『ダウン・トゥ・アース』(オジー・オズボーン)~インパクト弱いけどメロディが頭に残って離れない~
どうもSimackyです。
本日はオジー・オズボーンの2001年リリース8thアルバム『ダウン・トゥ・アース(Down To Earth)』を熱く語りたいと思います。
このアルバムね~…
評価低いよ!
どういうこと!?
前回の『オズモシス』同様に良く言っている人があんまりいない!
というわけで、本作が好きな私としては、定説を覆して再評価をしていきたいと思います。
このアルバムを語る上では、二転三転したメンバーチェンジの経緯を抜きにしては進められません。
まずは『オズモシス』リリース後の状況から語っていきましょう。
アルバム制作までの経緯
本作に対してよく語られるのが、ずばり!
「ザック・ワイルドが作曲に関わってないからギターがおとなしめで物足りないんだよね」
これですね。
前作まではそれまで通りオジーと一緒に作曲から携わっていた3代目ギタリスト:ザック・ワイルドが、なぜ演奏だけの参加となってしまったのか?
4代目ジョーホームズの存在
それは実はオジーバンドの4代目ギタリストであるジョー・ホームズの存在が関係します。
「ジョー・ホームズって誰?4代目なんていたっけ?」
という声が聞こえてきそうですね(笑)。
ザック・ワイルドの存在が大きすぎるためというのもあるし、アルバム制作に関わっていないということも要因でしょう。
しかし、実は足掛け6年近くも在籍しているんですよ!
もうかれこれ20年以上も前の話で、当時私は高校3年生ですよ。
当時は音楽雑誌でも正式な4代目として大々的に露出していました。
この頃はわりと頻繁に二人でインタビューに応じていた記憶があります。
動いている映像としては、当時はYou Tubeなんてなかったから観たことありませんでした。
最近知ったのですが、前作の「シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド」のPVに出演してますね。
ライブパフォーマンスとしてはザックほどのインパクにかけるものの、私は予想以上にかっこいいと思いましたけどね。
⇩この映像は1996年の『オズフェスト』のものです(なんとオジーのオフィシャルチャンネル)。
上半身裸で演奏するジョーは若い頃のレッチリのジョン・フルシアンテみたい。
バックメンバー3人ともオルタナティブバンドみたいなオーラを出してますね。
2001年リリースの『ダウン・トゥ・アース』制作メンバーであるロバート・トゥルージロ(ベース)とマイク・ボーディン(ドラム)が、5年前のこの時点ですでに加入しているのは驚きです。
どうしてザックは外されたの?
このあたりの経緯は私の記憶だけを頼りに語っていきますので、間違っていたらすみません。
前作『オズモシス』のリリース後に、さあツアーという段階になって、ザックはガンズ・アンド・ローゼズから加入を打診されてます。
ガンズは1995年のこの頃、イジー・ストラドリンが脱退したため、代わりのギタリストを探していました。
そこでスラッシュと共演歴があったザックに白羽の矢が立ったんですね。
オジーの奥さんのシャロンの言い分としては
「ザックがツアーに参加するのかどうか、最後までちゃんとした態度を取らなかった」
というもので、結局しびれを切らして新しいギタリストをオーディションし始めます。
そこで加入したのがジョー・ホームズです。
私の記憶によると、この頃の音楽雑誌では
「ザックはオジーを裏切り、ガンズと両天秤にかけた腹黒いヤツ」
みたいな論調が見受けられましたね。
ザックがちょうどこの頃ソロ名義で「ブック・オブ・シャドウズ」という隠れ名盤を出しているのですが、インタビューでも新作への質問はそっちのけ。
オジーとガンズに関しての質問ばかり。
まるで犯罪者を問い詰めるかのような口調で質問している雑誌もあり、しどろもどろになっていたザックを覚えています。
今からは信じられないでしょうが、あの人気者ザックがちょっとした悪役扱いだったんですよ、ほんとに。
それとは対象的に、新しく加入したジョーは4代目ギタリストとしての期待が膨らまざるをえないほどの経歴。
なんと!
初代ランディの教え子であり、2代目ジェイクのギターテクニシャンという、まさにオジーバンドに加入するために生まれてきたかのようなサラブレッドぶり(笑)。
ジョーとザックがまるで栄光と挫折のコントラストを描いているようにさえ見えてました(笑)。
ザックの電撃復帰!
月日が流れ、1998年。
私は当時大学生でした。
バンドサークルの先輩が
「オジーの武道館ライブ行ってきたよ!ザック超かっこよかった!」
って言うんです。
「は?何言ってるんスか先輩。今のギターはザックじゃなくてジョーですよ?この前(1996年ツアー)もジョーが来てましたよ」
やれやれ、ザックとジョーの区別もつかない”にわか”オジーファンはこれだから困るぜ…
みたいに鼻で笑ってやりました(来日してたことも知らなかったお前こそ”にわか”じゃねぇか)。
「いやぁザックだったよ。本物!絶対!」
そして後日、愛読書のBURRN!でその武道館の記事を目にします。
なんと本当にザックが復帰してる。
しかも、あのむさっ苦しいヒゲヅラを綺麗に剃り上げて、昔のイケメンに戻ってます。
オーラが半端なく、この間までの犯罪者扱いはどこへやら…。
完全に「?」な状況。
確か、記憶によるとオジーが
「正式にギタリストとして契約しているのは今まで通りジョーだ」
みたいなことを言っていたのですが、じゃあなんで今回はザックなのか意味不明。
で、2001年新作となる本作を発売日に手に入れて、ライナーノーツを読むと、クレジットはザック…。
しかも演奏だけ?
実は、オジーが言っていたのは嘘ではなく、1998年日本武道館コンサートの後もジョーはまだオジーバンドに在籍しています。
その証拠となるこの動画は2000年のものです。
2001年に本作のリリースなので、本当に直前まで確かに在籍していたことが伺えます。
しかし、新作の制作段階で
「ジョーとはケミストリーが生まれなかった」
という理由でジョーを解雇。
ちなみにジョーが制作に関わっている曲は2曲(#5「ザット・アイ・ネヴァー・ハド」#11「キャン・ユー・ヒアー・ゼム? 」)だけで、他のギターはプロデューサーのティム・パーマーが作ってます。
そして、ザックはその出来上がったものをレコーディングしただけ。
色々と案を出したけれどもほとんど却下されたとのこと。
そういう背景があるため、ある程度ヘヴィではありながらも、ザックの荒々しい『らしさ』が感じにくい作品になってしまったのかな、と。
今作でのオジーの狙いはどこにあったのか?
せっかくあれだけの個性とスーパーテクニックを持ち合わせたザックを起用しているのに、演奏だけ。
ザックのアレンジ案は却下。
この当時はどうしてそういうことになったのか意味不明だったのですが、このアルバムから2020年リリース「オーディナリー・マン」にいたるまでの4作の流れを見るとオジーの目指していた方向性が推測できます。
あくまで私の私見で語りますね。
「オジーの個性VSギタリストの個性」という構図は、ランディ・ローズと作った1stアルバムから鉄板のフォーマットだったと思います。
ギタリストが変わるたびごとにファンたちは
「今度のギタリストはどんなスーパープレイを見せてくれるんだろう」
と期待に胸を膨らませる。
しかし、オジーはこの方法論での制作を、6th「ノー・モア・ティアーズ」まででやりきったと感じたのではないでしょうか?
実は、7th「オズモシス」からは「オジーVS外部ソングライター」という構図になっており、
『外部ソングライターと起こす化学反応により新たに引き出されるオジーのヴォーカルの魅力を前面に出す』
というスタイルに少しずつ変化しているように感じるんですよ。
『ギターヒーローの個性にフォーカスする』という意思が感じられないんですよね。
それでもまだ『オズモシス』ではプロデューサー:マイケル・ベインホーンの意向か?ザックのギタープレイにフォーカスされていた方だと思いますけどね。
本作からはガラッと変わります。
ギターはプロデューサーが兼任している割合が、本作以降だんだん増えてきてます。
歴代プロデューサーらがギターを兼務するということはどういう意味を持つか?
それはギターというパートだけを見る視点で弾くのではなく、トータルバランスとしてその曲が最も魅力的に仕上がるためのプレイに徹するということです。
オジーと外部ソングライターが生み出す世界観、そしてそこに新たに生まれるオジーの魅力を壊さないように、弾き過ぎず、最大限の配慮をしているように感じました。
つまり、「ザックの個性が出ていない」というのは、”失敗”ということではなく意図的にそういう方向性で進めているということなんだと思います。
オジーのファンはこれまでのしびれるようなスーパーギタリストのプレイを、当然のごとく期待しているので、物足りなく感じるのはそのためでしょう。
ここで1つの疑問。
「プロデューサーの案を弾かせるだけなら別にそのままジョーでも良いし、なんならセッションミュージシャンでも良かったんじゃね?」
そう思いますよね?
なのにザックに切り替えたということは、セッションミュージシャンとしてもザックの持つセンスやスキルは相当高いからなのだと思います。
彼の力量を知ることができる教則動画はあちこちに転がってますから見つけてみてください。
化け物ですよ、ホント(笑)。
こうした方針転換のため、本作以降の作品はどれもオジーの歌を中心に構成されており、オジーが生き生きとしているように感じます。
聞きやすく、苦手な曲、分かりにくい曲があまりない。
そのため、このアルバムに対してのレビューを調べてみても
「インパクトのある曲はないけど悪い曲もない一定水準以上のクオリティ」
という声が多いと感じました。
私もご多分にもれず、本作を聴いたときは
「インパクト弱いな~。もう少しスリリングさが欲しい」
だったんですよ。
けれども、買ってしばらく熱心に聞く時期が終わって、しばらくするとメロディが頭の中に流れてくるんです。
で、そのたびにCDをトレイにセットする。
そういうことが何年か続くうちに気づくんです。
「このアルバムのメロディって心に残るな」と。
自分でもそうだとは認識しないうちにお気に入りのアルバムになっていると。
そういう『あとをひく』変な作品です。
なので、ザックのギタープレイに物足りなさを感じながらも、もうしばらく付き合っていただければ良さがきっと見えてくると思うんですよね。
『ダウン・トゥ・アース』のおすすめ曲
意外な話なんですが、本アルバムは評価低い割に日本でのオジー人気はピークに近かったのですよ。
なんと日本でのチャートアクションはは『オズモシス』についで2番目となる8位。
一番売れたのは前作『オズモシス』で7位です。
#1『ゲッツ・ミー・スルー』
この曲は「あとをひく」曲の代表ですね。
アルバムの印象は良くないのに、なぜかこのメロディが耳に残って定期的に聴きたくなってました。
このことからも、非常に良質のコマーシャル性を持っていることが伺えます。
#3『ドリーマー』#8『ランニング・アウト・オブ・タイム 』
今回の『あとをひく』特性はバラードナンバーもそうなんです。
聞き始めの頃は前作『オズモシス』の「シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド」や「オールド・LA・トゥナイト」に比べてかなり見劣りすると感じていました。
けれどこれがジワジワとくるんですね~(笑)。
#3は言わずもがなの名曲で、シングル『ドリーマー/ゲッツ・ミー・スルー』は、「ショット・イン・ザ・ダーク」以来、16年ぶりに英チャートで20位以内に入ります。
個人的にジワジワ来るのは特に#8ですね。
#5『ザット・アイ・ネヴァー・ハド 』
数少ないジョーの残したギターフレーズをザックが鮮やかに仕上げてます。
このアルバムの中で一番のお気に入りです。
というよりこれはれっきとした名曲です。
インパクトのあるリフが少ないアルバムの中で、この曲のリフは最初っからツボでした。
マイク・ボーディンのタムがドッカンドッカン鳴ってます。
本人たちの手応えも良かったのでしょうか?
ライブのセットリストにはかなりの頻度で入っています。
これってオジーのようなキャリアの長い人のライブでは凄いことなんですよ。
ランディ、ジェイク、ザック、そしてブラックサバスとそれぞれの時代の鉄板アンセムを4曲ずつでもセトリに入れたら、それだけでもう16曲ですからね?
新曲を入れる余地がほとんどない。
『オズモシス』ツアーのときは新作からの選曲は『ペリーメイソン』と『アイ・ジャスト・ウォント・ユー』の2曲だけ。
つまりセットリストに入るということは、そのアルバムの中で上位2曲に入る自信作ということを意味します。
本作はこの曲と#1「ゲッツ・ミー・スルー」でしたね。