『ソー・ファー・ソー・グッド…~』凄みがあるメガデス全盛期の作品

どうもSimackyです。

本日はメガデスが1988年にリリースした3作目『So Far, So Good… So What!』を解説していきますよ。

タイトルを訳すると

これまでのところ順調だ…それがどうした!?

となりますが、意訳すると以下のとおりです。

??:「ハイ、デイブ!」

大佐「おお、マイケルじゃねぇか。久しぶりだな」

マイケル「お久しぶりだね。相変わらず音楽聞いてる?オレ最近さぁ、メタリカってバンドにハマっててさ。めっちゃいいんだよ。デイブも確か激しめのメタルとか好きだったろ?絶対聞いてみた方がいいって!最高にゴキゲンな気分になれるはずだよ。特にボーカルのジェイムズがかっこいいんだ!ところでユーは最近何してんの?なんかバンドやってるって話は噂で聞いてたけど?調子はどう?」

大佐「ああ、これまでのところ順調だよ…けどなぁ…それがどうしたってんだよっクソ野郎!」

マイケル「ヒィッ!!デイブ?何を怒ってるんだい?その握りしめた拳は何っ!?」

大佐「貴様は今、オレの前で決して口にしてはいけない単語を2つも口にした!マイコー、お前はもう…死んでいるっ…!!」

ズビシッ!!!!

ひでぶッ(ヒィッ!!デイブ?)

意訳するとこんな感じでしょうかね。

え?大佐って確か使えましたよね?

北斗○拳。

※ブラジリアン柔術です。

てか…

マイケル誰やねん。

アブラの乗り切ったメガデスが放つゾクゾクする作品

私は4作目『Rust In Peace』が最高傑作だと教えられて、かなり聴き込んで1年後にやっと2作目や本作を聴きました。

その時の感想は

「2,3作目の方がもしかするとすごくない?っていうかどっちがインテレクチュアルかって言われたら断然こっちやろ」

『Rust In Peace』を聴いた時はその複雑な展開とテクニックに度肝を抜かれたものですが、本作からはそれ以上のインパクトを感じました。

本作こそインテレクチュアルスラッシュメタルの真骨頂でしょう。

しかし残念ながら最高傑作と呼び声の高い前作『Peace Sells… But Who’s Buying?』と次作『Rust In Peace』の間に挟まれた本作は、わりと影が薄い扱いを受けてます。

まあ、私個人の評価としてはこれら3作品は横並びです。

レビューを見ても本作をベストに挙げる人は意外に多い。

本作も十分『最高傑作』と呼ばれるにふさわしいポテンシャルを持っています。

聴き込んでみてください。

あとからキますよ。

私が「本作の印象を一言で表せば?」と聞かれたら「ゾクゾクする」と答えますかね。

本作は非常にスリリングです。

前作に比べてより激しくなったとかいうわけではないのですが、なぜこういう風に感じてしまうのでしょうか?

それは大佐の「リフの発想力」「演奏の円熟味」が強く伝わってくるからだと思います。

「なんでこんなリフを思いつくの?っていうかどんな弾き方するとこんな風になるの?」

ってくらい想像できる範囲の外から切り込んでくるし、前作までは少し残っていたプレイの雑さや荒っぽさが完全に抜け、そのプレイからは職人の凄みさえ伝わってくるんですよ。

流れるようにスムーズなピッキングには恐れ入ります。

そのためテンポが同じくらいでも体感的な疾走感が前作より上なんです。

技術面もすごいですがサウンドプロデュースのレベルも全然違います。

また、本作の特徴としてはキャッチーさやドラマティックなメロディが少し減退し、その分冷ややかでマシーンのような冷徹さが伝わってくるというか。

マシーン度(※)でいえばメガデス史上最高かもしれません。

※マシーン度:メガデスのみで使われる音楽表現の単位)。

大佐本人は

「ドラッグを買う金が欲しかったからあえてコマーシャルにした」

とほざいたとかほざかなかったとか言われますが、ドラッグに夢中すぎてだいぶと感覚がラリっておられるようで、

言うほどキャッチーではありません。

コマーシャルって言ったってピストルズのカバー1曲やっとるだけやがな。

全体的にハードコア色が強く、パンキッシュでありながら、そのリフは複雑怪奇でメガデスでしか表現できない新たな世界観に到達しているというか。

かつて一般的に認識されていた『メガデス』と聞いて想像されたイメージそのものと言ってもいいでしょう。

後期の作品が評価される際に『かつてのメガデスらしい』とか『らしくない』とかいう議論は、皆さん無意識的にこのアルバムのイメージを基準としているんだと思います。

『インテレクチュアルスラッシュメタル』を新たな次元、誰も想像できない次元に引き上げ完成させており、その方向性としてはここが頂点だと思いますよ。

次作からはちょっと方向性が変わるのでね。

フック、キャッチーという点では前後のアルバムに及びませんが、本作にはそれを補って余りある魅力があります。

まあ、リフの快感指数が異常に高いですわ。

クリスとガルのオリジナルメンバー2人が抜け、あらたに入ったギター:ジェフ・ヤングとドラム:チャック・ピーラーもかっこいいです。

本作だけで脱退するので影が薄いのですが、二人共そのプレイはすばらしいですよ。

ジェフのギターは後任のマーティよりはどちらかというと前任クリスに割と近いのですが、すごくディレイをたっぷり聞かせて『雰囲気』を作り出すプレイをします。

言葉で表現するのが難しいのですが、しっかりと、メロディを聴かせるというよりギターを『泣かせる』感じで、デイブの描く世界観を演出してます。

ギターソロのところだけ出てくるっていう感じじゃなくて、それ以外の場面でもリードギターがいつもなっているような感じです。

その意味ではキーボーディスト的な役割を果たしているとも言えるかも知れませんね。

それからベースのエレフソンが裏方にまわってしまったのが少し残念。

聴き終わって耳に残るベースフレーズがあんまりないんですよね。

実はメンバーチェンジしたパートよりもベースの変化の方が大きい気がします。

前作ではもっとカウンターメロディ的な役割を多く果たしていたのですが、今回はリフが前面に出てきているためギターリフを裏で支えている感じですか。

まあ、前に出てくればいいっていう単純な話じゃないんですが。

楽曲レビュー

本作も他の初期作品と同様2004年に一斉リマスターされています(2~8作目まで)。

これね、色々意見は分かれているみたいですが、私はオリジナルバージョンを聴き込んできたのでリマスター盤はあんまりおすすめしません。

リマスターはギターリフのガツンと来る感じが弱いです。

音の角が取れ、その分重低音は補強されていますが、肝心の聴きどころが薄まっちゃいかんでしょ。

あのギザギザ感が本作の良いところなので、そこは残念。

ドラムの音もリバーブを取っ払っているので、だいぶ野暮ったい感じが出てしまってます。

このリバーブに関しては好みが分かれますが、私はリバーブ効きすぎな感じが好きです。

この2点は前作『ピース・セルズ~』のリマスターも同様です。

リマスターで良くなったのは個人的には1作目だけだと思ってます。

それから#1のインストなんかは謎のファンファーレが追加されていて、唖然としました。

それはもはや『リマスター』とは呼ばないでしょう(笑)。

音を加えたらそれは『リミックス』と呼ぶのでは?

リマスターってもともとをレコードとかのアナログ音源をデジタル音源に変えて、ノイズとかを取り除いたりする最終作業(マスタリング)に手を加えるだけじゃなかったっけ?

だから昔のレコードがCD版で再発されたものってそこまで大きく変化はなかったでしょ?

それに比べるとメガデスのはリマスターと呼べる変化の度合いを著しく超えてます。

なので、メガデスのリマスターは正確には『リミックス&リマスター』と謳うのが正しいんじゃないかな?

1.『 Into the Lungs of Hell』

メガデス初のインストナンバーです。

これが例の「リマスターで音が追加された事件」の張本人です。

ドラクエのレベルアップじゃないんだから、そんなファンファーレやめてくれよ、と思いました。

聴くならオリジナルをおすすめします。

本作で一番好きかも知れないほどかっこいいので。

もうこの1曲目のリフからして前作からの成長を決定的に印象付けてきます。

ジェフのギターソロもたっぷり3分半も聴けるのですが、これが非常にかっこいい。

2.『Set the World Afire』

ラジオから流れてくるBGMや爆発音が入ったりと、あのメガデスが演出をも取り入れるようになりました。

冒頭の爆発直後のカオスなリフに狂気を感じます。

こういうとこマシーン度が高いです。

縦横無尽にリフが暴れまわり、曲がめまぐるしく展開していく様はまさにインテレクチュアル!

ジェフのギターソロにはキャッチーなメロディなどはなく、ひたすら『混沌』を演出するのに徹していますね。

これが素晴らしい!

3.『Anarchy in the U.K.』

前作に引き続き唐突にコミカルなカバーが入ります。

「大佐はやっぱりメタリカにいた人だな~」と感じる時がこのカバーやっている時なんですよね。

メタリカがカバーやる時となんか雰囲気が近いというか、ワリとキャッチーなナンバーをやるというか。

メタルをやっているけれど、そのルーツにパンク・ハードコアが間違いなくあることを感じることができます。

4.『Mary Jane』

一部では「流行りに乗ってバラードやった」と叩かれたシングル曲なのですが、これのどこがバラードなのか説明してください(笑)。

5作目『破滅へのカウントダウン』以降の作品に入っているかのようにメロディアスな始まり方をします。

しかし中盤から凄まじい緊迫感で展開していきますよ。

リフの緊迫感もすごいですけど、不安感・焦燥感を煽るこのジェフのリードメロディも素晴らしいです。

5.『502』

またしても複雑怪奇でマシーンなカオスリフで始まりますよ。

「なんでこんな発想できるんだろ?」

っていう衝撃的な感覚は、パンテラの「カウボーイ・フロム・ヘル」や「俗悪」を聴いた時の感覚に近いかも知れません。

まあ私の場合、先にパンテラを聴いただけで、リリースはこっちが先だったと思いますけど。

パンテラ聴いた後でさえ衝撃的だったのでよっぽどですよね。

一握りのリフマスターしか辿り着けない境地に達しているというか。

90年代ヘヴィネスを完全に先取りしてます。

このリフの疾走感もすごいのですが、カオスなリフで目が回っていると切り裂くようにジェフのギターソロがちょいちょい入ってきて、とにかく右に左に振り回されます。

凶暴すぎる…。

6.『In My Darkest Hour 』

元同僚だったメタリカのベーシスト:クリフ・バートンへの追悼曲です。

構成のメリハリがしっかりしていて、本作で随一のメロディアスナンバーでもあります。

というよりこれまでの3作の中でもっとも美しい曲ですね。

これまでのメガデスにはないほど『歌』にフォーカスしているのではないでしょうか?

これは珍しい。

中盤でテンポチェンジしてからも、熱唱ですね。

ラストのギターソロからのクライマックスは鳥肌モノですよ。

初期メガデスの傑作。

7.『Liar』

本作でもっともマニアックな曲ですね。

またもやカオスティックなギターリフで始まります。

何やってっかわかんない箇所がところどころ出てきます(笑)。

この不穏すぎる空気感って、90年代にサウンドガーデンやアリスインチェインズなんかのオルタナ勢がやっていたことを先にやってますね。

つまり、メガデスはやっていることがどちらかというと正統派メタルよりもオルタナティブに近かったということが分かる曲です。

というよりこのアルバムだったらそのまま90年代にリリースしたとしても、ニルヴァーナ好きなリスナーでもハマると思うんですがいかがでしょう?

カート・コバーンもメタリカのファンだったというし、やはりスラッシュメタルはメタルの中で最もオルタナに近かったんだと思います。

ルーツにブラック・サバスとハードコアがありますしね。

しっかしこのコーラスは酷いな(笑)。

8.『Hook in Mouth 』

この職人芸のリフを心ゆくまで楽しんでください。

大佐、なんでこんなリフを考えつけるの?

で、リフの凄さに唖然としていると今度はカウンターで入ってくるジェフのソロもすごい。

天才すぎる…。

あらためて思うけど、この二人ってすごいコンビネーションじゃないですか?

これは前任のクリスとのそれを超えてません?

ものすごい凶暴なナンバーで締めくくっちゃった(笑)。


はい、本日はメガデスの3作目をとくと語ってまいりました。

個人的にはジャケがもったいなさすぎるし、傑作に挟まれて影薄いから皆に知ってもらいたい傑作です。

マジでシビレますよ。

一番本格派なアルバムと言えるでしょう。

 

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