『VOLT』吉井和哉 イエモンファンはここからソロに入れ!

本記事はプロモーションを含みます。

本日は吉井和哉が2009年にリリースした5作目のオリジナルフルアルバム

『VOLT(ヴォルト)』

を語っていきたいと思います。

2004年のソロ1作目『ブラックホール』以来、毎年のようにニューアルバムをリリースしてきたロビンですが、2008年は新作のリリースはなく、1年半ぶりの新作となりました。

『バッカ』『雨雲』などの大人気曲を生み出した前作『ハミングバード~』。

いよいよ乗りに乗ってきたロビンが、さらにノリノリになっております。

ちなみにジャケットはぱっと見だと、何が表現されているのかよく分からないのですが、よく見ると富士山が描かれています。

これって、ロビンが小学校の頃に書いた富士山の絵なんですよ。

彼は東京生まれの静岡育ちなので。

日本=和の象徴富士山でっせ。

実はこの富士山に象徴される『和のテイスト』が本作のポイントになります。

それではたっぷり語っていきましょう!

『VOLT』に至る流れ

毎度毎度語ってますけど、ロビンはソロになってからの大きな流れとして、ものすごく内向的な作風からスタートして、徐々にハードロック然とした作風に変わってきてます。

かなりざっくり言うとですね(笑)。

一度、イエローモンキーというものをリセットして、他に眠っている自分のルーツを探ってみたり、新しく吸収した要素を試しているように見えてました。

ロビンというお人は、

「デビッド・ボウイになりたかった。デビッド・ボウイになるためにイエモンを結成したようなもの」

と語るほど、デビッド・ボウイ、グラム・ロックからの影響を公言してはばからないのですが、それ以上に彼の『核』となっているコアなルーツは間違いなく

『昭和歌謡』

です。

これは当時から別に隠していたわけではなく、シングルB面とかで由紀さおりの『夜明けのスキャット』をカバーしていたりするところからも、一応堂々と表現していたわけです。

けど、やっぱりパブリックイメージは『グラマラスなロックスター吉井和哉』だったので。

ミュージックステーションで

「一番影響受けたミュージシャンは?」

って尋ねられたら

「デビッド・ボウイです」

と答えにゃロックスターじゃないわけです。

「実は由紀さおりだったんです!」

とかって答えた日にゃ

「え~!!!吉井和哉のイメージが~!」

となるわけじゃないですか(笑)。

イエモン時代、ファッションだったり、アルバムジャケやコンセプトだったり、バンドサウンドであったり、そういったものには確かにデビッド・ボウイ、グラム・ロックの影響が色濃くありました。

しかし、こと、ロビンのボーカルに関して言うと、グラム・ロックというより昭和歌謡の『情念』を表現することに重きをおいていたというか。

なので、ファンのみんながイエモンのことを『グラムロックバンド』と認識していたかというと、決してそうではなく、むしろ本人も語っているように『歌謡ロック』と認識されていたと思います。

「これってX(JAPAN)に近いんだな~」

なんて気づいたりしてる今日このごろです。

つまり、歌謡曲の歌メロとスラッシュメタルというハードなロックを組み合わせたXに近いスタイル。

歌謡曲の歌メロにグラム・ロック(ハードロック)のエッセンスを融合させていたのが、イエモンのスタイルです。

この方法論をソロになり一旦破棄して、というよりバンドという形態がなくなったことによってロビン自身でさえ再現できなくなるんですよ、技術的に。

またバンドという形態に戻せば作れたんだろうけど、本人がそれを良しとしなかったんですね。

なので、ソロになってからのYOSHII LOVINSON名義の2作、および吉井和哉名義になってからの1作目(通算ソロ3作目)である『39108』はわりと密室的・内省的な傾向が強く、イエモン時代の作風とは全く違うものになってしまったというわけです。

この頃の作風からは

「イエモン時代の作風やスタイルはソロでは絶対に踏襲しない!それやったらもう負けだもん!

って言っているように感じます(笑)。

そういうバンドというものへの頑ななこだわり、わだかまりだったり、プライベートでのゴタゴタ(詳しくは自伝を読んでください)が、時間の経過とともに解消していきます。

「別にバンドやってもいいんじゃね?別にロックスターに戻っても良くね?」

っていう転換期が『39108』のツアー中あたりかな?

で、そういう意識の変化が、素人でもそれと分かるほどはっきり作風に出てきたのが、前作である『ハミングバード・イン・フォレスト・オブ・スペース』だし、その変化は本作でもさらに継続しているというわけです。

さらに一歩変化してます。

「素人でも」というなんか上から目線の嫌な表現をしましたが(笑)、コアなファンであれば3作目『39108』、あるいは2作目『ホワイトルーム』の時点からその変化が少しずつ起きていることに気づいていたことでしょう。

めっちゃ分かりやすく例え話をすると、

「イエモンは『ジャム』とか『スパーク』とかの代表曲しか知らねぇや。吉井和哉のソロは聴いてない」

っていう一般音楽リスナー(イエモン素人)が、1作目『ブラックホール』をソロ作品の最初に聴いたら

「なにこれ?吉井和哉ってイエモンやめてこんな感じになってんの?なんか雰囲気っていうか、ボーカルの声も違うくね?」

と意外に思うこと請け合いです。

けど、本作『VOLT』をソロ作品として最初に聴いたら

「あーあー、イエモンのボーカルの人の作品ね。確かにね

と感じるということです。

「2001年にイエモンが活動停止した直後にリリースされた吉井和哉のソロ1作目!」

という触れ込みで聞かされても全く違和感がない、というか(次作『アップルズ』の方がもっと強く感じるけど)。

つまりめっちゃ乱暴な表現をしてしまうと、

ソロの作風は回を追うごとにイエモンに近づいてきているんですよ。

そう、まるで来たるべくイエモン再結成に向かう準備期間であるかのように…。

「何がそんなに近づいたの?」

と思うでしょうが、それは端的に2つ。

ロビンのボーカルスタイル(歌唱法)と、バンドサウンドです。

まず、1つ目のロビンの歌唱法。

1~3作目のロビンのボーカルを思い出してみてください。

それと知って聴いている我々ファンでさえ、にわかにはロビンの声だとは信じられないような声の時さえありました。

しかし、本作では1曲目『ビルマニア』から、「これぞイエモンのロビン!」という声になってます。

ソロになってからロビンの声は『線の細い』という表現がハマるような歌唱スタイルだったのですが、今回は野太い声ですね。

2つ目が、バンドサウンドが全然凝っていないこと。

どストレートにノリの良さを重視しているというか。

これまでのソロの作風は、楽器全体のアンサンブルが程よく調和して、しかもボーカルを食いすぎないくらいのバランスだったのですが、今回は思いっきりギターリフが前面に出てきてます。

一度聞くと覚えてしまうほど、印象的なギターリフの轟音で楽曲を引っ張ります。

まるでイエモン3作目の『エクスペリエンスムービー』の頃を思い出すようですね。

サウンド面ではソロ作品中で最もイエモン的なのが本作です。

これが快感指数が高くて高くて…幸せです(笑)。

#2『フロリダ』のギターリフを聴いてみてください。

ちょっとやりすぎて、まるでグリーン・デイになっとりますが(笑)。

ボーカルの歌唱法にしても、バンドサウンドにしても、これらの変化に共通していることはずばり!

ライブ映えするテイスト

これですね。

以前のアルバムでは

「これってライブの時、どうやってノルんだ?」

みたいのが割と多かった印象なのですが、目をつぶればライブでの盛り上がりが浮かんでくるような楽曲が多い。

『魔法使いジェニー』なんてアリーナの女の子たちが踊り狂ってる姿が目に浮かびますもんね。

もう、ブラをぶん回してますよ、ギャルたちが(笑)。

『VOLT』楽曲解説

#1『ビルマニア』

来ましたね~、のっけから!

旧来のイエモンファンにとって、おそらく吉井和哉ソロ始まって以来の

「これこれ!これが聴きたかったんだよ!」

という声が多かったのではないでしょうか?

それにしてもこのヘヴィリフの凄みときたらどうでしょう?

もはやニューメタル(笑)。

しかし、このギターがメタルメタルして聞こえないことこそ、まさにイエモンの頃に起こっていたマジックと言うか。

#2『フロリダ』

先ほど、「グリーン・デイみたい」と呼んだ曲です。

この曲がこのアルバムで一番好きかも。

このノリ、グルーブ感が病みつきになります。

強靭なギターコードが楽曲をグイグイ引っ張ります。

ウジウジロビンはどこへやら(笑)。

ド直球でひねりなしの作風には自信と貫禄がにじみ出てます。

「BBキングのギターがそう言ってんだよぉ!」

最高っすね。

けど、私の耳には「BBキングの金玉が

って言ってるように聞こえてたんで、

「ロビン、デビューしたての新人じゃないんだから!怖いもんなしかよ!」

と仰天してました(笑)。

#3『ウォーキングマン』

猥雑だ~、卑猥だ~。

これぞ、本作の真骨頂、

意味のない歌詞(笑)。

なんていうか、桑田佳祐のブルースみたいですね。

「亀の泳ぐ街」を思い出してしまった(笑)。

#4『ノーパン』

ノーパンは「パンツ履いてない」の意味と、音楽用語のパン(音を左右に振り分ける)にノーをつけて「どちらにも振らない」、ひるがえって「何にも振り回されず己の中心に立ち続ける」というお得意のダブルミーニング。

ダブルミーニングといえば、イエモン最高傑作『SICKS』時代の『楽園』や『双生児』を思い出すではないですか。

なにやらやたらとイエモンっぽい怪しさ満載の楽曲です。

このアルバムはやたらと『SICKS』っぽさを感じる瞬間がありますよ。

この曲、後半はノイズまみれのソニック・ユースみたいになるのですが、これがライブ盤だともっとめちゃくちゃカオスでかっこいい。

で、最後はジャパメタバンド出身者の面目躍如というか(笑)、アイアン・メイデンみたいなコテコテのギターユニゾンで仕上げます↓

観ました?

やばくないですか?

っていうか、イエモンのライブみたい…。

本人も「イエモン時代を含めて3本の指に入るほど好き」と公言してます。

#5『ヘヴンリー』

先ほど、今作におけるロビンの歌唱法を『野太い』と表現しましたが、この曲のコーラスなんてまさにそうですね。

そこにドラムのスネア4つ打ちを重ねてるから、なんかすごく潔く感じます。

なんていうか、声の抑揚が完全にイエモンの頃の響きに戻ってます。

もちろん、

「イエモンの歌い方じゃないからこそ、ソロの吉井和哉が大好きなんだ!」

という方もいらっしゃるとは思いますが、私なんぞのイエモンからのファンとしては、この声に涙が出そうになってしまいます。

#6『魔法使いジェニー』

ノリノリですな。

『見てないようで見てる』のように、ライブで絶対盛り上がることうけあいです。

なんと、驚くことにこのナンバーは実は、あの1作目『ブラックホール』の頃に作っていたらしいです。

うん、この曲はあの作風には入れるとこないよね(笑)。

つまり、ソロ初期の頃のロビンは、「イエモン的なものを除外すること」に固執していたのかもしれません。

#7『SNOW』

アコースティックに渋く始まります。

この曲、アルバムに必要だな~。

本楽曲中で一番キーが高いとこを伸びやかに歌い上げております。

この曲とかはいかにもロビンのソロの雰囲気をまとってます。

これは全然目立たないけど、隠れ名曲ですよ。

#8『ONE DAY』

なんというか…放っている雰囲気が福山雅治とかに近いものを感じるのですが(笑)。

いつかも書いたのですが、ロビンって全然らしくないけどやたらと普遍性の強い楽曲を生み出すことがある、と個人的に思っているのですが、この曲なんかがそうですよね。

これが吉井和哉っぽいか?イエモンっぽいか?

どちらも「ノー」なんですよね。

けど、楽曲に流れるメロディは間違いなく素晴らしい。

まったく…気に入らねぇけど好きだぜ(笑)。

#9『ルビー』

正直、アルバムの流れで聴いた時はそんなにいい曲とは思わなかったのですが、ライブ見てこの曲への印象はガラッと変わりましたね。

ライブはやばいです。

やっぱりライブを前提とした楽曲ってアルバムでは真価を発揮していないんですかね?

そんなにアレンジしているわけじゃないのに、なんでこんなに違うんだろ?

殺気?感情移入度?

とにかくライブになると化けるので、上の動画を一度見てみて!

#10『またチャンダラ』

「チャンダラ」っていうのは、ロビンがスタッフと何度も通ったタイレストランの名前らしく、こんなタイトルを付けている時点で、歌詞に重きをおいていない本作の方針が見えてきます。

まあ、それは前作「ハミングバード」からなのですが、ロビンって心にぐさっと来るような歌詞もかける反面、なんの意味もないことを歌っている方が妙に「らしい」というか。

ようするに、ロビンっていうお人がその真価を発揮するスタンスとしては、ガチで全力っていうより、ちょっと引き加減でおふざけの要素が入っていないと、彼の強みである「ユーモア」っていうものが鳴りを潜めてしまうんじゃないかな?

このアルバムに流れる「おふざけ・悪ノリ感」って、初期のガチのスタンスというか、思い悩んで作品に思いをぶつけるようなスタンスでは決して味わえないんですよ。


はい、というわけで本日は『VOLT』を語ってまいりました。

この5作目あたりになってくるともうやぶぁいね。

クオリティもテンションもすごい水準だし、勢いがイエモン全盛期に負けてないというか、超えてると思う時さえあるというか。

完全復活をかなり印象付けます。

もし、この記事を読んでいるあなたが、

「イエモン時代は好きだけど、ロビンのソロはあんまり好きじゃない」

という方であれば、このアルバムあたりから入ってみるのが一番オススメですね。

「ブラックホール」なんて、イエモン好きな人がいきなり聞くには心臓に悪すぎますので(笑)。

Simackyでした。

それではまた!

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