【アルバム『LUNA SEA』】20年ぶりにセルフカバーで生まれ変わったデビュー作をレビュー
どうもSimackyです。
本日はLUNA SEAが2011年にリリースした『LUNA SEA』を解説していきますよ。
インディー時代にリリースしていた記念すべきデビューアルバムのセルフカバーとなっております。
彼らが再結成して真っ先にやったのは新作ではなくセルフカバー!
ちなみにインディー時代のジャケットはこれです⇩。
むむぅっ!こわい!
誰が誰か分かんないでしょ(笑)。
左上SUGIZO、真ん中RYUICHI、右上J、左下真矢、右下INORANです。
あなた達、怖いからそんなに睨まないください(笑)。
さすがエクスタシーレコード所属のバンド。
ガラが悪い(笑)。
そりゃ社長自らがこんな過激なアルバム出すようなレコード会社だから致し方なしでしょう⇩
皆さん、ヴィジュアル系の元祖の人たちって最初はこんなにバイオレンスだったんですよ(笑)。
しかし、こういうセルフカバーってファンとしてはやって欲しいアルバムたくさんありますよね。
私もXの1,2作目は音がアレなんでやって欲しいし、メタリカとかレッチリでもたっっくさんあります(笑)。
けどね、やっぱその時の粗さとか、音の悪さも含めて名盤だったりするので、これってやってみないと分からないんですよね。
やってもらいたいけど、聴きたくない気持ち半分みたいな(笑)。
メンバーチェンジもしていることがほとんどだし。
XなんてもうhideとTAIJIが亡くなってるので、実現されてもなんだか納得出来ないというか。
その点、LUNA SEAはチェンジなし。
そのこと自体を喜ぼうではないですか。
今回は個別アルバムレビューを2作目の『IMAGE』から進めてきたのは、実はここで旧版と新盤をまとめてレビューしようと思っていたからなんですよ。
「なんで1枚目やんないんだよ!」
と思っていた皆さん、お待たせいたしました!
新旧のそれぞれの良さや違い、成長をたっぷりと語っていきましょう!
デビューアルバムってどういう作品だったの?
本作は1990年代中期から巻き起こるいわゆる『ヴィジュアル系ムーブメント』の直接的な元祖になるかと思います。
しかも後進のミュージシャンにかなり影響を与えた記念碑的アルバムとしてのクオリティを持っております。
ヴィジュアル系の元祖といえばまっさきにXが挙げられることが多いのですが、XとLUNA SEAの間には明確な境界線が一本走っています。
それは『メタルか否か?』という点です。
Xの世代には派手なヴィジュアルをしたバンドはたくさんいましたが、ほとんどの場合が『ジャパメタ』と呼ばれる日本独自に発展したヘヴィメタルの様式をとっていたように思います。
そしてXがブレイクした後、Xのそのヴィジュアル要素は後進にも受け継がれるのですが、そのジャパメタ様式を受け継ぐ後進はついぞ生まれてきませんでした。
普通あれだけ派手に売れれば、雨後の筍のように似たような音楽性のバンドがにょきにょきと生えてきそうなものなのに、そうはならなかったんですね~。
どうしてか?
ずばり!
『曲のテンポが速すぎて歌のキーが高すぎる』(笑)
というのは冗談(あながち間違いではない)。
実は、世界中がニルヴァーナに代表されるオルタナティブムーブメントの真っ只中であり、「ヘヴィメタル=ダサい」の風潮が日本にもあったからなんだと、私は考えます。
そんな風潮の中、後進のバンドにとってXの音楽性というのはリアルタイムの音楽として「ちょっと今は違うぞ」という感じだったんじゃないかな?
そんな後進バンド達にとって「これだ!」と思わせたスタイルがLUNA SEAの音楽性だったのだと思います。
LUNA SEAはヘヴィメタルではなく、どちらかというとオルタナティブに近く、パンク・ニューウェイブ・ハードコアをベースにしているんですよ。
それにバウハウスなどに影響を受けたゴシック・ロック(ゴス)の要素があります。
ゴスファッションに身を包んだ盛り髪男たちがRYUICHIのような歌い方をするような『筍』バンドたちが、まあ後から後からにょきにょきと生えてくるではありませんか(笑)。
もう、当時はうんざりしましたけど。
そうした1990年代中頃からブレイクしていく後進バンドたちが、インディ時代にめちゃめちゃ影響ウケたアルバムの筆頭が本作『LUNA SEA』だと思います。
それでも本作を超えるような内容のものは見られませんでしたが。
音楽的な実力が違いすぎるというか。
本物のオーラが出まくっているというか。
私なんかはやはり本作と『IMAGE』が今でも一番好きで、問答無用の個性を持ってるんですよ。
この頃のLUNA SEAは感情移入の度合いが尋常ではないですね。
サウンドの軽さとか、技術的な面とか、そんなものは曲の持つ圧倒的なパワーの前にはあまりどうでもいいというか。
これは歴史的な名盤が間違いなく持っている条件です。
古いしちゃちぃけど、かっこいい。
ビートルズの名盤を「音が悪い」とかって批判する人はいませんし、レッド・ツェッペリンの『Ⅰ』にしてもエアロスミスの『Rocks』にしてもそうだと思います。
そもそも先輩であるXの『VANISHING VISION』にしてもそうです。
本作はそうしたアルバムと肩を並べる傑作と呼んでも全然差し支えないと私は思っています。
ライブハウス時代から飛び抜けた音楽的実力を持っていたLUNA SEAをhideが見つけ、社長であるYOSHIKIに紹介。
そしてエクスタシーレコードから雑誌広告費だけで3000万円というプロモーションをかけてもらいインディデビュー。
Xの『VANISHING VISION』の時は1000万円だったので、いかにLUNA SEAが期待されていたのかが分かりますね。
さらにまだメジャーデビューもしていないのにエクスタシーサミットでは武道館のステージに立ってます。
デビュー前とは思えない圧巻のライブはこちらで見てください⇩
完全に『プロの人の顔』して澄ましてプレイしてますけど、まだバイトとかしているその辺の若造のはずなのですが(笑)。
貫禄というか、器のデカさが伺い知れますね。
ちなみにこの頃はXを始めとするエクスタシーの先輩たち(ZI:KILL・東京ヤンキース・LADIES ROOMなど)が毎回ライブを見に来て、毎回打ち上げだったらしいんですが、J曰く
「ライブが本番なのか打ち上げが本番なのかっていうくらいの緊張感溢れる飲み会だった」
とのこと。
かなりガチの熱い音楽談義が飛び交い、先輩たちから「お前たちは音楽に命かけているのか!?」と、まるで喉元に突きつけられているようだったとメンバーは語っています。
その先輩たちの強烈なエネルギーと個性を見せつけられ、その中で生き残っていくために死にものぐるいで独自の音楽性を磨いたとも語っていました。
「とにかく個性的なバンドたちの中で、自分たちにしかない音楽を演らなきゃ生き残れなかった。”被ったら負け”だった。(j談)」
そのためにかなりマニアックで玄人好みの音楽だと受け取られ、ライブハウスのオーディションは結構落ちているらしいです(笑)。
まあ、この先輩たちが荒くれ者ばっかりで、酔って喧嘩にはなるわ(J談)、ビール瓶は飛び交うわ(RYUICHI談)、ボス自ら大暴れして出禁くらうわ(INORAN談)…
LUNA SEAはそんなエクスタシーの洗礼をたっぷり浴びているので逞しく育ったんでしょうね(笑)。
セルフカバーはどうだった?
これまで語ってきたように、『LUNA SEA』リリース時の彼らは凄まじい野心と上昇志向を持ち、そして同じような志を持った先輩たちと切磋琢磨しながら成長していました。
そんな時代に生み出された作品だけに、そこには『突き抜けたオリジナリティ』が詰まっており、全カタログの中でもその点は突出しています。
単に若いから楽曲が激しいとかいうことじゃないんですね。
それまでに20年間くらい生きて吸収してきたすべてを注ぎ込んだくらいの熱量がある作品。
彼らにとっての原点。
再結成をして活動を本格化しようかという時に、彼らはかつての自分たちを取り戻す必要があったのでしょう。
ゆえのセルフカバー。
一番思い入れもある作品でもあり、何より原曲が素晴らしいからこそ、
「あまりにもサウンドがもったいなかった」
という後悔の念もインタビューなどで見えてましたしね。
しかし、ですよ。
おそらくファンの人達の頭をよぎったのは
「今のRYUICHIであれを歌って大丈夫なの?」
すばりこれでしょう。
『SHINE』以降のソロ歌手:河村隆一然としたボーカルスタイル(なよなよボーカル)は多くのファンからヒンシュクを買いましたし、2000年終幕直前のベストアルバム『ピリオド』で再レコーディングした『Precious』などの初期の4曲は『なんだかな…』でしたから。
「やっぱそれで歌っちゃったか!」って感じ。
それにRYUICHIだけではなく、サウンドも
「わざわざ再録するほどのものかな?」
というテンションだと私は感じました。
音はクリアになっているのに、テンションが全然ダメダメ。
スリルがない。
はっきり言ってあれならやらないほうがマシだと私は思っていましたから。
なので、実はセルフカバーを聴くのは『A WILL』で「お!今のLUNA SEAいいじゃん!」ってなってからなんですよ(笑)。
そして聴いてみた率直な感想。
「RYUICHIいいじゃん!サウンドもすごみがあっていい!」
でした。
RYUICHIのボーカルはもちろん初期のあの頃のスタイルにまんま同じには戻れないし、戻りたいとも思っていないんでしょう。
あくまで今の自分としてそれぞれの楽曲に本気でアプローチしている感があります。
本気度・真剣度はかなり伝わってきますよ。
これが驚くほどかっこいいんですよ!
それに一番感心したのが、
『あの頃の若さゆえの魅力に対してベテランの技術(歌の巧さ)で対抗している』
っていうレベルではなく、
『あの頃にはなかった違う魅力を加えている』
というところです。
「あの時よりかっこいい!」
と思わせる瞬間が必ずあるので期待して聴いてみてください。
この人もソロでさらに成長してきたんですね。
お見事!
そして4人の楽器隊も『ピリオド』での反省があったのかな?
今回はテンションが高い。
それは『Precious』の本作版と『ピリオド』版を聴き比べれば分かります。
単にいい音で録り直せばいいってことじゃなかったんですよ。
音に殺気が失くなっちゃ駄目なんです。
今回は凄まじいテンションが込められてます。
いや~、ここまでの本気度でくるとはさすがはLUNA SEA。
『LUNA SEA』楽曲解説
しかしこのセルフカバーの評価の高さはすごいです。
初期作品ってかなり頑固でコアなファンがついているから、そのファンたちを納得させることができるっていうのは相当なことだと思います。
そして今回レビューを呼んでいて予想通りだったのが、終幕前にあれほど批判が集中してたRYUICHIのボーカルに称賛が集中していることです。
このセルフカバーの一番の注目点は間違いなくここでしょう。
はっきり言って、旧版を超えてます。
それほどかつての狂気が蘇るどころか上回っているというか、完全に『河村隆一』を一掃しているというか。
「やろうと思えばできたんじゃん!」
と思ったのは私だけではないはず。
インディーの頃と違い表現力の凄みがあるので、これ聴いた後に旧版を聴くと、
「キャンキャン鳴いている犬」
みたいに感じます。
絶対怒られるよね、こんな事言うと(笑)。
つまり何が言いたいかというとですね?
例えば、怒りっていう感情をシャウトで表現すればそれは怒りの感情は伝わるでしょう。
けれど、怒りの伝え方って色々あって、逆に押し殺したほうが『怒り』を通り越して『殺気』さえ感じさせることだってあるんです。
聴き手に想像の余地を与えるんです。
ホラー、特に幽霊ものの映画なんて出てくるまでが怖いんであって、姿が出てきてしまうとわりと興ざめするじゃないですか?
あれと同じで、表現って想像をさせることがすごく重要で、その意味ではRYUICHIの想像させる力量はインディの頃とは比較にならないほどのものになっているのかな、と思いました。
#1『FATE』
LUNA SEA伝説の記念すべき1曲目が現代に蘇りました。
もうのっけから違いが分かります。
なに、この真矢のバスドラ(笑)。
音圧がパワーアップするのは予想できたのですが、『ピリオド』の再録とはレベルの違うクオリティです。
これ聴いたら旧版がデモテープみたいに感じて聴けなくなりますよ、いやホントに。
しかし、あらためて聴くとなんて奇妙な曲なんだ。
こんな変なリズム感でグルーブ出せる新人なんてありえないでしょう。
#2『TIME IS DEAD』
今でもセットリストの鉄板となっている名曲。
新版ではかなりまろやかになってます。
聴き比べると、旧版のINORANのカッティングがやばい。
キレッキレ。
テンポも速いのですが、荒々しさがすごいですね。
新版はRYUICHIのヴィブラートがヒステリックではまってるのが○。
#3『SANDY TIME』
クリーントーンのギターと下をうねるベースという初期LUNA SEAならではのナンバー。
こういう曲をまた作ってもらいたいな~。
SUGIZOのバイオリンがこの頃から挿入されてるんですよ?
おそるべきアマチュアバンド(笑)。
これ1991年リリースですよ?
当時最先端のオルタナティブバンドであるアリス・イン・チェインズなんかのダークな雰囲気を先取りしているというか、すごいですね。
新版はRYUICHIの声が演歌歌手のように感じてしまいます。
旧版の独特の魅力が薄まっているため、私はあまり推しませんね。
#4『BRANCH ROAD』
旧版は「デモテープか?」ってくらい音がペラッペラだったのですが、新版はのっけから迫力の重低音で攻めてきます。
もう90年代ラウドロックみたいです。
SUGIZOのリードメロディを落としすぎてしまって、若干そこがものたりないかな。
でもRYUICHIの熱唱度は本作イチかも。
#5『SHADE』
裏で刻むカッティングが非常にかっこいいナンバー。
この曲はINORANが主役です。
旧版では初期LUNA SEAの持つゴシック色を象徴するような曲だったのですが、ゴスっぽい雰囲気を出すためには『音の軽さ』も必要なのかな?と思いました。
新版では音の重厚感のためにあまり雰囲気が出ていないというか。
あと、ついでに言うと、ドラムもギターも音が重厚すぎて、ベースが埋もれてしまってると感じます。
旧版ほどJの存在感がないんですよ、アルバム全体的に。
このセルフカバーに続く『A WILL』以降の3作もJの存在感が終幕前より薄くなってますね。
そこが少しさみしいかな。
#6『BLUE TRANSPARENCY 限りなく 透明に 近い ブルー』
現在もセットリストに残る人気曲です。
旧版はいかにも‘80年代的なサウンドでした。
そのためアルバムの中で一番軽くてあんまり好きじゃなかったんですよ、人気曲ではあるのですが。
そしてRYUICHIのボーカルは『ダークRYUICHI』でしたね(笑)。
今回は『ダークRYUICHI』が出てはきませんが、「感情ォのなぁい街のなか~」に妙にこぶしが効いていてくすっと笑ってしまいます。
っていうかこの部分病みつきです(笑)。
ただ、サビ部分に関しては、旧版にあった『ダークRYUICHI』からのギャップでの感動はないですよね。
#7『THE SLAIN』
次作『IMAGE』に繋がっていくような世界観ですね。
ラストのシャウトは、旧版では『狂人』が歌っているような表現というか、その意味ではミュージカルのノリに近いのかも知れません。
それに対し新版ではちゃんと歌って狂気を表現してます。
こういうとこなんですよ、RYUICHIの表現者としての凄みを感じるのは。
#8『CHESS』
LUNA SEAがかつてアルバムに1曲は入れていた超スピード2ビートナンバーです。
その中でも一番速いかな?
こういうコアなナンバーが40過ぎて表現するのに一番難しいと思ったのですが、逆に一番評価が高くなりました。
こうして聴き比べるとスピードでは旧版が速いです。
しかしアタック感が全面に出てきていた旧版と違い、音に奥深さがあり迫力がすごい。
例えるならば旧版が機関銃とすれば新版は絨毯爆撃というか。
ここは好みが分かれるでしょうが。
ラストのフェードアウトはピアノからアコギに変えてきましたね。
#9『MOON』
たっぷりとディレイの聴いた神秘的なナンバーです。
1作目、そして2作目でも収録され、毎回「良いラストだな~」と思いながらラスト曲を別の曲に持っていかれる可愛そうな曲(笑)。
旧版ではこの曲の持つ真価が発揮されておらず、『IMAGE』版で完成したと思いました。
今回のセルフカバーはその『IMAGE』版ではなく、旧版のカバーになっており、女性コーラスもありません。
今回、ファンの想像を超え続けているRYUICHIですが、この曲では旧版の歌い方の方がハマってました。
っていうか今回のカバーでは神秘性がちと弱いかな。
#10『PRECIOUS…』
で、お約束の『MOON』でラストじゃないんかい!(笑)。
こういう終わり方好きですよね。
初期LUNA SEAの代表曲ですね。
エクスタシーサミット1991のビデオでもこの曲が収録されていたので、当時は一番人気の曲だったんでしょう。
得意の2ビートで疾走しながらもサビではキャッチーなメロディという、1曲で2度美味しいナンバーで私がLUNA SEAを好きになったきっかけの曲です。
この曲も旧版に軍配上がるかな。
なんだかな~って感じだった『ピリオド』版よりは新版の方が圧倒的にいいのですが。
はい、というわけで本日はLUNA SEAのデビュー作『LUNA SEA』の旧版とセルフカバーの解説をしてきました。
「『SHINE』でLUNA SEAファンをやめた」
「今の技量で昔の曲みたいな激しい曲をやって欲しい」
なーんて思ってるそこのあなた!
現代に蘇るかつてのLUNA SEAを体感してください!
『no music no life!』
”音楽なしの人生なんてありえない!”
Simackyでした。
それではまた!