『エンドゲーム』メガデス2000年代における頂点の作品!!
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
本日はメガデス2009年リリース12作目のオリジナルアルバムである『エンドゲーム』を語っていきたいと思います。
メガデスが3度目の黄金期に入る
こんな事を言うと異論・反対もあるかもしれませんが、私はメガデスには3回の黄金期があると思っています。
1980年代にインテレクチュアルスラッシュメタルという音楽性でカリスマ的人気を獲得したのが1回目。
作品でいうと2作目『ピース・セルズ~』3作目『ソー・ファー・ソー・グッド~』4作目『ラスト・イン・ピース』の3作。
1990年代はグッとスピードを落としメロディアスに仕上げた作品で、これまた1980年代よりももっと広い層にまで認知される人気バンドにまで上り詰めたのが2回目。
作品でいうと5作目『カウントダウン~』6作目『ユースアネイジア』7作目『クリプティック・ライティングス』の3作(個人的には8作目『リスク』も含むのですが)。
そして2000年代の頭は黄金メンバーの崩壊、迷走した作品のリリース、解散、メンバー間での訴訟沙汰、離れていくファン…と一度はドン底まで落ち込み、
「メガデスはもう終わった…」
とまで言われていたのですが、2004年に早くも復活した10作目『システム・ハズ・フェイルド』から尻上がりに調子を上げてきて、2000年代の最後に最高の作品をリリースしました。
本作からグラミー賞を獲る『ディストピア』までの4作の出来は素晴らしく、3回目の黄金期がやってきたと言っても大げさではないでしょう。
作品でいうと12作目である本作、13作目『13』14作目『スーパーコライダー』15作目『ディストピア』の4作。
2000年代のメガデスを見ていると、まるでかつてのエアロスミスの復活劇のようだと思うのは私だけでしょうか?
しかし、よくよく考えてみると、エアロスミスのように低迷していた期間が長かったかというと、意外にそうでもないんですよ。
エアロスミスは1979年のジョー・ペリー脱退から1987年『パーマネント・バケーション』での復活までが結構長い期間苦しんでましたね。
メガデスの場合、今回は分けて語ってますが、そもそも1回目の黄金期から2回目の黄金期ってそのまま繋がってますし、2000年代の頭に一度解散しているとはいえ、その期間も2年程度。
2002年解散の前後である1999年『リスク』(16位)2001年『ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー』(16位)だって2004年の「システム・ハズ・フェイルド」(18位)だってチャート20位以内には全部入ってますので、メガデスってずーっとシーンの一線級に居続けているバンドということが分かります。
これってメタルバンドというより、ロックバンドというくくりの中で見てもかなり売れている方ですよ?
スラッシュメタルビッグ4というくくりの中ではセールス的には常にメタリカに次ぐNo.2に居続けています。
残るアンスラックス、スレイヤーはセールス規模では1段、いや2~3段くらい落ちます。
メタリカが隣で化け物級のセールスを叩き出すからそう思われていないけど、メガデスは常に『売れているバンド』であり続けているんですよ。
こうして解説ブログを書いていても、月間ページビューの多さ、コメントの多さは驚くほどで、彼らが日本でどれだけ多くのコアファンを持っているのかが分かります。
『エンドゲーム』が支持される理由
この前の2作、『システム・ハズ・フェイルド』と『ユナイテッド・アボニネーションズ』もかなりの力作で、一般的には良作だと評価されるべき作品だし、決して軽く扱われる水準の出来ではないんです。
ただ、本作からクオリティが一段上がっているために、影が薄くなってしまうほどなんです。
その違いは何か?
これは作品ごとに多くのレビューを読んでいると気がつくのですが、メガデス作品で評価が高くなる作品というのは
捨て曲がない、最後まで緊張感が続く作品が評価が高い
という傾向が見えてきます。
考えてみると、これは別にメガデスに限った話ではないのですが(笑)。
ただ、メガデス作品のレビューを読んでいるとコメントが見事にそうなっているんだもん。
キラーチューンだとかとびきりの名曲が入っているとかいうことではないようですね。
それでは本作を緊張感の続く作品たらしめている要素は何でしょう?
それは『スピード』ですね。
かつて自分たちの作品の中にあったスリリングな疾走感の要素を、一つ一つ丁寧に思い出しながら蘇らせている努力を感じます。
これは一つ間違えば、
「結局テメェら速い曲さえやっときゃ満足なんだろ?」
という傲慢な姿勢にも取られるわけですが、そうでないことは各楽曲のクオリティが証明しているというか。
安っぽいセルフカバー感は感じられないし、それどころかインテレクチュアルスラッシュメタル全開だった頃のゾクゾクする感じが蘇っていることは驚きます。
つまり『まがい物』ではなく『本物』なんですよ。
レビューでも
「こんなものまがい物だ。昔のメガデスを表面上パクってるだけだ」
なんて誰も言っていないことがすごい。
前2作でもそれは少しづつ現れてきてはいたのですが、正直
「ああ~、復活できてもやっぱここまでが限界かな。もう若くないしね」
っていう諦らめやら一抹の寂しさを感じる部分も私の中にあったことを白状しましょう。
もちろんそれ以外の魅力もあるからそこだけに固執して過去作品と比較したりはしませんでしたが。
それが本作では
「え!?まさか本気で往年の感覚を取り戻すつもり?」
みたいな。
まるで一度は引退した伝説のボクサーが、40歳代でカムバックするために20代の頃のフィジカルを本気で取り戻そうとしているかのごとしです(笑)。
というより、ほぼ戻ってきているので、信じられない現象を目にしているような気分になるんですよ。
「一度は終わったと思われたナリタブライアンが阪神大賞典でマヤノトップガンを差し切った伝説のレース」
を思い起こさせます。
って音楽に競馬の例えをもってきちゃいかんだろ、さすがに(笑)。
これだけの『若い感覚』を取り戻せている要因として、ギターのクリス・ブロデリックの若さ(大佐より9つも若い)もありはすると思いますが、楽曲のメインコンポーザー(作曲者)は大佐なので、やはり大佐自身がいつまでも若い感覚を維持していることが凄いんだと思います。
実はベースのジェイムズ・ロメンゾも大したもので、この人1959年生まれだからマイケル・ジャクソンとかプリンスの世代の人ですからね?
バンド最年長で、クリス・ブロデリックとの年齢差は11歳差(笑)。
彼らがこうした姿を見せてくれることは、後進のミュージシャンたちにとってもそれはそれは励みになることだと思いますよ。
メガデスこそ「いくつになってもスラッシュメタルはできる」と証明したバンドと言えるでしょう。
『エンドゲーム』楽曲レビュー
#1『ダイアレティック・カオス』
このオープニングは興奮しましたね。
この手のインストスタートは3作目『ソー・ファー・ソー・グッド~』の「イントゥ・ザ・ラングス・オブ・ヘル」以来になるのかな?
あの曲も大好きだったけど、これは負けず劣らずの出来ですよ。
というよりギターバトルという点ではこっちが凄まじいです。
単にデイブとクリスが戦っているからということではなく、本当にメロディが素晴らしい。
「メガデスファンをやっていて良かった」
と思わせるほどの名曲だと思うんですけどね。
#2『ディス・デイ・ウィ・ファイト!』
怒涛のカオスリフで襲いかかってきます。
この凶暴さはやばい。
はっきり言って「大佐、舐めててごめんね」と謝りたくなるほどやられましたね。
リフに殺気がある。
これこれ。
ボーカルはメロディアスでもなんでもない吐き捨てるようなスタイルなんだけど、「これがメガデス!」って思える『らしさ』が感じられます。
ここまでやられるとなんかもう、「ありがとう」としか言いようがですね(笑)。
#3『44ミニッツ 』
前の2曲でギターがあまりにも目立っていたので、ようやくベースが聞こえてくるんですが(笑)、こんなすっげぇ音出してたのか。
どうりでサウンドに厚みがあると思った。
サビの裏で鳴っているリードギターの雰囲気がナイス。
最後のギターソロのバカっ速さときたら(笑)。
#4『1,320』
出だしのイントロの響きが1作目『キリング・イズ・マイ・ビジネス~』を思い出させます。
狙ってるんだろうな。
2:40からこの曲が本性出します。
ギターユニゾンをこれでもかと盛り込んで激しいギターバトル。
今回はこれ何回もやりますよね(笑)。
クリスも凄いけど、ボーカリストでありながらこれだけ渡り合える大佐は反則です。
やっぱりデイブ・ムステインは多彩と言えどもその本質はギタリストなんだな~。
しかしこのギターバトル、F1のダイジェストが流れている時に流れてそう(笑)。
#5『バイト・ザ・ハンド』
リフがキャッチーでスピード感がグッドです。
なぜか猛烈にメガデスを感じる曲。
ミディアムテンポみたくも感じますが、相当に速いですよ。
だってこれ絶対ダウンで弾き倒すヤツでしょ(笑)?
なんかダイアモンドヘッドとかをカバーした時の雰囲気、つまりルーツとなる音楽っぽさが出てきているようにも感じる曲です。
最後は『ハンガー18』みたいな展開に聞こえなくもない(笑)。
#6『ボディーズ』
「ユースアネイジア」に入っていても違和感のないような、ヘヴィさとサビでの中性的な美しさを持っています。
後半から泣きのユニゾンが入ってきたかと思えば、突然疾走しだします。
かと思うとスパッと潔く終わるのが素晴らしい。
この曲のように3分半ほどで簡潔に曲を仕上げると聴き疲れしませんね。
アルバムトータルの印象を良くしているのはこの曲のような隠れた存在があるからだと思います。
#7『エンドゲーム』
「流石のタイトルナンバー!」と手を叩きたい曲です。
1曲の中でコロコロ展開が変わりこれでもかと色んなフレーズを詰め込んであるので、まるでおもちゃ箱みたいです。
ギターリフがスラッシーだし、このギターソロにしたってここ数作はなかったほどの名ソロですね。
けどこの曲の一番の肝はグルーブ感ですね。
ショーンのバスドラ3連がいい仕事してます。
かなり快感指数が高いので聴き込んでみてください。
この曲がこの位置でアルバムをピリッと締めるから良い緊張感が維持されるんだろうな~。
#8『ザ・ハーデスト・パート・オブ・レッティング・ゴー…』
久々に大大的にアコギ入れてきました。
ここの部分だけでも十分いい曲なので別に途中の展開はいらなかったかな(笑)。
こういうアコギナンバーの決定版を作ってくれないかな~。
#9『ヘッド・クラッシャー』
まるで前曲がイントロだったかのように突然の爆走を始めます。
本作においておそらくもっとも人気の高い曲でしょう。
冒頭のリードギターが昔のファミコンソフト「くにおくん」とかのサントラっぽい、なんて感じるのはファミコンサントラマニアの私くらいでしょうが(笑)。
しっかし今回はツーバス踏みまくるな~。
#10『ハウ・ザ・ストーリー・エンズ』
メガデスのリフってこんな重低音迫力あったっけ?
と改めて気が付かされるリフですね。
なんかもうニューメタル系の重ささえ感じますね。
誰でも思いつきそうなリフなのにえらいかっこいい(失礼!)。
大佐が本作で一番『歌っている』ナンバーだと思います。
疑いようもなくスピードで引っ張っている本作ですが、こういうミディアムテンポだけどサウンドでかっこいいと思わせるナンバーが、次作、次次作で開花していくんですよね。
#11『ザ・ライト・トゥ・ゴー・インセイン』
ラスト2曲は歌モノで聴かせてきますね。
う~む、しかしこれはまるで『ハリウッド』の時のマリリン・マンソンのようなボーカルですね(笑)。
コーラスの重ね方のせいでしょうね。
で、「本作は最後までスピード重視だ!」と言わんばかりに最後はやっぱりダウンで弾き倒します(笑)。
はい、本日は『エンドげエーム』を語ってきました。
すごいクオリティをもった本作ですが、1曲目から7曲目まではホントにノンストップですよ。
凄いテンションと怒涛のスピードとギターバトルが繰り広げられます。
こんな作品はメガデス作品にかつてありませんよ。
スピードを語られることの多い本作ですが、こうして聞き返してみると、本作はサウンドプロダクションが素晴らしいんですね。
ギター、ベース、バスドラの重低音部分は全てすばらしいんですが、特にギターはこれまでになく厚みがあるというか。
「ギャーン」と鳴らすだけでもめちゃめちゃかっこいい。
これ聴いてから『ラスト・イン・ピース』を聴くと「あれ?こんな音しょぼかったっけ?」ってなります(笑)。
リズムも限りなくジャストです。
これ誰も言わないけどショーン・グローヴァーになって顕著ですね。
メタリカのブラック・アルバムみたいにメトロノームと合わせてんのかな?ってくらいジャストで非常に気持ちいい。
『速さの魅力』が復活しているだけじゃなく、根本的に全てのレベルが前作よりも1段も2段も実は上がっているんだと気が付きました。
おそるべき第3期黄金時代の始まり始まり~。