『LUNACY』LUNA SEA終幕前の最後のアルバムをレビュー

どうもSimackyです。

本日は2000年リリースでLUNASEAの7枚目のオリジナルアルバムである『LUNACY』を解説していきたいと思います。

「もはやLUNA SEAは終わった」?とんでもないもの実は作ってました…

さて、本作は2000年に一度解散(終幕)するLUNA SEAにとってのラストアルバムです。

前作『SHINE』はアルバムセールスこそLUNA SEA史上最大の90万枚を売り上げ、LUNA SEA人気のピークを象徴しているかのようにも見えるのですが、実はその内部では崩壊が進んでいたのでした。

ボーカルRYUICHIのソロ歌手としての爆発的なヒットと、そのあまりにも違いすぎる河村隆一テイストがLUNA SEAに入り込むことによる既存ファンの失望。

限界まで来ていたメンバー間の確執を解消するための1年間のソロ活動だったにも関わらず、『SHINE』で再集結しても溝を埋めることができなかった。

時代はヴィジュアル系の新たな旗手としてGLAYやL’Arc~en~Cielを選び、ライバルたちがダブルミリオンセラー超え(200万枚)を連発する中、2000年7月にリリースされた本作のセールスはなんと28万枚

『SHINE』の1/3以下です。

そして2000年11月に最後のシングル『LOVE SONG』をリリースし、『終幕』を発表します。

私がCDショップのかご売り300円で本作を手にした時が、完全にLUNA SEA時代の終わりを感じた瞬間でした。

しかし、セールス的に見ればそうであったとしても、本作に込められた音楽は本物です。

これは後に分かってくることなのですが、実は解散に関しては1年ほどメンバー間で打ち合わせを続けていたとのこと。

なので本作のセールスが不調だったから解散したわけではありません。

これはメンバー全員が共通の目標を持てなくなってしまったことによる解散です。

『終幕』が発表されるのは2000年の11月なので、1999年の11月の段階で解散の話は出ていたことになります。

そして本作はLUNA SEAが初めて期間無制限で制作に臨んだ作品で、1999年7月から1年間みっちり作り込まれている(リリースは2000年7月)。

私が何を言いたいか分かりますか?

これはつまり、本作の制作段階の半ばにおいて『解散』の話は出ていたことを意味します。

言い換えるならば、本作はメンバー全員が『最後に最高のアルバムを作る』という最後の共通目標を持った上で、並々ならぬ覚悟で制作に挑んでいる、ということなんですよ。

しかも過去最高の制作期間である1年間をかけて。

それは一体どんな作品になったのでしょうか?

それはレビューを読めばわかります。

70万枚売った『MOTHER』『STYLE』、90万枚売った『SHINE』に比べてセールスが少ないので、あまり知られていないのですが、実はレビューを見ると

大絶賛されてます。

前作『SHINE』で失望した多くのファンがいました。

「もうLUNA SEAは終わった」

と去っていきました。

しかしその一方で、『それでも最後までLUNA SEAに付いていったファン達』が見届けているんです。

LUNA SEAの美しすぎる最後の散りざまを。

最後の最後にすさまじい置き土産を残していることを証言しているんですよ、各種レビューで。

『SHINE』でLUNA SEAから離れてしまったそこのあなた。

そんなことが起きてたなんて知ってました?

私も前作『SHINE』のRYUICHIの声でLUNA SEAを見限った一人です。

そして300円のかご売りで買った本作は1曲目を聴くやいなや

「おいおい、やっぱRYUICHIは前作から何も反省してないぞ」

と早々に放置し、『Tonight』『Gravity』をたまに聞く程度でした。

数年後にカバーバンドで耳コピすることになって、ようやく前作と本作を先入観なしで聞くことができ、その素晴らしさに気が付きました。

彼らは終幕の最後まで、何も恥じることのない堂々としたロックバンドを貫いていたことに気が付けたんですね。

なので、罪滅ぼしとして前回は『SHINE』の”憑き物落とし”をしたというわけです。

さあ、今回は『LUNACY』の知られざる魅力に迫っていきましょう。

実はRYUICHIが”河村隆一”ではなくなっている

前作『SHINE』では、河村隆一ソロの歌唱法、例の甘ったるいラブソングを歌うノリですね。

その違和感が強烈過ぎたことと、普段のタレント然としてテレビに出演しまくるRYUICHIへの偏見(嫌悪感)も手伝って、かなりの不評を買いました。

しかし、本作はそこに対して若干意識した部分があるのか?

実は曲によって色んな表情を見せてるんですよ。

でも残念ながらそれが見えにくい。

それを感じ取る前の段階で挫折する人が多いと思います。

なぜか?

それは、本作で特に1曲目『BE AWAKE』でその河村隆一スタイルがモロに濃厚に出ちゃってるからなんです。

これはこの歌詞の内容が『明るく少年のように歌う方が合っているから』というRYUICHIの判断でそうなったらしいのですが、これがいけなかった。

アルバムの1曲目ってそのアルバムの印象をかなり左右するので、

「まんま前作と一緒やないかい!」

っていう辟易(へきえき)した先入観で曲を聞き進めていっても、なかなか『曲が入ってこない』んですよ。

多分、前作がトラウマになっている人からすると「聴き込もう」っていう意志をのっけからへし折られます。

私が売り飛ばさずに手元に残していたのは、300円のかご売りで買ったからに他ならず、そもそも300円でなかったら買ってさえいなかったでしょう。

それほど、当時『SHINE』にウケた悪印象は拭いがたく、『BE AWAKE』で受けたダメ押し感はハンパなかったです。

こういう事言うとLUNA SEAに失礼なんですが、かご売りバンザイですよ、ホント。

お陰で数年後に本作と向き合い直すきっかけになったわけですから。

実は先入観さえなくして冷静に聴けば、#2『Sweetest Coma Again 』の時点でもう前作と全然違うし、#3『gravity』に至っては前作の面影なんて1ミリもありません。

さらに#10『TONIGHT』に至っては男らしく攻撃的なシャウトまでやってます。

本作におけるRYUICHIのヴォーカルスタイルは、どの楽曲にも最適な表現手段を模索しているんですよ。

自分の心地いいスタイルだけで歌っていないというか、自分に酔っていないというか。

だから「あの頃(初期)のヴォーカルスタイルに戻してくれ」とはもはや思いません。

それどころか「これでないと駄目だ」とさえ思える説得力を放っています。

もう、『なよなよして気持ち悪い自己陶酔の河村隆一』はいません(まあ今となっては『SHINE』の歌い方も好きなのですが)。

『LUNACY』楽曲紹介

本作は聞けば聞くほど練りに練られていることが分かります。

凄くナチュラルなバンド感を感じさせながら、一つ一つの音が加工されている。

密室感と有機的なビートが融合している見事な作品なんですよ。

ヴォーカルスタイルも様々に違えば、録った声の加工のされ方も違う。

ドラムの音も色んな音を使ってるし、おそらく録り方も様々な録音方法を試していますね。

「どんなプレイをしようか?どんなメロディを奏でようか?」

っていうところに集中するのは、ミュージシャンとして当たり前のことだとは思うのですが、本作の場合は録った音に対してさえも

「どういうふうに響かせるか?どういう風に演出するか?」

というエンジニア作業的な部分にも、かなりの時間をかけている印象があります。

とにかく情報量がとんでもないことになっているので、本作のクオリティの高さは聴き込んまないとよく分からないでしょう。

以前レビューしたhideの『PSYENCE』にも通じるもので、一見するとシンプルに聴こえるんですけど、実は細部にわたって考え抜かれている、という作風ですね。

そして何と言っても今回はメロディが光ってます。

ここまで全曲もれなく秀逸なメロディが尽きないというのは、過去作品でも『MOTHER』『STYLE』に匹敵するか、それ以上のレベルではないでしょうか?

本人たちも「『SHINE』はもっと作り上げて出すべきだった」と言っているように、練り込み不足を感じる部分はあったというか。

LUNA SEAのアルバムに収録するレベルまで達していない数曲があるように私も感じました(『SHINE』が好きになった後でさえそう感じました)。

しかし、今回はそういった『LUNASEAクオリティ』に達していない楽曲は容赦なくボツにしているんじゃないかな?

いや、それどころか普通は収録されてしかるべきクオリティの楽曲までもが、シングルのみ(『LOVE SONG』)とか、カップリングのみとかになってるんですよ。

シングルのカップリング曲だけを収録したアルバanother side of SINGLES II』では、本作に収録されなかった楽曲の異様なまでのクオリティの片鱗が垣間見えます。

これは隠れ名盤なのでそのうち解説したいと思っているのですが、そのうちの1曲、「INTO THE SUN」のライブ映像を見た人は圧倒されたはず。

なんでこれほどの名曲が収録されなかったの!?

どんだけの激戦区!?

さらに最後のアルバムとして作られているだけあり、1~3作目のテイストさえも持ち合わせた集大成としての側面も持ち、ここ長らくなかった「久々のLUNA SEA節」を感じることができます。

「ああ!『IMAGE』の雰囲気!」

みたいな箇所もあります。

しかしそうは言っても、これまでになかった『NEW LUNA SEA』的な側面も持つアルバムでもあり、一筋縄では生きませんよ。

この『NEW LUNA SEA』の要素はは13年ぶりの次作『A WILL』にも繋がってきますのでね。

曲ごとにカラーが見事に違うので、一種のベストアルバムのような様相を呈してます。

それでは全曲レビュー行ってみましょう!

#1『Be Awake

まあ、1曲目に持ってくるしかない曲なのですが、この曲のお陰で本作を食わず嫌いした人は私だけではないはず。

前作の『SHINE』(曲)で拒否反応が出た人はやはりそうなるでしょう。

はっきり言って#2をここに持ってきてたらもっと結果は変わっていたようにも感じるですが(笑)。

けどね、今ではこの曲大好きなんですよ、悔しいことに。

そして好きになるとこのアルバムのオープニングはこの曲しかありえません。

これは『SHINE』同様に名曲ですよ。

#2『Sweetest Coma Again feat. DJ KRUSH

いかにもJが作ったって感じ。

ワイルドですね~。

悪ガキ感がいいですね~。

これって『007』のタイアップ曲らしいんですけど、映画をイメージして作ったのでしょうか?

スパイ映画に見事に合いますね。

しかも「おお!RYUICHIが帰ってきた!」とも思える曲です。

前作『SHINE』はグルーブが弱かったとSUGIZOが語っていましたが、本作にその心配が無用であることはこの曲が証明してます。

こんなかっこいいベースの音はなかなか聴けませんよ。

#3『gravity

LUNA SEAを嫌って遠ざかっていた時期に、たまたまドラマ版『アナザヘブン』をビデオで借りて見ていた時に、主題歌として聴いて衝撃を受けた曲。

「え?LUNA SEAってまだこんなかっこいい曲作ってたの?」

となり、速攻でCDショップに行って300円かご売で本作を入手することになったというわけなんです。

それほど強力なナンバー。

まあ、かといってこの曲は好きでも、アルバム全体としては、イマイチ良さがわからなかったんですよ、当時は。

まだ自分自身、憑き物が落ちてなかったんでしょうね。

この曲だけは偏見とか先入観を飛び越えて訴えかけてくるものがあったということでしょう。

LUNA SEAの最高の楽曲という人も多い名曲です。

INORANって名曲残すよね~。

#4『KISS feat. DJ KRUSH

「こういうのって真矢みずからが発案するんだろうか?」

っていうくらい冒頭のドラムの録り方が面白いので、おそらくこういうのがDJKRUSHが参加している効果なのかな?。

ベースがまためっちゃ気持ちいいグルーブを出してるんですけど、そこにのっかるギターのカッティングがファンキーなんですよね。

これまでもLUNASEAにカッティングはあったんですけど、ファンキーだと感じたのは初ですね。

ん?ファンキーで?タイトルが『KISS』で?作曲がSUGIZO?

これってSUGIZOのプリンス愛が形になったのかな?

⇩プリンス『Kiss』

#5『4:00AM

これまたLUNA SEAとしては新境地の楽曲ですよ。

ピアノで始まります。

LUNASEAでピアノって考えてみたらほぼなかったような。

ドラムの音がすごい加工されていて、ゲームのビートマニアっぽいというか、DJが使う打ち込みリズムっぽくてサイバーでかっこいい。

で、RYUICHIのボーカルはすごい肩の力が抜けた感じなんですよね。

本来は組み合わさらないようなものが組み合わされて未知の音楽が生まれています。

#6『VIRGIN MARY

中盤のハイライトで9分を超える大作。

ロングサステインのギターとバイオリン。

まるで『IMAGE』の頃のような耽美的な世界観をまとっています。

久々に教祖様のようなRYUICHIの幻想的なヴォーカル。

ほんとバラッバラだよね、このアルバム(笑)。

やろうとしていることはもはやプログレに近いんじゃないかな?

途中、ディープフォレストみたいなワールドミュージック的な要素も入ってて、彼らの貪欲なまでの音楽探究心が垣間見えます。

この曲は聴き応えありますよ!

#7『white out

今度は打って変わって自然体で等身大。

飾らないLUNASEAだな~。

こういう曲が違和感なく収録されるってところが、実は前作『SHINE』がもたらした最大の功績だったりするのかも。

『SHINE』の前後辺りからヴィジュアル系とはもはや呼べない装いになってましたしね。

特に真矢(笑)。

再結成後のLUNASEAではこの方向性がキーになってきます。

これ面白いのが、ギターソロをアコギで録ってますよね。

ネックをこする音とか聴こえてきて生々しいのがグッド。

「LUNASEAのアンプラグドアルバムがあっても面白いんじゃないか?」

と期待させてくれる曲です。

#8『a Vision

冒頭のヒップホップ感ではかなり先行き不安になりますが、そこから切り裂くようなリフが快感指数マックスです。

LUNA SEAの『男』を感じさるガッツあるナンバー。

『STYLE』以来に力強いグルーブ感が戻ってきてます。

やっぱJと真矢のリズム隊コンビは最高ですね!

#9『FEEL

最初はちょっと『Gravity』っぽいんですが、7弦ギターを使ったヘヴィリフがガッツリ入ってきます。

甲高いスネアの音とヘヴィな音の組み合わせはまるでKORNなどのニューメタルみたいにも感じます。

しかしここまでうねるベースが引っ張るのは『STYLE』以来で興奮するな~。

こういうサウンドで歌モノが成立するのがLUNASEAの魅力。

#10『TONIGHT

もうね、何も考えないで心を打ち震わせましょう。

理屈じゃないですよ。

あれだけ嫌悪したRYUICHIのボーカルに、また心をわし掴みにされる日が来るとは…。

RYUICHI最後の魂の叫びを心して聴け!(最後じゃないけど)

#11『Crazy About You

終幕の有終の美を飾るに相応しすぎる楽曲です。

シングルカットされた「LOVE SONG」はこの曲とかぶるという理由で収録されませんでした。

あちらも名曲ですが、やっぱりこっちがちょい上いくかな?

これ当時ちゃんと聞いてた人たちは泣いたでしょう。

私も含め『SHINE』で離れたほとんどの人へ、こんな名曲で終わってる事実を伝えたいです。

本作を聞き返してその素晴らしさに気がついた時に、最後のこの曲にちゃんと向き合った時に

「ごめんなさい」

って心の中で謝ってしまいました。

ミュージシャンはいつだって真剣勝負で戦ってたんだな、と。

もっともっと作品に真剣に向き合わなきゃな、と。

あなたも心当たりありませんか?そんな作品。

今では

「こんな最高の曲を残しれくれてありがとう」

と言いたいです。


はい、というわけで本日は「LUNACY」の解説をしてまいりました。

懺悔の気持ちが強すぎて、しまいには謝っちゃいました(笑)。

実はLUNASEAで屈指の人気アルバムです!

これは聴くべし。

で、本作が好きになったらついでに『SHINE』も聞き返してみてください。

おそらく『SHINE』の憑き物を落とすにはその流れがベストかと思いますよ。

 

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