『オーディナリー・マン』(オジーオズボーン)ボーカルが若返った疑惑?

 

どうもSimackyです。

本日は2020年に発表されたオジー・オズボーンの11thアルバム『オーディナリーマン(Ordinary Man)』を解説します。

2000年以降に発表された本作までの4枚の中では最もチャート成績が高く、評価も高い作品です。

これはもう『大絶賛』と呼んでもいいほどの勢いです。

中には

「全ての曲がもれなくシングルとしてヒットするポテンシャルを備えている。」

とまで書いてある記事を見ましたよ(笑)。

それはいくらなんでもいい過ぎでは?

『スクリーム』から待ちに待った10年ぶりの新作。

当時のオジーは72歳!

年齢的にももうオジーの作品は出ないのではないかと思われていた中での発表でした。

オジーファンの皆さん、1995年に『オズモシス』が発売されていた頃にですよ?

まさかオジーが20数年後、74歳になってもニューアルバムを出している姿を想像できました?

私は『オズモシス』当時にはまだ高校生。

50歳手前のオジーがインタビューで「60歳まで頑張るよ!」と笑いながら冗談交じりに言っていたのを今でも覚えています。

「いやいや、あんたこれまで色々やってきたからもう体はボロボロでしょ…」

とか思っていたのですが、60歳超えてから『スクリーム』『オーディナリーマン』『ペイシェントナンバー9』と、2023年現在までに3枚も出してます。

ブラック・サバスのラストアルバム『13』を入れれば4枚ですよ!

この人本当にアイアンマンなのでは?

おまけに2023年にはコロナのせいで途中で中断してたラストツアー「ノー・モア・ツアーズ2」が再開され、日程まで発表されています。

残念ながら日本への来日日程は組まれていませんが、皆さんの熱いラブコールで是非ともオジーを日本へ呼び込もうじゃあありませんか。

ラストと言っている以上これが最後のチャンスですから。

近年、チャーリー・ワッツやジェフ・ベックの訃報を耳にすると、オジーもいつまで元気に活動できるのか不安でなりません。

このSimackyブログを読んでオジーの作品にどっぷり浸かれば、ストリーミング再生回数が伸びて、来日する気になってくれるかも知れませんよ(笑)。

本日紹介する作品には私の師匠も参戦とあって、やる気のほとばしりが尋常では無いことになっております。

いつもより長めに語りますが付いてきてくださいよ!

それでは楽しんでいきましょう~!

”バンドの魅力”が戻ってきた作品

さて、ここ3作の解説記事でも書いてきましたが、オジーは8th『ダウン・トゥ・アース』から歌を聴かせる作風に変化。

そのことが旧来のファンにとっては

「ギターがガツンと来ない」

とフラストレーションを溜める要因となっていたようで、私としては

「聴き込めば実はいい作品なんですよ!」

ということをここ3回の記事で書いてきました。

ギターヒーローの活躍を待つファンの意見は世界的に決して少なくなかったと思うし、

「前作から10年も経ったから作風も原点回帰とかしてくれないかな?」

と本作に期待した人もたくさんいたのではないでしょうか?

そんな世界中が大注目する中リリースされた新作は・・・

ギターヒーローはいないが、バンドの魅力を存分に楽しめます。

どういう意味なのかは後でみっちり説明していきますよ。

もうね、オジーのボーカルがすっごい楽しそうではっちゃけてます。

っていうかオジーのボーカルの中では最高の出来とさえ言われるほど。

72歳でこのハリのある声にも驚くのですが、なによりまるでオジーが若返ったかのように活き活きしていることが印象的です。

2005年にカヴァー・アルバムの隠れた傑作『アンダーカヴァー』を出しているのですが、その時のオジーを思い出させますね。

今回は色々なレビューを読んでいても、びっくりするくらい好意的に受け入れられているんですよ。

これはファンの方たちの心境の変化もあると思うんですよね。

●前作から10年が経ってファンたちも歳を重ね、”寛大な大人”になった

●72歳のオジーにメタルを求めるのも酷だという”思いやり”

●もはや生きて歌ってくれれば何でもいいという”感謝”

●幸せそうに歌うオジーの声に、もはやなんでも良くなっちゃった

おっと、少し毒舌で失礼しました!

だってレビューに書いてあるんだもん(笑)。

しかしね、こうした聴き手側の心境変化に関係なく、素晴らしい作品であると断言します。

ドリームチーム的なリズム隊~レッチリのチャド、ガンズのダフの参戦~

私のレッチリ記事を読んでいただいた方なら御存知の通り、チャド・スミスはドラマーの私にとって最も熱心にコピーした師匠にも等しいお方です。

ロックの世界に私をいざなってくれた大好きなオジーバンドに、私の師匠が参戦。

こんな夢のようなことがあるのでしょうか?

ハリウッドで毎晩オネーチャン呼んでパーティ三昧のレッチリ(本当かも)と、昔、拷問に使われていた古城かなんかに住んで毎晩コウモリの生き血を飲んでいるオジー(嘘)。

この両者に全く接点を見いだせなかったので、完全に不意打ちでしたよ。

勝手な偏見だけで言ってますが(笑)。

考えてみるとこれってそんなに意外なことでもなくて。

オジーバンドのこれまでの編成を見ても分かるように、実はヘヴィメタル系の人ばかりが加入するわけではなく、ハードコアやオルタナティブ系の人たちも参加します。

ロバート・トゥルージロはハードコアのスイサイダル・テンデンシーズ出身、マイク・ボーディンはオルタナのフェイス・ノー・モア出身、そして前作『スクリーム』のリズム隊は二人共インダストリアルのロブ・ゾンビバンドからの移籍でした。

オジーの人脈はすごいですね。

まあ、この程度で驚いていたら次作『ペイシェントナンバー9』で腰を抜かす事になるのですが(笑)。

このチャドとリズム隊を組むのはガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガン。

スラッシュの長年の相棒。

ダフはパンク寄りなベースを弾くのですが、彼のテイストが今回オジーの作品に新たな一面を加えていることは間違いないですね。

相変わらず細身の長身でかっこいいです。

このドリームチームとプロデューサーのアンドリュー・ワット(ギター兼任)の3人で、ジャムりながらアレンジをしていったそうです。

おもしろいのが、この3人はそれぞれが一緒に仕事をしたことがあるようで、バンドメンバーのような絆が生まれていること。

タイトルトラック『オーディナリーマン』にエルトン・ジョンを誘う時は、アンドリューとチャドの二人でエルトンの家に行ってお願いしたとのこと(チャド談)。マジか!?

オジーバンドのミュージシャンって、歴代のギタリストはオジーと蜜月関係でも、他のメンバーはセッションミュージシャンとしての扱いなので、絶対こういうこと頼まなかったと思うんだけど。

私的には嬉しくなるエピソードなんですよね。

チームワークが良好であることが見て取れる動画がこちら(字幕がないのが残念だけど)。

アンドリューワットとは何者?

この傑作を語るに当たり、キーマンとなるアンドリュー・ワットに触れないわけにはいきません。

動画見てびっくりされたと思うのですが、プロデューサーのアンドリューは若い!

1990年生まれの彼は当時29歳。

1948年生まれのオジーとの年の差は驚愕の42歳!

祖父と孫(笑)。

もともと自身が参加するバンドでギタリストをやってました。

グレン・ヒューズ、ジョン・ボーナムの息子(ジェイソン)というベテラン2人とカリフォルニアブリードというバンドを組んで活動してたりしてたんですが、鳴かず飛ばず。

次第に他のアーティストのツアーギタリストやソングライター、プロデューサーと手広くやっているうちに、近年では超売れっ子ソングライター/プロデューサーに成長します。

で、オジーの娘:ケリーと知り合いになった時に、タイミングよく手掛けていたポスト・マローンがオジーのファンだったと。

で、オジーにコラボを持ちかけてヒットソング『テイク・ホワット・ユー・ウォント』が生まれます。

そこからアルバムも一緒に作ろうとオジーに持ちかけ、オジーは

「サクッと時間かけないで作るならいいよ」

とこれを了承(『オズモシス』でマイケル・ベインホーンに何度も歌わされたのがトラウマ:笑)。

アンドリューはカリフォルニアブリード解散後、ソロ時期にミニアルバム制作を手伝ってもらった縁があるチャドとダフに声をかけ、二人はテンションマックスで快諾。

つまり、今回のラインナップはこのアンドリューを中心にして組まれたラインナップなんですよ。

そして単なるプロデューサーではなく、ギタリストである意識が非常に強い血気盛んな若者なんです。

ミュージシャンシップがあるんですよ。

自分はコンソールと向き合って、プレイしているミュージシャンをコントロールするような通常のプロデューサーではなく、自分もがっつりギターを弾いて、他のメンバーとジャムりながら曲を作っていく珍しいタイプなんです。

なので、一応クレジット上はプロデューサーなのですが、かつてのランディやジェイク、ザックのような立ち位置でオジーと一緒に作曲し、バンドとジャムってアレンジしていくというスタイルなんです。

先代ギタリストたちと同じ立ち位置ということで、イメージ的には「本当の意味での4代目ギタリスト」と捉えてもいいんじゃないでしょうか?

4代目ジョー・ホームズや5代目ガスGは曲作りに入り込んでいなかったですからね。

かつてのオジー作品のように、若き才能・ヴァイブレーション・エネルギーを作品の中に封じ込めるという方法論が復活していることは注目に値します。

そんなアンドリューなのですが、「サクっと作る」というオジーとの約束を守り、制作に費やした時間は

作曲に4日、レコーディングに3週間

という驚嘆すべき短さ!

ブラック・サバスのデビュー作じゃあるまいし(笑)。

それで全米3位を取れるんだから恐ろしい。

ベテラン3人をうまくまとめ上げる、アンドリューのプロデューサーとしての要領の良さや機転の効く頭脳の良さが伺えますね。

本作の聴きどころ

オジーのヴォーカル

今作を聴いて驚くのが若々しく瑞々しいオジーのヴォーカル。

アンドリューの若いエネルギーに触発されたかのようですよね。

まあ、70歳を超えているので、生歌でこれを再現できるかと言えば厳しいでしょう。

様々なテイクをつなぎ合わせたり、機械処理を施したりして、オジーの魅力を引き立てていくプロデュース作業の為せる技です。

こういうところもポップアーティストなんかをたくさん手掛けてきたアンドリューの真骨頂なんでしょうね。

なんでもできる。

技術もあるし、何よりこのオジーの魅力を引き出すセンスには感服します。

今作では本当にオジーのいろんな側面の魅力が余すことなく出し尽くされており、まるで『オジー・オズボーン展覧会』の様相を呈しています。

今まであった側面から、これまで決して見ることのなかった側面まで全てです。

タイトルトラック#4「オーディナリー・マン」ではお得意のバラードを伸びやかに歌い上げ、パンクナンバーのような#10「イッツ・ア・レイド」ではパリピのようにはっちゃけます(笑)。

#1「ストレート・トゥ・ヘル」や#8「スケアリー・リトル・グリーン・メン」では、まるで「きひひひひひ」っていう声で笑いそうな魔女のイメージ。

オジー特有の魔性の魅力を引き出しています。

#8はその魔性の声の中にたまに「フゥ!!」ってオジーが吠えるギャップが笑えます。

あれって何を意図してんの?

#9「ホーリー・フォー・トゥナイト」なんかはビートルマニアのオジーが、本来一番好きそうなスタイルですよね。

「キラーチューンがない」

と言われ続けたここ3作でしたが、本作は#1、#4、#5,#10はキラーチューンとして遜色ないフックが盛り込まれた名曲だと思います(ポストマローンとコラボのボートラ#11も掛け値なしにかっこいい)。

バンドサウンド

先程も言いましたが、今回のギター担当:アンドリューは、歴代ギタリストの立ち位置のためかなりギターは目立ってます。

ギタリストとしての個性を封印された『ダウン・トゥ・アース』『ブラックレイン』でのザックよりも、『スクリーム』での出来上がったものを弾かされたガスGよりも、かなり存在感があります。

ただ、これは致し方ないことなのですが、聴いた人を問答無用でねじ伏せていた歴代のギターヒーローたちと肩を並べるほどのスーパープレイはありません。

しかし、アンドリューのプロデュース効果なのか?各パートのプレイにスポットライトがあたっています

前3作はスポットがあたっていたのはオジーのボーカルのみであったのとはここが違います。

演出の仕方や聴かせ方に『バンド感』『ライブ感』『アドリブ感』といった要素があるんですよ。

それは#3「グッバイ」のラスト部分のカオス演奏で顕著に見られます。

まるでライブのアドリブ感そのもの。

チャドが嵐のようにオカズを叩き、アンドリューがそこに乗るかのようにギュイーンというノイズプレイ。

しかも、終わり際に笑い声が聴こえたり拍手が入ったりしており、ラフ録りのような雰囲気を出すんですよね。

ダフの歪ませまくったベースで始まる#10「イッツ・ア・レイド」もライブハウスで録っているかのように、歓声とオジーのMCらしきものが入ってるんですよ。

そして音もすごくラフ。

もしかすると一発録りしてるのかな?

これらの曲からは前3作の『完璧に机で作り上げた感じ』が感じられないんですよ。

無機的ではなく有機的、密室ではなく開放的なんです。

オジーのハッスルした感じも含めて、アルバム全体を通して「音楽やってることが楽しい!」っていうのがものすごく伝わってくる名盤です。

 

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