『ヤングラブ』~ポップ爆発!サザンで最も売れたアルバム~
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はサザンオールスターズが1996年にリリースした12作目のオリジナルフルアルバム
「YoungLove」
をご紹介したいと思います。
サザンで最も『売れた』アルバム
私が高校3年生の頃に発売されたアルバムですが、この頃は完全に洋楽ロックにはまっていましたので、リアルタイムではかすりもしていません。
メタリカばっか聞いてました(笑)。
3年前のストリーミングサザン一気聴きで初めて聴きました。
『愛の言霊』くらいは知ってましたけどね、確かドラマの主題歌だったので。
いやー、このきらびやかさ凄いです。
おそらくシングルのサザン、ベスト盤のサザンしか知らない多くの日本人がイメージする「これぞサザン!」というイメージそのもののアルバムと言ってもいいかもしれません。
サザンって90年代に入ってからシングルで見せてる「ポップ」な顔と、80年代にアルバムで見せてた「マニアック」な顔を持っていると思うのですが、本作は「ポップ」な顔のままでアルバム丸ごと作っちゃったイメージです。
けれども後の『キラーストリート』に見られるように『売れ線の鉄板フォーマット丸出し』みたいなことはなく、いたってナチュラルな楽曲には好感が持てます。
アルバム全体としての作りは、前作『世に万葉の花が咲くなり』を踏襲している部分があるのですが、「亀」「ヘアー」みたいなちょっと風変わりな実験ナンバーはないですよね。
ただ、前作の「涙のキッス」「君だけに夢をもう一度」に対応したような曲として「ドラマで始まる恋なのに」「あなただけを~サマーハートブレイク~」「太陽は罪な奴」が入っていたり、渋めのブルース・ロックでの始まり方だったり、「シュラバラバンバ」に対応したダンスナンバーの「愛の言霊」があったり、原さんの必殺ソングが1曲だけ収録されていたり…
やっぱりアルバムの構成に共通部分は多いです。
それほど前作『世に万葉の花が咲くなり』で確立した構成が『勝利の方程式』と言えるほどのものだったということでしょう。
そういった作りになっているため、本作はサザンの中で最も売れたアルバムで
250万枚を売り上げております。
売上実績からもこのアルバムがいかに華やかでとっつきやすいアルバムかが伝わるかと思います。
しかし、「みんなのうた」からずっとやってきた小林武史さんとは袂を分かち、サザンが再びバンドとしての音作りを決心したアルバムが本作なんですよ。
なので、シングルカットできるクオリティの曲がたくさんある反面、骨太なロックサウンドを感じさせるテイストが随所に見られるところが特徴です。
極論すると、前作『世に万葉の花が咲くなり』を外部ミュージシャンやプロデューサーの影響を受けることなく、サザンのバンドメンバーで作り直したようなアルバムが本作です。
『YoungLove』のおすすめ曲
しかし単に一番売れたからいいアルバムということではなく、楽曲のクオリティ高いですよ。
しかも後半疲れてきた前作「世に万葉の花が咲くなり」の反省からか、無理に楽曲を詰め込んでない。
前作は後半に3曲くらい外してもいい曲がありましたからね。
なので14曲収録で1時間ちょいと、すっきりまとまってるんですよ。
これって実はすごく重要。
アルバムジャケットがロッククラシックへのオマージュなので、内容もそうかというと意外にそうでもなくて、
サウンド的にはインダストリアル、サイバーな要素もあり、70年代のロッククラシックと言うより90年代オルタナティブロックに近いサウンドアプローチだと思います。
サザンの歴史の中でも本作と次作「さくら」は「ハードロックなバンドサウンドが聴ける作品」なのではないかなと。
まずもってオープニングの「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」からして、冒頭のアコギかき鳴らすところからイントロの部分で「おお!ロックだ!」とワクワク感を駆り立ててきます。
#6「汚れた台所」#9「マリワナ伯爵」#11「恋のジャックナイフ」#12「ソウルボマー」この4曲はハードロックなサザンをたっぷり堪能できます。
「勝手にシンドバッド」の頃にあったアグレッシブな疾走感が久々に戻ってきたなって感じなんですが、加えてヘヴィで生々しいバンドサウンドであるところに90年代を感じさせます。
当然、ワタシ好みです(笑)。
それでは楽曲紹介いってみましょう。
#1『胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ』
乾いたアコギの音にベースがスライドで入ってきた瞬間
「おお!メンバーが帰ってきた!」
って思いました。
やっぱりシンセベースと関口さんの有機的なグルーブは明らかに違います。
のっけからバンドサウンド全開で嬉しくなってしまいましたよ。
普通にギターバッキングが聴こえてくるだけでも、サザンでは実は珍しいですからね。
#4『ヤングラブ』
ポップすぎて最初は嫌いだったんですけど、今ではアルバムで一番好きかも。
とにかくこのメロディは病みつきになってくるんですよね。
ボーカルがビートにきれ~に乗ってるんで、このグルーブが良いんでしょうね。
#6『汚れた台所』
「サ、サザンがハードロックやってはる…」
とびっくりしました。
がっつりギターリフが引っ張るハードロックです。
この桑田さんのボーカルも「ニッポンのヒール」っぽくてかっこいい。
ハードロック畑の私からすると「本来ロックはこうあるべき」みたいな典型的なロックのフォーマットなんですが、サザンはデビューからずっとこの方法論は取ってきませんでした。
『熱い胸さわぎ』の頃からずっとそうですね。
アルバム2枚出たら1曲あるかないかくらいの割合です。
それは桑田さんの世代にとってのロックがビートルズやストーンズだったからなのでしょうが、やっぱりレッド・ツェッペリンやブラック・サバスの影響もちゃんとあったんだな~と感慨ひとしおなナンバーですね。
#8『恋の歌を唄いましょう』
心から癒やされる原さんの必殺ナンバーです。
私の中では「鎌倉物語」「ポカンポカンと雨がふる」と並ぶ原ソングのトップ3ですね。
「なんですか?今、そんなに幸せなんですか?」
って思うほど幸福感を感じる曲です。
#9『マリワナ伯爵』
ファンキーですね。
関口さんが戻ってきたことを一番強く感じられるナンバーで、チョッパーベースがブイブイ鳴ってます。
理屈抜きにこのグルーブにどっぷり浸かってください。
売れ線なのは狙ってそうしているのか?桑田佳祐の思惑とは?
長年タッグを組んでいた小林武史さんのコンピューター処理を駆使した前作に比べ、大幅にバンドサウンドに戻してきた本作は聴き応え十分です。
しかし、私は前々からこの『YoungLove』を紹介するときには「語らなければ」と思っていたことがあります。
それはこのアルバムから「売れ線シングルのパターン化」が起きているような気がするということです。
#7「あなただけを~」や#13「太陽は罪な奴」は初見であっても冒頭部分を聴くだけで
「あ、このパターンはシングルだな」
って分かるというか。
こういう事を言うと好きな人からは間違いなく怒られるのを承知で言うのですが(笑)。
前作の「涙のキッス」や「君だけに夢をもう一度」あたりのパターンと言うか。
「私は本物と偽物の区別をできる感性をもっているんです」
とか勘違い野郎の発言をしているわけではなく、わりと『あからさま』というか(笑)。
「この感じが世間が求めるサザンのイメージでしょ?」とか「このパターンだと売れるな」っていう「売れる曲のパターン」を完全に掴んで、狙ってリリースしているように感じます。
おそらくそう感じてしまう人は私だけではないみたいで、レビューでもよくそういったコメントは見かけましたね。
しかし私がこの記事でお話したいことというのは、「露骨なまでに売りにこだわってなんかあさましいね」とかいうレビューにあったような否定的な意味ではないんですよ。
サザン(桑田佳祐)が音楽的な表現の自由を手に入れるために、定期的に『売れるシングル』を出し入れしているのではないか?
これが本日一番語りたいことなんです。
90年代に入りミリオンセラーを連発し、モンスターバンドになったサザンはもはや80年代ほど、好き勝手できる状況ではないのでしょう。
ビッグビジネスが動き出すとレコード会社をはじめ色んな人達の思惑だのしがらみだのが出てくるでしょうから。
売った実績を作らないと好きなことをやらせてもらえない厳しい現実があるわけです。
ただ、桑田佳祐という人がひねくれているなとも感じるし、純粋だなとも感じるのは、
「ちゃんと約束通りここまでは売るからここからは好きにさせてくれ」
という『アーティストの意地』が感じられるところです。
それが感じられるのが『エロ&バラードシングル2枚同時発売』です。
「シュラバラバンバ」と「涙のキッス」、「エロティカ・セブン」と「素敵なバーディー」ですね。
自分たちが1番表現したい部分、すなわち『過激な表現』を聴いてもらいたい。
けど、それだと売上落ちてレコード会社の締め付けがきつくなるから一緒に売れ線のシングルも出して売上実績で黙らせる。
そうなんじゃないかな?
で、今回の『YoungLove』を250万枚売ったことで、晴れて自由を手に入れて次作の『さくら』には過去最高の予算とレコーディング時間を費やして、本作と真反対の作品を出したわけでしょ?
やっぱり確信犯じゃないかな(笑)。
真相は桑田さんにしか分かりません。