『ディスタンス・オーバー・タイム』(ドリームシアター)『コンパクト』なアルバム 

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はドリームシアターが2019年にリリースした14作目のアルバム『Distance Over Time 』を語っていきたいと思います。

個人的には近年にない意外性が見えた作品で面白かったですね~。

マンネリとかセルフプロデュースの限界とか、レビューではさんざん言われておりますが、実際はどうなんでしょうか?

語りまくっていきますよ~!

ドリームシアターが最も”コンパクト”なアルバムを作った

ドリームシアターといえば、激烈なテクニックの応酬、複雑な展開、10分を超える長尺曲という大作主義。

これまでに40分を超える組曲だったり、純粋1トラック24分なんてのもありました。

アルバムによっては冒頭から16分なんて始まり方したりして、

「ああ、ドリームシアターのアルバムが始まった~」

って実感したものです。

しかしそういう大作主義を彼らは12作目から減らし始めました。

12作目『ドリームシアター』では冒頭イントロ#1が2分台、実質オープニングナンバーの#2から6分台。

ラスト曲が20分を超えている以外は平均タイムが6分台になっており、かなり短縮化の傾向が見えたアルバムでした。

続く13作目『アストニッシング』も、アルバムとしては2枚組34曲2時間10分あるので大作と呼ばれるのですが、実は個々の楽曲単位で見ると4分程度の小曲が並んでます。

その意味で言えば『ドリームシアター』から続く楽曲の短縮化の流れに収まっていると言えます。

さらに、本作は『ドリームシアター』のラストの長尺曲さえもなくし、平均タイムもやはり6分台。

平均が6分とはいえ、7分、8分、9分台の曲がそれぞれ1曲ずつあるので、そのあたりの3曲はかつての作風に比べそんなに違和感ないかもしれません。

今作の特徴はそれら3曲以外の6曲がかなりコンパクトに仕上がっており、特に#2,5,8にいたっては4分台!

今作の聴きどころは、このあたりのコンパクトな楽曲に、これまでのドリームシアターで見られなかったカラーが出ていることです。

楽曲が短くなるとどうなるのか?

「何も考えずに作ったらたまたま短くなった」

なんてことがあの理論派のドリームシアターで起こるはずもないわけで、これはきちっとした打ち合わせをした上で方向性を決めていることだと思うんですよね。

なので、『縮小化』という外枠が決まった上で楽曲制作に取り掛かると。

そうすると、制作上の『縛り』が出てくるんですね。

これまでの大作を作る時の方法論が使えなくなる。

これはかなり作曲に影響を与える要素だと思いますよ。

例えば、ギターソロとキーボードソロのバトルだとか、長いインストや大きな展開なんかの慣れた手法に頼れなくなる。

「おっと、それを使えないとなると、さて、どうしたもんかね」

と根本的な発想を変えて制作に臨む必要が出てくる。

彼らのことだからあえて『縛り』を設けることで発想の転換を行い、マンネリ化を打破したかったのかもしれません。

この『縛り』の効果は、12作目『ドリームシアター』でも13作目『アストニッシング』でも感じることができました。

1つ目の効果はラブリエがかなり目立ってくる。

長いインストのある楽曲だと

「これってライブ中にラブリエはんは何してらっしゃるんでっしゃろ?」

と心配になる楽曲が割と多く見受けられました(笑)。

楽曲を短くするためにインスト部分が短くなると、相対的にヴォーカル部分の構成比が上がるでしょ?

だから「ラブリエの歌の仕上がり」に多くのリスナーがフォーカスすることになり、レビューを読んでいても歌に関するコメントが多い。

『縛り』の2つ目の効果としては

「これドリームシアターが誰かの曲をカバーしてるんでしょ?」

っていう意外性ですね。

EP『チェンジ・オブ・シーズンズ』に入ってるカヴァー曲くらい異色な曲が出てくる。

短い曲の中で個性を出そうとすると、ギターリフやコーラス部分(サビ)に今までと違う個性的メロディを含ませる必要が出てくるので。

ドリームシアターっぽくない要素がすごくワクワクします。

特にシンプルなロックの持つグルーヴを感じますね。

普通に「ノリがいい」と表現できる楽曲ってドリームシアターではこれまでなかったように思います。

まあ、これはドリームシアターに何を求めているのかで賛否は分かれるでしょうが(笑)。

私は新鮮で面白いと感じましたね。

具体的に各曲ごとにレビューしていきましょうか。

Distance Over Time 』アルバム・レビュー

まず最初に言っておきたいのが、このアルバムはサウンドがめっちゃかっこいい

これまでで一番洗練されてます。

ドリームシアターって5~10作目までは一番脂がノッている時期と言われてて傑作揃いなんですが、実は音質があんまり良くない印象だったんですよ。

それがかなり劇的にパワーアップしたのが12作目『ドリームシアター』。

個人的にはドラムの音が若干ステレオタイプになったので気になったのですが、本作ではそれも改善されているし、ギターの音もエッジが効いていて快感指数が高いです。

前作『アストニッシング』で少し物足りなかった人は、今回のヘヴィサウンドにかなり満足できるんじゃないかな?

#1『Untethered Angel』6:14

静かなアルペジオが終わると、のっけから超弩級のヘヴィナンバーで襲いかかってきます。

マンジーニのドラムの音圧が凄い。

このヘヴィグルーブの気持ちよさは『アウェイク』の「LIE」みたいですね。

しかし、歌メロは非常にキャッチーで伸びやか。

3:30あたりからいかにもドリームシアターらしい展開を見せ始め、キーボードソロからギターとのユニゾンに入っていきます。

#2『Paralyzed』4:17

はい、早速出ましたよ、4分台の曲が。

初っ端から奥行きのある重低音の効いたドラムの音が最高。

ニューメタルばりのヘヴィナンバーで中毒性高いです。

間奏部分は40秒程度、ギターソロに至ってはたったの23秒で簡潔に切り上げてます!

新鮮すぎる(笑)。

#3『Fall into the Light』7:04

な、なんだ?

このNWOBHMみたいな始まり方は!?

かなり意表を突かれます。

3:30あたりからアコギの調べ、そこからのギターソロがメタリカ『マスター・オブ・パペッツ』ばりの哀愁ユニゾン。

本アルバムのハイライトですね。

何よりくどくない。

これ『トレイン・オブ・ソート』の時も感じたのですが、完全にものにしてますよね。

メロディといい音といい『あの頃のカーク』(笑)。

クライマックスの疾走感はいいですね。

しっかし、これだけ目まぐるしく展開してよく7分に収められたよな~。

#4『Barstool Warrior』6:43

本作で一番メロディアスでドラマティックに聞かせるナンバーですね。

ここまで存在感があまりなかったルーデスのキーボードが良い感じの世界観を描き出した後に、キャッチーなギターソロがいきなりきます。

歌い出しの前にまさかの。

これまた簡潔。

ドリームシアターの『希望に満ちた系』の楽曲は好きなんだよな~。

2回目のギターソロはさらに秀逸。

今作でのペトルーシは伸びやかなフレーズで哀愁たっぷり系が光ってますよ。

#5『Room 137』4:23

さあ、2回目の4分台。

今度はマリリン・マンソンが現れましたよ(笑)。

ノリが全然ドリーム・シアターっぽくなくて新鮮。

うーん、狙った方向は良かったと思うのですが、ちと消化しきれていない感が残りますね。

#6『S2N』6:21

レビュー読んでると今作で一番人気あるかな?

マイアングのスラップベースがかっこいいのですが、その後のギターリフもタム回しもいいですね~。

このスピード感もグッド。

スラップベースが引っ張っていくので、メタルのスピード感というよりファンクなんかの跳ねたスピード感に近く、これは非常にスリリング!

ラブリエのヴォーカルの雰囲気が全然違って楽しい。

この曲と、前の曲は何も知らないで聴いた人は、誰かのカヴァーと思うであろう楽曲です。

序盤のリフがかっこよすぎただけにそれ一本で集約してほしかった。

#7『At Wit’s End』9:20

表記上は本作で一番長いナンバーですが、8分すぎからほぼフェードアウトしていくので実質はそんなに長くないです。

2部構成になったメリハリの効いた楽曲で、これこそラストに配置すべきだったと思うのは私だけじゃないでしょう。

序盤はパンテラの『悩殺』に入ってそうなリフでアグレッシブに進行していきます。

4:00手前からルーデス、4:10あたりからペトルーシのカオスなソロを挟んで、後半に入っていきます。

ピアノで静かに立ち上がり、6:00からのギターソロは本作一の出来ではないでしょうか?

印象的なフレーズを繰り返しながらフェードアウトなんてパワーバラードにありがちだけど、考えてみたらドリーム・シアターで初かな?

プリンスの「パープル・レイン」みたいだと思いました。

#8『Out of Reach』4:04

ピアノバラードの小曲です。

今作ソロではいまいち冴えないルーデスですが、このピアノはいいですよ。

たった4分でこんなにドラマティックに展開するなんて予想外でした。

これまでのドリームシアターならどんどん壮大に展開するかと思われた矢先、パタッと静かなピアノに戻り終演。

いつも『お腹一杯』になるドリームシアターにおいて「もっと食わせてくれ!」って思える数少ない曲(笑)。

#9『Pale Blue Dot』8:25

「あれ?いやいやそんなはずはない。アルバムのラスト曲だぞ?」

と何度も聴き込んだ曲です。

結論言うと、かなり聴き込んだのに好きになれませんでした。

ここまでタメてきた鬱憤を晴らすかのように、ドリームシアター的展開をねじ込みまくってますが、楽曲としてのまとまりに欠ける印象を受けます。

本作のレビューでよく見かけたのが「印象が残らない」だったのですが、この曲なんかがそう表現される原因じゃないかな?

なんか『迷走感』がすごく伝わってくるというか。

コンパクト化に踏み切ったのだから、無理してこういう長さにしなくても良かったんじゃないかな~?

パーツパーツに光るものはあるだけに、なおさらもったいない。

ドリームシアターのラスト曲は皆が注目する非常に重要な部分なので、ラストを飾るには#7「At Wits End」の方がまだ良かったと思います。


はい、本日は『Distance Over Time』を語ってまいりました。

ドリームシアターがかつてない作風にチャレンジした意欲的な作品ですよ。

ぜひ聴いてみてください。

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