アリス・イン・チェインズ『アンプラグド』レイン・ステイリー最後の勇姿

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はアリス・イン・チェインズが1996年にリリースしたライブアルバム

『Unplugged』

(アンプラグド)

をたっぷり語っていきます。

ロックバンドのライブ盤はあまたあれど、このアリス・イン・チェインズのアンプラグドは特に名盤だと思います。

そもそもこの『アンプラグド』とは一体なんなのか?

今の若い人は全然ピンとこないと思うので、まずはそこから説明しましょうか。

MTV アンプラグドとは?

『UNPLUGGED』とは直訳すると『プラグを抜いた=電気に繋がない』ということです。

エレキ(電子機器)に繋がない=生音で=アコースティック

というわけです。

で、アメリカには1980年代の初期から、『MTV』(MUSIC TELEVISION)というケーブルテレビみたいなチャンネルがありまして、1日24時間ひたすらミュージックビデオを流してます。

日本でも『アニマックス』とか、1日中アニメを流してる有料チャンネルとかあるでしょ?

あれの音楽版みたいな感じ。

もはやYOUTUBEの時代になったので、若い人たちには

「なんで金払ってまでそんなもん観るんだ?」

って感じでしょうが、民放チャンネルしか観れなかった時代には、かなり喜ばれたと思いますよ。

テレビが流すものを選択の余地なしに観るしか仕方がなかった時代ですから。

何度もいいますけど、YOUTUBEがなかった時代はかなり不便で、1週間に一度、わざわざ夜の8時まで待って音楽番組とか観てた時代ですよ?

そんな時代に音楽ビデオだけを流してるチャンネルがあったら重宝されるわけですよ。

全世界に流れる音楽媒体なんてMTVしかなかったんですから、宣伝効果たるや相当なものです。

そしてそんな時代なので、このMTVにピッタリハマるようなミュージックビデオを作ろうものなら、

世界的な『時の人』

にさえなれます。

マイケル・ジャクソンの『スリラー』なんかがその代表で、あの『ゾンビダンス』が世界に衝撃を与え、なんとアルバム『スリラー』は

全世界で6000万枚以上

のセールスを誇ります。

これが世界を震撼させた動画です⇩

 

6000万枚というセールスは当然、

歴代1位でギネス記録です。

あのビートルズやエルヴィスさえも軽く超えちゃいました。

これはMTV全盛期の時代であればこその数字ですよね。

マイケルやプリンスはMTVの申し子というか、MTVで『時の人』になったようなものです。

ニルヴァーナにしたって、アリスにしたって、CDアルバム出していきなりブレイクしたわけじゃありません。

そのアルバムからのシングル曲のMVがこのMTVでヘヴィロテされることで、時間をかけてチャート順位を上げていったんです。

音楽の有線ならもっと前から流れてましたけど、MTVは映像付きですからね。

普段ロックになんて興味がない一般の人達にも、興味を引くような映像を届ければマーケットは無限大に広がります。

日本では個人で契約してた人は多くはなかったと思うのですが(偏見?)、カラオケとかボーリング場とかではよく流れてましたよね、私の青春時代は。

MTVが世界的にはいかに大きな存在であったかご理解いただけましたか?

そのМTVが『アンプラグドコーナー』という企画を1989年からやり始めたんです。

「普段、ギンギンにエレキギターを響かせているロックバンドが、アコースティックのみで演奏するのって新鮮じゃね?」

という企画趣旨で、出演アーティストは普段演っている楽曲をアコースティック・バージョンにして、ライブ形式で収録します。

これは見事に大当たりし、MTVの看板コーナーになります。

先ほど、マイケル・ジャクソンの例を挙げましたけど、あれだけ宣伝効果のあるMTVの看板コーナーですよ?

そりゃ誰だって出たい。

世界中のアーティストが出たがります。

というわけで、

かなり厳選されます。

まず、流すに値しない知名度のアーティストは出演できないし、ライブの出来が悪ければ収録した後にボツにされます。

実は出演・放送できるだけでも、すごく名誉なことだったんですよ。

そう、グラミー賞とか受賞したりするのと同じくらい(それは言い過ぎか)。

ちなみに日本からは

チャゲ&飛鳥

が1996年に出演したのが日本初であり、唯一の出演です。

しかも奇しくも、アリスと同じ1996年(笑)。

「え?どこに需要あったの?日本語の曲なんてアメリカ人は聞かないでしょ?」

と思うかもしれませんけど、狙いは欧米じゃなくて日本、アジアだったんだと思います。

日本だって世界第2位の経済大国であり、第2位の音楽市場だったわけですよ、当時は。

その日本マーケットを獲得に乗り出した、ひいてはアジア圏マーケットの獲得のためのテスト、といったところでしょうか?

おそらく反応が悪かったから、その後が続いていないのでしょうが。

私の周りにもMTV契約してる人なんていなかったし。

でもこれ聴いてみたけど、結構かっこよくて、青春時代にシングルで聴いていたイメージと全然違ったな~。

『セイ・イエス』『ヤー・ヤー・ヤー』しか知らなかったもんな。

やっぱ、アンプラグドクオリティに仕上げてきてますね。

かっちょいいぜ!チャゲアス!

歴代出演者で特に有名なのは、KISSやニルヴァーナ、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニーなどですね。

出演・放送後は、自身のライブ盤『アンプラグド』としてリリースするアーティストがほとんどで、その中でも代表的なのはエリック・クラプトンの『アンプラグド』ですね。

これは『アンプラグド』というくくりではなく、『ライブ盤』という広いくくりでも史上最高売上を叩き出してます。

1500万枚

です。

歴史上の名だたるライブ名盤の頂点に君臨してます(少なくともセールス的には)。

さらにグラミー賞も6部門を独占!

凄まじいでしょ?

出演するハードルは高すぎるけど、そのハードルを超えて出てくるパフォーマンスは選りすぐりのクオリティなんです。

そのことを売上が証明してます。

これは宣伝効果だけで届いたセールス結果ではないと思います。

実際見てみると、どのアーティストも内容が驚くほどにいい。

高水準であることもそうなのですが、やっぱりアコースティック縛りという切り口が面白い。

普段、電子機器を通しては伝わってこない生々しいフィーリングがあります。

すごくオーディエンスと肉薄していて、観客の声がもろに聞こえたり、それに演者が反応して話しかけたり。

こういうのって、ジャズとかの小さい箱で演るジャンルではいつものことなんだろうけど、スタジアムやアリーナ級が当たり前のロックバンドでは新鮮ですよね。

エレキの力を借りていない分、つまりはったりが効かない分(笑)、素の実力で勝負するしかないのはなかなかにシビアなもので、弦の抑え方とかピッキングとか、ちょっと違うだけでも目立つんですよね。

ちゃんと知名度に見合う演奏者としての技量、バックボーンが伴っていなければ、ボロが出ること請け合いです。

多分、

メタリカとか出演しなかったのも、そういう理由じゃないかな(笑)。

しかし、クラプトンのような超一流の演奏者の場合は、逆に

「やっぱとんでもなく上手いや…」

っていうことがよく分かりますよ。

素の実力が伝わってくると、そこに凄みまで感じてしまうんですよね。

それでは我らがアリス・イン・チェインズはどうだったのか?

これがねぇ…素晴らしいんですよ!

「天才的なリフメーカーはアコギやらせても上手い」

というのはトニー・アイオミ(サバス)やジミーペイジ(ZEP)が大好きな私の持論なのですが、ジェリー・カントレルもその血を受け継ぐ人のようですね。

さらにはドラムのショーン・キニーもその本領を発揮しています。

あれだけ普段はドッカンドッカン叩いていたのに、こんなに繊細なシンバルワークを引き出しに持っていたなんてね。

もともとアリスは、アコースティックEPである『SAP』『JAR OF FLIES』なんかで、演奏者としてしっかりとした技術的基盤を持っていることは予想できていたのですが、このアンプラグドでより多くの人に認知されることになったというか。

彼らのライブの中でも屈指のパフォーマンスと言えるでしょう。

それどころか、アンプラグド出演者の中でもトップクラスの出来だと思うのは私の贔屓(ひいき)目ですかね?

さらに言うとセールス面でも300万枚売ってますから、おそらくMTVアンプラグドの中ではクラプトン、ニルヴァーナの次に売れたアルバムなんじゃないかな?

まったく、この企画考えた人って天才じゃね?

誰が考えたの?

実は…MTVにこのアンプラグド企画を提案したのはなんと

ボン・ジョヴィ!

し、知られてなさすぎる…

ボン・ジョヴィっていわゆるオルタナティブ・ムーブメントによって“覆された側“の人たちなわけじゃないですか?

オルタナブームの反動でチャートから駆逐されていったヘアーメタル・バンドたちの代表みたいな人なのに、その人達が考えた企画でニルヴァーナやアリスがライブ盤の傑作を出したという事実。

運命は皮肉なんだな~(BY相田みつを)。

ちなみに個人的に是非とも出演してもらいたかった、是非とも見たかったバンドは…

ドリームシアターですかね(笑)。

あの超絶プレイの数々がアコースティックで演奏されたときに、この世に今までなかったものが生まれると思うのはわたしだけでしょうか?

けど、歴代出演してるバンドってプラチナ・アルバム当たり前みたいな人たちが多いから、やっぱり実現しなかったろうな。

それかやっぱりデビッド・ボウイですな。

彼がミック・ロンソン始め、かつての盟友たちを集めて、往年の名曲たちを演ったら、歴史的名盤が生まれていたはず。

皆さんにもそんなバンドがいたらコメントで教えて下さいな。

アリスが『アンプラグド』に至るまで

実はアリスにとってこのアンプラグドライブ(1996年)は、公式的に2年半ぶりになります。

「え?でもこの前の年の1995年に3枚目のアルバム出してるよね?」

そう思う人もいるかも知れません。

そう、3枚目のアルバム『アリス・イン・チェインズ』(通称『犬』)のリリース後にツアーは行われませんでした。

なんならその前のミニアルバム『JAR OF FLIES』(1994年)がチャート1位を獲得した時もやってません。

やろうとしたけど、全日程キャンセルになりました。

遡ると1992年リリースの2作目『ダート』に伴うワールドツアーが1993年に終了した後からライブしてません。

人気絶頂でアルバムは数百万枚も売りながら、ライブを演っていないという、まるで後期のビートルズのような存在がこの頃のアリス・イン・チェインズなんですよ。

原因はボーカルであるレイン・ステイリーのドラッグ中毒です。

『ダート』のワールドツアーが終わってから、すぐに作ってリリースしたのがミニアルバム『JAR OF FLIES』だったのですが、その後はバンド活動がストップします。

ほぼ解散状態です。

そんな状態だったので、3作目『犬』の制作にこぎつけるまでも一苦労の状況だったんですよ、実は。

で、『犬』リリース後はそれまで以上に解散状態。

つまり、レインの体調は悪化の一途を辿っていたんですね。

なので、そういう状況を知れば知るほど

「よくアンプラグド出来たな…」

と思ってしまいます。

実際、映像で確認してもらうと分かるように、うつむき加減で歌うレインは病人そのもののようにやせ細ってます。

あの裸でステージを飛び跳ねていた面影(おもかげ)は微塵(みじん)もありません。

ステージに立ったということだけでも十分に奇跡なんですよ。

なのに、声も出てるし、表情は笑顔だし、MCでも冗談を言って笑い取ってるし。

重度のジャンキーって笑わないんですよ、普通。

レッチリのジョン・フルシアンテが脱退前(1回目)のライブをビデオで観たことあるんですけど、もう別人みたいに暗くて俯いてギター弾いてましたもんね。

メンバーの誰とも目を合わせないし。

「ああ、ジャンキーになると心を閉ざすんだな」

とか思いながらビデオ観てたものですけど、レインの場合は明らかに重度のジャンキーであるにも関わらず、ジェリーとしっかりやりとりしてますね。

とても末期のジャンキーには見えないし、実質解散状態のバンドにも見えないんですよね。

まるで消える前のロウソクが一瞬だけ炎が大きくなるように、『最後の一華』感があります。

事実、これがレイン在籍時代の最後のアルバム作品になりました。

まるで今の自身をなぞらえるかのごとくステージに飾られた多数のロウソク…。

おいおいおい…

これってレイン自らのアイデアって言うじゃないか…。

そういえば、ニルヴァーナのアンプラグド(1994年)も、

自身(カート)の未来を予期していたかのような葬式風のセット

だったな…。

・・・・・・・・

・・・・・・・・

この2人の『稀代のカリスマ』には予知能力でもあったんでしょうか?

1990年代グランジ・オルタナティブを代表する2名が同じような末路を辿ってしまいました…。

YOUTUBE公式チャンネルの動画を貼り付けておきます。

全曲見れますよ。

刮目せよ!!!

『アンプラグド』楽曲解説

『犬』やEPに収録されていた、もともとアコースティックなナンバーは大きなアレンジ変更はありませんので、解説はしないでおこうとも思いましたが、やっぱりいいな~、アンプラグドは。

こういう言い方をすると身も蓋もないのですが、もともと激しかった曲がアコースティックになったものよりも、もともとアコースティックだったものの方が光ってますね、ぶっちゃけ(笑)。

それはやっぱりアコースティックバージョンへのアレンジに時間がかけられなかったからだと思うんですよね。

理想を言えば、ただアコギに持ち変えるだけじゃなく、音の変化に合わせた全体の構成もいじった方がいいんでしょうけど、レインがぼろぼろだからリハーサルが入念に出来なかった、ということでしょう。

『アングリー・チェアー』なんかがまさにそうで、せっかくアコギバージョンにするのなら、何かひねりが欲しかったですね。

結局、全曲語っていきますよ~(笑)。

#1『Nutshell』

『jar of flies』の2曲目ですね。

この曲、激渋すぎで大好きなんですよ。

よくもこの映えあるアンプラグドでオープニングに演ってくれた!

こうして聴くと、マイク・アイネズの伸びやかなベースが曲全体を優しく包みこんでいて、寒くて凍える極寒の曲に温かみを与えているというか。

こういう音楽はアリスにしか出来ないっていうナンバーですね。

この時期には珍しく、ジェリーのコーラス無しでレインが歌いきってます。

#2『Brother』

今度は『SAP』のオープニングナンバーです。

これも超絶に好き。

だからこそ、アンプラグドで演ってくれて死ぬほど嬉しい(笑)。

アンプラグドって今回気がついたけど、箱が小さいから、鳴り方が全然違うんだな~。

同じことを普段のアリーナ級の会場でやってもこの臨場感はでないんだな~。

このレインとジェリーのボーカルのシンクロ率は300%ですな、エヴァでいうところの。

もうLCLに溶けてどっちがどっちだか分かんない(笑)。

#3『No Excuses』

この曲はもともと半分アコースティックみたいな楽曲なので、大幅に印象が変わることはなかったのですが、完全にアンプラグドになることによって、よりサウンドに温かみが出て面白いです。

特に聞きどころはやっぱりショーン・キニーのドラムですね。

この人天才です。

これほどパーカッションに寄せたプレイを、ドラムキットでこなす人を初めて観ました。

スプラッシュなどの装飾系シンバルやパーカッションを入れながらも、合間合間にハイハットの細かい表現を入れてくるとこなんか悶絶モノ。

ドラマーはコピー必須ですよ(と言っても色々買い足さないと叩けないですけど:笑)。

それから、こういうアンプラグドではやたらとアタック音が強いと他の楽器を邪魔するので、実はスティックが特殊なんです。

映像を見てもらうと、ドラムスティックの途中途中にテープが巻いてあるように見えるでしょ?

これは『ロッド・スティック』といって、竹の細い棒を束ねてスティックとしているわけです。

こんなんね

通常スティックよりアタック音を柔らかくすることが出来ます。

他のアーティストのドラマーも、アンプラグドの時はロッドかブラシを使ってますね。

こっちがブラシ。ジャズドラマーがよく使う。

そして楽曲の終わった後に唐突に始まる『エンター・サンドマン』のイントロ(笑)。

実はこれ、

「アリス・イン・チェインズのファンだ」

と公言して憚(はばか)らないメタリカのメンバーが観客席にいるんですよ。

それに対してのお礼というわけです。

ちなみにマイク・アイネズのベースにもメタリカに対するメッセージが書いてあり、普段から仲がいい両バンドの関係性が見えてくるようです。

#4『Sludge Factory』

『犬』からのナンバーです。

こっからが本番です。

なぜなら、レインがグラサン取るから(笑)。

で、レインが間違えて『ファック!!!』って叫んでやり直し(笑)。

ここまでちゃんと映像として見れる喜び!

こんな似つかわしくない曲演るからだ。

ってか、これ演っちゃう?

いや~、このドロドロの雰囲気…。

会場が冷え切って冷え切って(笑)。

アコースティックだからと安心して来てた人の背筋は凍りついたことでしょう(笑)。

#5『Down In A Hole』

アリスが誇る名バラードで『ダート』収録です。

なんかこの曲を聞いてると泣けてきました。

もうなんかね、ジェリーがボロボロのレインを目一杯フォローしながら、リードギターまで弾いてるんだもの(まあ、この曲だけじゃないですが)。

七面六臂(しちめんろっぴ)の活躍というのはこういうのを言うんでしょうよ。

ボロボロの亭主を支える最高のカミさんじゃないですか。

アリス・イン・チェインズには最後まで『愛』があった。

それはMCからも感じられるんですよね。

メンバー間のギクシャクじゃなかった。

どうしてレインは孤独に陥ってしまったのか…。

#6『Angry Chair』

出た、一番アンプラグドに似つかわしくないナンバー(笑)。

普通は絶対にチョイスしない楽曲と思えるけど、これをアンプラグドで演るのがアリス・イン・チェインズですよ。

アンプラグドにしても失われることのない不穏な空気感。

一聴の価値はあるけど、個人的には

「あ、アンプラグドだとこうなるのね」

っていう確認が出来ただけで満足で、別に好きにはなれないバージョンですね。

多分、メンバーもそうだろうけど(笑)。

本当はもっとアレンジを変えて生まれ変わらせることも出来たと思うんですよ。

けど、レインにはもはやその時間もエネルギーも残ってなかったんでしょう。

#7『Rooster』

『ダート』から代表曲の登場です。

この曲ってもともとがバラードだから、“エレキ”って言う印象は強くなかったんですけど、やっぱりエレキはこの曲の持つドラマ性にかなり貢献していたんですね。

アコースティックになるとここぞという時の盛り上がりにイマイチ欠けます。

だから、エレキを前提としないようなアレンジに作り変えた方が良いと思うんですよね。

ちょっともったいなかったと思いました。

まあ、原曲のメロディがいいから結局は気持ちよく聴けるのですが。

#8『Got Me Wrong』

『SAP』からのナンバーです。

もうね、『SAP』の曲は全部好き。

言ってみりゃ、アンプラグドなんてのはアリスにとって、注目されない2枚のアコースティックEPを知らしめる企画でもあったわけで。

ファンとしては

「どうだ見たか!?」

って気分です(笑)。

今回のアンプラグドのハイライトというか、レインの最後の咆哮が聞けます。

ああぁもうぅっ!

ゲストにサウンドガーデンのクリス・コーネルも呼んで『Right Turn』も演ってほしかった…

#9『Heaven Bside You』

『犬』収録のもともとアコースティックナンバーです。

お恥ずかしながら、今回映像で観て初めて気がついたんですけど、このサビのボーカルって、下がジェリーで上がレインだったんですね。

いや、これってようく聴き込まないと分かんないですよ、ほんとに。

もしかしたら『犬』の曲ってこういうパターン多いのかも知れないですね。

ジェリーってハイトーンまで歌いこなすし、レインは低く野太い声という先入観があるものだから、重なる時は上がジェリーで下がレインだってずっと思い込んでましたね。

で、レインも高音歌ってるのに口がほとんど開いてないから、分かりにくいったらない。

お地蔵さんみたいに俯いて座ってるだけに見えます(笑)。

#10『Would?』

オリエンタルなギターの雰囲気をアコギでも再現できているのは、サウンドではなくコードがそう感じさせていたってことなんでしょうね。

やっぱりジェリーのコードは独特なんだな~。

こうしてアンプラグドで聴くと、ベースがゴイゴイ引っ張る曲なんですね。

ショーンの細かいハイハットプレイが原曲よりも鮮明に聞き取れるのが楽しい。

「この曲はボロボロのレインには荷が重いのでは?」

という心配を跳ね除けるほど、サビでもしっかり声が出てます。

それこそ『最後の灯火』だったのか~…。

#11『Frogs

『犬』収録の長尺ナンバーですね。

省略無しで7:30演ってます。

葬式ですな、完全に(笑)。

普通なら「こんなもん誰が喜ぶんだ?」ってな状況なんでしょうが、観客はアリスのファンなのでそこは許容範囲というか、むしろ「よくぞこれを演ってくれた」感はあるでしょうね。

一般視聴者はドン引きでしょうが(笑)。

まあ、この曲でのショーンの仕事っぷりたるや。

ドラマーを志すものとして、これの良さが分からないならドラマー辞めたほうがいいですね。

っていうくらいいい仕事してます。

#12『Over Now』

『犬』のラストナンバーですね。

これは名曲ですよ。

エレキでのジェリーの不穏なリードギターがないので、すごく好感度の高い曲になってしまってます(笑)。

いや、これじゃあマジで普通にクセのない良い曲じゃないですか。

アウトロのアルペジオが泣かせる…。

#13『The Killer Is Me』

なんとこの番組のために新曲をこさえてまいりました。

コードが気持ち悪い。

チューニング狂ってんの?って言いたくなる(笑)。

全然気持ちよくない。

ソニック・ユースみたい。

よくこんなコードを考えつくな。

で、それに乗っているジェリーのボーカルは至って普通なところが奇妙なんですよね。

これぞアリス・イン・チェインズ!

なんか、本編が終わった後のシークレットトラックみたい(笑)。

レイン・ステイリーのその後

このアンプラグドの時点ではすでにボロボロだったとはいえ、まだレインがドラッグから立ち直れるかもしれないという一縷(いちる)の望みは合ったんだと思います。

このアンプラグドから1ヶ月後の1996年5月にはテレビ番組に出演して演奏してます。

さらに同年7月にはオリジナルメンバーが戻ったKISSのサポートアクトとしてライブも行います。

しかし、レインがライブを出来たのはここまで。

このKISSのライブ終了直後にオーバードーズで病院搬送。

一命はとりとめますが、そのままバンドは活動休止。

そして同年10月にはレインにとって人生を決定づける出来事となる、婚約者の死(オーバードーズ)。

ここからは2年間、自宅にこもってほぼ出てこなくなります。

しかしどうやって引っ張り出したのかは分かりませんが、1997年にはグラミー授賞式に出席。

さらに1998年10月には奇跡的にも新曲のレコーディングが出来ているんですよ。

それがベスト盤のみに収録された「Get Born Again」及び「Died」の2曲です。

私は特にこの「Get Born Again」が大好きで、ビデオを何回も観たものです↓

『犬』から一転して『ダート』時代のサウンドに戻したこの曲はまさに会心の出来です。

とても解散状態のバンドの作品とは思えないような痛快作で、彼らの才能がとんでもなかったことが分かります。

さらに1ヶ月後1998年11月には『Class of ’99』というスーパーグループに加入してピンク・フロイドのカバーとかしてます。

やっぱりジャンキーっ基本ボロボロでも、たまに「お?今はちょっとは動けるぞ?」みたいな波があるんでしょうね。

この後は1999年のラジオに電話インタビューという形でサプライズ登場したということ以外、表立った行動は一切ありません。

そして2002年4月、自宅で遺体となって発見されました。

死亡時の体重はたったの39キロ(身長185cmもあるのに)、歯は何本も抜け落ちていたらしいです。


はい、というわけで今回はアリスの『アンプラグド』でした。

とりあえず、アリスに関してはオリジナル・フルアルバム3枚、EP2枚、そしてアンプラグドまで当初の計画通り6記事を書き上げたので満足・満腹です(笑)。

言いたかったことを思う存分語りました。

新ボーカルを迎えて再結成したアリスは、今のところまだそんなに聴き込んではいませんので、そのうち

「うわっ!こりゃやばい!すげぇいいぞ!」

ってなってきたら追記していきます。

それではまた!

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