「キル・エム・オール」(メタリカ)衝撃のデビュー作:今こそ見直されるべき普遍性!
Simacky(シマッキー)です。
本日はメタリカが1983年にリリースした1作目のオリジナルフルアルバム
KILL’EM ALL
(キル・エム・オール)
を語っていきます。
過激すぎる?でも現代の耳で聴くとそうでもない?
本日ご紹介するのはメタリカのデビューアルバム。
とは言っても2ndまではインディレーベルですが。
メジャーデビューは3th『マスター・オブ・パペッツ』になります。
この1stアルバムはかつて音楽雑誌にこんなふうに書かれました。
「こんなのは音楽じゃない。速すぎて何を演奏しているのか分からない」
ヘヴィメタル関係の雑誌にさえそう書かれるくらいなので、それほど1983年当時のメタルシーンでは浮いている音楽性だったんですね。
当時の異名は『世界一速いバンド』。
扱いとしては『キワモノ』扱いで、一部のスピード狂たちが聴くマニアックな音楽だったようです。
それは後に『スラッシュメタル』と名付けられます。
けれども時代が流れれば、『極端』とされていた音楽も『正当』の範囲の中に入ってきます。
昔はあの’50~’60年代にエルヴィス・プレスリー、ビートルズでさえ
「なんて騒々しい音楽だ」
という叩かれ方はしましたし、それは’68年のレッド・ツェッペリンの登場時もそうです。
私は今年43歳なのですが、私が高校の頃(1994年あたり)にパンテラのデスヴォイスを初めて聴いた時は、メタル好きの私でさえ
「いくらなんでもこれは行き過ぎ」
と感じたものです。
もう、何やってっか分かんない。
うるさすぎて全曲同じに聞こえてしまう(笑)。
が、’90年代のメタルシーンは『総パンテラ化』とも呼ばれる状況となり、その後の2000年代ニューメタルのシーンなどが形成されていきます。
デスヴォイスがヒットチャートに入るのが当たり前の時代になったのです。
現代でも一般人が見る人気アニメ「進撃の巨人」などの主題歌にもデスヴォイスが入っているくらいですから。
それをうちの子どもたちが楽しそうに
「ゔぉぉぉぉ~~~!!」
とか言って聴いてるんですよ(笑)?
時代は変わります。
そんなわけで、かつて「過激すぎる」と言われていたこのスラッシュメタルの原点である音楽性も、
現代の人からすると「普通のメタルの範囲内」と受け入れられるのでは?
と思い前回は入門編で2nd『ライド・ザ・ライトニング』をご紹介したんですね。
その「普通メタルの範囲内」と世間に受け入れられている事実をお見せしましょう。
これを見てください。
2016年3月23日、アメリカ議会図書館が「文化的、歴史的、芸術的に重要な録音物を保存すること」を目的に2000年から毎年行っている『国家保存重要録音登録制度』の2015年度作品に本作が登録された(ウィキペディアより引用『マスターオブパペッツ』で検索)
冒頭で紹介した3rdアルバム『マスター・オブ・パペッツ』が“国家保存重要録音登録”される時代ですよ?
ちなみに3500万枚売った5th『ブラック・アルバム』なら分からなくもないですが、3rd『マスター・オブ・パペッツ』は結構過激なスラッシュナンバーが入ってますよ?
時代は変わったんだな~とつくづく思います(笑)。
音楽性~かなりキャッチーなリフ~
メタリカといえば『リフ(リズムギター)』。
そのリズムギターを弾いているジェイムズ・ヘットフィールド(Vo)は『リフマスター』と呼ばれるほど、印象的でかっこいいリフを作るのが得意です。
この人がメタルの世界に産み落としたリフの数々は芸術品です。
あまりにも速く、体育会系な激しいノリは初心者を尻込みさせますが、安心してください。
決して小難しくはありません。
この1stアルバムではメタリカの長いキャリアの中で見ても、かなり耳に残り易いキャッチーなリフがてんこ盛りのアルバムです。
メタリカはメタルの代名詞的な存在なのですが、初期の2枚はパンク/ハードコアの要素も強く、シンプルでキャッチーなんですよ。
すっごい分かりやすい。
スラッシュメタルの代名詞であるドラムの『ツーバス連打』(つまり『ドコドコ』ですね)が、この頃はまだないのでより一層ハードコアっぽく聞こえます。
私が特に気に入っている秀逸リフが
#1『ヒット・ザ・ライツ』
#6『ウィップラッシュ』
#8『ノー・リモース』
#10『メタルミリーシャ』
お手元のサブスクで聴いてみてください。
オープニングの#1からワクワクしません?
ヘヴィメタルに対する先入観を覆すような、全然ダークじゃない曲調でしょ?
#6なんて、これってもはやスラッシュメタルなのでしょうか?
私の中では『パンクロックアンセム』なんですがね。
ところで、メタリカは7th『リロード』の後に正式に8作目と呼んでよいのか微妙な『ガレージ・インク』というカヴァーアルバムを出します。
このカヴァーアルバムで分かるのですが、メタリカって結構、ハードコアパンクのカヴァーがハマるんですよ。
相当好きなんでしょうね。
あのクイーンまでカヴァーしているのには驚きました。
このクイーンのカヴァーもめちゃめちゃかっこよくてキャッチー。
何の話をしたいかというと、メタリカはメロディにこだわるバンドということです。
速くて攻撃的な音楽でありながらも、それだけをよしとするのではなく、必ず良質でキャッチーなメロディが流れている。
だから、後にメタルの世界から飛び立ち、広く一般リスナーに向けた存在になっていくんです。
その『誰にでも刺さるメロディセンス』はこのデビュー・アルバムからすでにあったのだということを、感じていただけるかと思います。
ちょっぴり可愛いとさえ思えてしまうヴォーカル
ギターリフはすごくキャッチーで分かりやすいのですが、このアルバムのヴォーカルには抵抗を示す人もいるかもしれません。
入門編で次作の2ndを先に聞かれた方は思わず「プッ」となるかもしれません(笑)。
「なんでこのアルバムだけこんな甲高い声なんだ?」
それはメタリカファンの間でも永遠に解決することのない『謎』です(笑)。
「高い」というよりもはや「幼い」とさえ感じてしまうその声に、私はこう思いました。
「あ~、このアルバムの時だけまだ声変わりしてなかったんだな」
んなアホな!
2ndと1年しか違わないのにどうしてここまで違うのか?
釣り人にとって
「なぜボラは水面から飛ぶのか?」
という理由が永遠に分からないのと同様、解明されることはないでしょう(笑)。
日本のメタルを好きな人は是非!
メタルを抵抗なく聴ける人であれば、ほぼすべての人におすすめできます。
それほどこのデビューアルバムでのメロディはキャッチーだと私は思っているので。
また、「メタルは正直苦手で聴いてこなかった」という人でも、
’90年代に一時期流行ったグリーン・デイやオフスプリングなどのメロコアなどに馴染みのある人であれば、
このスピード感は大好きになると踏んでます。
今回は2ndアルバムを入門編としましたが、入り易さで行けばほぼ差はないと感じます。