『Faicelift(フェイスリフト』アリス・イン・チェインズのデビュー作
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
今回からついに!
私が青春時代に多大なる影響を受けたグランジ/オルタナティブ・ロックに入っていきます。
これまで洋楽に関してはどちらかというとメタル寄り、っていうよりほぼメタルしか書いてない(笑)。
メタリカ、メガデス、ドリームシアターなんかが人気記事に成長してきたこのサイトですが、私、実はなんと、世代的にはメタル勢を全否定したグランジ/オルタナムーブメントがど真ん中!
だって、1990年代の中盤から高校生だったもので。
まあ、ニルヴァーナのカート・コバーンが1994年に自殺した時にムーブメントは終わったみたいなことが言われがちですけど、リアルタイムの肌感覚としては全然そんなことなくて、’90年代一杯までは続いていてましたよね、我が島国・ジャポンでは。
当時、世間には確かに『メタル=ださい』の空気感がありましたが、私は中学時代にオジー・オズボーンを始めとするメタルバンドに先に洗礼を受けていたため、オルタナバンドに強烈な影響(特に精神面)を受けながらもメタルも依然大好きという、ちょっと変わった部類の人間になってしまいました。
実はメタル好きの人ってもともとパンクが大嫌いな人が多く、パンク要素を持っているグランジ/オルタナも毛嫌いする人が多いです。
今思えば、大学のサークルの先輩たちなんかは、典型的なメタル信者=オルタナ嫌いだったなぁ・・・なんか懐かしい(笑)。
けれども、私なんかは
メタルが好きすぎてオルタナにまで行ってしまった
と言っても過言ではありません。
この頃はメタリカ(神)が好きすぎて、バイトの面接に行っても
店長「最近だと何をされてきたんですか?」
Simacky「そうですねぇ、メタリカ聴いてましたね、ひたすら」
みたいな状態でした。
いや、そこは職歴を答えろよ。
こんなヤツ誰も雇わねぇだろ(笑)。
もうこの当時のメタリカ(神)の影響力っちゃあとんでもなく、
「メタリカが動くとメタル界が地殻変動を起こす」
ぐらいに言われてましたから、彼らの発言、一挙手一投足に全世界が注目してたわけですよ。
そんなメタル勢を牽引するメタリカ自身が
「ニルヴァーナ、アリス・イン・チェインズ、サウンドガーデン、フェイス・ノー・モアなんかがお気に入り」
とかインタビューで語っていたら…そら聴くでしょう!?
気になるでしょう?
「そいつらってあのメタリカに影響与えるくらいなんだから、一体どんだけすげぇんだ!?」
ってなりますからね。
まあ、そんなこんなでニルヴァーナやらアリス・イン・チェインズやらサウンドガーデンを開拓していくわけです。
そしたら今度はXのhide(神)が
「ジェーンズ・アディクション、L7、ナイン・インチ・ネイルズが好き」
とか言うと、またそっちも開拓する…みたいな(笑)。
気がつけば、メタルを開拓することをほとんどしなくなって、オルタナ系ばっかり聴いてた高校時代になってしまいました。
メタルはスラッシュメタル四天王とかドリームシアターまでは遡って聴いても、アイアン・メイデンとかジューダス・プリーストとかの古典的メタルにまでは深く遡ってません、実は。
で、当時、『グランジ4大バンド』と呼ばれていたのが、ニルヴァーナ、サウンドガーデン、パール・ジャム、そして今回紹介するアリス・イン・チェインズというわけですねぇ~。
はっきり言ってパール・ジャムだけはまったく受け付けず、残りの3つには多大なる影響を受けたのですが、やっぱり紹介するなら一番思い入れがあるアリス・イン・チェインズからかな~。
思い入れって言うより、結局、なんだかんだで人生で聴いている期間が一番長いです。
それは
アリス・イン・チェインズがオルタナティブ・ロックというトレンドとは無関係の、普遍性のある魅力を一番強く感じた
ということになるのでしょうか?
1990年代のグランジ・オルタナやヘヴィ・ロックって呼ばれる音楽って、当時は夢中になって聴いても、今聴くと
「ちょっとやりすぎかな~。極端に振り切りすぎてるんだよな~」
っていう印象は残ります。
ムーブメントの中で当時は感覚が麻痺しちゃっているというか、実はかなりマニアックなことをやっているのに
「今どきの音楽はこういうものでしょ?」
って受け入れているというか。
そりゃ、パンテラの『悩殺』がヒットチャートで1位を獲得する時代なんですから、やっぱり何か感覚がおかしくなっちゃってるんだと思いますよ、世界中が(笑)。
そういうことが20年も経って、シラフに戻ると受け付けなくなったりするものです(’90年代はシラフじゃなかったのか?)。
けれども、アリス・イン・チェインズにはそれがない。
まったく違和感なく今でも聞ける。
これこそアリス・イン・チェインズの凄いとこ。
そんなアリス・イン・チェインズがメジャーデビュー作として世に放った『フェイスリフト』を語っていきますよ~!
グランジの先陣を切ってメジャーに殴り込みをかけたデビュー作
本作は1990年の8月にリリースされました。
ロックシーンの流れを変えた1990年代最大の重要作、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』がリリースされたのが1991年の9月、そしてそのセールスが爆発を起こし始めるのはその年の12月くらいからです。
なので、世間一般的にグランジムーブメントが勃興する約1年半くらい前の段階でリリースされてます。
そんなタイミングなので、最初はなかなかセールスも伸び悩んでいましたが、リリースから8ヶ月後にビルボード196位でようやくトップ200入り。
8ヶ月間はチャート圏外で4万枚くらいしか売れてなかったとのこと(笑)。
そこから3ヶ月が経って最高位42位になりました。
つまり1年近くもかけてチャート圏外から上り詰めてきたんですね。
日本ではこういう現象を見かけることってまずないと思うのですが、アメリカでは前例があり、ガンズ・アンド・ローゼズのデビュー作とかも1年かけて上昇続けて1位にまで上り詰めましたよね。
アリス・イン・チェインズの場合は、MTVが本作2曲目の『マン・イン・ザ・ボックス』を流し始めてから売れ始めたようです。
これだけ長い期間をかけて売り続けていたので、最高位が42位にも関わらず、ゴールドディスク認定を受けてます。
つまり50万枚です(現在では300万枚売れてますが)。
これは日本ではあまり注目してる人いないと思いますけど、後進のグランジ勢が通るための風穴をぶち開けたようなものです、メジャーシーンに。
グランジ四天王でもっとも古株はサウンドガーデンで、1980年代後半から作品をリリースしてはいたのですが、この時点ではまだシーンで注目されるほどは売れていません。
つまり、グランジ勢でこれだけの規模のセールスを収めた前例はありませんから、アリス・イン・チェインズこそグランジ勢の切り込み隊長だったことが分かります。
これはメタルなのか?グランジなのか?分類の難しいデビュー作
グランジというとまず皆さん、ニルヴァーナのようなヘヴィでパンキッシュなテイストをイメージするでしょうが、そのイメージからすると、本作はだいぶ異色です(というかアリス・イン・チェインズが異色)。
アリス・イン・チェインズはグランジ勢の中でもっともパンク色が希薄なんですよ。
そしてヘヴィメタルやハードロックの要素が強い。
なのでツアーのサポートアクトにメタルバンドから誘われることもあるし、ヴァン・ヘイレンみたいなコテコテの80年代ハードロックからオファーがあったりします。
でも普通にグランジ勢とも仲いいみたいな。
分類不能なんだけど、どっちの勢力からもリスペクトを受ける存在。
この分類不能な感じはモーターヘッドとかに近いんかも知れませんね。
アリス・イン・チェインズはグランジ/オルタナティブのマスターピースとも呼べる次作『ダート』にて、『ヘヴィ・ロック』としか形容しようのない独自の音楽性を完成させるのですが、本作ではまだいろんな音楽要素がごちゃまぜになっている感があります。
しかし、それが面白いんですよ、実は。
カレーで例えるなら、『ダート』は、中に入れた肉もじゃがいもも玉ねぎも、煮込みまくって全てがルーに跡形もなく溶けて熟成されたようなもの。
全ての旨味(音楽要素)が渾然一体となり深みのあるルーに仕上がってます。
「うんまっ!!!なんか一口の中に色んな味が混ざり合って別の何かになってる!芸術品や!」
ってなります。
それに対し『フェイスリフト』は、あんまり煮込んでない状態のカレー。
ルーだけ食べると、なんかいまいち旨味が足りません。
具材の旨味がルーに溶け出していないので、ルーの味の深みでは『ダート』に及ばないんですよね。
けれども、じゃがいもを食べればじゃがいもの味が、肉を食べれば肉の味がしっかりします。
そしてよくよく咀嚼してみると、
「お?なんだこのじゃがいも?やたら美味いぞ!ってかこの肉も一体どこの牛なんだ?このルーも具材と一緒に食べるとめっちゃ美味いぞ!」
みたいな(笑)。
食べてて、口に入れた具材が変わるたびに驚きと感動があるから、楽しいんですよ。
すなわち『飽きない』。
これが言いたかったの(笑)。
2作目『ダート』も3作目『アリス・イン・チェインズ』も当時はめちゃくちゃ聴いたけど、時代が過ぎると聞く回数がガクンと減ったのに対し、本作だけはいつも手が伸びてしまう。
なんていうか、アリス・イン・チェインズの作品では、一番底の浅そうな作品に見られがちなんだけど、実は一番懐が深いアルバムというか。
音作りや世界観構築の技術では次作のほうが圧倒的に高いのですが、本作はキラッと光るフレーズ、ズバッと突き刺さってくるフレーズが持っている『強さ』がありますね。
色んな要素が顔を見せるアルバムで、まるでブラック・サバスそのもの、いや、それどころか念仏の如く重苦しい瞬間もあれば、
「あれ?ギターリフを作ってるのはヌーノ・ベッテンコートさんかな?」
って感じるくらいポップでキャッチーな瞬間があったりします。
そして何と言っても鬼才ボーカリスト=レイン・スタイリーの存在感。
彼の怨念のこもった叫びはこのデビュー作でこそ真価が味わえます。
凄まじい感情移入度です。
いや、怨念だけではないからこそ本作は光ってるんでしょうけど。
レインには実は『ポップセンス』があります。
しかし、次作以降はほぼほぼこの要素は姿を現しません。
もう一人の天才であるギターのジェリー・カントレルも、これだけのリフメイカーでありながら歌まで歌える万能っぷりで、3作目やらミニアルバムなんかを聴いてると
「もうジェリーがボーカルやってもいいじゃん」
ってくらいなのですが、その才能を持ってしても主役の座を明け渡さざるを得ないような唯一無二の圧倒的個性があります、この頃のレインには。
メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドが当時のインタビューで
「本気を出したレインはスゲェ…」
とかなんとか言ってましたが、私はその本気を一番強く感じるのが本作です。
別に次のアルバムから手を抜いているわけではないのですが、次作の『ダート』からは、あれはドラッグの狂気が宿っているというか。
。
やはりドラッグの影響は少しずつ出てきますからね。