『LOAD』(メタリカ)ジョジョでも登場した問題作は駄作か傑作か!?
Simacky(シマッキー)です。
本日はメタリカのアルバム『LOAD』を私なりに語っていきます。
ジョジョのスタンド『ロード』として登場したアルバム
本ブログ『ひよこまめ』においては基本的には音楽、特にロックをメインとして執筆しておりますが、もう一つの看板メニューとして『ジョジョの奇妙な冒険』の考察・解説を行っております。
そして今回紹介する『LOAD』はそのジョジョの奇妙な冒険第5部においてスタンド能力として登場します。
うねうねした気持ち悪い(かわいい?)スタンドが
「ろおおおおおぉぉおどぉぉぉ~~」
って鳴きます(笑)。
作者の荒木先生が何を思って『アルバムタイトルを鳴き声に使おう』という着想に至ったのかは、例によって謎です。
そこは天才の至る境地なので、凡人の私の預かり知るところではございません。
そしてそんな天才がインスパイアされるだけあり、本作は一癖も二癖もあります。
それどころか
「メタリカ史上、いえ、ヘヴィメタル史上最大の問題作品」と言えるでしょう。
このアルバムには本当に苦労させられました(苦笑)。
あぁ、、、思い出すだけで気分悪くなってきた、、、。
私のようになってはなりません。
このアルバムの犠牲者を出さないためにも、私は語らねばなりません。
このアルバムとの『正しい付き合い方』を!
終わることなき煩悶の戦いの始まり
『メタリカ』、、、、
ヘヴィメタルの代名詞とも言えるバンドの名前。
世界中に熱烈なファンを持ち、そのファンたちに支えられながら時代を切り拓いてきたバンド。
傍(はた)から見てればそう見えるでしょう。
けれども、一度このバンドの虜(とりこ)になってしまうと、
終わることのない煩悶(はんもん)の日々の中にいつしか巻き込まれ、自己肯定と自己否定の間をさまようことになるのです。
長い間、世界中のファンたちを何度となく苦悶のどん底に落とし入れるバンド。
それがメタリカです。
特に1990年代からその傾向は激しくなります。
生み出す作品は毎回ファンの誰も望んでいない明後日の方向に全力疾走してるし、
ファンの好みとは畑違いの音楽にまで飛んでいくんで、
「自分が変化についていけないから分からないのか?単なる駄作なのか?」
という出ることもない答えを己に問い続け、アマゾンレビューやブログ解説をあさり読み、
「そうか!やっぱ俺と同じ気持ちの人って多いよね!?」
と思えば、最近メタリカ聴き始めた友達とかに
「新作めっちゃ良いよね!」
と言われ奈落の底に落ちていく、、、、。
全世界3500万人のメタリカファンの皆さん。
本当にご苦労様でした(笑)。
ファンたちの屍(しかばね)の上を迷うことなく突き進む妥協なきアイアンマン。
そんなメタリカが1996年に放った史上最大の問題作!
それがこのアルバム『LOAD』なのです。
このアルバムがリリースされる当時のシーンはどうだったか?
このアルバムが発表された1996年まではどういうシーンの流れだったのかを、ざっと説明しますね。
まず、ニルヴァーナのカート・コバーン亡き後(1994年)とは言え、以前としてオルタナティブロックは人気があり(日本だからかな?)、「メタルダサい」の風潮は依然としてありました。
パンテラやセパルトゥラなどのように、ヘヴィロック路線ですでに後進のバンドからリスペクトを集めるバンドもいれば、時代に乗る音楽に転向できない旧メタル勢もいたり。
各バンドが生き残りをかけて音楽性を模索する中、一足先に前作『ブラック・アルバム』でニルヴァーナと並ぶ時代の寵児(ちょうじ)となったメタリカは、世界中から引っ張りだこで、5年にも渡るワールドツアーをしていました。
完全に『メタルの世界での背くらべ』から脱却して、余裕の貫禄が漂っていましたね。
メタルの世界でもメタリカは別格というか、別枠といったほうが正確かもしれません。
注目のされ方が尋常じゃないというか、音楽雑誌にも
「次にメタリカが出す作品で向こう10年のロックシーンが決まる」
ぐらいの書き方されましたから。
当時の私は高校3年生。
毎日学校帰りに本屋で音楽雑誌を読むうちに『BURRN』でメタリカの記事を読み、『ブラック・アルバム』を買ってメタリカにハマるのがまさにこの頃です。
このアルバムに衝撃を受けた私はすぐさまリリースされてすぐの『LOAD』を購入することになるのですが、、、
「んんッ?」
なんか音がぜんぜん違う。
こもったような音というか。
ギターの音がメタルじゃないみたい。
あれ?あれあれあれ?
雰囲気明るくない?
なんかカヴァーアルバムみたいにリラックスしてない?
なんかもっとかっちりしてたような?
当時、まだロックを聴き始めたばかりの私の周りにはメタリカに注目している友達もいません。
これをどう受け取れば、どんな反応をすれば正常なのかが分かりません。
心のなかではあんまり良くないと思っている。
けれども前作であれだけかっこよかったメタリカの最新作が
実はあんまりよくない
なんて認めたくない。
「俺がまだロック初心者だからだ」
そうしているうちに1ヶ月、2ヶ月と経つと『BURRN』にも記者の批評や、他のミュージシャンたちからのこのアルバムに対する意見なんかも出てき始めます。
びっくりしたのが、ほんの先月号までメタリカと友好的な関係がインタビューから伺いしれたバンドでさえ、思いっきり辛口のコメントをしていたことでした。
同じスラッシュメタル四天王と言われるアンスラックスやスレイヤーのメンバーですね。
アンスラックスのチャーリーとスコットは
「あのアルバムはクソだ」
みたいなこと言ってたし、
スレイヤーのケリー・キングは
「メタリカは終わった…」
とか言ってるんですよ?
「そんなこと言ったら今後の関係にヒビはいるんじゃないかな?」
と心配になるほどボロクソに言ってましたから。
逆に意外だったのがメガデスのデイブ・ムステインで、いつもはメタリカの話題振られると機嫌悪くなるのに、
「新作の方向性に共感するよ」
とまで言っていたことでした。
一体何があった?
気になったのが、否定派の意見を読んでいると、どうやら私の感想と違うということ。
否定派の意見は
「売れ線に走ってメタルを捨てた」
ほぼこの意見だったように思います。
しかし私からすると
「いや、売れ線!?これ一般人に売れる?」
って感じ(笑)。
それぐらいまったく意味分からなかったし、気持ちよくなるポイントが見いだせなかった。
つまり「よりソフトで分かりやすい音楽になった。だからダメだ」ということらしいのですが、私にとっては難解で、全然キャッチーでもなくて、世間一般的にはこれが『売れ線』音楽と捉えられている事実に打ちのめされました。
「俺だけがおかしいのか!?」
結果として『吐くほど』聴き込む地獄の日々がしばらく続きました。
受け入れられなかった要因とは!?
『吐くほど』聴き込んだのと、同時期に聴き込み始めたサウンドガーデンの『スーパーアンノウン』がこんなローファイサウンドということもあり、
だんだん慣れてきて、なんとか無事に数曲は好きな曲ができました(なんかもう無理やりでした)。
通常、このアルバムの否定派の意見として多いのが、かつてのスラッシュメタルのメタリカと比較しての否定が多いのかな、と。
けれど私はこのアルバムの後に3rd、2nd、1stという流れで入っていくことになるため、この時点で
「スラッシュメタルじゃないから嫌だ」
とはなっていないわけです。
それに「『ブラック・アルバム』に似てないから嫌だ」と言うほどには、似た作風を期待してはいなかったし。
結局、そこがこのアルバムの本質的な問題点なのではないかな、と。
つまり、
「それまでのメタリカの音楽性を支持してきたのかどうか?」
「スラッシュメタルであるかどうか?」
「変化を受け入れることができるかどうか?」
などの先入観は関係ないということです。
『LOAD嫌い=スラッシュメタル原理主義者』みたいに言われがちですが、私のように特にこだわりがなくても全然ピンとこない人も多かったと思うんですよね。
と、いうことは単純に
音楽のクオリティの問題
だったり
音の好みの問題
もあるのでしょうね、多少なりとも。
もちろんこのアルバムが最初から大好きという人も間違いなくいますし、好みの部分もありますが、あれだけ物議を醸すからには内容的に何かしらがあるのでしょう。
それでは、どんな部分に評価が分かれるポイントがあったのか?
ローファイでルーズなガレージサウンド
まず、一番大きな要因は”音”ですね。
『LOAD』のサウンドに強い影響を与えたサウンドガーデン『スーパーアンノウン』も同様の理由であまり好きにはなれませんでした。
このアルバムは『LOAD』とサウンド、雰囲気が非常に似ていて、こちらも未だにそこまで好きになれません。
大名盤であることは認めますが。
ちなみにメタリカと同様に、その1つ前の作品は非常にメタリックな歴史的名盤『バッドモーターフィンガー』で、そちらはかなりお気に入りです。
メタリカがやる音楽としてどうこうではなく、そもそもこの手の音が苦手のようですね、どうも。
『アンド・ジャスティス~』のあのペラペラの音作りでさえ、最終的にはかっこよくなってきたのですが、『LOAD』の音は未だに好きになれません。
ちなみに、『LOAD』と次作の『RELOAD』は一緒くたにされて語られますが、ちゃんと聴きこんでみてください。
最初は似たように感じますが実は音の構造がわりと違うんですよ。
いえ、私的にはもう全然違います。
かなりルーズな音だった『LOAD』に対して『RELOAD』は音をタイトにまとめています。
それはギターにしてもそうですが、特にドラムの音が顕著に違います。
明らかに音が硬質化しています。
「同じ時期に作った曲で、もともとは2枚組にする予定だったから2枚で1つの作品と見るべき」
「『LOAD』の選曲に洩れたアウトテイクの寄せ集めだから『RELOAD』はさらに悪い」
そういう語り口で片付けられることが多いですが、同じ時期に作ったという点以外は私は賛成しませんね。
この2枚のリリースには1年半もの間が空いており、当時の音楽雑誌でのジェイムズのインタビューでは
「『LOAD』は5年ぶりのレコーディングということもあり、勘を取り戻すことができていなかった。だから先に比較的シンプルな曲をラフな感じで録って『LOAD』に入れた。けれども『RELOAD』では慣れてきたので、『LOAD』以上に凝った音作りと複雑なアレンジに取り組むことができた」
みたいなことを語っていた記憶があります。
分かりやすく言うと
「ラフに録ったままをあまり加工せずに使っている」のが『LOAD』で、
「録ったものをあの手この手で加工している」のが『RELOAD』というわけです。
このサウンド・アレンジ両面での大きな違いを見過ごして、一緒くたにするのはいくらなんでも雑です。
ちなみにそのクオリティのままで録ったアルバムがカヴァー集『ガレージ・インク』ですね。
なので、私の場合『LOAD』と『RELOAD』は全く別個の作品です。
『RELOAD』は音に対する抵抗がほとんどなく、好きになるのに時間がほぼかからなかった。
サウンド的には『RELOAD』と『ガレージインク』が共通しており、どちらもサウンドはかなり好きです。
もちろんこれは音の好みの問題ですが。
メロディに”フック”が弱い
『LOAD』は曲のスピードの起伏があまりなく、ジャムっぽいルーズな雰囲気のものがいくつかで被っています。
そのため後半にダレる部分があります。
しかし、曲調が似ていることはパンクバンドのアルバムなどでは当たり前のことです。
グリーン・デイが2000万枚以上売ったデビューアルバムの『ドゥーキー』なんて全部同じ曲調なんです。
でもファンは誰も「ダレる」なんて言いません。
「曲調が同じでダレる」
という感想が出る時点で、要はメロディに惹きつけるものがない証拠で、そんな時に出てくる感想が「曲調が同じ」です。
まあ、そうは言っても数曲は心に響くものもあります。
残念なのは間延びした曲の影響で、名曲が埋もれてしまうことにあるのではと。
結構いい曲があるのに埋もれてしまっている
いくらなんでも79分は長すぎる。
いえ、それを長く感じさせないほどのメロディの魅力があればなんの問題もないのですが。
メロディに惹きつけられるのがぶっちゃけ3,4曲に1曲位の割合なので、いい曲が出てくる前にすでに集中力が切れちゃうんですよね。
特にラストの「ジ・アウトロー・トーン」なんかは10分近くもあり、聴くのにエネルギーを要するのですが、そこに行き着くまでにすでに約70分も聴いているわけです。
この曲は結構名曲だと思うだけに非常にもったいない。
曲紹介~全部聴こうとしちゃ駄目!~
これが私の結論である『LOAD』との付き合い方です。
#1「Ain’t My Bitch」5:00
#6「Hero of the Day」4:20
#7「Bleeding Me」8:17
#10「Wasting My Hate」3:57
#11「Mama Said」5:19
#14「The Outlaw Torn」9:48
トータルタイム 36:41
この私のおすすめ6曲をマイリスト登録して聴いてみてください。
似たような曲がなくなることにより、メリハリが付き、アルバムの評価がどれだけ変わるのかが分かります。
「このボーナストラックのせいでアルバムの雰囲気が台無しだよな」
っていう気持ちになったことありません?
アレと同じです。
好きになれない曲はアルバムのトータルイメージを著しく下げます。
他の曲を聴き始めるのはこれらを聴いてからでいいと思います。
これはあくまで私の好みでの選曲ですからこうなっていますが、人によっては全然違う曲でもいいと思います。
お伝えしたいのは、6,7曲に絞るだけでアルバムの印象がガラッと変わるということです。
「アルバムは最初から最後までこの並びで通して聴かなければいけない」
なんていう考えは一旦横に置いておきましょう。
『LOAD』が教えてくれたもの
このアルバムは実はメタリカのどのアルバムより一番聴きこんでいます。
なぜなら自分の音楽の許容範囲を広げたかったからです。
メタルを好んで聴いているこんなマニアックなブログに行き着いたあなたならこんな気持になったことありませんか?
「なんかこんな音楽ばっかり聴いてたらこれしか聴けなくなりそう。もっと色んな音楽聞けるようにならないと単なるメタルオタクになんないだろうか?」
みたいな(笑)。
さらに我々の世代はオルタナブームど真ん中だったため、そもそもメタルを小馬鹿にする空気感とかもうっすら漂っていたりするわけですよ。
大学のバンドサークルもメタル系とかオルタナ系とか派閥がありました。
オルタナ系のバンドサークル主催のライブでハロウィーンなんて演ろうもんならつまみ出されます(笑)。
私は当時レッチリのカバーバンドをやっていたので、メタル系サークルに所属しながらオルタナ系のライブに頻繁に出演していました。
そんな時代にあって象徴的だった出来事が、そのオルタナ系サークル主催のライブでも『LOAD』のカバーバンドは受け入れられていたことなんですよ。
信じられない光景を見た気がしましたね。
メタルの象徴のような存在であるメタリカが、メタルを毛嫌いするオルタナ系のサークルでもてはやされていたんです。
しかもその『LOAD』は高校の頃に死ぬほど聴き込んだけど結局良さが分からず駄作扱いしていた作品なんですよ。
「やっぱ俺がセンス無いのか!?」みたいな(笑)。
で、棚の奥から引っ張り出してまた聞き込み始める、、、と。
そういう流れもあって結局メタリカアルバムで一番聴き込んでいるんですよね。
しかし、その時期は上記6曲くらいしか好きにはなれませんでしたね。
苦い思い出です。
メタリカを好きになればなるほど、このアルバムが理解できていない自分が許せなかったというのもあります。
音楽は好き好きなので、
「好きになる音楽もあればなれないものあるさ」
と割り切れればなんてことなかったのでしょうけど(笑)。
けれど、お陰でかなり鍛えられました。
おそらく世界中のメタリカファンもそうだったに違いありません。
他のバンドの新作がちょっと違う程度では、驚かなくなりましたし、簡単にポイすることはなくなりました。
とりあえずある程度はしっかり聴く。
しかし限度はありますよ?
この限度をわきまえないと私のように苦行になってしまいます。
良く分からない音楽をその時どんなに無理して聴いても、あまり効果はありません。
ある程度しっかり聴いた後は好きになるタイミングを待つしかないです。
それを教えてくれたのが他ならぬメタリカです。
私の場合、きっかけになったのがこれ。
このDVDで演っている『LOAD』の曲を聞いて「あれ?そんなに悪くないかも」となったことがきっかけで徐々に好きになり始めました。
このきっかけは様々です。
別のバンドがカヴァーしているヴァージョンを聴いたら自然とかっこよさに気づいたり、他のバンドのアルバムとシャッフルして聴いていたらよく感じてきたり。
そういうものですから、私のようにあまり根を詰めず気楽に行きましょう(笑)。
メタリカはこの『LOAD』では苦労しましたが、『RELOAD』『ガレージ・インク』は私の感性とピタリと一致してその頃は楽しかったな~(笑)。
しかし、その後も8th『セイント・アンガー』という爆弾をさらに投下してきます。
私にとっては9th『デス・マグネティック』も10th『ハードワイアード~』も結構な爆弾だったのですが、
世間一般的にはやはり『セイント・アンガー』が物議を醸したようです。
そのどれもを乗り越えた今にして思うのですが、
「やっぱりメタリカすげー」
ってことです。
毎回「何でこんな曲作るんだよ?もう才能が枯渇した?」とか思うのに、
良さがわかった時に
「あ、ホントに嘘偽りなく自分たちがいいと思ってやってるんだ、いつだって」
って分かるんですよね。
もう怖いものはない。
むしろ次の問題作を期待してます(笑)。
ハイ、というわけで本日は大問題作『LOAD』を語ってまいりました。
思いの丈の全てを吐き出しました。
長年の憑き物が落ちたような気分です(笑)。