『月に吠えるBARK AT THE MOON』(オジー・オズボーン)2代目ジェイク登場!
どうもSimackyです。
本日はオジー・オズボーンのソロ3rdアルバム『月に吠える(Bark at the Moon)』のレビューとなります。
初代ギタリストランディ・ローズの衝撃のデビューと悲劇的な死…ファンも、いやオジー自身でさえまだ癒えぬ傷を引きずったままで制作された本作。
そんな心の空白にガツンと飛び込んでくる破壊力抜群の爆弾を投下してくれたのが、2代目ジェイク・E・リーです。
こんなことってあるんでしょうか?
伝説のギターヒーローが抜けた直後に、いきなりこのクオリティですよ?
オジーの人材発掘のセンスはとんでもないですね。
さぁ、とくと語っていきますよ~!
驚異的なクオリティ
ここで告白しますが、ジェイクさんすみません、舐めてました(笑)。
私は6th「ノー・モア・ティアーズ」でオジーに入門しているため、まずは3代目のザック・ワイルドでガツンとやられ、
「な、なんていうとんでもないギタリストなんだ!」
とすっかり虜になり、オジーのアルバムを遡って聴いていきました。
しかし、ネームバリューとしては初代のランディ・ローズは圧倒的です。
オジー自身がインタビューでしょっちゅう話しますし、ライナーノーツの伊藤政則さんの解説でもランディ時代を特別な書き方をされているため、ザックの次はランディ期の2枚に行くわけです。
で、最後に
「まあ、これまでの2人よりは凄くないだろうけど…」
と思いながら3枚目を聴いてみると#1「 Bark at the Moon」に叩きのめされる、という流れですね。
これってオジー後追いのファンにあるあるだと思うんですが。
ジェイクとは別れ方が非友好的だったのか、オジーがジェイクのことを語っているのを読んだことがなかったし、ザックもランディの信者であることは公言してもジェイクに関してのコメントを読んだこともなかったので、なんだか2代目は存在自体がなかったことにされている感さえありましたよね。
しかし、本作を聴いてみるとまったく他の二人に引けを取っていません。
それどころか本作は私の中で、ランディ期2作を超えるのではないかとさえ思える名盤です。
先述のようにジェイクがオジーのキャリアの中で顧みられることがないことや、前2作やこの後の『罪と罰』に比べセールス的に目立っていないためか、この3作目が名盤として取り上げられているのを見かけたことはありませんね。
なのでこういう作品こそ、今となっては『隠れ名盤』と言えるのではないでしょうか?
「オジーは初期6枚がいい」という語られ方をよくしますが、私の中では出会いであった6th「ノー・モア・ティアーズ」の次にこのアルバムを推したいほど大好きですね。
何と言っても、アルバム全体の統一された世界観の完成度が高く、捨て曲が一切なし。
#1「バーク・アット・ザ・ムーン」が強烈なため、それ以外は個性に欠けるかのようなレビューも多く目にしますが、個人的には他の曲が負けているとは思いません。
名曲揃いです。
ジェイクの実力とは!?
ランディはジェイクより以前の時期とは言え、亡くなってしまったがために、公式でもトリビュートやライブアルバムがありますし、映像なども探せば結構見つかるんですよ。
ザックは近い時代だし、現役なので言うまでもありませんが、ジェイクに関してはなかなか見つからなかったんですよ。
なので、最近になってライブ映像を見たのが初なんです、動いているジェイク。
見た目の大人しそうな感じからは想像もできないほど華のあるパフォーマンスをしており、フロントに出てきてガンガン弾きまくります。
しかも、彼独特のテクニックを使ったりします(左手親指まで使うワイド奏法など)。
ジェイクが本作で聴かせる音の雰囲気はランディのような西欧をイメージさせるものではなく、当時のLAメタル的な匂いを多分に含みます。
かなりメタリックですね。
1つ1つの音がくっきりしていて非常にソリッドでスリリングです。
そのサウンドプロデュースのクオリティは、ザック加入後の5th「ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド」以上だと思っているほど私は評価してます。
本来、LAメタルのジェイクの個性は、オジーの西欧的カラーとは相性が良くないように思えますよね?
4th『罪と罰』ではオジーの西欧的な雰囲気が鳴りを潜め、まるでアメリカのメタルバンドさながらになるのですが、本作ではそうはならず、西欧の湿り気を帯びた雰囲気を帯びているのはなぜでしょうか?
そのギリギリのバランスが生まれている理由こそ、本作を傑作たらしめている理由です。
1つはジェイクが意図的にランディを意識したこと(せざるをえないでしょう)。
もう1つの理由が、もう一人のリードメロディ、キーボーディスト:ドン・エイリーの存在ですね。
影の立役者ドン・エイリー
オジーとはブラック・サバス脱退前最後のアルバム「ネヴァー・セイ・ダイ」で共演し、1stアルバム制作、2nd「ダイアリー・オブ・ア・マッドマン」のツアーにも参加していた人です。
その後はレインボーに加入してアルバム2作の制作に携わります。
なんと、ランディ・ローズがセスナに乗る直前の順番だったため墜落事故に合わずに済んだという、『あの現場に居合わせた人』なんですよ!
このランディ亡き後、しばらくはツアーに帯同しますがそこで一度脱退。
ランディの死を悼むトリビュートアルバムとして『スピーク・オブ・ザ・デヴィル(悪魔の囁き)』が企画されていましたが、キーボード不在でランディ期の曲を録っても完璧ではないとの判断で、全曲サバスの曲になったという経緯があります(他にもゴタゴタあったんでしょうけど)。
彼のキーボードはそれほど重要だったともいえます。
「なぜに全曲サバス?」と思った当時のファンは多かったのではないでしょうか(笑)。
で、澄ました顔で3作目の制作に普通に復帰。
かなり面の皮の厚いお方なのか、セッションミュージシャン特有の割り切りなのか。
入ったからには仕事人としての勤めは果たします。
仕事人です。
今作は彼のキーボードなしでは語れませんね。
骨太なLAメタル調が、彼のカウンターメロディが入った瞬間いきなり西欧的テイストに様変わりするのは見事です。
時には効果音的な演出でファンタジックな雰囲気を出してみたり、ジェイクのギターとどっちがリードなんだというくらい出張ってくる時もあります。
オジーは
「キーボードは主役を食うからいかん」
とキーボードにはあくまで『黒子役』を求める発言が多いのですが、このアルバムでドン・エイリーは黒子には徹してません(笑)。
これらのことは#4「Rock ‘N’ Roll Rebel」と他の曲を聴き比べると分かります。
このアルバムの中でもっとも無骨でスイング感のあるグルーブでぶん回してきます。
「Rock ‘N’ Roll Rebel」の曲調ははこのアルバムで最もLAメタル的で、キーボードがほとんど目立っていないのですが、実は他の楽曲もキーボード以外の部分に傾聴すれば、骨子となるサウンドが非常に似通っていることに気付かされます。
#3「 Now You See It」とか特にそう感じました。
つまりこのアルバムからドン・エイリーのキーボードを取っ払うと、驚くほど次作『罪と罰』と作りが似ている、ということなんですよね。
オジーのレコーディングメンバーってボブ・デイズリーもそうなんですが、ライブではあまり印象のないミュージシャンが偉大な仕事をしています(笑)。
ドラマー:トミー・アルドリッジってすごいの?
はい、このことには触れないわけにはいけませんね。
『この人ほんとうにすごいの?』問題の勃発です(笑)。
国内盤2ndアルバムのメンバークレジットに名前があったこと、ツアーメンバーであったこともあり、私は『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』の超かっこいいプレイはトミー・アルドリッジだと長年思っていたのですが、実は最近になってリー・カースレイクだったということが判明しました。
国内盤のライナーノーツを読み返してみても、これはトミー・アルドリッジのプレイを録っていると思われても仕方ないでしょう。
情報が少ない時代なのでしょうがないのかも知れません。
どうりで2作目と3作目のプレイにギャップがあると思ったんですよね~。
今作を聴く限り、前作に見られた独創性が見られません。
今作で
「ここのドラムプレイおいしすぎっ!」
がないんですよ。
うーん、ドラムマガジンでも
「あのオジーのダイアリー・オブ・ア・マッドマンでドラムを叩いているトミー・アルドリッジ」
みたいな書き方されてなかったっけ?記憶違い?
この人って「リー・カースレイクのドラミングの評価をもらちゃった人」なのではないでしょうか?
私みたいに勘違いしてるファンはいまだに多いと思いますよ。
ホワイトスネイクでも大名盤『白蛇の紋章』に制作はたずさわってなくて、ツアーだけ参加してましたよね?
この人もしかして
『棚からぼたもちドラマー』
なのでは?
『トリビュート』(ライブ盤)でも、、、うーん、、、って感じだったんですよね。
まあ、こんなこと言ってるけど、You Tube探せばすごいドラムプレイは見つかるかもしれないので、彼が『名ドラマー』と言われるものを探してみます。
『 Bark at the Moon』アルバムレビュー
- 月に吠える – Bark at the Moon – 4:15
- ユア・ノー・ディファレント – You’re No Different – 5:49
- ナウ・ユー・シー・イット – Now You See It (Now You Don’t) – 5:10
- 反逆のロックン・ロール – Rock ‘N’ Roll Rebel – 5:23
- センター・オヴ・イターニティ – Centre of Eternity – 5:15
- ソー・タイアード – So Tired – 4:00
- スロー・ダウン – Slow Down – 4:19
- 暗闇の帝王 – Waiting for Darkness – 5:13
それでは私の個人的おすすめ曲のみピックアップします。
よく言われるように、あまりにも#1のインパクトが強すぎるため、他の曲が見劣りする感は最初はあると思います。
それほどの傑作ですのでこれは仕方がないのかな、と。
先程、ドン・エイリーのキーボードがこのアルバムの西欧的な雰囲気を作り出している、と述べましたが、この#1に関してはその役はほぼジェイクですね。
とにかく幾重にも被せた音の洪水が押し寄せてきます。
ジェイクもジェイクでやはりランディの後釜として求められる空気感は意識しながら作っているんだと思います。
本来のスタイルと求められる音楽性のギャップもあるというのに、よくここまでできるものです。
リフも完璧でソロも最高!
これはとんでもない曲ですね。
#3「Now You See It (Now You Don’t) 」もすごいです。
序盤、「わりと平凡な曲だな~」
と油断して聴いていると、サビから間奏でいきなりドン・エイリーのキーボードがぬ~っと出張ってきて、壮大な展開を見せます。
高校生の頃、ちょうどファンタジー小説「ロードス島戦記」を読みながら聴いていたのですが、そのファンタジーの世界観にハマるハマる(笑)。
サビでのオジーのファルセット(裏声)はすごい好きで、雰囲気が曲調とドンピシャです。
考えてみるとオジーのファルセットって他にあるかな?
これはオジーの『魔力』が感じられる名曲ですね。
#5『Centre of Eternity』,#7『Slow Down』の2曲は爽快なまでのスピードナンバー。
#5は冒頭のパイプオルガンが強烈ですが、以外にもその後はどストレートなロックンロール。
ここまでスピードで押しまくるナンバーってオジーの中では意外に少ないレアチューンです。
#7は合いの手のようにいちいち入ってくるドン・エイリーのキーボードが非常にポップな味付けになっており、初めて聞くときは呆気にとられること請け合いです(笑)。
個人的には大好きなんですよね。
#8『Waiting for Darkness』 はアルバムのラストを飾るドラマティックなナンバー。
前作のタイトルトラック『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』でのラストに負けず劣らず、こちらも泣かせますね~。
オープニングのテーマとなるギターリフが物悲しくもかっこよくて強烈に惹きつけられるんですけど、ギターソロの後ではこの同じメロディをキーボードが演奏し、そこにジェイクのギターリフがハモってくるとこなんかもう鳥肌モノです。
このラストナンバーはジェイクもドン・エイリーも神がかってるのに、オジー自らも独特の哀愁を全開にしていて凄いんですよね。
こういう曲を聴くとオジーのこの声じゃないと表現できない唯一無二の世界観ってのが間違いなくあることを思い知らされます。
#3と並ぶこのアルバムで最も好きなナンバーです。
はい、というわけで本日はオジーの3作目「月に吠える(Bark at the Moon)」のレビューでした。
もし、ランディ期、ザック期しか知らないという方には是非聴いていただきたい傑作アルバムです。