『ブラック・サバスVol.4』ブラック・サバスの飛躍の一枚!

どうもSimackyです。

本日はオジー期ブラック・サバスが1972年にリリースした4作目のオリジナルアルバム『ブラック・サバス ボリューム4』を語っていきますね。

いや~これまた最高傑作の呼び声高い作品となります。

「おい、てめぇそれ毎回言ってねぇか?本当はどれなんだ?」

と言われそうですが(笑)。

ただ、一般的な評価という点では最初の5作(6作?)はすべて『最高傑作』と呼ばれることがある、ということですね。

ちなみに私はオジーでロックに入門してオジーからの流れでサバスに入りました。

なので、オジーが抜けてからのサバスにあんまり興味がありませんでした。

というより、一応オジー脱退後の全てのアルバムを聴いてはみたのですがピンとこなかったんですよね。

トニーやギーザー、ビルの独特の”らしさ”や”旨味”もこのオリジナルメンバー期に最も強く出ていて、それが好きな私としては、あんまり熱心にはなれませんでした。

これって大好きなレッチリでもそうなんですが、途中『カリフォルニケィション』あたりから『自分が大好きなエッセンス』が完全に失われたと感じた時にはもうそれ以上追いかけようとは思いませんね。

『ヘブン・アンド・ヘル』以降のサバスは私の大好きなエッセンスが感じられないので、作品の質としてはいいのでしょうが、私にはグッと来るものがなかったですね。

なので、今回のブラック・サバス解説シリーズは『オジー期のみ』という縛りでやっていきます。

ガラッと変わった雰囲気

オジー期サバスの流れでみると、前作「マスター・オブ・リアリティ」までと本作の間には明確に境界線があるように感じます。

すごく分かりやすく料理で例えると、3作目までは『素材の味で勝負』していました。

肉料理で言うと、

「うちの肉は脂の旨味を感じてもらいたいから薄く塩味だけつけてます。レアに焼いただけのステーキでしか提供しません」

みたいな。

「タレにこだわるのもいいんだけど、個性の強いタレを掛けたら、宮崎牛だか神戸牛だか分かんなくなるでしょ?うちはこの宮崎牛ならではの旨味を感じてほしいんですよ」

みたいな。

料理人と言うより牧場主

「うちの牛はどこよりもこだわって育ててまっせ」的な。

つまり

「うちはこのヘヴィなサバスサウンドにとことんこだわって追求してます。余計なことはしません。」

みたいな感じかな。

けれど、本作からは

「この最高の宮崎牛という素材を使って最高の創作料理を作りました。この創意工夫の成果を存分にご堪能ください」

みたいな料理人になったというか。

だからあの手この手の匠の技が使われ、様々な食材や調味料が使われる、といったところでしょうか。

「え!?焼く前にヨーグルトに16時間漬け込むんですか?」

みたいな。

音楽的に言い換えれば

「ヘヴィなサバスサウンド(肉)は総合的に素晴らしい音楽(料理)を目指す上での方法論(素材)の1つでしかないんですよ」

みたいな。

なので、オーバーダブが多いし、使用される楽器も増えてます。

制作・レコーディングに費やした時間が明らかにこれまでと違うのは一聴するだけで分かります。

彼らのやろうとした挑戦は立派だと思うし、その男気は買うのですが、それが当時大学生の私にとって、多少オーバープロデュース気味に感じた嫌いもあったのかもしれません。

いえ、実際に5作目『サバス・ブラッディ・サバス』と聴き比べるとやはり『やり過ぎ感』は残るかな?

料理で例えると、あれもこれも加えすぎてそれぞれが喧嘩しちゃってる感じ。

「A5ランクの宮崎牛も最高級馬糞ウニもそりゃそれぞれは感動するほど美味しいけど、一緒に食べるっていうのはどうなん?」

っていう。

調和(ハーモニー)がもう一つほしいと言うか。

次作でそのやり過ぎを修正し、前作では鳴りを潜めた初期のサバス色もうまく調和させた、と言えます。

足し算しかしなかった4作目に対し、引き算の発想も入れたのが5作目といったところでしょうか。

これは本作が初のセルフプロデュースということが大きいと思います。

初めてのプロデュースだからなんでも試してみたかったのでしょう。

私の場合、3作目→5作目→4作目の順番で聴いたのですが、最初は本作の作り込んだ作風がまったく受け付けませんでしたね。

本作をを好きになったのはサバス聴き始めて20年くらい経ってからですかね。

えらい時間かかりました(笑)。

それまでは『やり過ぎ』に感じていたのものが逆に『これはこれでいいぞ』と感じるようになるんですよ。

ただ、残念なのが作り込んで厚みが増している分、ギーザーのベースが奥に引っ込んで、あのサバス独特の中毒性のあるリフではなくなっている点。

一例を挙げると、ギターソロの時にリズムギターは入れず、その替わりをベースが担っていたのが以前のサバスなのですが、本作からはソロの裏でリズムギターも被せているので結構ワチャワチャしてます。

この頃から4人のパワーバランスが崩れ始め、トニーの一頭政治に近づいて行っている気配を感じます。

ギーザーのベースが好きでたまらない人には残念なポイントでしょう。

それからリズムがかっちり決まりすぎ、サバス独特のもたったグルーブ感が失われていることですかね。

下手と言われようがあの強引でもたった独特のビル節が恋しくはなるかな~。

本作を聴いて初期作品を聞き返すと『ヘタウマの魅力』というものが非常によくわかりますよ(笑)。

『ボリューム4』おすすめ楽曲レビュー

オジーの自伝によると、本作の制作にはアメリカで豪邸を借りてます。

で、そこでは「本当に知り合いなのか疑わしいロックンローラーやらヤクの売人やらビキニギャルやらがそこかしらでハイになっている状態で、メンバー全員遊び呆けていた」らしいです(笑)。

アルバムタイトルを『スノー(=雪=コカイン)ブラインド』にするくらいコカインをやりまくって、地元バーミンガムから送られてきた地ビールを浴びるほど飲んでラリってたそう。

前作の『スイートリーフ』といい、そんなんばっかだな、おい。

で、タイトル案は却下されて『ボリューム4』になると。

ツェップみたく最初からやってんのならまだしも、これまでアルバムに番号振ってたわけじゃないのに、唐突に『4』言われても、

「いや、知らんがな」

ってなりますよね(笑)。

しかも別に次から『5』になるわけじゃないんですよ?

行き当たりばったりも度が過ぎるだろ。

ただ、「音楽的には向かうところ敵なし状態」だったらしく、音楽に対しては真剣だったらしいです。

まあオジーの発言ってラリってるからあんまり信憑性が高くないんですけど。

あの人が自伝で真面目に音楽のこと書いているのは400ページのうち10ページあるかないかですから(笑)。

しかし、セールス的にはまさに向かうところ敵なしで、デビューから4枚連続で全米プラチナレコード(100万枚)を獲得します。

隣でツェップがとんでもないセールス(1000万枚クラス)を叩き出しているのであまり目立たないのですが、この頃のサバスのセールスって後に日本で3大ハードロックバンドと呼ばれるキッス・クイーン・エアロスミスのデビュー後より凄いですからね?

デビューしてからは苦労知らずと言うか破竹の勢いと言うか。

税金問題やマネージメントとの軋轢が表出していなかった時期なので、この頃はただただ楽しかったのでしょう。

どうやらそういう時期っていうのはクスリはプラスに働くようですね。

オジーの自伝でもメンバー皆が楽しそうだし仲がいいんですよ。

そんな絶頂期サバスのアルバムから特に私がおすすめする曲を紹介しましょう。

#1『ホイールズ・オブ・コンフュージョン~ ザ・ストレイテナー』

本作における最重要曲だと認識しています。

というよりこの曲が入っているだけで本作は聴く価値があるし、この曲のためにアルバム買っても損はないと思います。

初期3枚に比べ再結成後に演奏される曲が少ないアルバムですが、この曲のように名曲はあります。

そもそも本作からオジーのボーカルの音域が広がっていて、「今のオジーじゃこれ無理でしょう」っていう高さが結構出てくるんですよ。

この傾向は5~6作目でもっと顕著になり、「これはオジーが可愛そすぎるでしょう!」っていうくらい高いキーで歌ってます。

再結成後に演奏される機会が少ないのはそういった理由もあると思うんですよね。

でなければおかしいくらいの名曲が揃っています。

その名曲たちの中でもダントツで輝きを放つのがこの1曲目。

ついにはっきりと『プログレ』とも言える楽曲が誕生しました。

これまでもサバスの曲って途中からスピードアップして即興演奏パートに入っていくことはあったのですが、これは即興無しで考え抜かれた楽曲構成ですね。

前作『マスター・オブ・リアリティ』のような強烈な毒素を放つヘヴィリフとは質感が違い、わりとスマートな音なので

「なんからしくないな」

と最初は感じると思います。

しかし、このゆったりとした派手さのないトニーのリフが聴きこむうちに『貫禄』に感じてくるんですよね。

慌てず、急がず、どっしりと構えて、ゆっくり楽曲を展開させていくんですよ。

そしてオジーのボーカルも妙に落ち着いていて、押さえていて、だからこそ凄みが伝わってくると言うか。

楽曲から『確信』や『ゆるぎない自信』が伝わってくるんですよ。

5分すぎから『 ザ・ストレイテナー』パートに入るとそこからラストまで2分半のインスト。

これが哀愁漂っていてすばらしい。

サバスマニアだけで人気投票したらトップ10に入ってくる名曲でしょうね。

#3『チェンジス』

私の場合、オジーの引退ライブを収録したビデオ『ライブ&ラウド』(1993年)のラストで演奏されたのを観たのが先でした。

オジーのセットリストが終わり、サプライズのサバスオリジナルメンバーでの再結成までが終わり、大熱狂の中、最後の最後で演奏されるので涙なしには観れません。

ザック・ワイルドが弾くピアノをバックにオジーが歌う『チェンジズ』は極上でしたが、オリジナルのピアノはなんとトニー・アイオミ!

なんだ?この曲はギタリストが弾かなきゃならんルールでもあるのか?

残念ながら若い頃のトニーが弾いている映像が見つかりませんが、こちらをどうぞ⇩

ここでギーザーが弾いているのはシンセサイザーでしょうが、オリジナルではトニーがメロトロンをオーバーダブしてるんだと思います。

ポロポロとトニーが拙く奏でるピアノにオジーが歌メロをくっつけたんだとか。

ギタリストであるにも関わらず、こんなフレーズを生み出せるトニーは凄い。

単にヘヴィなリフを生み出しただけの人ではなく、メロディメーカーとしての素質が突出しているんだと思います。

こんなにシンプルで印象的なピアノメロディをギタリストでありながら作ってしまうんですから。

当時、この曲はオジーにとっても非常に思い入れのある曲だったらしく、レコーディング後も何回も繰り返し聴いたそうです。

考えてみると1~3作目のボーカルって、印象的なギターリフにメロディを被せていたり(パラノイドとかアイアンマン)、おどろおどろしい雰囲気を演出したりと、その存在感は際立ってはいましたが、ボーカルメロディ1本で勝負できる、というほどの秀逸でインパクトのあるメロディは完成されていなかったと思うんですよね。

その意味ではボーカリスト・オジーにとっても転機になる重要なポイントで、この曲があったから後のオジーソロでも数々のパワーバラードの名曲たちを生み出していけたのでしょう。

#5『スーパーナート』

本作の中でもかなりの人気曲ですね。

ただキーが高すぎて再結成後は演奏されてません。

本作でベースの存在感が薄くなったギーザーですが、この曲ではいかにもサバスらしくギターとベースで1つのリフを生み出しています。

このうねるスライドプレイがいいですね~。

この曲は『20世紀最大の作曲家』とまで言われるフランク・ザッパがフェイヴァリットとして絶賛したとかウィキペディアに書いてあります。

実はサバスはこの頃、たまたまツアー先で宿泊したホテルがザッパと同じだったらしく、メンバーとのパーティに呼ばれて交流が芽生えます。

特にオジーはその後もザッパと家族ぐるみの付き合いがあったみたいです。

ミュージシャンの交流ってほんと分かんないですよね。

オジーとザッパ…。

すっげ…。

#10『アンダー・ザ・サン~エブリ・デイ・カムズ・アンド・ゴーン』

いかにもサバスといった雰囲気の悪魔悪魔しい(どんな形容?)リフで進行していきます。

この雰囲気ってまるで6作目『サボタージュ』の雰囲気そのものじゃないですか。

途中テンポアップしてからのスピード感は快感指数が高く、それまでの重苦しさからのギャップがすごいです。

4分すぎから「エブリデイ・カムズ・アンド・ゴーン」パートに入ります。

哀愁漂うリフは非常にいいのですが、ちょっとソロのギターを重ねすぎてる嫌いはあるかな?


はい、というわけで今回は『ブラック・サバスボリューム4』を語ってきました。

豪邸でのレコーディング中、毎晩の乱痴気騒ぎをしていた彼ら(ローディーたちも含め20名ほど)は、グルーピーの女の子たちに変な病気をもらっていたため、イギリスに戻る前にクリニックに直行し、全員で『百合の花のような』白いケツを並べて注射してもらった、というオチまであります。

誰かまともな奴はいないのか(笑)。

 

オジー・オズボーンに関するすべての記事はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です