『スクリーム』(オジー・オズボーン)ガスGが新加入で細部まで緻密に考え抜かれた作品!

どうもSimackyです。

本日はオジー・オズボーンが2010年にリリースしたの10thアルバム『『スクリーム(Scream)』を解説していきます。

8th『ダウン・トゥ・アース』からはギタリストの個性を抑え、オジーの『歌』にスポットがあたった作風となってきております。

マンネリ化?ギターがつまんない?

果たして本当にそうかな!?

そういうことはこの解説を読んでから言っていただきたいものですね!

私のプレゼンによって1人でも多くの人にこの傑作アルバムを手にとって頂きたいです。

それではいってみましょう~!

 Let Me Hear You Scream!!

(テメェらの叫びを聞かせてみろぉ!)

『世界一忙しいギタリスト』ガスGとロブ・ゾンビのリズム隊

今回の布陣をご紹介しましょう。

まずギターはガスG。

当時の年齢は30歳で、3つくらいのメタルバンドを掛け持ちしてソロもやってる忙しい人。

『世界一忙しいギタリスト』と呼ばれていたそうですが、私は聞いたことなかったですね。

2000年以降の若手バンドに詳しくなかったもので。

『ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド』からなんだかんだで5作連続(20年以上)で起用していたザックがついに外れましたね~。

『オズモシス』直後にジョー・ホームズに一時期替わったときは、ガンズへの加入問題でひと悶着あったそうですが、今回は何があったのか?

それはオジーの自伝に書いてあったのですが、

「曲がどんどんザック自身のバンドであるブラック・レーベル・ソサイアティに近づいていることが自分にとって問題だった」

という”音楽性の違い”にあったようです。

『ノー・モア・ティアーズ』の出来にかなり満足しているオジーにとって、『オズモシス』以降のザックのギターは確かにヘヴィ過ぎたんだと思います。

今思えば、『ダウン・トゥ・アース』でザック案を却下して、出来上がったフレーズを弾かせることしかさせなかったことからも、その兆候は実はあったんですね。

けれども、『ブラック・レイン』で作曲から参加させたらまたBLSみたいになっちゃった、と。

まあ、それでも『ブラック・レイン』はザックのやりたいようには全然させてもらってないと思うのですが。

今作はもうザックで凝りたのか?プロデューサーのケヴィン・チャーコがギターを弾いたものをガスGが取り直しただけ、というものになっており、ガスGの個性がそこまで強くは出ておりません。

そしてベースは前作でのインパクトが強烈だったロブ・ゾンビのブラスコが継続。

2018年の『ノーモア・ツアー2』までいるので13年くらい在籍することになるのですが、2010年代のオジーはほとんどブラック・サバスでの活動がメインだったので、実質そんなに長くはないかと。

そしてドラムはまたもロブ・ゾンビからトミー・クルフェトス

この人はブラック・サバスでもビル・ワードに替わって叩いてるので、実質的にもここから9年間オジーとガッツリ一緒にいます。

初めてYou Tubeで観た時、叩き方が若い頃のビル・ワードっぽかったので

「お?太ってたビルがダイエットに成功したのか?」

と思いました(笑)。

でもよく見たら全然違って、「嘘でしょ!?」ってくらいものすごい振りかぶってストロークする叩き方で、インパクトありますよ。

和太鼓叩いてるみたいなポーズなんだもん(笑)。

ここでリズム隊がロブ・ゾンビ組で固まりましたね。

ロブ・ゾンビもオジー同様、ソロ活動なのでメンバーは流動的です。

実はこの二人、ロブ・ゾンビの3作目「エデュケイテッド・ホーセズ」で一緒に作ったメンバーなんですよ。

さらに、オジーのサバス時代からのお友達で元イエスのリック・ウェイクマンの息子:アダム・ウェイクマンがキーボードで参加してます。

オジーバンドでキーボーディストを明確にクレジットしてPV撮影、ライブにまで参加させるっていうのはあんまりないパターン(昔はドン・エイリーとかいたけど)。

よほど実力を買われてのことだと思います。

メンバー紹介が終わったところで、動画を見てもらいましょうかね。

これレトロ画像でかっこいいんですよ。

#1「レット・イット・ダイ」です。

『スクリーム』に至るまでのセールスの流れ

『スクリーム』を語るにあたって、オジー・オズボーンの意外に知られていない側面を少しお話します。

皆さん、知ってました?

オジーのレコード・CD総セールスは、ブラック・サバス時代から含めると

1億枚を超えている

ということを。

『ヘヴィメタルの帝王』というアンダーグラウンドのイメージが有るのですが、めっちゃ売れっ子なんです。

ハードロックの範疇(はんちゅう)で言うと、エアロスミス、キッス、メタリカ、ガンズあたりと規模的には同じ1億以上2億未満の層に所属します。

上に挙げたアーティストたちの中では、かなりマニアックな存在のように感じていたんですが、実は違うんですね~。

実力的には言わずもがな、セールス的にも同格です。

というより、テレビ番組『オズボーンズ』以降は知名度でもダントツになるのですが。

ブラック・サバス脱退後、ソロになってからもプラチナアルバムは当たり前。

その中でもソロデビュー作『ブリザード・オブ・オズ』は500万枚、一度引退を宣言した作品である『ノー・モア・ティアーズ』は400万枚でトップクラス。

オジーはその破天荒なキャラクター性から、売れる売れないなんて全く気にしないかのように見えるのですが、実は

ヒットメーカーとしてプロの仕事をする人

なんです。

そして『オズモシス』で復活してからはチャート順位が安定的に高水準をキープします。

全米でいうと、『オズモシス』4位、『ダウン・トゥ・アース』4位、『ブラック・レイン』では過去最高の3位。

引退前は『罪と罰』の6位が最高位だったんですよ?(『ノー・モア・ティアーズ』は意外にも7位。)

つまりオジーはヒットメーカーとして業績を伸ばし、老いてなお成長を続けている人なのです。

どうしてこんな話をするかというと、8th『ダウン・トゥ・アース』から本作10th『スクリーム』までの3枚には

「ギタリストの個性が目立たなくなった」

「音楽的冒険をしなくなった」

といったレビューをよく見かけるからです。

それに対し、私の解説ブログでは

「『歌を聴かせる』方向性に転換した」

と表現してきましたが、その方向性の転換を考えてみた時、オジーのこの『ヒットメーカーとしての一面』を抜きには語れないということに気が付きました。

つまり『売れる曲』の嗅覚が研ぎ澄まされているからこそなんです。

ここからは私の推測なのですが、ソロデビュー以来『ギターヒーローを前面に出す』という方法論で進めてきたオジーが、引退からカムバックし、久々に『オズモシス』をリリースした際に、ロックシーンの状況が変わっていたことを察知したんだと思います。

オズモシス

それでは1991年『ノー・モア・ティアーズ』から1995年『オズモシス』の間の期間に何が起きたのか?

そう、ニルヴァーナに代表されるグランジ・オルタナティブシーンの勃興(ぼっこう)です。

1980年代に隆盛(りゅうせい)を極めたヘヴィメタル的なものは古いものとして全否定されました。

ヘヴィメタル的なものとは何を指すのか?

華美なファッション、大仰な曲展開、様式美、速弾きギターソロがそれにあたります。

オジーが引退してシーンから離れていた間、ヘヴィメタル勢はこの時代に合わせ試行錯誤していました。

そして、オジーはオズモシスをリリース・ツアーをすることでシーンの空気を肌で感じ、自分の持っていた感覚と世間の求める需要にギャップがあることを感じたんだと思います(それでもアルバムはしっかり売っていますが)。

そのギャップを修正してきたのが、8th『ダウン・トゥ・アース』ではないかな、と。

ダウン・トゥ・アース

6分台はおろか、5分台の曲さえほぼなくなり、ほとんどすべての曲を4分台で収める。

ギターソロなどのインストゥルメンタル部分も大幅に短縮されます。

そういう考えで進めている以上は、たとえギタリストにザック・ワイルドが復帰しようが、ガスGに交代しようが、今のオジーバンドにおいて大きな違いを生む要因にはならないということなんですよ。

なので、多くのレビューで見られる「今回はザックが~」「ガスGが~」というのは少々ピントの外れた議論だということですね。

もちろん旧来のファンは往年の作風を期待するのですが、ヒットメーカーとしてのオジーは旧来ファンの期待に答えることばかりを良しとしていないのでしょう。

自伝『アイ・アム・オジー』にもはっきり書かれています。

「さらなる高みへと進めるよう、挑み続けねばならない。さもないと、マンネリ状態に陥ってしまう。変わらぬままでいても、一握りの人達を満足させることはできるだろう。いかなる変化も裏切りだ、と考えるような人達をね。だがそんなことをしていたら、遅かれ早かれ自分のキャリアはダメになる。」

新規ファンの獲得は、音楽に携わるものの永遠の命題です。

今思えば、テレビ番組『オズボーンズ』に出演したのも、ヘヴィメタルに対する偏見を取っ払って多くの人に興味を持ってもらう狙いがあったのかも知れません。

その効果もあり、『ブラックレイン』は過去最高の全米チャート3位。

全英でも『罪と罰』以来となるトップ10入り(7位)。

そんな絶好調のチャートアクションをした前作から3年という、この頃のオジーにしてはかなり短いスパンで発表されたのが今作『スクリーム』なのです(その前は6年ごとだった)。

当然、この方向性の手応えに満足しているオジーが、ギタリストを替えたからと言って昔の作風に戻すことはありません。

「もし私に残された野望が1つあるとすれば、それはアメリカのアルバムチャートで1位を獲得することだ」

意外でしょ?

オジーは明確に『売る』という意思を持って制作しているんですよ。

残念ながら、本作では全米最高4位と1つ落としました。

2023年現時点では『ブラック・レイン』『オーディナリーマン』『ペイシェントNo.9』での全米3位がオジーソロの最高順位です。

しかし、本作の後、2013年にブラック・サバスのラストアルバムである『13』と、サバスのバラードを娘のケリーとデュエットしたシングル『チェンジス』ではついに念願の全米1位を獲得しています。

『スクリーム』の特徴~バラエティ豊か~

ここまでの話を聞いていると

「要はもうOZZYは売れ線に走って没個性な作品を連発してるんでしょ?」

と思われるかも知れません。

半分は当たりで半分はハズレです。

当たりというのは基本的なフォーマット(型)が同じだからです。

序盤でガツンとヘヴィに、3~4曲目あたりに1回目のバラード、中盤でバラエティをもたせ、8~9曲目あたりで2回目のバラード、そしてアグレッシブに終わる、、、、。

前2作はこんな感じですかね。

おそらくOZZYの中での『売れる作品の黄金パターン』ができてるんだと思います。

そして半分ハズレというのがアルバムごとの個性です。

『ダウン・トゥ・アース』は割とソフトだけどあと引くメロディがあるし、『ブラックレイン』には抑え込まれているとはいえ、ザックの問答無用のヘヴィさがありました。

そして今作にはここ2作になかった『起伏』と『意外性』があります。

振り幅が大きんですよ。

4分台で割と揃えていた前2作に比べると、久々に5分超えの曲が5曲も収録されています。

  1. レット・イット・ダイ – 6:06
  2. レット・ミー・ヒア・ユー・スクリーム – 3:25
  3. ソウル・サッカー  – 4:34
  4. ライフ・ウォント・ウェイト – 5:06
  5. ディギン・ミー・ダウン – 6:03
  6. クルシファイ  – 3:29
  7. フィアレス  – 3:41
  8. タイム  – 5:31
  9. アイ・ウォント・イット・モア – 5:36
  10. ラティマーズ・マーシー  – 4:27
  11. アイ・ラヴ・ユー・オール  – 1:04

なかでも#1「レット・イット・ダイ」は6分もあり、序盤と中盤に2度も展開が変わるという懐かしいくらいの大作。

「こういうの久々にやったな~」

と思わず嬉しくなってしまいます。

前2作と違い、インストゥルメンタルで魅せる部分を全否定せずに、曲によっては取り入れているんですよね。

これはかなり意外でした。

かと思えば、#2「レット・ミー・ヒア・ユー・スクリーム」#6「クルシファイ 」のように短い曲は3分台でスパッと終わる潔さ。

2曲ともメロディアスなリフがスリリングでかっこいい。

誰だ?ガスGがイマイチだとか言ってんのは

この『短さ』っていうのはアルバムを通して聴く上で非常に有効な選択なんだと、このアルバムで教えてもらいました。

ラスト#11『アイ・ラヴ・ユー・オール』なんて1分程度で終わるというまたしても意外性。

「もう少し聴きたかったのに…」

という腹八分目で終わらせる「もう少し欲しい感じ」で終わらせるところがにくい。

またスピード感のある曲が増えてきたため、アグレッシブな印象が残るアルバムでもあります。

#9「アイ・ウォント・イット・モア」なんて、まるでスラッシュメタルさながらに高速リフとツーバスドラムがユニゾンするシーンなんてオジー作品で初じゃない?

その後にシンフォニックに展開するとこなんて「ナイトウィッシュか!?」と思いましたよ。

こういう現代シンフォニックメタルの要素まで吸収しているのが、オジーのヒットメーカーっぽいところでもあるし、そういうエッセンスを持ち込める人選は誰かといった時に、ザックではなく若きガスGになるのだと思いました。

こういうスピード感があるとヘヴィナンバーもバラードの美しさもより際立つんですよね。

曲の長さ、曲ごとのスピード感の起伏、この2つの要素が、この作品を1枚ツルッと聴かせるものにしています。

これはかなり考え抜かれています。

いやはや、かなりの力作ですよ!?

『歌モノ』としてもいいし、『メタル』としても十分楽しめる名盤と呼んでいい作品です。

 

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