『LUV』LUNA SEA 自然体が魅力のアルバム
どうもSimackyです。
本日は2017年リリースでLUNASEAの9枚目のオリジナルアルバムである『LUV』を解説していきたいと思います。
最初に言っておきますが
めちゃめちゃボロカス言われてます(笑)。
個人的にはかなり好きなアルバムで、そこまでボロカスに言われる程の作品だとは思っていませんので、弁護します。
傑作だった『A WILL』から4年…なんでこんなにかかったの?
おそらく殆どのLUNASEAファンの想像を超えてくる出来に仕上がった13年ぶりの傑作『A WILL』。
怒涛の勢いで活動が加速するかと思いきや、本作のリリースまでに4年と、かなり空いたのは意外でしたね。
まあ、考えてみればそりゃーそうなりますよね。
もう、終幕前のようにLUNASEAだけに専念できた人たちではなく、自身のプロジェクトのリーダーをやっているんですから。
LUNASEAとしては2014~15年にかけて『A WILL』リリースに伴うツアー34公演というのもあったのですが、その合間合間にSLAVE限定の単発ライブをかなり頻繁にやってたのは偉いと思います。
さらには自分たちで主催する『LUNATIC FEST』、通称『ルナフェス』まで開催してたからかなりの忙しさでしょう。
これらを個々のメンバーのソロ活動の手を緩めずにやっているのが凄い。
RYUICHIもINORANもこの4年の間にフルアルバム2枚、ミニアルバム1枚(Jはフルアルバム1枚のみ)。
かなり精力的に、というかLUNASEAが復活したことを忘れてるんじゃないかってくらい、みんなペースを変えずにやっている。
SUGIZOに至ってはジュノ・リアクターのワールドツアーとXのレコーディングの掛け持ちですからやばいですよこれ。
他のメンバーと違って自分主導でスケジュール組めないわけですから。
こうして見ると「なんでこんなに時間掛かったの!?」というより、もはや「よくアルバム作る時間を捻出できたな」と感心してしまいます。
ファンへの愛のなせる技ですよ。
本作への批判に関して
かなりポップな作風になった
本作のレビューは荒れましたね。
私、ブログでアルバム解説を書くたびに全部のレビューに目を通すのですが、今どきこんなに荒れてるレビューを初めてみました!
怖い怖い…。
しかも長文の人がやたら多いんですよ(笑)。
皆さん、もう少し穏やかに行きましょう、ね?
いや~、でも嬉しいですね!
だって、それだけ熱量が高いってことでしょう?
それだけLUNA SEAに真剣に期待しているってことですよ。
『もう日和った過去のバンド』
って思われてたらこうはなりませんからね。
ロックは喧々囂々(けんけんごうごう)、賛否両論でなきゃ!
もうこういう作品が大好物(笑)。
本作に対する批判の多くはこの極端に明るくポップに仕上がってしまった作風に集中しています。
「こんなんロックじゃねぇ」と。
「LUNA SEAじゃねぇ」と。
これに関して私の見解は
「それでもいいんじゃないですか?」
って感じです。
だって、なんかもう今さらって感じがしなくもないというか。
私は高校生の頃に2作目『EDEN』を聴いた時に、
「売れ線に走りやがってクソが!」
って吐き捨てましたから(お前が一番穏やかじゃねーよ)。
『IMAGE』とのギャップから「う~ん」となりながらもだんだん好きになっていった過去があるので、もうとっくに「これもLUNA SEA」と受け入れているというか。
30年も前の話ですからね。
別に心配しなくてもロックなLUNA SEAはいつだってまた聴かせてくれるはずで、「これ以降はポップなものしか演りませんよ」って言われてるわけでもないですしね。
今回、ポップな作風になった理由を彼らのインタビューなどから推測してみますね。
本作のリリースに合わせ『LUV』特設サイトにてアルバムの情報、ライブ情報などが小出しにされていました。
そこではメンバーのインタビューまで掲載されていて非常に面白い、現代ならではのプロモーション手段と思いました。
で、そこでメンバーが語っていた内容から見えてきたのが
『自然体』
というキーワードですね。
2007年の『一夜限りの復活ライブ』から10年間、彼らがやってきたことは『LUNASEAとは何か?』をメンバー間で共有する作業だったのだと。
7年間離れていて、ソロ活動をすることで成長したメンバーの今の姿を認め、そして改めて振り返るLUNASEAの特徴、長所、LUNASEAだからできること、LUNASEAらしさ、ファンとの関係性…。
そういったLUNASEAの歴史を総括する期間だったのでしょう。
そこがメンバーで共有できたのだと。
だから自信があるんだと思います。
「これまで自分たちが築き上げてきたかつてのLUNA SEAらしさならいつでもできるぞ。完全に熟知しているぞ」と。
土台がしっかり固まっている実感がメンバー全員にあるのでしょう。
だから、次のステップとしては
「今からのLUNA SEAらしさってなんだろう?」
っていうことだったと思うんですよね。
そのためにとりあえず、「白紙の状態から何が生まれてくるのか?」をありのままに出し合い、それを仕上げていく作業だったとのこと。
まさに自然体です。
ここでポイントなのは、
かつてのLUNASEAらしい作品かどうかは度外視
したということですね。
そうしないと自分たちがどこに向かいたいのかが見えてこないから、ということです。
「これはLUNA SEAでやるべきものじゃない」
とかって却下していかないんです。
自分たちの中から出てくるものに対して
「これが今の俺達だ」
って肯定的に認めた上で先に進むというか。
その結果、自分たちの中からかなりポップな曲が出てきたのはたまたまであり、狙ったわけではない。
重要なのはそこじゃない。
それまでであれば
「こんなポップなのはLUNA SEAじゃない」
って却下していたであろう範囲まで肯定していることなんです。
「出てきたものを丸のまま出しても自分たちの音楽性は揺らがないし、ファンの人たちも信じてついて来てくれるし、新しいLUNA SEAの可能性が広がるだけだ」
っていうすごい自信を感じます。
だから突き抜けているんですよね。
ためらいがないし、陰りがない。
曲調がポップであるかどうかは関係なく、このポジティブなエネルギーにはかつてないものを感じます。
私にとってはそこが本作の一番の魅力だと感じていますがいかがでしょうか?
ただ、自分たちのありのままを飾らずに出したは良いものの、その先に向かうイメージまではまだ出来上がっていないんじゃないかな?
つまり本作は『全く嘘をついていない自然体』である反面、『出てきたそれらをどこに向かって終着させるか?』っていうゴールが見えないようにも感じましたね。
まあそれが次作への課題としてつながっていくのでしょうが。
『ぶつかり合っていない』ことが『本気でない』ということではない
それから本作に関して「メンバーが本気で取り組んでいない」的なレビューも結構見かけましたので、それに関して私の見解をお話しましょう。
やはり終幕前と違い、メンバー全員が大人になっているので、お互いを否定せず尊重しているような発言が目立ちますね。
メンバー同士で「俺のほうがすごいんだぞ!」とバチバチ張り合っていた頃とは違います。
それが「本気で取り組んでいない」という風にも映ったのかも知れません。
さらに、インタビューでSUGIZOが「なんとなく」的な発言をしてしまったせいで誤解されているというか(笑)。
別に適当で作っているというニュアンスじゃないことはインタビューを最後までちゃんと読めば伝わりそうなものですが。
彼が言いたかったのは、メンバー間の信頼関係、それから経験値とスキル・ノウハウが昔とは比べ物にならないほど高くなっているので、音楽制作の核心部分とは関係ない部分であれこれと気をもむ必要がなかった、というニュアンスです。
デモテープの段階でも、作る人が各パートの個性を熟知しているから、メンバーの好みから著しくかけ離れたフレーズにはなっていないと思うんですよね。
だから、原曲のフレーズをそのまま採用するケースも多いだろうし、それは決してやる気がないわけでも、ぶつかることから逃げているわけでもない。
というより、依然としてぶつかるところでは昔みたいにバチバチやりあったんじゃないかな?
というのも次作『CROSS』ではプロデューサーを起用しているからです。
第三者に最終決定を委ねることでメンバー同士の衝突を減らすことができるからです。
「再結成して一応なんとか仲良くはやれてきたけど、例によってだんだんヒートアップしてきたぞ?このままだとまた昔の失敗を繰り返すのでは?」
そう考えてのプロデューサー起用なのではと勝手に憶測してます(笑)。
そんな彼らが本気で取り組んでいないってことではありません。
「いい曲は優先してソロ曲に回している」
なんて疑惑も見かけましたが、それもなんだかな~。
そもそもデモテープって自信のない曲なんて持ってこないでしょう?
何曲も作った中から「これなら自信を持ってメンバーに聴かせられる」っていうものだけを持ってくると思うんですよ。
そんな自信作でも全てが名曲に変わるかって言うと全然そうじゃなくて。
曲ってのは最後まで仕上がらないと名曲か駄曲かなんて分かりません。
アレンジで曲のイメージは大きく変わりますから。
原曲の段階ですごくいいと思っていてもアレンジで「思ったほどではないな」っていうのはザラだと思いますよ。
逆も然りで、皆で練り上げてみたら傑作になったということもあるでしょう。
だから、原曲の段階で「これは名曲、これはあんまり良くない」とか区別はしていないと思うんですがね。
これまたそもそも論なんですが、いい曲をソロに回したいんであれば、初めからLUNA SEAを再結成なんてしないでしょう(笑)。
それにそんな浅はかな人たちであれば、日本を代表するロックバンドになんてならないと思うのですが。
『LUV』アルバムレビュー
本作は大人の余裕で作った『今の彼らの作品』を聴けます。
出てきたまんまを飾っていないというか。
若い時には若い時の、歳を重ねてからは歳を重ねてからの良さがあるわけです。
いつでもヒリヒリするような緊張感で、ぶつかり合っていればいいという風に、私は思いません。
なので、過去の作品を引き合いに出して、本作をあげつらうのはいかがなものかなと。
あれはあの時の良さ、今は今の良さを聴きたい。
今回はまっさらからアイデアを出している分、ものすごく根源的なルーツが音楽に現れたんじゃないですかね。
そんな匂いがします。
まだ彼らがロッカーになる以前のエッセンスというか。
小学校の時とかに、テレビから流れてくる音楽の影響とかがあるんじゃないかな?
例えば我々の世代でいうと、ロック少年になる前に『スラムダンク』の主題歌で流れる「君が好きだと叫びたい」とか大好きだった過去があるわけですよ。
多分、日本人って皆、まっさらから鼻歌歌って作曲すると、その辺の『歌謡曲』の影響って絶対出てくるんだと思いますよ。
80~90年代の日本のお茶の間ロック(J-ROCK)のテイスト、曲によってはモロにJ-popなナンバーもありおもしろいですよ。
かつては「小っ恥ずかしい」と思っていたものを、堂々とやっているようにも感じます。
なので、若干「くさっ」ってなる時があるかもですね。
それを楽しめるか、ムキになるのかはあなた次第です。
#1『Hold You Down』
明るいな~。
なんかもう光り輝いてます、頭の中のイメージが(笑)。
まあ、サビのRYUICHIはいかにも古き良き『河村隆一』スタイルを思い出させますので、ちょっと苦手な人はいるかもだけど。
私はこの曲大好きです。
#2『Brand New Days』
ボーカルメロディが一番出来が良いと感じました。
なんかツインギターがユニゾンしてますけど、再結成後のLUNA SEAには間違いなくメタル要素があります。
これ最近自伝で読んだんですけど、SUGIZOはXに加入したことで
「そういえば俺高校の頃はメタルばっかやってたじゃん!大好きだったじゃん!しかも高校の頃は真矢も一緒にやってたじゃん!」
って20年ぶりに思い出したらしいのですが、その影響がどうも前作あたりから出始めてます。
この終わり方とか以前のLUNA SEAじゃ絶対ないよね~。
こういうところが自然体だと感じるのですが、人によっては「手を抜いている」と感じるのかも。
#3『誓い文』
出ました、本作における度の過ぎたポップさを象徴する曲。
まあ、これなんて『SHINE』のタイトルナンバーで免疫ができているというか、今更これに文句言っても…って気はしますね。
この曲とかあんまり作り込んでない印象ですよね。
LUNA SEAってバンドはあの『作り込み加減』が”らしさ”になっていたんだと、つくづく感じられる曲です。
それをしないでボンって出すってことは、要は”らしさ”の範囲から出ていこうとする明確な意志なのかな?
自信というか強さというか、「かっこいいと感じるもの」の変化というか。
バッキバキに化粧しないと人前に出れなかった人が、すっぴんで人前に出るみたいな(笑)。
#4『piece of a broken heart』
ねっとりしたムードのLUNA SEAっぽい雰囲気を放っていますが、ダークにまではなりませんね。
歌謡曲の範囲内の粘質感ですね。
ギターソロからはSUGIZOワールドで、ロングサステインたっぷりのギターソロから、ワウペダル、そこに耽美なバイオリンが重なります。
「河村隆一with LUNA SEA」とか言っている人いるけど、こういう曲とかちゃんと聴いてから言ってんのかな~?
#5『The LUV』
本作中、一番攻撃的なロックナンバーですかね。
『STYLE』の中に収録されてそうな雰囲気持ってます。
途中のバラード部分って、音楽の授業中に習ったような雰囲気ですけど、なんの曲かが出て来ない(笑)
もどかしいから誰か教えて!
#6『Miss Moonlight』
この曲なんかが先程言った「テレビから流れていた80~90年代J-ROCK」の筆頭のような曲ですね。
っていうか「これもスラムダンクで流れてなかった?」って錯覚しそうです(笑)。
よくぞ思い切ってこの曲入れたな~。
これにOKを出しているSUGIZOさんの顔が想像できなさすぎて笑えるんですが。
わりと隙間の多さを感じるサウンドで、『EDEN』から持ってきた曲かのようにも感じました。
#7『闇火』
アルペジオの名手、INORANのしんみりと味わい深いギターがいいな~。
SUGIZOのバイオリンもいい仕事してます。
かなり人気のある曲だと思うのですが、私はまあまあです。
この女性コーラス(多分違うんだけど)みたいなのを受け付けるかどうかが明暗を分けると思います。
#8『Ride the Beat, Ride the Dream』
本作で一番「要らない」と言われた曲です。
え?そんなに悪いかな?
っていうか普通に気持ちいいし、LUNA SEAがインストを入れるこの新鮮さ。
一つ思ったのが、どうせインストするんなら、ライブの時のJと真矢のバトルを演ってほしかった。
#9『Thousand Years』
本作でもっともLUNA SEAを聴いている感じがしない曲(笑)。
冒頭の「うぉ~お~」からして「誰の曲?」ってなります。
「LUNA SEAはこうだ」っていう先入観がある人には刺激が強すぎます。
全体的にリバーブ強めで、幻想的なサウンド。
SUGIZOの『MOON』でのプレイのような、ディレイの効いたギターがキラキラと曲を彩ります。
スペーシーってやつですね。
宇宙的キラキラ感。
世界観が美しすぎる。
この曲にしてもボーカルのメロディが素晴らしい。
#10『Limit』
批判的意見の多い本作の中でもかなり人気が高い曲です。
まあ、LUNA SEAっぽいですわな。
それだけに『狙った感』があり、ちょっと作為的な匂いを感じてしまうかな。
最初は「お!」って思ったけど、ずーっと聴いているとアルバムの中でも、あんまり好きな方には入りませんでした。
#11『So Sad』
良いバラードだな~。
本作の中では一番響きましたね。
変化球ナッシングです。
凝っていない作風というのもいいもんですね。
変化球どころか、ボールも一切投げない。
1球目からど真ん中ストライクのみを全力で投げ続けます。
ゆったりLUNASEA、癒し系LUNASEAとでも評しましょうか。
この真矢のゴーストノート(ドラムスネアで「ザザっ」って言わせるやつね)が非常にいい味を出してます。
こういう聞かせ方って、“空間“がないと意味がないんです。
ギターやベースが「俺が俺が!」と、空間を埋め尽くしてしまうと、ドラマーとしてはこういう表現ができません。
なので、こういうプレイがちゃんと聞こえてくること自体に、大人の余裕とか貫禄が見え隠れするんですよね。
SUGIZOもギターソロ以外ではクリーントーンで控えめだし。
色気のあるロックとはこのことです。
#12『BLACK AND BLUE』
「あれ~?まだ続けるの?」
「『SO SAD』がラスト曲で良かったんじゃない?」
って思うんですけど、やっぱりこれはこれでラストにぴったりかな?
序盤のSUGIZOのカッティングが耳に心地いいな~。
この人は実は、プリンスなんかのブラックミュージック(ファンク・ソウル)の影響を公言しているのですが、ようやくLUNA SEAでもその側面を見せ始めましたよね。
カッティングはこれまでもありましたけど、これはブラックミュージックのカッティングですよね。
それはドラムもファンキーだからでしょう。
真矢も16ビートの跳ねたリズムは新鮮です。
いや、ここまでファンク演るんだったら、いっそのことJのスラップベースも聴きたかったな~。
「なんでこの曲がラスト曲なのかな?」
と思っていると、ギターソロあたりからテンションがアゲアゲになってきて、最後の「ラ~ララ~」では最高のクライマックスを見せます。
これはライブ映えするな~。
お見事!
『LUV』に感じる“幸福感“の正体
はい、というわけで本日は「LUV」の解説をしてまいりました。
「はっきり言って名盤とは思わないし、傑作だとも思わないけど、たまにはこんなLUNA SEAがあってもいいのでは?」
ぐらいに最初は思っていたのですが、ここ1年を振り返ってみると、再結成後の3枚の中で一番聞いているアルバムになってしまいました。
これ流すと、とりあえず落ち着く(笑)。
何でかって考えてみると、やっぱり『歌謡曲的ボーカルメロディ』にあると思います。
ロックだとかロックじゃないとか、そんなこと関係なく、本作は日本人の琴線に触れてくるメロディが溢れてますね。
非常にシンプルな理由。
“歌“がとにかくいいんです。
ロックとか、アンダーグラウンドさとかに、ちょっと敷居の高さを感じるっていう人なんかには、まずこのアルバムから入ってもらったら、LUNASEAの入り口として良いんじゃないかな?
逆にがっつり『スリリングでかっこいい楽曲』を期待する人であれば、『MOTHER』『STYLE』あたりで無難に入れば良いわけで。
私はLUNASEAのアルバム聞いている中で、本作を聴いている時が一番『幸福感』を感じます。
「あああ!いまLUNASEAを聴いているこの瞬間が…俺は幸せだ~っ!」
と叫びたくなります(笑)。
安らぐし、楽しくなるし、嬉しくなるし。
そんなLUNASEAの『陽』を象徴するアルバムですね。
プレイヤーとしての楽器隊の各メンバーに対する満足感は低いアルバムですが。
「ギターソロでは、もうちょっと何かやってほしい」
「Jのベースの個性が、あんまり感じられないんだけど」
そう思う人の気持は分かります。
けど、メンバー皆がソロ活動で、一人のプレイヤーとしての視点ではなく、コンポーザー、プロデューサー的な視点を持つようになってしまったからこそ、こういうアプローチになってきている、とも言えるんですよね。
「この曲はどういう風にもっていけば一番引き立つのか?」
っていうものに対して、メンバー間に『意見の不一致』がないように感じました。
あるメンバーは
「ここはもう少し加えたいな」
と意見し、あるメンバーは
「いや、それだと原曲のイメージを壊すから」
と意見する。
これがおそらく終幕前のLUNASEA。
これって各パートのエゴからくるものでもあるわけです。
そのぶつかり合いが面白いっちゃあ面白いとも言えるのですが。
今はそんな感じじゃなくて、皆が原曲者のイメージ(ゴール地点)をすぐに汲み取って、最短距離でそこに行けていると言えばいいでしょうか?
SUGIZOが本作に対して
「なんとなく進めて、気がついたら出来上がっていた」
と話していたのは、つまりそういうことだと思うんですよね。
めっちゃ簡単に言うと、要はメンバーが『ツーカー』の仲になったということでしょう(笑)。
SUGIZOのこの発言が
「なんか適当」
「やる気ない」
と受け取られたんだと思うのですが、実情は違うと思いますよ。
エゴは自分のソロで出そうと思えばいつでも出せる。
「それぞれソロで上手くいってた5人が、わざわざ集まってまで喧嘩してもしょうがねぇだろ」
っていう気持ちは絶対あると思うんですよね。
そんな事を考えていると、やっぱり初期のテイストは後期では絶対出せないし、後期のテイストは初期には出せないんですよね~。
いろんな時期のLUNASEAが、それぞれの時期の味わいがあって面白いってことですよ。