『ユースアネイジア』メガデスが中性的な世界観を生み出した隠れた名盤!
どうもSimackyです。
本日は1994年リリース、メガデス6作目のオリジナルスタジオ・アルバム『Youthanasia』を語っていきますよ~。
お?なかなかにユーモラスなジャケット。
はは~ん、なるほど!
お母さんったら、もうおむつ交換するのが面倒くさくなったから履かせたままで干して乾かしてるのね。
グッドアイデア!
しっかしお母さん、出産ものすごい頑張ったね。
映ってるだけでも20人くらいいない?
これからも育児大変だろうけど頑張ってね!
・・・・・
とはならねぇよ?
そんな『頑張れママさん子育て奮闘記』みたいに受け取る人は世界中見渡してもいないからね、大佐。
あんた、だいぶと不謹慎ですよ?
こういうのってジャケット差し替えになんないの?
挑発するね~。
血も涙もないね~。
しかし、そんな挑発的なジャケットとは裏腹に、本作はマシーンのメガデスにして初めて血の通った人間味のある作品という定評が一般的なのです。
ウケる(笑)。
「血の通った?一体どういうこと?」
そう思ったそこのあなたに、分かりやすく解説していきますよ~。
『Youthanasia』に至る流れ
前作『破滅へのカウントダウン』は全米2位、セールス200万枚というメガデス史上最大の売上を記録しました。
世の中のトレンドが急変し、完全にメタルにとって逆風が吹き荒れる中で、変化に対応し、なおかつ過去最高の売上を記録するなんてすごいことですよ。
まあ、慣れない作風を求めるレーベルからの圧力もあったでしょうし、マーティやニックも作曲に参加したこともあり、大佐にとってかなり『やりづらい』作業だったようです。
確か後年、BURRN!のインタビューで
「『破滅~』の時は最低の雰囲気で地獄だったが『Youthanasia』は最高の雰囲気で制作できた」
みたいなことを語っていた記憶があります。
とにかく『破滅~』制作時のプレッシャーは相当なものだったようですね。
さらに大ヒットして過酷なワールドツアーまでやんなきゃいけなくなったものだったから、悪癖が復活します。
黄金メンバー期に入って随分落ち着いていたドラッグ癖です。
ツアー中にどんどん悪化していったらしく、せっかく日本で初の武道館公演まで決まっていたというのに中止になります。
これにマーティは相当がっかりしたようです。
実は後年のマーティが言うには、海外のバンドにとって武道館でライブをやるっていうのは、あこがれみたいです。
『ライブ・アット・武道館』の名盤は結構ありますからね。
その中でもディープパープルやチープトリック、エリック・クラプトンが特に有名かな。
まあ「ドラッグまみれ→強制入院→クリーンな体で舞い戻る」というのは、わりと昔からのルーティンというか(笑)。
ドラッグが本作に暗い影を落としている感じは見受けられませんので、ご安心を。
本作の特徴
前回も書きましたが、本作は『歌モノ4部作』の第2弾ですね。
インテレクチュアルスラッシュメタルをやらないという基本方針は前作と同様。
しかし今回は、前作にはまだ少し残っていたスピード感やハードなエッジという攻撃性はさらに抑えられてます。
けど、ギターリフにしてもドラムにしても音圧は圧倒的で迫力あるんですよ。
大佐は前作でボーカリストとして新たな境地にたどり着いた感じがありますが、本作はそれがすごくメロディアスに冴えわたっています。
さらに、そのボーカルにカウンターメロディのように絡みつくギターがいちいち気持ちいい。
マーティの本領発揮。
歌心のあるリードギターがナイスです。
これは前作までには見られなかった方法論だと思います。
とくにサビの部分などにその傾向が多く見られ、それまでのメガデスが表現したことのなかった世界観を描き出しています。
それがすごく美しく、綺麗で、中性的な雰囲気を醸し出すんですよね。
「カオス」とか「ダーク」とかいう印象がかなり薄い。
これまでに使ったことがなかった音も(アコギなど)かなり出てきます。
なので前作との大きな違いは、ボーカルにスポットライトを当てながらもバックサウンドは相変わらずマシーンだったメガデスが、本作ではそのバックサウンドもメロディアスでハートフルだというところです。
ここが決定的に違います。
さらに付け加えると、メロディはキャッチーなものが多いのですがポップではないといところもポイントですよ。
この後の2作『クリプティック・ライティングス』や『RISK』とはそこが違います。
スラッシュメタルではなくなったとは言え、「本作はメタルか?」と聞かれたら「メタルです」と答えますからね。
この後の2作は「メタルじゃないですよね」と答えますから(悪い意味ではありません)。
この雰囲気のメガデスは本作でしか味わえないので非常に希少な作品なんです。
なので、定期的に『Youthanasia』を聞きたい衝動に駆られます。
他の作品で代用が効かないんですよ。
長い目で見るとなんだかんだで最初に買った『破滅~』よりももっと聴いてることになるのかな?
学生の頃は『ガツンと来ないけど妙に気になる作品』という位置づけでしたが、年々聴いているうちに実はすごい作品だということが分かってくるというか。
クオリティとしては前作に劣るところはまったくなく、セールスもプラチナセールスを記録してますが、前作の200万枚ほどのインパクトはないため、わりと影の薄い扱いです。
しかし、レビューを見ると少数ではありますが、本作を最高傑作に挙げる声もあり、私としては妙に嬉しいです。
突出した名曲はあるが通して最後まで聞くのがわりと苦痛だった前作と違い、本作はその真反対。
最後まで気持ちよく聴けます。
これはね、前作がアルバムのトータルイメージを優先する余り、楽曲ごとのカラーに乏しかったからかも知れません。
今作は楽曲ごとのメロディのバリエーションが豊かです。
さらにメガデス初(?)のバラードもあるので、スピードナンバーはないながらも変化があり、そのためすんなり聴けるのでしょうね。
楽曲レビュー
それでは私がおすすめする楽曲のみレビューしていきますよ。
1.『Reckoning Day』
これだけメロディアスと言っておいて1曲目はリフが主体です。
重量級のリフでスタートします。
このリフ好きだな~。
前作より音は迫力あって好みです。
強烈なキャッチーさがあるわけじゃないんだけど、病みつきになる大佐のボーカルもいい。
アコギ(エレ・アコ?)もいい仕事してます。
のっけから緊張感がすごいですが最後まで緩まず締めの「ドドドドドドドドド」の終わり方は秀逸です。
2.『Train of Consequences』
リフがパサパサに乾いてるので裏で支えるベースとバスドラのコンビネーションが気持ちいい。
跳ねる跳ねる。
ニックのドラムは相変わらずツボを抑えまくってますね。
サビのクリーントーンのギターが透明感あって好きなんですよね。
3.『Addicted to Chaos』
私の中では奇跡の名曲です。
私の場合、どの作品であっても一般的におすすめされる曲と自分が好きになる曲がいつもズレているのですが、この曲なんかその代表です。
レビューでこの曲を推している人など誰もいやしません(笑)。
この世界観が好きすぎる。
本作を何度も聴くのはこの曲の存在があるからなんですよね。
この曲の大佐のボーカルは完全に私のツボなんですが、サビでボーカルに絡むマーティのリードギターがたまらないんですよ!
名曲中の名曲。
誰か共感してくれ(笑)。
4.『À Tout le Monde』
先程バラードと言ったのはこの曲のことなのですがまあ人によって判断は違うでしょうね。
メガデスって初期の激しかった頃から方向性を変えた前作に至ってもまだこういう曲調ってやってなかったんですよね。
2作目の時点ですでに入れてきたメタリカとは実はそこが違います。
その意味ではメガデスにとって非常に重要な曲だと思いますよ。
サビで逆に静かに抑え込むボーカルが泣かせるんですが、やっぱりここでもアルペジオが絡んで引き立てますね。
そして最後はギターソロがおいしいとこ全てをかっさらっていきます(笑)。
このユニゾンは前作のタイトルナンバーもかくやという出来です。
9.『Youthanasia』
あまりにもダルダルな進行のため
「なんてかったるいタイトルナンバーなんだ」
と思うこと間違いないでしょう(笑)。
しかしこれが2:30あたりのギターソロからいきなり豹変。
かつての『マシーンメガデス』が登場しますから。
ビックリします。
ここを最高に気持ちよく聞かせるためにそれまでのダルダルがあったのか?
まんまとやられますよ。
10.『I Thought I Knew It All 』
またもや
「なんてかったるいナンバーだ」
と思って聴いていると奇跡的な化け方をします。
なんなんだこの明と暗の対比は…。
ある意味本作で一番鳥肌が立つナンバーです。
ギターもボーカルも神がかって天才です。
メガデス史上、大佐のボーカルで一番泣かせるボーカルなのでは?
はい、今回は『Youthanasia』を語ってまいりました。
ずーーーっと聴いているアルバムです。
今となっては中期メガデスナンバーワンのお気に入り。
メガデス全体でも5本の指に入るまでになりました。
スラッシュだとかじゃないとか、もうどうでも良くなるほどの時間は経過したはずです。
今こそこの名盤を聴き直してみてください。