『アウェイク』ドリームシアター~これが一番好きというあなたへ~

どうもSimackyです。

本日はドリームシアターの3作目『アウェイク』を語っていきたいと思います。

私がこの『アウェイク』に出会ったのは高校3年生の頃、1996年ですね。

洋楽ロックを開拓し始めて、ジャンルも何も分かっていないので片っ端から買っていた頃。

初めてのドリームシアターがこのアルバムというわけです。

今思えば、敷居高っ(笑)。

ドリームシアターを初めて聴いた頃の印象

まだ当時は楽器もやっていなかったため、この演奏レベルが上手いのか下手なのかはよく分かっていませんでした。

あの頃の自分はXに夢中だったため、ロックは速いほど上手いとしか思ってませんでしたよ(笑)。

ただ、これまで聴いたことがないくらい1曲1曲が長いし、1曲の中でガラッと曲調が変わるし、複雑すぎるリズムには

「あ、つまりこの人達は変態なんだ」

みたいな印象がありました。

奇人変人の類の人たちというか、びっくり人間コンテストに出るような人たちに聞こえました。

「あ、音楽って演りすぎて普通の演奏に飽きてくると、ここまで行っちゃうのね」

みたいな(笑)。

はっきり言ってそんなに好きにはなれませんでしたね。

いい音楽を作るということよりも、とにかく誰も演ったことがないような複雑な演奏を追求することしか興味がないのかな、と。

でも、高校生のなけなしの小遣いで買ったCDだから今と違って聴きまくるんですよ。

お気に入りのCDほどは聴いていないつもりでも、今のストリーミングの聴き方に比べたら1枚あたり10倍くらいの時間は聴いていたんだと思います。

そういう聴き方って後々効いてくるんですよね。

最高傑作と呼ばれる前作『イメージズ&ワーズ』から戻ってくると…

で、1年くらい経ってから前作の『イメージズ&ワーズ』に出会った時が本当にドリームシアターをすごいと思ったときです。

何もかもが完璧。

こんなに完璧なアルバムなんてそうそうないというくらいの完成度。

ハマりまくりました。

おそらくほとんどの人が同感なんじゃないかな。

で、死ぬほど聴きこんでしばらくしてまた『アウェイク』を聞いたのは、買って3~4年ぐらいたってからじゃないかな?

もうね、ドリームシアターの本領が発揮されているのは前作で、『アウェイク』は失敗作ぐらいに思っていたから、自分の中では『なかったこと』になってたんですよ(笑)。

これね、色んな人のレビューとかブログ読んでると笑ってしまうくらい私と同じ道を辿ってるんですよ。

多分、『イメージズ&ワーズ』でドリーム・シアターに入門した9割くらいの人が本作で挫折するんじゃないかな?

なまじ、日本ではしばらくの間『一番売れたドリームシアターのアルバム』だったものだから、やたら皆持ってるんですよ、これが(笑)。

で、ここからが笑える話なんですが、

なんとここから『アウェイク』の良さが分かってくるんです。

マジです。

このアルバムに”あてられた”皆さんが同じようなこと書いてて笑えます。

だから私も同じことを言わせてもらいます。

『最初は好きになれなくて放置。最終的にはいっちゃん好き』(笑)。

私の表現でこの『アウェイク』を評するならば…

ドリームシアターの最高傑作とも歴史的名盤とも言える『イメージズ&ワーズ』を倒せるのはコイツだけ。

『イメージズ&ワーズ』殺し…

『殺し』って何だよ(笑)。

分かりやすく例えます。

『イメージズ&ワーズ』は通知表でいうとオール5の”出来杉さん”です。

5教科も美術も体育も全部優秀なんです。

他のアルバム、例えば”剛田さん”こと『トレイン・オブ・ソート』は、体育だけは5で出来杉さんに並ぶことはできますが、ぶっちぎることはできません。

それに対し”野比さん”こと『アウェイク』は1とか2とか、よくて4がちらほら。

けどね、『2』の体育の詳細を見てみると、『垂直跳びでギネス記録出しちゃいました』みたいな。

そこだけは『5』をとった出来杉さんでも到底歯が立ちません。

美術は『1』なのに、『廃工場の壁にスプレーで描いたアートが文化遺産になっちゃった』みたいな。

っておい…

青いヤツが絶対何かしただろっていう。

ところどころに異常数値を叩き出してぶっちぎります。

信じられないくらい素晴らしいきらめきを一瞬だけ放つ…

そんな箇所がいくつかあるんですよ。

あれだけ『聴きにくい』と思っていた本作なのに、『イメージズ&ワーズ』を聴いた後だと、無性にその瞬間が欲しくなっている自分に気が付き始めます。

異常な快感指数の正体とは?

つまり『イメージズ&ワーズ』では満たされない何かを本作が持っていることに気がつくんですよ。

ドリームシアターは全15アルバム全て聞いてますが、そんな気持ちにさせてくれるアルバムは本作だけです。

このことに気がついたのが大学の時。

私はこれが一体何なのか理解するのに3年以上はかかりましたね。

それは『必ずしもキャッチーでフックの効いた良質なメロディを詰め込むことだけが正解ではない』ということです。

音楽って深いですね~。

『イメージズ&ワーズ』は全てが美しいメロディ、かっこいいサウンドで埋め尽くされています。

どこを切り取っても美しくない部分はありません。

全部気持ちいい。

けれども、本作はのっけから『6:00』で「ん?なんか気持ちよくノレないな」って感じで始まります。

で、ずーっとそうやって進んでいきます。

暗くてヘヴィでキャッチーさがなくて。

3作目にして早くもメロディが枯渇しちゃったのかな?みたいな。

ずーっとマイナー調。

一体どこまで落とせば気が済むんだってくらいダークの底に叩き落されます。

ストレートな8ビートじゃなく変態的なリズムチェンジの嵐。

何分の何拍子だか分かりゃしません。

でも時々それがふっと美しく、明るく、メジャー調になるんです。

複雑怪奇だったリズムがいきなりどストレートな4/4拍子に戻ったりするんです。

その瞬間の快感と言ったらえも言われません。

ずーっと辛抱強く我慢するからこその快感というか。

「あー、この瞬間を待ってたんだ!」

ってなります。

コレが病みつきになると他のアルバムのダークさは物足りませんし、他のアルバムの美しさでも物足りなくなってくるんですよね。

つまり振り幅の大きさが尋常じゃないんだと思うんですよ。

曲として本来成立しえないほどの振り幅が奇跡的に成立しているというか。

この後の全てのアルバムでこれを再現できてはいないと感じたので、彼らにとっても奇跡の1枚なのかもしれません。

アルバムのジャケットを意図的に本作に寄せ、明と暗を描き出した10作目『ブラック・クラウズ&シルヴァー・ライニングス』もここまでの振り幅はないですね。

正確に言うと振り幅はあっても、ここまでの流れのスムーズさというか、ここまでの完成された対比・展開の妙はないというか。

これってクラシックなんかの手法に実は似ているのかな?

皆さん、例えばベートーベンの『第九』っていうクラシックの名曲がありますよね。

大晦日によくNHKでやってるあの曲です。

『第九』って言ったらあの主旋律を思い起こすでしょ?

多分皆さんが大好きだと思います。

鼻歌で歌って気持ちいいと思います。

けれども、第九を最初から最後まで聞いたことあります?

そんな人ってあんまりいないと思うし、全部聞いたらかなり大変ですよ。

「あーいい曲だったね♪」

だけでは済みません。

1時間くらいあるから結構苦しいんですよ、皆さんの大好きなフレーズに行き着くまでが(笑)。

その苦痛が大きいほどフィナーレ(第4楽章)で号泣できるっていう。

普段我々が慣れ親しんでいるポピュラー音楽にはその要素はほぼ出くわしませんよね?

『光をより鮮烈に描き出すためには、闇も深く描ききらねばならない』

そんなテーマがこのアルバムに込められたのかどうかは知りませんが、彼らなら狙ってやっててもおかしくありません。

しかし、その後のアルバムで再現できないということは、奇跡の化学反応が起こっているのでしょう。

『アウェイク』のおすすめ曲

このアルバムは起伏の激しさが、美しい旋律をより際立たせているという側面があるので、全曲通して一つの作品というか。

コレが良曲、コレが捨て曲とかいう感覚ではないですよね。

そもそも1曲の中でほぼ別の曲のように変化するので、曲ごとに分けている意味をあまりなさないというか。

#4~6の3曲は『1曲』という扱いなのですが、私には全く理解できません(笑)。

まあ、歌詞がつながっているとか、関係しているからなのでしょうが、私は歌詞読まない派なんですよね。

歌詞で自分が描いたイメージを壊されたくないので。

とか言っていてもしょうがないので、このアルバムの『好きな部分』という意味でピックアップします。

なんだかんだで全部丸ごと好きではあるのですが。

#3「イノセンス・フェイデッド」

これね、中には狙いすぎっていう人もいるけど、普通に好きです。

素晴らしいです。

っていうかこの曲、過小評価すぎない?

名曲中の名曲ですよ?

ドリームシアターの初期3作の魅力って、このメジャー調の時の問答無用の説得力ですよね。

こねくり回してない素直なメロディというか。

このアルバムは前作に比べてこの要素がかなり減りはしたのですが、しっかり出す時には前作以上のレベルでバシッと決めてくれます。

ペトルーシの奏でる旋律ってどうしてこう、青い空が見えるんでしょうかね。

最後の盛り上がり部分はもうワクワクが止まりません。

この辺のところがさっき言った『イメージズ・アンド・ワーズ』を超える瞬間なんですよね。

#8「ライ」

この曲をチョイスするのは少し意外に思われるかもしれません。

あえて一番人気の#4『エロトマニア』をレビューしないで飛ばすという暴挙(笑)。

この#8は重量級ひしめく本アルバムのなかでもリフが一番ツボりました。

このリフはやばい。

ドリームシアターのヘヴィリフの中では一番好きです。

もともと繋がっていた#7「ザ・ミラー」から切り替わる瞬間に鳥肌が立ちます。

多分、多くの人が#7の方が好きって言ってるみたいですが、私は圧倒的にこっち派。

ブラックサバスしてるな~。

複雑なだけじゃない。

シンプルで普遍的なリフの説得力もあるなんて鬼に金棒じゃないですか。

#9「リフティング・シャドウズ・オフ・ア・ドリーム」

そして重量級ナンバーからのギャップ萌えするのが、この曲。

序盤は暗いのですが、どん底に希望の光が差し込むかのようにパーっと明るくなります。

よくこんな構成生み出せるよな。

これは#3にも勝るとも劣らない美しさ。

ずっと抑え込んでいるボーカルが最後に爆発します。

あ、ヤバ。鳥肌が…。

ここも『イメージズ・アンド・ワーズ』を超える瞬間ですね。

ドリームシアターのバラードの最高傑作です(#11『スペース・ダイ・ヴェスト』をバラードと呼ばなければ)

こうしてあらためて聴き直してみると、ジェイムズ・ラブリエのボーカルはこの頃がピークですね。

これは再現できないでしょう。

ツェッペリンの初期2枚の頃の声をロバート・プラントがその後のアルバムで再現できないのと同じことです。

コレだけの高音域を太く伸びやかに歌い上げる歌唱力に脱帽。

このアルバムでのラブリエは前作を超えてます。

ヴォーカルが色んな表情を見せますよ。

#11「スペース・ダイ・ヴェスト」

これは伝説級の名曲だと思いますよ。

とにかく究極の絶望感が表現されているというか、感情表現のレベルが凄いことになってます。

この曲はキーボードのケヴィン・ムーアが1人で作り、このアルバムリリース後に彼が脱退してしまったため、ライブで演奏されてません。

この曲を聴くとあまりの衝撃に「ケヴィン・ムーアって一体何者?」ってなります。

これほどの曲を生み出す人ならば、相当な影響力を持っていたはずだ、と。

なので、『ケヴィン・ムーアが抜ける=ドリームシアターが衰退する』と受け止めた人は私だけじゃなかったと思うんですよね。

まあ、実際は衰退しなかったので全員のレベルが異常に高い集団なんでしょうが。

ピアノもすごいけどペトルーシのギターの表現力もやばいもん。

これぞ「絶望」っていう感じ。

実際の音階以上に重く感じると思いますよ。

囁くように歌うラブリエも透明感あって最高なんですよ。

こういう曲ってバラードの範囲に入れていいのか分かんないんですよね。


はい、本日は『アウェイク』を語ってまいりました。

大学の頃から「いつか語りたい」と思っていたことをたっぷり吐き出せて満足です(笑)。

『光と影』見事に交錯するアルバムですね。

気がつくと影の部分もだんだん好きになってくる中毒性を持っています。

スルメ盤にもほどがあるほどのスルメ盤です。

最初の3年くらいはでもしゃぶってるようにしか感じません。

4年目くらいになってそれがイカだったことに気がつけます。

噛むのはそれからです。

それってどんだけクセ強いの(笑)。

さすがに歴史的名盤『イメージズ・アンド・ワーズ』を倒せるポテンシャルを秘めているだけはあります。

そんなアルバムなのでくれぐれも聴く順番にはお気をつけください。

これを最初に聴いたらドリームシアター挫折しちゃいますよ~(笑)。

no music no life!

”音楽なしの人生なんてありえない!”

Simackyでした。

それではまた!

●ドリームシアターの全アルバムレビューはこちら⇩(そこから各アルバムの詳細レビューへ進むこともできます)

【ドリームシアターの最高傑作はどれだ!?】おすすめアルバムは?~全アルバムの歴史を語る~

『アウェイク』ドリームシアター~これが一番好きというあなたへ~” に対して4件のコメントがあります。

  1. ゴマ より:

    私は当時MTVでTake the timeのビデオクリップを見てDTに興味を持ち、1993年は毎日Images and wordsを聴いていました。大阪でのライブも見に行きました。1994年、待望の新作。満を持して聴いたら、アレ???何回聴いても好きになれず、私のDT熱は一気に冷めました。それから27年。相変わらずハードロック、メタルは好きですが、DTはI&Wだけ。だったのですが、本当にこれでいいのだろうかとふと思い、2021年に「その後のドリームシアターも聴いてみようか」と思い、Octavariumを買ってみました。(その時点でも既に16年前の古典作品)最初は「やはりI&Wとは違うよな」と感じましたが、何回か聴いているうちにハマりました。タイトルトラックなんてもう最高。その後、次々買い求め、ついに私がドリームシアターを見限る原因となったAwakeに挑戦。昔と比べると格段と良さが解るようになりました。(ただ、同じヘヴィー路線ならTrain Of Thought、Systematic Chaosのほうがまだ好きなので、DTファンとしてはまだまだですね)まあともかく、1994年から2020年の間ずっとDTに見向きもしなかったことを大後悔する日々です。後悔しても仕方ないので、毎日のようにドリームシアターを聴いています。ようやくポートノイ最後のアルバムを昨日買ってきたところです。マンジーニはまだまだこれからです。じっくり楽しみます。
    ※「Images and Words=出来杉」、「Train of Thought=剛田」、「Awake=野比」と云う喩えは天才だと思います。ドリームシアターのアルバムが新装再発されるときは是非ともライナーを書いて下さい。

    1. simacky より:

      コメントありがとうございました。
      『アウェイク』で一度ドリーム・シアターから離れられたんですね、お気持ちは痛いほど分かります(笑)。
      ドラえもんネタが気に入っていただけたみたいで良かったです。
      かなり悪ノリが入ってますが(笑)。
      ドリームシアターは全アルバム15枚を全て個別に解説してますので、今後ゴマさんがドリーム・シアターを聴くときのお供にしていただければこの上ない喜びです。

  2. 匿名 より:

    Awakeの評価。思っている事を全てコメントしていただきありがとうございます。
    大学生だったあの頃、派手さはないけど何とも言えない中毒感。1番好きなアルバムがAwakeと言ったときの友人の冷ややかな反応。この感情の正体は何なのか?のステキな解説でした。なんだか二十数年の重荷が開放された(言い過ぎ?)ような感覚です。ありがとう!

    1. simacky より:

      コメント感謝いたします。
      「二十数年の重荷が開放された」ようで良かったです(笑)。
      私自身、今回の記事を書くことで憑き物が落ちたように感じていますから。
      何とも言えない中毒感なんで、「誰かこれを説明してくれ!」って思ってたのを自分でやっちゃいました(笑)。

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