『RELOAD』(メタリカ)メタルを完全に脱した1つの完成形

メタリカのアルバム『RELOAD』のジャケット

どうもSimackyです。

本日はメタリカの7作目『RELOAD』を語っていきますよ。

「もともと『LOAD』とダブルアルバムになる予定だった」

「『LOAD』に選曲漏れしたアウトテイクの寄せ集め」

「『LOAD』で演り尽くした残骸」

などなど、散々な言われ方をしたかわいそうなアルバムです。

皆さんはこのアルバム好きですか?

私は結構好きなんですよ、しかも「LOAD」と違い最初から。

上記のような事前情報は全く知らずに聴いて、明らかに『LOAD』とは別物に感じました。

当時、「LOAD」を死ぬほど聴き込んでも全く好きになれなくて

「俺の耳って腐ってんのかな?」

ぐらいに悩んでいたら、今作で

「あ~よかった、めちゃめちゃこれ好き」

となり、そうこうしているうちに引っ張られるように「LOAD」も好きになったという流れでしたね。

それでも未だに今作には及びませんが。

ま、感じ方は人それぞれ。

もっと言うと、同じ人でも出会うタイミングが違えば全く違って聞こえるものです。

「昔聴いたけどイマイチ好きになれなかったんだよね」

という方も、あの頃の先入観は一旦脇において、20年ぶりに手に取ってみませんか?(笑)

セールスから見る今作の特徴

メタリカのアルバム『RELOAD』のジャケット

メタル界隈で大論争を巻き起こした90年代最大の問題作『LOAD』から1年5ヶ月の期間を挟んで、1997年11月に発売されたメタリカ7作目のオリジナル・アルバム。

メンバーはこれまでと変わらずジェイムズ(Vo.Gt)ラーズ(Dr)、カーク(Gt)、ジェイソン(Ba)の編成。

前作で記録した発売初週で68万枚をさらに更新し、初週でなんと200万枚のセールス!

全世界で600万枚以上を売っているアルバムです。

なんと、販売規模は前作『LOAD』と同等の規模なんですよ!?

「嘘でしょ?」

私はこの数字を調べて驚愕しました。

「ふーん、、、で?」

と思われたそこのあなた!

これって実はすごいことなんですよ。

「LOAD」の前は全ロックファン必聴の大名盤『ブラック・アルバム』です。

2022年現在では3500万枚を超える売上を記録するモンスターアルバム。

ブラック・アルバムのリリースから3年にも渡るワールドツアーという大規模プロモーションを行い、世界から大きな期待を集める中で記録した数字が「LOAD」の初週68万枚、累計600万枚なんですよ?

その数字と並ぶことがいかにすごいことか。

もし「LOAD」が前評判だけで、買った人に『がっかりされる作品』だったら、「RELOAD」の売上、特に初週の売上はガタ落ちするはずなんです。

「またハズれる可能性があるから一旦様子を見て評判を調べよう」

と『様子見』が入るわけですよ。

タイトルだって前作に『RE』がついただけなので、姉妹商品・続編的な関連性は誰でも予感できるわけですからなおさらです。

それが逆に初週のセールスを伸ばしたというのは、

「LOAD」によってメタリカの新作を期待する人たちの数がさらに増えた

ことを意味します。

これは正直かなり意外でした。

私は「LOAD」が皆にがっかりされた作品だと思っていたからです。

私自身が当初あまり好きになれなかったこともあります。

しかしそれだけではありません。

私は当時ヘヴィメタル雑誌の『BURRN!』を愛読していましたが、評論家のみならず、同じスラッシュメタル四天王と呼ばれるスレイヤーやアンスラックスのメンバーたちでさえ、インタビューでは不快感を露わにしていたからです。

「そんなこと言ったら会った時に気まずくない?」

と心配になるほどボロクソに言っていました。

つまり『LOAD』はあれだけ酷評されたイメージがあったのに、それは一部のファンやミュージシャン・評論家といった狭い世界での話でしかなく、ちゃんとその『音楽性の高さ』によってさらなる新規ファンの獲得に成功していたことを意味します。

1997年当時のメタリカは

「ブラック・アルバムがピークだったバンド」

「過去作品の恩恵で注目されてるバンド」

などではなく、

ロックシーンの最前線の音楽を現在進行形で生み出していたバンド

であったということがセールス面から見ても分かるんですね。

それではこの『RELOAD』、肝心の内容はどうだったのか?

結論を言うと

『LOAD』を洗練させて完成度を高めた作品

だと私は思っています。

もちろん完全に私の主観ですが(笑)。

『LOAD』との違いは一言でいうと「密室性」

まず、タブルアルバムでの発売予定があったのかどうかの真偽はともかくとして、『RELOAD』の曲が『LOAD』の制作段階で作られていたことは、インタビューでも語られているので間違いありません。

しかし、「『LOAD』の選曲からもれたアウトテイクの寄せ集め」というのはどうも違うようです。

私が当時リアルタイムでジェイムズのインタビューを読んだ記憶によると以下のような理由だったと思います。

「俺たちは『LOAD』を作る時点で、レコーディングからあんなに長い間遠ざかっていたのはキャリアを通して初めてだったんだ。だから、曲はたくさんあったんだけど、レコーディングに慣れるためにまずはシンプルな構成の曲をジャムりながらアレンジして1枚完成させることにしたんだ。あまり煮詰めないでラフでルーズな雰囲気で録りたかったんだよ。で、今回のアルバムはその逆で結構作り込んだってわけ。曲の中にたくさんのフックも盛り込んでね」

みたいなことを「BURRN!」で語っていた記憶があります。

実際その言葉通り、今作は非常にアレンジが練られ、曲が単調に終わりません。

また、音選びにも時間をかけている印象を受けました。

曲調のバリエーションは多彩で、似たような曲調が2曲続く場面はほとんんどなく、曲ごとに雰囲気がガラリと変わります。

また、スピードナンバーとまでは言えませんが、アップテンポの曲も絶妙のタイミング(1,5,10)で配置されいるため、ダレることがないように曲順にまで最新の注意を払っている印象を受けました。

アルバム1枚がペロリと聴けます。

「LOAD」(14曲78:59)

「RELOAD」(13曲76:03)

こうして前作と比べると約3分ほど実際短いのですが、その差はもっと大きく感じます。

エフェクトなどの演出効果も

「これはメタリカのアルバムを聴いているのかな?」

と錯覚を起こすほどの凝り具合で、

「これはライブで再現するの無理じゃないかな?」

と思える部分をいくつか感じました。

つまり、ラフでジャムっているノリの『LOAD』と違い、今作は非常に密室性が高いということですね。

また、今作には『LOAD』での反省点を確実に盛り込んでいることが伝わってくる部分もあるんですよ。

それがサウンドとタイム感です。

前作では狙ってそうしているとは言え、若干ルーズすぎるきらいはありました。

それが時に『冗長』に感じる原因にもなっていたのですが、そうした「LOAD」の”too much”な部分を添削しているイメージですか。

ギターもドラムもきっちりタイトに、そしてより硬質的に作り込んできてます。

反省点というより、作品としてのカラーを変えたという方が正しいのかな?

ブラック・アルバムで築いた方法論を一度壊してみて、「LOAD」で再構築、そして今作で洗練させ完成させた感があります。

この翌年にリリースされる「ガレージ・インク」はカバーアルバムですが、ほぼ同じサウンド作りになっているため(もう少しメタリックかな?)、今作で1つの完成形をみた手応えがあったのでしょう。

『RELOAD』私の推し曲レビュー

それでは私のおすすめ曲を紹介していきましょう。

曲によって好き嫌いが分かれた前作と違い、基本的に今作には苦手な曲なくて全曲好きなんですが、長くなるので特にお気に入りだけを紹介します。

#1 Fuel

何と言っても#1『FUEL』の気持ちいいこと!

この曲はファンの人気も非常に高く、『LOAD』以降では一番旧来ファンにも受けたナンバーなのではないでしょうか?

それを反映するかのようにライブでの選曲率はかなり高かったですもんね。

しかも、リリース前からライブで演奏するくらいなので、作った本人たちにも手応えがあったことが伝わってきます。

前作のオープニング『Aint My Bitch』もワクワク感はかなりありましたが、『FUEL』はそれを上回ってきました。

こうして改めて聴き比べてみると、前作はギターの音がより奥に引っ込んでいますね。

今回はリフの快感指数が前作より高いです、全体的に。

アルバムリリースに先駆けてライブで演奏されていたから

「次回のメタリカのアルバムはまた速くなるらしいぜ」

みたいな噂が流れていましたが、さして速い曲は増えませんでしたね(笑)。

#2 The Memory Remains

そして畳み掛けるように#2『The Memory Remains』は、キャッチーなメロディをしっかり丁寧に聴かせるナンバーでこれも大好きになりました。

コーラスをしているおばさんは、歌詞の内容である「かつて一時代を築いた歌手が今は落ちぶれているイメージ」にぴったりだったということで起用された人らしいです。

当時は

「へ~、そのおばさんが何者なのかは知らないけど、それはいくらなんでも失礼だろ?こいつらに人の血は通ってんのか?

とか思ったものです。

そして20年が経ち、最近になってローリング・ストーンズにハマって、ドキュメンタリーなんかの動画を見ていたらなんとこのおばさんが出てくるんですよ!

そう、当時のミック・ジャガーの恋人「マリアンヌ・フェイスフル」その人だったんです。

もう、妖精みたいに綺麗。

びっくりしました。

ちなみにストーンズの大名盤『ベガーズ・バンケット』の作曲風景を見ると、メンバーがそれぞれの彼女をコーラスに参加させている光景があり、マリアンヌも参加してました。

実はルパン三世の峰不二子のモデルになった人でもあり、この人なかなか只者じゃありません。

#4 The Unforgiven II

ブラック・アルバム収録の名曲「The Unforgiven」の続編です。

「あれだけ完成された世界観の曲をいじっちゃうの?大丈夫?」

と心配になりましたが、これは全くの別の雰囲気を放っています。

しかし、これはこれで違った味わいがあって私は好きですね。

「静かな物悲しさ」を感じたⅠに比べるとⅡはガッツがありますね。

っていうか、雰囲気が前作の「Until it Sleep」にそっくりだと感じたのは私だけでしょうか?

#8 Bad Seed

これは完全にアメリカンハードロックですね。

カバーアルバムである「ガレージ・インク」を除けば、『陽気なメタリカ』を聞くことができるかなりレアな楽曲です。

「これは誰かのカバーかな?」って思いましたもん。

『ガレージ・インク』に入っていても全く違和感がありません。

こういうガラッと雰囲気が変わる意外性が、このアルバムをダレさせず聴かせるポイントなんですよね。

一服の清涼剤的な位置づけです。

これは好きですね~。

#10 Prince Charming

オープニングのギターイントロが、もうそれだけで名曲の予感をさせます。

そこにもったいつけたドラムの入り方が最高にかっこいいです。

アマゾンレビューを読んでいると、かなり人気高いですから、

やはり『Fuel』と人気を二分する名曲なんだと分かります。

アルバム全体的にテンポが遅いので、こういうスピード感はとりわけ爽快に感じます。

何より歌メロもギターもかっこいい。

メタリカ流ロックンロールが完成した瞬間ですね。

#13 Fixxxer

前作のラスト『The Outlaw Torn』が強烈だっただけに、初めて聞く時は構えましたね。

『The Outlaw Torn』もサビの部分は鳥肌モノだったのですが、そこに行き着くまでが長い…。

というより、サビの快感をより大きくするために、わざと苦痛な時間を長くしているように感じました(笑)。

「また、ここにきてラストで10分くらいあるんでっしゃろか?」

大丈夫でした、はい。

結局8分は超えてますけど(笑)。

でも今回はだいぶラクですよ。

途中ジャムみたいな時間が流れた時は

「またこの展開?」

と冷や汗かきましたが、どうにかまとまっています。

というよりすごくドラマティックでメロディがガツンと掴んでくるんですね。

これ隠れ名曲だと思います。

『RELOAD』を気に入った人におすすめしたいアルバム

メタリカアルバム「ガレージ・インク」の画像

1998年発表「ガレージ・インク」

メタリカが「LOAD/RELOAD」で完成させたサウンドスタイルは、’98年にリリースされるカバーアルバム「ガレージ・インク」でも聴くことができます。

2枚組で1枚目が新たにレコーディングしたもの、2枚目はシングルのB面でのカバー曲やEP「ガレージデイズ」などの過去音源を全て網羅したものとなっています。

「スラッシュメタル時代のサウンドが好きだ」

という方には2枚目がおすすめですが、

「LOAD/RELOADの頃のサウンドが好きだ」

という方は、このアルバムの1枚目を是非とも聞いていただきたいですね。

震えますよ、かっこよすぎて。

選曲も2枚目のようにヘヴィメタルのカバーばかりではなく、ボブ・シーガーやレイナード・スキナードなどのようにメタルバンド以外の選曲が絶妙です。

他のバンドの作品でオススメするとすれば、サウンドガーデンやアリス・イン・チェインズが近い時期の作品で同じようなサウンドを使っています。

こちらも間違いなく名盤ですので聴く価値は大いにありますよ。

サウンドガーデンのアルバムジャケット

サウンドガーデン「スーパーアンノウン」

アリス・イン・チェインズのアルバムジャケット

『アリス・イン・チェインズ』

メタリカに関するすべての記事はこちら

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です