『東京ドーム3DAYS~破滅に向かって~』Xjapan(DVD)を解説
どうもSimackyです。
本日はXのライブビデオをの名盤を語っていきますよ。
この作品との出会い
『X 東京ドーム3DAYS~破滅に向かって~』(VHS)
懐かしいな~。
これは高校に入ってすぐくらいの頃に見ました。
当時はまだ友達に焼いてもらったシングルスのテープしか持っていなかった頃。
CDラジカセ持ってなかったから、CD聴きたくても聴けない(笑)。
だからビデオが先になっちゃった。
2本組がボックスになってるんですよね。
現在はDVD版でこれ
TAIJIのラストライブです。
それでは解説していきましょう。
”男”を感じさせる意外なほど無骨なライブ
入場シーン。
これが『WorldAnthem』での入場。
あのHIDEがやっているド迫力の英語MCはまじでかっこいい。
天才過ぎます。
まず意外だったのは、メチャメチャ硬派。
もちろんカッコは過激ですが、演奏に関して言うと混じりっ気なしの本格派。
シンセサイザーやコンピューター管理されていないライブならではの生演奏。
1曲目の『silentjealousy』なんかスタジオ盤はギターも最大4本は重ねているし、
ストリングスやピアノもシンセサイザーも入るはずなのに、それを5人の演奏だけで表現している。
だから正直原曲と違い音のスカスカ感はありますが、
それを力でねじ伏せるような演奏に無骨さを感じました。
テレビのイメージと違いすぎるYOSHIKI
YOSHIKIのドラミングは、私がドラムを始めるきっかけになった衝撃のドラミングでしたね。
初めて見たあのミュージックステーションのインタビュー時の『貴公子王子様』感はまったくなく、
逆に『男』を強く感じさせるステージだったですね。
その後の私がドラマーを目指すことを決定づけた瞬間です。
叩き方がもうアスリートと言うか職人芸というか、
とにかく
『ドラムってこんな風に叩いていいの?』
っていうくらい衝撃的だった。
なんかね、表現するとしたら『戦っている』みたいだった。
その曲を叩き切ることだけに専念しているっていう。
「魂を燃やしている」感がすごかった。
ード真剣で遊びなしー
当時のメンバーがYOSHIKIを評した言葉です。
まさに当時のYOSHIKIの生き方そのものが叩き方になっていたんですね。
私が子供の頃からイメージしていたドラムって、
もっと変な握り方で(レギュラーグリップ)小手先で叩いている『妙に気取った感のある楽器』だったんですが。
こんなに思い切り体を揺らしながらおおきく振りかぶって強く叩いていいんだっていう、既成概念がふっとばされる感覚。
『こんなドラムなら俺もやってみたい』
かっこいいものに憧れるイチ少年として素直にそう思いました。
この時の強烈なインパクトがあり、頭の中の理想のドラムイメージはこの時のYoshikiに重なります。
だからドラムもこのイメージを追いかけて練習したし、
レギュラーグリップのドラマーは未だに好きにはなれません。
中学の頃に『singles』のテープを死ぬほど聴いて、
頭の中でいろんな想像をしていましたが、このYoshikiの叩き方はそれよりはるかにかっこよかったです。
1曲目からたまげさせてくれます。
東京ドームの音は良くないがパフォーマンスは最高。
華やかさのHIDEと大黒柱のPATA
ただ、ギターの音は「あれ?」だったですね。
HIDEのギターの音がなんかえらい小さい。
そはミキシングに問題があるのだと今は分かりますが、当時の私はそんなん分かんないから、
「あ、PATAの音が大きくてメインなんだな。HIDEサブなのか」
と勝手に解釈していました(笑)。
嘘みたいな話。
「HIDEと違って地味だけど、ライブでは美味しいとこは全部PATAが持ってくんだな」と(笑)。
「HIDEのギターはルックスいいんだけどあんまり音出ないんだな。PATAのギターが木目調で地味だけど音は本格派なんだな」
もう、初心者丸出しの感想(笑)。
次に印象深かったのは4曲目。
『Standing Sex』。
この頃は血気盛んなXファンにありがちの『速い曲』好きなってましたので、
曲の評価は速さで決まる、くらいの重要な基準がありました。
「速い曲がバンドが本気出している曲。緩やかな曲は適当にやっている曲」と(笑)。
なだそりゃって。
友達と二人で曲を片っ端からメトロノームでテンポ計っていた頃さえあります。
これも二人のギターの掛け合いから始まるんですけど、やっぱりPATAですね。
Xの本格派感を一番象徴しています、PATAは。
メチャメチャブルージーなギターを鳴かせます。
この『Standing Sex』はスタジオ盤より圧倒的にライブバージョン、その中でもこの3DAYS盤のほうがいい。
スタジオ盤はレコーディングに時間を掛けていない感じがします。
ラフ撮り一発の方が曲のワイルドさにぴったりってことで、あえてそうしているんだと思うんですが、
それならやはり長い「JEALOUSYツアー」で練り上げられたこっちの方がいいのは道理です。
この曲、まじで泣きそうになりました。
『悲しみ』の感情が色濃く出ていますね。
歌詞はそんなことないと思うんだけれど。
そしてその払拭しきれない「悲しみ」の雰囲気の中5曲目「WEEKEND」はさらにそれを強くする。
これがものすごくハマっているんですね。
これが初Xライブなので比較しようにも出来なかったんですが、今振り返ってみるとこのライブは悲しみの要素引きずりすぎです。
’93年の『リターンズ』と比べると雰囲気がぜんぜん違う。
1,2曲目にはあったMCが、3曲目以降なくなり淡々と5曲目までが続くのですが、
このXらしからぬ「暗さ」が他のライブにはないこの3日目独特の雰囲気をかもしています。
「WEEKEND」はこの日のプレイがスタジオ・ライブ盤通して一番好きです。
ピアノがない分ストリングスが埋めているところが逆にメチャメチャこの曲の「悲しみ」の要素を強調している。
HIDEのコーラスまじでかっこいい。
ミュージックステーションクリスマスライブで
「俺達がサンタクロースだぁ!」
とシャウトするHIDEを見て相当怖かったのですが、
このビデオで変化球でなくストレートに純粋にこの人はかっこいいなと思いました。
立っている佇まいだけで美しい。それを言うなら全員そうですが。
なんか全員からオーラが出ています。
高校生には理解不能な二人のソロ
ここからが、結構長く感じるのですが6曲目「ドラムソロ」、7曲目「HIDEの部屋」。
二人で持ち時間1時間はあるんじゃないかってくらい長く感じる(笑)。
せっかくHIDEを見直したのに「やっぱり俺この人ダメだ!怖すぎるし理解不能!」ってなりました(笑)。
この日の「HIDEの部屋」はおおよそ音楽を演奏するというところから一番遥か彼方に離れてしまった回ですね(笑)。
一大アヴァンギャルド大会(笑)。
YOSHIKIのドラムソロは小手先プレイ一切しません。
叩き方あのままなのね。
「肉体と魂を燃やし尽くすその過程自体が表現」
っていう感じです。
普通のドラムのアプローチとは根本的に違う。
TAIJIとTOSHIでお別れの歌
そこからTOSHI、TAIJI、PATAでの「VoicelessScreaming」。
これも「悲しみ」。
ずーーーっと「悲しみ」。
ずーーーっと「暗い」。
TOSHIのYOSHIKIから引き出される面とはまた違う一面が出ていてすごく好きです。
これは隠れ名曲なので、かなり後で好きになるし凄い曲だと気づきました。
TAIJIはどこまでもクールで淡々と顔を上げずプレイし続けます。
私はこれが最初だったのでTAIJIのキャラだと思っていたんですが、
TAIJIがXのやんちゃキャラだと知った時は相当びっくりしました。
そりゃライブ1週間前にクビを宣告されればこうなるよ、と今は思うんですがね。
この曲もスタジオ盤より他のライブ盤よりこれが最高です。
3DAYSはそういうの多いね。
この曲はTOSHIとTAIJIで作った曲なだけに思い入れもひとしお、
そしてお別れの感慨もひとしおでしょう。
この二人かなり仲良かったから。
TOSHIの感情こもった声に、TAIJIのコーラス、
そしてラストのバイオリン奏者がめちゃめちゃいい仕事してます(何者?)。
実はTAIJIが辞めることがこの時点で決まっていたことを知ってから、
再度見始めると何回泣いたことか。
そして今度はYOSHIKIの登場でピアノソロから『Unfinished』へ。
これまた悲しい。
おいおい、ホントずーーーっと暗いぞ、悲しいぞ。
ただ痛いくらい素晴らしい。
美しいですね。
ラストの凄まじい盛り上がり
ソロコーナーが終わると、いきなりTOSHIのMCがガラッと変わります。
「オーライ、HIDE!」
で、HIDEがギターソロを弾きます。
しかし、この人ほんとかっこいいな、っていうか美しいな、まじで。
PATAのギターの音で目立たなかったけど、こうして全ての音がない状態でHIDEのギターだけ聴くとこれはこれでめちゃめちゃかっこいいロックした音を出してます。
そして『Celebration』へ。
やっと、やっと明るくなった(笑)。
分かります?当時の私の気持ちが。
この曲はホントかっこよかった。
これまでの流れが流れだけに救世主みたいな曲にも感じたし。
その明るい流れからこの日一番のテンションでTOSHIのMCが炸裂。
ここぞという盛り上げ時をこの人は分かってる。
そしてその瞬間を外さない。
その瞬間に最高のMCを最高の声量で繰り出す、、、、
この人やっぱり『MCの帝王』ですね。
で、信じられないくらいのYOSHIKIのドラムテンポで曲が始まります。
「友達にもらったテープの曲のどれよりも速いぞ!」
もうぶっちぎりの速さです。
ここでセットリストラストの『Orgasm』に入ります。
YOSHIKIの手が「人間の手ってそんなに早く動くの!?」ってくらい早い。
で、ドラムソロが終わったぐらいで、なんかアオリに変わります。
HIDEがダーッとステージの端まで走っていき、煽ります。
で、「ゴーゴーゴー(ゴーかオーか分かりません)」
今度はPATAとTAIJIが両端まで入れ替わり走っていき煽ります。
この二人の煽りマジでかっこよかった。
そこからかっこいいリフが始まります。
このリフパターンは原曲に入れないのがもったいないほどかっこいいですね。
あまりにも完成度が高かったので、最初は原曲にもあるのかと思ってました。
で2回煽ってドラムがリズムトラックに変わります。
「あれ?YOSHIKIいなくなってるのにドラムなってる。もしかしてYOSHIKIは叩くふりだけしてた人⁉」
出ました、初心者丸出しの感想(笑)。
ここから長い長い15分近い煽り。
コール・アンド・レスポンスっていうんですかね?
その間YOSHIKIはCO2撒き散らすは、扇風機をドラにぶつけるわ、TOSHIは客席突っ込むわ、
HIDEは意味不明のHIDEダンス踊ってるわのカオス状態。
真面目に演奏しているのはPATAとTAIJIだけ(笑)。
で、ここから煽りながらそのまま『Orgasm』に戻していくのが圧巻。
観客の盛り上がりがピークに達したところでPATAのギターソロ。
鳥肌モノ。
で、最後のコーラスでの観客のレスポンスの大きさと言ったらもう東京ドームが振動してるみたいでした。
そしてラストでドラム破壊で終了。
「あ!だから途中なぜか赤いドラムが吊るされてやってきたのか!」
そう、通称「壊す用のドラム」ですね(笑)。
クリスタルドラムは変えが効きませんから。
アンコールから本当のラストはやはり『X』ジャンプ
ここからはアンコールです。
パッケージ裏にセットリストが書いてあってアンコールもアンコールとして書いてあるのでサプライズもクソもありません(笑)。
紅~JOKER~X~ENDLESS RAIN~Say Anything(カーテンコール)と。
『紅』は正直音が残念ではありました。
やはりこの曲や『silentjealousy』はスタジオ盤が最高だなと。
あの音の重厚さはギターが3,4人はいないと再現できないから。
ただ、プレイ自体は熱かったね。
人生で初めて衝撃を受けた曲の衝撃を受けたドラミングを動く映像として初めて見ることになったので。
かっこよかった。
紅のドラムは心底かっこいい。
「ホントに最初から最後まで叩きまくるんだな」
っていうのが感想です。
そして『JOKER』。
この曲くらいなると、メンバーもTAIJIのことが吹っ切れたのか割りと明るい。
TOSHIのモンキーダンスは笑えた。
あの髪型とメイクの人がする動きじゃなくて。
「Xってこれもありのバンドなの?」って。
『JOKER』が終わってからがホントのラストに向かって全力MCが始まります。
まず、ビデオカメラを煽って全員が強制的に脱がされます。
で、
「ビデオがここまでやったんだから、テメーらも心から裸になっちゃえよオイ!」
です。
ここから畳み掛けるような「ラストナンバー行くぞぉ!」のシャウトはマジで鳥肌モノです。
で、ドンドコからの『X』。
『JOKER』からすでに声はボロボロ。
裏返る寸前。
正直「歌えるの?」って思ってたところからのあのシャウトでしょ?
「TOSHIは化け物か⁉」って思いますよ。
あれだけ所狭しと走り回ってこれだけの全力シャウトして。
これを3日も続けているそのラストのラストです。
YOSHIKIもすごいがTOSHIの体力も無尽蔵なのかなって思います。
YOSHIKIは最後の方ほとんど意識ないでしょうね。
もう意識なくても体が覚えているんでしょうね。
それをすごく感じるドラミングです。
Xジャンプの時の地鳴りのような感性は凄まじいの一言。
音のバランスは悪いし、TOSHIの声はボロボロなんですが、
メンバー全員が泣いている最初で最後のお別れシーン
そして3回目のアンコールが本当のラストになります。
『ENLESS RAIN』ですね。
メンバー泣いてます。
あの「俺は泣くことはねーな」と言い放っていたPATAまで。
数多く演奏されてきた『ENDLESS RAIN』の中で最も長い時間演奏されたものでしょうね。
ギターソロが泣ける。
TAIJIはうつむきっぱなしでカウボーイハットで目が見えることはありませんが、頬を涙が伝っています。
かなり心に来るものがあります。
そして『Say Anything』が流れカーテンコール。
いやー、一通り見終わったあと放心状態になりました。
あんな派手なかっこしているのにライブではすべてさらけ出すんだなって感じました。
本格派のライブバンドなんだなって。
Xは”ライブバンド”ということがよく分かる作品です。
この後しばらくは毎朝4時に起きて毎日見てました、このビデオ。
ドラムの音が大きすぎるし、HIDEのギターの音が小さすぎるし、TOSHIの声の調子は良くないし、
TAIJIは葬式みたいにしているし、コンディションは最悪なのにこの『3DAYSでのプレイが最高』と言える曲が多い。
この『破滅に向かって』の映像は『音楽を聴く』ものではないんです。
これは『X』というなんだか表現できないエンターテイメントを『感じる』ものだからです。
特に聴いてほしいのが
『WEEKEND』『VoicelessScreaming』『Unfinished』
ですね。
『Standing Sex』もそうだし『Celebration』もそう。
『Orgasm』の展開も完璧。
そして『DesparateAngel』はTAIJI脱退後演奏されなくなっただけじゃなく、ライブ音源これしかないんじゃないかな?
伝説の終幕となるメモリアルな作品
これはXとしての最後のライブです。
オリジナルメンバーという意味でもバンド名という意味でもです。
『バイオレンス・イン・ジェラシー・ツアー』のラストを飾る東京ドーム3DAYSの3日目を収録したもの。
また、このライブを最後に『アート・オブ・ライフ』をレコーディングするために渡米することになっており、
次にいつ帰ってくるのかが分からないというある種の『お別れライブ』的な物悲しい雰囲気が終始観客席に漂っています。
けれどもメンバーがラストに泣いていたのはファンとのお別れが理由ではなく、
実はTAIJIとのお別れを悲しんでいたというわけです(ファンはTAIJIがクビを宣告されていることをこの時点で知らない)。
なんというドラマ、、、。
HIDEはこのTAIJI解雇についてその後しばらく、まったく音楽が手につかないほど引きずったと語っていました。
私は個人的にXの黄金期はメジャーデビュー時のオリジナルメンバーの頃だと思っています。
また、その後、X JAPANになってからメンバー各自がソロで大成功を収めバラバラになっていくことを思うと、本当の意味でバンドが一丸となって目標へ突き進んでいたこの頃が一番魅力的でした。
Xが前人未到の地をひた走り、伝説を作っていたのはほとんどここまで。
Xにとって大きな分岐点となる非常に重要なライブです。
このビデオ、今ではDVDかブルーレイだと思うけど、Xファンであればこれはマストの一枚です。
You Tubeにも昔から違法アップされては消されの繰り返し。
それほど人気の高いライブです。