱のダイナミックたっぷりに、まるで打楽器と化したピアノで生み出すビートに乗せてリズミカルに歌い上げるボーカルラインはもう…感動を言語化するすべを私は持ち合わせません。
アンジーが弾き、アンジーが歌うことで、そこにマジックが生まれているんです。
これはもうアンジーの曲だと堂々と言ってもいいです(シールに怒られるよ?)。
正確に言うと
カヴァーがオリジナルの域にまで昇華されている
とでも言いましょうか。
当然、アンジーの曲の中で一番好きです。
「こんなとんでもない才能が一体いつ日本に現れてたんだ?」
お恥ずかしながら、この時点で2011年。
アンジェラ・アキがデビューしてからすでに5年くらい経ってました。
いや~、己を恥じましたね、この時ばかりは(だってテレビ全く見ないから:笑)。
野球で例えるならば…
1塁ランナーにリードされ過ぎて、2塁ベースさえも回ってしまうくらいリードされた段階になって初めて盗塁の危機に気がついたピッチャー
ってくらい恥ずかしいですよね。
気づくの遅すぎ。
そんなピッチャーおるかいな。
「危機に気がついた」じゃなくて、もう盗塁成功しとるぜよ。
この曲ってシングル『This Love』のカップリング曲だし、カヴァーアルバム『Song Book』にしかアルバム収録されていないから、アンジーファンの人でも意外にノーチェックだったりするんじゃないかな?
これだけの名曲、名カヴァーにも関わらず、私の聴いているスポティファイでは再生回数トップ10に入ってませんので。
で、この記事を読んで「よし、これから聴いてみよう」という方にはきちんとお伝えしておきます。
『Song Book』バージョンは新録で、ピアノも歌も録り直してます。
はっきり言って、このヴァージョンには殺気が足りないと言うか、いまいち痺れませんでしたね。
私が雷に打たれたように衝撃を受けたのは『This Love』カップリングバージョンの方です(先ほど貼り付けていたYoutubeのバージョンがそれです)。
これはもう、全然違うというか、ボーカルの鬼気迫る表現力が凄すぎるので、カップリングバージョンを必ず聴いてもらいたい。
いまさらシングルを探しなさい、とは言いませんので、ストリーミングで探してみてくださいな。
さて、あの出会いから14年も経って、今年の夏のELEVENツアー熊本城ホール公演に見に行ったのですが、あらためてその才能を見せつけられました。
全16曲全てピアノの弾き語りで通してくれましたから、まさに私が『KISS FROM A ROSE』に感じた彼女の表現力の真髄を余すこと無く味わった感がありましたね(あれで『KISS FROM A ROSE』もやってくれたら完璧だったんでしょうが)。
同じツアーでも他の公演では全編弾き語りではなかったみたいなので、これは幸運だったですね。
やっぱりアンジーは私が最初に見込んだ通りの天才だったことを確信しましたよ。
そんな彼女が来年2026年にはニューアルバムを出して、全国ツアーもするって言うんですから、そら今は超熱い時期なんですよ。
この全アルバム解説で予習して、ツアーに備えていきましょうや!
アンジェラ・アキ概要
アルバム解説に入っていく前に、アンジェラ・アキの概要をざっくりと解説しましょう。
アンジェラ・アキは通称「アンジー」。
名前からしてハーフっぽいのですが、実際ハーフです。
父親はなんと!日本人なら一度はCM見たことがある、あの『英会話のイーオン』の創業者=安藝 清(あき きよし)、母親はイタリア系アメリカ人です。
そういうわけなので、アンジーの本名は
『安藝 聖世美(あき きよみ)・アンジェラ』
です。
漢字の画数が多すぎるため、テストの時は名前書くだけで時間の半分は持っていかれそうです(どんだけ?)。
アンジェラ・アキの『アキ』が下の名前ではなくまさかの名字とは意外だったでしょ?
ルックスや生い立ちから帰国子女的なオーラがプンプンなんですが、四国は徳島県の生まれで、思いっきり徳島弁をしゃべりまくるので、初めて喋っている映像を観た時は軽く衝撃を受けましたね。
「な、何じゃ!?アメリカ帰りの美人シンガーかと思ったら、中身は大阪のおばちゃんやんか!?」(怒られるよ?)
世代的には1977年生まれなので、私の1個上なんですよね。
COCCOとか安室奈美恵と同い歳で、椎名林檎、浜崎あゆみの1個上。
しかしながら、高校からアメリカ(ハワイ~ワシントン)に移り、音楽活動の下積み時代をアメリカで送っていたため、日本におけるデビューはこれら同世代のアーティストよりもかなり遅れます。
ようやくシングル『HOME』でメジャー・デビューを果たすのは、先述した同世代女性アーティストよりだいぶ遅れた2005年になってから。
デビュー時点で28歳。
同い歳の安室奈美恵のソロデビューが1995年、一個年下の椎名林檎、浜崎あゆみが1998年のデビューということを考えると、アンジーのデビューがいかに遅かったのかが分かるでしょう。
日本に戻ってきた時点ですでに26才だったため、「色々と売り込みをかけても『年齢が足枷となって』なかなか取り合ってもらえなかった」との本人談ですが、おそらくは大阪のおばちゃんキャラが、あ!なんでもないです。
あの天才フレディ・マーキュリーもクイーンがデビューした1973年時点で27歳だったのですが、後にまばゆいばかりの才能を煌めかせる人でも、デビューまでに苦労している人っているんですよね。
けれども、こういう人の活動って地に足がついているというか、音楽業界とか時代のトレンドとかに流されずに、自分が本当に志向する音楽をブレずに追求する印象があります。
シングルがいきなりバカ売れしてバラエティなんかのテレビ番組にまで引っ張りだこになったりとかすると、やっぱり振り回されるじゃないですか?
全然普通に活動は続けているのに、その後のシングルがバカ売れしないと「もう落ち目だ」って見られたり。
アンジーの場合はペースを乱されるような“バカ売れ”がなかったんですよね。
CD市場のピークが完全に終わってからのデビューなんで、一番売れた『手紙』でも20万枚程度だし、他のシングルも10万枚以下のセールスです。
楽曲の持つクオリティの高さからすると信じがたいほどのセールスの低さなのですが、時代が悪かったとしか言えませんね。
シングルは業界の形式上、アルバムのプロモーションのために出しているといった感じで、アルバムを聴かせることに集中している印象があります。
アルバム曲がビックリするくらい良くて、よくありがちな『シングル曲とアルバム曲のクオリティの落差』みたいなのはほぼありません。
アルバムに数合わせ曲、捨て曲がない。
そういう充実した内容のアルバムを、しっかりとコンスタントにリリースしていく活動を行います。
2006年の1stアルバムから2012年6thアルバムまで、ほぼ毎年のようにリリースされたオリジナルアルバムは、どれも甲乙つけがたいクオリティを誇ります。
そして2014年の活動休止までのシングルはたったの12枚で、アルバム未収録曲は一切ありません(B面曲は未収録もあるけど)。
このことからもシングルセールは狙っておらず、あくまでアルバムの宣伝としての位置づけであったことが見えてきます。
2014年の活動休止の理由は
「アメリカへの音楽留学」
とのことで、「映画音楽やミュージカルなどの違う分野での活動を睨んでるんだろうな」と思いきや、あまり表立った活動も特にないまま、10年が経ってしまいました。
実質、引退状態にあったようですね。
しかし、2024年に公開されたミュージカル『この世界の片隅に』の音楽を担当し、そこに提供した楽曲を自分で歌い上げたアルバム『アンジェラ・アキSings~この世界の片隅に~』を2024年4月にリリース。
ここからミュージシャンとしてのスイッチが入ったのか?
2025年7月より11年ぶりとなる全国ツアー10公演を敢行。
11年間、アンジーの復活を心待ちにしていたファンたちに期待通り、いや、期待以上のパフォーマンスを見せてくれました。
いや~、ほんとに涙が勝手に流れましたね。
さらに、ツアー中に語られた
「来年年明けにはニュー・アルバムを出しますから、またツアーで来ますよ!」
に私を含め、ファンたちは狂喜しております。
それでは、ファンの方たちには次回のツアーに備えた『復習』ということで、まだアンジーを知らない方たちには『予習』ということで、全オリジナルアルバム6枚、カヴァーアルバム『Song Book』、そして現時点での最新作『この世界の片隅に』まで、一挙に7作品を語っていきますよ~。
『HOME』2006年リリース 1作目
先ほど、「活動休止までにシングルはたったの12枚」と言いましたが、実はそのうち1/3にあたる4枚がこのアルバムに収録されてます。
つまり、本作はもっともシングル曲を多く収録していることになり、当然、もっとも代表曲が集中してます。
『HOME』『心の戦士』『KISS ME GOOD-BYE』『THIS LOVE』ですね。
いや~、これだけでもやばいですよね。
『KISS ME GOOD-BYE』はゲームの『ファイナルファンタジー(通称FF)12』挿入歌なんですが、ゲームのものとは違い日本語バージョンになってます。
こちらはMVで英語歌詞⇩
作曲はゲーム音楽界の重鎮である
植松伸夫。
私は初代FFの頃(1987年)から植松先生の音楽のファンで、すでに小学校低学年の頃にはFFサントラを聴き漁ってました。
これまでオジー・オズボーンやらXやらでロックやメタルの洗礼を受けたことはこのブログでも語ってきましたが、そもそも人生で“音楽鑑賞“という行為をするようになったきっかけが植松伸夫とかドラクエのすぎやまこういちなんですよね、実は。
なので私にとっては“先生”みたいな人です。
植松先生はもっぱらゲーム音楽のインストゥルメンタルが専門なのですが、ここぞという時には王道の歌ものをかなりの傑作で仕上げてきます。
昔はFF8の挿入歌『アイズ・オン・ミー』に中国人歌手のフェイ・ウォンを起用し、日本で大ブレイクさせた実績を持ちます⇩
すでに中国ではトップスターだったフェイ・ウォンとは違い、まだ全然無名に近かったアンジーを起用するあたり、やはり植松先生は只者ではない。
アンジーのオリジナルソングの中では(つまりカヴァー曲以外)、唯一の外部ソングライター作曲になります。
実はここでの植松氏とアンジーのやり取りで非常に重要なエピソードがあるんですよ。
植松氏はこの曲をアンジーに渡す際、
「シンガーとして渡された曲をただ歌うのではなく、
シンガーソングライターとしてどう表現するかを追求してくれ」
と伝えたそうです。
つまり「好きに解釈して好きに歌ってくれ」と。
そうした方が楽曲がさらに良くなることを予感していたのかな。
っていうか気が付きました?
そう、これって先述した『KISS FROM A ROSE』が、カヴァーなのにも関わらず、ほぼオリジナルの域にまで昇華されているっていう話に繋がってくるんですね。
渡された『KISS ME GOOD-BYE』の原曲をシンガーソングライターとして解釈し、自分のオリジナルとしてアウトプットする。
さらに自身のアルバムに収録する際は、もともと英語版だったものを日本語に解釈して、歌い直してます。
ね?
『KISS ME GOOD-BYE』でも『KISS FROM A ROSE』でも、原曲に向かう基本姿勢が一貫しているんですよ。
デビュー直後に受けたこの植松氏のアドバイスは、その後のアンジーの『表現者としての姿勢』に強く影響を与えてるんじゃないかな?
このことがなかったら、後のNHK番組『アンジェラ・アキのSONG BOOK in English』やカヴァーアルバム『SONG BOOK』も生まれなかったのでは?
重要過ぎるエピソードですね。
っていうか、アンジーの眠れる才能をそこまで見抜くって…植松さん、あんた神なのか?
さて、『KISS ME GOOD-BYE』の話がやたらと長くなりましたが、シングルを4枚も繰り出して宣伝したので、当然のことながらアルバムとしてのセールスもここが頂点の55万枚。
時代的にもCD不況が加速していきますので、以降、アンジーのアルバムは回を追うごとにセールスは下降していきます。
ということもあり、本作がデビュー作であり、アンジーの代表作と呼べるでしょう。
『KISS ME GOOD-BYE』以外のシングル3曲も申し分ないほど素晴らしい。
特に私が好きなのは『This Love』。
アンジーバラードの王道中の王道!
そして耳に残ってしょうがなかったのが『心の戦士』ですよね、やっぱり(笑)。
「イェイイェェェェェェェ~♪」
は耳に取り憑いた地縛霊のように、こびりついて離れない。
そりゃ青木さやかの誇張気味のモノマネも仕方がない(笑)。
本人、根に持ってるみたいでMCでこんなこと言ってました⇩
やっぱ関西人はMCやらせてもしっかり笑いを取りますね(笑)。
しかし、これらシングル曲が入っているから素晴らしいとうことではなく、実際アルバム曲もかなりいいんですよね。
シングルカットしてもなんら遜色ない『Love is over now』『ハレルヤ』、軽快なピアノがポップで「トレンディドラマの挿入歌か?」っていう印象の『Music』『奇跡』、しっとりと弾き語りで聴かせる『お願い』『大袈裟に「愛してる」』『Your Love Song』、アルバムにもっとも起伏をつける役割を持っている少しダークな『宇宙』などなど、良曲が並びます。
アンジーのようなスタイルの場合、アルバムに13曲も入れたら
「どれも似たような曲だね」
ってなりそうなものなのですが、曲ごとにバリエーションが多彩なので、退屈しないんですよね。
先日行った熊本公演では、本作からはシングル曲『HOME』『心の戦士』『THIS LOVE』に加えアルバム曲の『Rain』までもが披露されましたので、やっぱり本人もこのアルバム自体への思い入れがかなり強いと思われます。
『TODAY』2007年リリース 2作目
1作目ジャケから上着を着替えただけのジャケです。
そのためどっちが『HOME』なんだか『TODAY』なんだかまったく分かりません。
関係者は誰も注意しなかったのか?
ってか
同じ日に撮影済ましてない?
という疑念が晴れることは一生ないでしょう。
「わざわざ、前作から1年後に、また写真撮影でスタジオ入ってプロの写真家に撮ってもらって…って、時間とお金を使ってまでこれをわざわざ撮るか?いや、そんな愚かな真似はしないだろう」
っていう。
私はいつだってどこまでもアーティストをフォローしていく姿勢なので、最初の頃は
「こ、これはもしかして、この2作品が姉妹作であることを示唆してるのか?いやいや、それどころか元々ダブルアルバムとして作られていたりして?うーむ、アンジーのクリエイティブ思考が深遠すぎて俺ごときには分からんぜ…」
と前向きに想像を膨らませていたのですが、そんな事実は一切ありませんでした。
さて、下積み時代の長かったアンジーですが、前作の大ヒットを受けて、デビューからいきなりブレイク。
野望だった武道館での公演では、『史上初のピアノ弾き語り』という記録を作ります。
下積み時代に椎名林檎の武道館ライブを観て
「私もあと3年でここに立つ!」
と誓ってきっちり3年で実現させてしまいました。
その初志貫徹の精神も凄いのですが、『HOME』でのアルバムデビューから1年も経たずに武道館公演まで行きつくってとんでもないですよ?
デビュー1年目なんて、普通はまだホール級(収容2000人以下)でツアーやってるころです。
以前書いた森高千里なんて、武道館なんかのアリーナ級ライブ(収容15000人前後)を実現するまでにデビューから7,8年はかかってるんですからね。
この頃、いかにアンジーの人気が爆発していたのかが分かりますね。
本作収録のシングル曲は3曲。
『サクラ色』『孤独のカケラ』『たしかに』ですね。
『サクラ色』は特に素晴らしいですね。
これぞ『ザッツ・アンジェラ』って感じ。
それもそのはずで、記念すべき初の武道館公演で披露するために気合い入れて作った曲らしいです。
これをいきなり初披露された武道館は沸いただろうな~。
このMVがまた斬新でね。
サクラが舞い散っているんですけど、ワシントンのアパートの一室でピアノを弾いているっていう設定で、ワシントンの町並みとサクラっていう組み合わせが新鮮で、アンジーのMVでは一番秀逸なんじゃないかな。
さらに斬新なのは、ピアノ弾いているアンジーの股下からのカメラアングルが連発されることで、
「なぜそのアングルが必要だと思ったんだ?」
という疑問で曲が途中から入ってこなくなるんですよね(台無しじゃん)。
第1弾シングルだった『サクラ色』は10万枚くらい売れたんですけど、残り2枚が撃沈してしまったんで、以降、シングルはアルバムに1曲くらいのリリースになってしまいます。
『孤独のカケラ』『たしかに』もかなり良いんだけどな~。
2曲ともタイアップまで取ってるのに売れなかった理由が分かりません。
ま、シングルセールスがいまいちだったので、アルバムの宣伝にもならず、アルバムセールスは
前作から半分以下の20万枚
になってしまいました。
しかし、CDマーケットがピークだった1990年代でさえ、20万枚はヒットといえたので、2007年にもなって20万枚ってのは大したものですよ。
立派な大ヒットです。
その証拠に初のオリコン1位を獲得しましたから。
アルバムとしてのカラーは基本的に変わらないものの、前作よりも“明るい”し“ポップ“な印象を残しますね。
ロックを感じさせるアップテンポなビート感、躍動感が強い印象を残します。
その理由は#1『サクラ色』#2『Again』#3『Today』#5『たしかに』と、そういう曲が前半に集中しているからで、中盤以降はちょっと地味な印象が出てきてしまいますね。
#6『Silent Girl』#7『モラルの葬式』#8『乙女心』#9『One Melody』#10『友のしるし』のアルバム曲5連発の流れがそれなんですが、個人的には#7『モラルの葬式』を推したいです。
リズミカルな速いピアノ演奏にトントントンって小気味よく乗っていくバース部分のボーカルがかっこいい。
この目まぐるしく2転3転する展開が圧巻で、今思えば「ちょっとミュージカルっぽいな」と、後のミュージカル音楽提供の伏線にも感じたり。
この方向性を次作『Answer』でも推し進めたのが、あの10分の長尺曲『レクイエム』ですね。
この歌詞も素晴らしい。
「モラル(倫理・道徳)は死んだってか?なんて背徳的なことを歌うんだろう。ロックだな~」
とか最初は思ったんですけど、どうもこれ『突然息子を失った』という不条理を歌っているんだと思われます。
隠れた名曲です。
『ANSWER』2009年リリース 3作目
ここに来てシングル曲はたったの1曲になりました。
そう、それがアンジェラ最大の代表曲『手紙~拝啓十五の君へ~』ですね。
もう本作は「『手紙』が入っているアルバム」と覚えてもらってもいいです。
CD不況の流れでシングル売上はどんどん下降の一途を辿っていたのに、ここで自身最大21万枚もの大ヒットを飛ばすなんて夢にも思わなかったでしょう。
もともとアンジーが15歳のときに未来の自分に向けて書いていた手紙を、母親が30歳の誕生日に送ってきてくれたことがきっかけとなって生まれました。
いや、どんな母親?
まず、そこにツッコミたい。
なんだ?イタリア系アメリカ人のお母さんってそういうノリなの?
もう日記から彼氏とのプリクラ写真まで全部チェックされてんじゃねぇか?
さて、私Simacky的にはですね?
冒頭ではアンジーの『アレンジの才能』を高く評価しましたが、アンジーのことは『時代を超える普遍的なメロディを生み出す才能』を持つタイプのミュージシャンとしても、XのYOSHIKIと同じくらい評価してます。
そのことが証明されるのって、音楽の教科書とかに載って、ベートーヴェンみたいに何十年も何百年も歌い継がれ、聴き継がれていくことだと思っているんですよね。
アンジーやYOSHIKIの曲がそうなるかは現時点では分かりませんが、先述したXの『紅』は高校野球の甲子園で応援ソングとして長年定着してますし、アンジーの『手紙』は中学校・高校の卒業式で歌われることが定着してます。
で、こういう普遍性を持った楽曲って、時が過ぎても色んなとこでテーマソングに使われるし、やっぱりミュージシャンたちからのカヴァーが非常に多いです。
この記事の冒頭では「作曲と同じくらいアレンジも大事」と言いましたが、こういう楽曲たちって歌の持つエネルギーが尋常じゃないから、どんなアレンジでも歌が負けないんですよね。
中高生がヘッタクソな大合唱したって様になるんだから凄いですよ(全国のPTAに怒られるぞ?)
『LIFE』2010年リリース 4作目
『WHITE』2011年リリース 5作目
『SONG BOOK』2012年リリース カヴァー・アルバム
『BLUE』2012年リリース 6作目
『この世界の片隅に』2024年リリース 7作目
おわりに