『オズモシス』(オジー・オズボーン)最もブラック・サバスに接近した作風!
どうもSimackyです。
本日はオジー・オズボーンの7thアルバム『オズモシス(OZZMOSIS)』を、当時をリアルに振り返りながら熱く語りたいと思います。
私としては『ノー・モア・ティアーズ』でオジーにハマってからのリアルタイムで初めて買った作品ですので、かなり思い入れのある作品です。
衝撃の引退宣言、それにともなうラストツアー、最終日でのブラック・サバスの復活劇と、あらゆる感動の集大成だった『ノー・モア・ツアーズ』から4年…
ついにロックシーンにオジー・オズボーンが復活!
さぁ、とくと語っていきますよ~!
『オズモシス』購入に至るまでの経緯~引退から復活まで~
『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』の記事でも書いたのですが、中学時代、『ノー・モア・ティアーズ』でオジーに魅入られた私は、他の作品への期待を胸にCDショップデビューします。
しかし、店に並ぶすべての作品のジャケットの不気味さ、何よりそこで入手した『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』の不気味さに完全に戦意喪失…。
”オジー恐怖症”と呼んでもいいほどのトラウマを抱え、中3の終わりごろにXに夢中になってからは、ほぼその存在さえも忘れていました。
高校1年の頃はXやメンバーソロのアルバム、ライブビデオ、MVに全ての小遣いをつぎ込み、学校の授業をサボって本屋で音楽雑誌をむさぼり読む毎日。
その頃に見つけた意外な記事。
「ヘヴィメタルの帝王オジー・オズボーンがついに復活!」
この記事にグラっときちゃいました。
かつてあれだけのめり込んだアーティストだったのに、途中で挫折してしまったことを引きずっていたんでしょうね。
「ヘヴィメタルの帝王とさえ呼ばれる人の本当の良さを俺は理解できないのか?俺の感性って大丈夫なのか?」
っていうね。
コンプレックスみたいなものがあったのかと。
そしてそのコンプレックスを克服できるかもしれないという欲求が働いたのかと。
背伸びしたいお年頃(笑)。
『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』は怖い上に、10数年前の作品ということもあり、当時の私にとって音がちょっと古臭かった。
受け付けなかった。
でも新作となればそれは『ノー・モア・ティアーズ』に近いような近代的サウンドになっているのでは?
何より、あのオジーの作品をリアルタイムで触れられるということにかなり興奮したのだと思います。
そして恐る恐る発売日に売り場で目にした新作のジャケットは…
当時の私「よ、良かった…グロくない!安心して見れる!っていうかむしろかっこいいかも!」
はい、ちょっとストップ!
お前の目は節穴か?
グロくない…のか?安心して見れるかは微妙だぞ?当時の私よ(笑)。
まあ、しかしそう感じたってことは、過去作品がそれほど強烈なジャケだったということですよね。
オジーの作品でもっともハードルの高い『ジャケット問題』をなんとかクリアした私はワクワクしながら帰宅します。
中学の終わり頃からこの時までにはほぼX漬けだったので、オジーの作品を聞くのなんて約2年ぶりか?
さて、その内容やいかに…?
キャリア屈指の『重さ』、その隙間から見える『珠玉のメロディ』
第一印象は
「うーーーーーん。重い。ひたすら重いぞ…。(ライナー読みながら)なになに?ブラック・サバス的?ブラック・サバスってこんな音楽やってたの?」
とてもノリノリになれるような内容ではありませんでした。
とにかくスローテンポばかりで、アップテンポなナンバーがまったくありません、1曲たりともです。
超弩級のヘヴィさ。
重さだけで言えばソロキャリアで1,2を争う屈指のヘヴィネスアルバムです。
オジーの歌メロにも前作『ノー・モア・ティアーズ』のような明るさがないように感じました(最初はね)。
『重さ』を強く印象付ける要因はどこにあったのか?
この頃の私には分からなかったのですが、自身のバンド経験を通して分かってきたこの『重さ』のメカニズムを説明しましょう。
本作の重さの要因は何か?
曲調としては#1『ペリーメイソン』、#4『サンダー・アンダー・グラウンド』、#9『マイ・ジキル・ダズント・ハイド』、ボーナストラック#11『ホール・ワールズ・フォーリン・ダウン』の存在ですね。
這いずり回るように思いリフが印象的なナンバーたちです。
#1『ペリーメイソン』の評価は高いですね。
この曲のPVで気に入ってアルバム買った人がたくさんいるほどのキラーチューンです。
私は#9『マイ・ジキル・ダズント・ハイド』がツボでした。
このリフの中毒性はやばい!
そしてザックのソロでのヒステリックに盛り上がっていくところが最高のハイライトです。
これらの4曲はどれも、超低音のサウンドとオジーソロではかつてなかったほどの超ハイトーンなボーカルの組み合わせ。
これってなかなか気づく人いないと思うんですけど、オジーはソロになってからあんまり超ハイトーンはやってないんですよね。
久々に頑張ってます(笑)。
つまり、オジー在籍時のブラック・サバスの方法論が復活しているんですよ!
当時はサバスを知らなかったのですが、今思えばこれほどサバス時代に接近した作風はソロキャリアで初でしょう。
まず、サウンド面での重さの要因はザックのギターが挙げられます。
『ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド』のようなダークでマイナーなコードで、『ノー・モア・ティアーズ』のような明るくキャッチーな要素が減っています。
しかも『ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド』は音が悪かったのですが、ここでは文句なしに90年代最先端の音質でヘヴィネスを体現しております。
次にギーザー・バトラーその人の存在ですね。
このアルバムから独特のドロドロした世界観を感じるのは、彼の低音が不穏なうねりを見せているからなんです。
そりゃブラック・サバス本家のメンバーが加入するってことは完全にその方向性を狙っているでしょう。
この人のベースってサバスでもトニー・アイオミのギターと独特の絡みつき方をするんですよね。
『低音を支えている』というより、ギターとベースが合体した一つの楽器として機能するっていうか。
サバスの印象的なリフを頭の中で流すと、ギターだけじゃなくてベースもセットになってるんですよ。
切り分けられないんです。
そんな特徴を持つギーザーのプレイなのですが、今回はザックのギターリフにも絡みながら、ドラマーとの間に『タメのリズム』を聞かせています。
ドラム:ディーン・カストロノヴォのバスドラはとにかく強烈で、バスドラの『ドン』が『ズシーン』って感じ。
曲がガッタガッタ揺れる揺れる。
ギターの音階的にヘヴィである曲はこの世に掃いて捨てるほどあるのですが、リズム隊の重さでここまでのものを表現できているのはちょっと記憶にありません。
ディーン・カストロノヴォのパワフルさはすごいですね。
このタメの聴いたリズム感。
相当にハードヒットしているらしく、1音1音がガツーンと来るんですよ。
オジーは当時のインタビューでこう語っていました。
「ヤツのパワーはすごい。ドラムをこんなにでかい音で鳴らすヤツはジョン・ボーナム以来だよ。ヤツと合わせてると他の楽器が聞こえないんだから!(笑)」
確か褒めてる文脈での発言だったと思うのですが、御大オジーはお気に召さなかったのか、このアルバムのみで彼を外します。
私はかなり好きなドラマーだっただけに残念でなりません。
オジーのソロキャリアの中では伝説のギタリストばかりが取り沙汰されますが、実は歴代のドラマー達も皆すごいんですよ。
リー・カー・スレイク、トミー・アルドリッジ、ランディ・カスティロ、ディーン・カストロノヴォ、マイク・ボーディン、トミー・クルフェトス、極めつけが我が師匠チャド・スミス(レッチリ)ですよ?
この「オジーのドラマーは実はすごい人だらけ問題」に関してはそのうち1本書きますね(笑)。
ヘヴィネスの先に見えてくるもの
皆さん、アルバムをあーだこーだ言うのはせめて50回くらい聴き込んでからにしようじゃありませんか!
人間の耳っていうのは最初の印象を覆すのに結構な時間を要するからです。
色んなアルバムレビューを客観的に見ていると
「それって序盤5曲の印象じゃん。最後まで通して聴き込めばそんな感想にはならないと思うけど…」
ということがままあります。
かく言う私もそうなんです。
この『オズモシス』だって前回書いた『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』だって、「重すぎ」とか「ドロドロし過ぎ」とか最初は思うわけですよ。
でもその中にはものすごく綺麗なバラードも入っていたりするんです。
ドロドロしていない爽快なロックナンバーがあったりするんです。
けど、その印象が他の曲の強烈な印象でかき消されたりするんですよ。
この『オズモシス』にも先程挙げたヘヴィナンバーに存在感をかき消されている名曲たち、すばらしく美しいメロディたちが確かに存在しているんです。
そして一見「このあたりの曲は入れなくても良かったのでは?」と思われる曲たちにも存在理由があることに気付かされます。
#2『アイ・ジャスト・ウォント・ユー』
オジーには珍しい物悲しいバラードですね。
感情を押し殺したような低いヴォーカルメロディがこれまでのオジーのバラードの印象を覆します。
オジーのバラードは天下一品と評してやまない私ですが、オジーのバラードにはドラマティックでメロディが明るくてキャッチーで、、、といった1つの『型』があったと思います。
「グッバイ・トゥ・ロマンス」に始まるパワーバラードですね。
「トゥナイト」「ソー・タイアード」「ママ・アイム・カミング・ホーム」などなど。
もちろんその流れはこのアルバムにも引き継がれており、それが#5「シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド」、#10「オールド・LA・トゥナイト」なのですが、この「アイ・ジャスト・ウォント・ユー」はまったくその流れになかった曲です。
ずっと押し殺したヴォーカルが最後に叫びに変わるところは鳥肌モノです。
この初期ブラック・サバス時代にはよく見せていたシャウトは、オジーのソロではずっと出てこなかったですよね。
当時と違い、サバスを知った今の私にとっては、6thアルバム『サボタージュ』で見せた狂気を思い起こさせます。
このオジーを引き出したプロデューサーのマイケル・ベインホーンは只者じゃないと思うのですが、すごくパワハラプロデューサーみたいで、レッチリを始め一緒に仕事をしたバンドで彼のことを良く言っているのを見たことがありません(笑)。
#5「シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド」、#10「オールド・LA・トゥナイト」
やっぱり入ってきましたね、こういうバラード。
これは前作『ノー・モア・ティアーズ』で確立したフォーマットですね。
ヘヴィでハードな曲たちの中にポッと出てくる清涼剤の役割と、ラストの締めとしてのバラードナンバー。
どちらもオジーバラードの名作たちに全く引けを取らない名曲です。
ザックのギターも要領を得たものです。
最高にドラマティックなソロを聴かせてくれます。
この2曲にはなんど泣かされたことか…。
キャリア屈指の名バラードなのでもっとクローズアップされてしかるべきだと思うんですがね。
ヘヴィメタルというものを聴いたことない人に
「メタルってものを聴かせてやろうか?」
と聴かせて驚かせていた記憶があります(笑)。
#6「トゥモロウ」#7「ディナイアル」#8「マイ・リトル・マン」
ここの3曲は高校生の当時、非常に苦手なゾーンでした。
おそらくこのアルバムがあまり評価されにくいのはこのゾーンの”中だるみ感”があるからでしょうね。
ハードでもなく、かと言ってバラードでもない。
そして特にキャッチーでもないこれらの曲は、不思議と独特の雰囲気だけはもっています。
ダークだったり、すごく透明感があったり、オリエンタルな雰囲気だったり。
この『オズモシス』を聴いていた当時、漫画の『ロトの紋章』を読みながら聴いていましたので、こうした曲たちが悲劇的な場面や神秘的なシーンに妙にマッチしたりしていたのを覚えています。
大学になってからはここの3曲は完全に飛ばして聴いていたのですが、社会人になってこのアルバムを通して聴いた時に、この3曲の部分で『ロトの紋章』の絵がフラッシュバックした時には驚きました。
まるで、『オズモシス』が『ロトの紋章』のサントラになってしまったようでした。
一体何の話をしたいのかというとですね。
「キャッチーさやフックがあることが必ずしも『正解』ではない」
ということです。
ここの3曲はそのことを私に教えてくれました。
曲としてお気に入りかと聴かれれば「ノー」です。
曲単位で良いか悪いかで判断するのではなく、トータルで俯瞰した時にちゃんと役割があるんです。
世界観にどっぷり浸ることができるんですよ、こういう曲があると。
オジーのように独特の世界観を構築しているアーティストではこういうことが起きえます。
もちろんいつでもそうとは限らず、本当に曲数合わせのために収録されたような曲もあるとは思いますが、少なくともこのアルバムに関してはしっかり意味があると感じました。
なので、このアルバムは曲を飛ばさない数少ないアルバムの一つかもしれませんね。
本人がどう思おうがこれは名盤です!
オジーはこのアルバムを4thアルバム『罪と罰』と同様に『思い出したくない黒歴史』かのように語りたがりません。
本人はマイケルベインホーンとの仕事にかなり不満があったみたいで、当時、音楽雑誌のBURRN!でマイケルベインホーンと一緒にインタビューを受けていたのが笑えました。
明らかにこの作品に不満が残るオジーは、口数が少ないというか、らしくない感じで、
「なかなかに満足の行く作品になったよ…」
と語っていましたが、
「あんた絶対にそんなこと思ってないだろう」
って読みながらツッコミ入れていたのを思い出します(笑)。
その後は1人でインタビューを受けるたびごとにマイケルの悪口を言ってました。
しかしね、オジーが気に入らない点がどこなのかは分かりませんが、これは傑作ですよ。
お陰でここから私は再度オジーワールドに入門し、全カタログを買い揃えていくほど大好きになってしまったのですから。
本当の意味でオジーファンになったきっかけになったアルバムなのかも知れません。
それほどのパワーを持った作品なので、是非とも一聴することをおすすめします。
ちなみに意外な事実をお話すると、日本国内のチャートとしては全カタログ中最高の7位を記録しております。
つまりオジー作品で日本人に一番聞かれたのはこれ(笑)。
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