『非実力派宣言』森高千里の覚醒!!!世の男達よ、森高に跪け…
どうもSimackyです。
本日は森高千里が1989年にリリースした4作目のオリジナルアルバム
非実力派宣言
を語っていきたいと思います。
森高千里の出世作
この『非実力派宣言』は森高にとっての出世作です。
“出世作“ということは、このアルバムをもって一般の人達に知られるようになった、ということですね。
セールス的には前作『見て』もオリコンチャート5位になっているのですが、セールス枚数はたったの6万枚と、あまり振るってませんでした。
今回は
オリコンチャート2位の22万枚
と、セールスを大きく伸ばしたこともあるのですが、本アルバムの収録曲である『17才』がシングルとしては過去最高の
トップ10入り(8位)22万枚
という問答無用のヒットとなり、音楽番組を始め、森高のテレビにおける露出が一気に増えたことで、世間の注目を集めた初のアルバムとなりました。
このジャケもインパクト大なのですが、テレビ番組ではホントにこんな超ミニで『17才』を歌ってましたもんね。
当然、小学生の頃の私が始めてテレビで森高を見たのも、この『17才』です。
小学生の頃のSimacky少年としてはソワソワしたものです(笑)。
「これ観てるとこ家族に見られたら変態(スケベ)扱いされるやつなんじゃ!?」
って誰でもなったと思いますよ、当時という時代背景を考えれば。
今と違って、テレビなんて茶の間で皆で観るものだったですからね。
本作の特徴は?
本作の特徴は
質の高いカバー曲の存在
にあります。
先程から言ってる『17才』は、アイドル歌手・南沙織のデビュー曲のカバーで、オリコン最高2位、レコード大賞の新人賞受賞、デビューから半年での紅白出場を成し遂げたほどのヒット曲です。
これすごい話なんですが、2000年代に入って銀杏BOYZもカバーしてまして、それもなんとオリコン最高7位を獲得してるんですよね。
つまり、1970年代、1980年代、2000年代の3つの時代でトップ10入をしているという、日本歌謡曲を代表する名曲なわけです。
どうりでメロディが良いわけだ。
本アルバムではオープニングでカーネーションがアレンジした『カーネーション・バージョン』で始まり、ラストを斎藤英夫アレンジの『オレンジ・ミックス』で締めくくります。
『オレンジ・ミックス』はシングルバージョンに近いアレンジですが、カーネーション・ヴァージョンはアコースティックで、個人的には好きになれません。
そして質の高いカヴァーのもう1曲が、カーネーションのファースト・シングル曲『夜の煙突』です。
こちらは『17才』と違い、原曲が持っているパワーが凄いっていうより、森高アレンジによって開花した曲というか(笑)。
だってカーネーションがリリースした時は
全然売れなかったので。
まあ、売れた売れなかったは音楽の良さとは関係がないので、カーネーションの原曲がどうなのか?は、これを聴いてご自分で判断してくださいな⇩
と、まあ、本アルバムはこの2曲(3曲?)のカヴァー曲の質の高さが引っ張っている側面は間違いなくあります。
だって、どちらも最後の最後までライブのセットリストに残り続けた人気曲に成長したのですから。
でも、森高はシンガーソングライターとして評価してもらうような、そっちの路線では勝負していないので、これで良いんだと思いますよ。
森高がやることによって曲が開花しているのは間違いありません。
これ観たらビビりますよ⇩
全然売れなくなって引退直前の『SAVASAVAツアー』(1998年)のものですが、盛り上がり方が異常。
ほぼプロレスのノリですね(笑)。
なんでこんなアルバムタイトルなの?
『非実力派宣言』って変なタイトルですよね。
何も知らない人からしたらですよ?
一見すると漢字6文字で、まるで中国人アーティストの作品かな?と受け取る人もいるでしょう。
けれども、これはこの時期の森高に特徴的な『怒りソング』の流れなんです。
森高は普段の生活で感じた怒りを歌詞にどストレートに込めることをその後もよくやっていて、『臭いものにはフタをしろ』『のぞかないで』『ハエ男』なんかの強烈な怒りを込めた『怒りソング』と言われる曲たちの先駆けかもしれません。
ご存知のように、森高の歌い方ってプロっぽくないというか、素人っぽい鼻声が特徴なので、音楽評論家なんかからは
「顔だけで売ってるアイドルだからこれでも許されるんだよ。実力派の歌手とは違うよね」
っていう論調は間違いなく当時あったのだろうと思うし、本人もそれを感じていたのでしょう。
「実力派じゃないからなんだってぇのよ!だったら私は実力派なんかじゃなくていいわよ!」
みたいな感じになって、やっぱりそれを歌詞にしちゃった、みたいな(笑)。
まあ、普通、テレビで歌っている森高を“アイドル”として観ている一般の人からすると
「何をそんなに怒ってんの?」
って感じでポカーンってするんでしょうが、“ミュージシャン”として勝負をしているつもりの本人からすると、そうした論調に我慢がならなかったんじゃないでしょうか?
楽曲解説
それでは楽曲解説行ってみましょう。
前作『見て』に比べ、全体的にかなり良曲が揃ってきてます。
森高千里の黄金時代の幕を開ける最初のアルバムと言ってもいいでしょう。
#1『17才ーカーネーションヴァージョンー』
うーむ、いかに頼りがいのあるヒット曲だからといって、ヴァージョン違いの曲でオープニングとラストを挟み込むなんて、かなりの力技ですね。
ここはガツンとシングルバージョン、もしくはオレンジ・ミックス・ヴァージョンで始めてほしかった。
それくらい、このヴァージョンは好きではありません。
#2『これっきりバイバイ』
ここで新境地、通称“森高ロボ”の登場です。
『非実力派宣言ツアー』のオープニングはこの曲で始まります。
こうして観ると、この曲ってオープニングのワクワク感を煽るにぴったりな曲ですね。
しかし、アルバムのあのジャケのコスチュームでホントにライブやってたとは…。
『オズの魔法使い』の演劇からそのまま出てきちゃった、みたいなノリ(笑)。
最初は全然いい曲だとは思わなかったのですが、これ、聴き込むと病みつきになりますよ。
#3『だいて』
なんというダイレクトな歌詞。
二十歳になったばかりの少女が歌うにはあまりにも過激なタイトルですが、歌詞は本人ではありません。
でも、過激なタイトルの割にはものすごくきれいなバラード。
これまた新境地ですな。
ジャケにしても楽曲名にしてもコスチュームにしても“色物感”が色濃く漂っているのですが、純粋に歌の良さだけで聴かせてきます。
『非実力派宣言』とか言っておきながら、ちゃっかり実力勝負をしてきてます。
1~2作目までもこういう曲調はあったかもしれませんが、声から明らかにあどけなさが抜けているので、大人びて聴こえます。
#4『非実力派宣言』
さて、問題のタイトルナンバーです。
この曲の歌詞は先程書いた通り、まさにそのまんまの気持ちを歌ってます。
タイトルナンバーの割にはかなり地味な曲ですが、歌詞ではすんごいこと歌ってます。
めっちゃ分かりやすく歌詞を意訳すると
「歌唱力?実力?そんなものを私に期待して聴いていたの?ごめんなさいけど、私はそんなこと一言も言ったつもりはなくってよ、このファッキュー・メン。私のお客たちはそこのところちゃんと分かって聴いてくれてるの。別にあんたたちみたいなファンキン・シットな頭でっかちのド腐れ野郎どもが聴いてくれなくても、私のこのエロい足に魅了されたアホな男共はメロメロになってるのよ。そしてこいつらはお前らみたいに金欠のマザーファッカー共と違って、私のDVDまで買ってくれる金づるなのよ。何も怖いものなんてないわ」
ってことになります。
森高ファンに殺されるぞ、お前…。
#5『今度私どこか連れていってくださいよ』
おじさんキラーな曲です。
こんな可愛い声とルックスでこんなこと言われたら、中年男性が断ることは
ほぼ不可能です。
そう、彼女は確信犯です。
きっとパパ活としたら、億を稼ぐことでしょう。
けど、どうも歌詞を読んでいるとサラリと躱されたようなので、どうも中年ではないモテモテのイケモンにアタックしているものと思われます。
森高を袖にするとはこいつもなかなかの男なのでしょうが、もしかしたら本能的に
森高のヤバさ
に気がついて逃げ出しのかもしれません。
めっちゃポップで「私がオバサンになっても」「あるOLの青春」なんかに繋がっていく雰囲気を持ってますね。
#6『はだかにはならない』
このジャケだし、テレビに出てもあのコスチューム(超ミニスカ)なので、この時期の森高は
森高ヌード待望論
が巻き起こっていたようです。
そんな風潮に対して、心外だった彼女はやっぱり気持ちを歌詞にしちゃいました(笑)。
「脱いでたまるか馬鹿野郎!」
ってな具合です。
どんだけ歌詞にすんの?
思ったまんまを口にすると、大人の世界では
生きづらくなるよ?
そんなもの彼女には関係ないんです。
アイドル森高と皆が思っていた彼女は、実は
パンクロッカー森高
だったのです。
#7『私はおんち』
出ました、私が認定する隠れ名曲です。
『だいて』もそうだったのですが、過激なジャケやインパクト大の言動(歌詞)の割には純粋すぎるほどの美しいメロディ。
これめっちゃ良い曲ですよ。
で、タイトルは間抜けだけど、歌詞は切実なまでに真剣。
なにより素朴なのが良い。
この曲って“アイドルぶってない”のがいいですね。
キャラを作っていないというか。
歌い方からしてそう。
等身大の森高千里が現れてます。
#8『しりたがり』
出ました、森高の自作曲。
まあ、大したメロディではないのですが。
なんか一服の清涼材というか。
お気楽に聞き流してください。:
#9『若すぎた恋』
ナチュラル系というか、華美なプロデュースがされておらず、自然な雰囲気なのがグッド。
結構好きです。
しかし引きずってるね~、昔の恋を(笑)。
#10『A君の悲劇』
『その後の私』に始まる、いわゆる『A子もの』と呼ばれるシリーズの前に、実は『A君もの』が1曲だけあったんですね。
「A子もの」よりひっでぇ歌詞です(笑)。
おそらく高校の頃(16才)にちょっと気になっていた男と空港で4年ぶりに再会した、と。
で、その彼は会った時の悲しそうな目からして、実は私のことが好きだったのね、と。
でも、私のことが好きだったからといっても、さすがに4年も恋人いないという状況は信じられないわ。
背が伸びて素敵になったように感じたから声をかけたのに、こんなザマだとはね。
正直、あんたにはがっかりよ、あの頃はもっと輝いていた。
今のあんたは気持ち悪いわ。
私はうまくやってるわ、ごめんね。
⇧これ一切脚色してませんかね?(笑)
こんなこと書いてるんですよ。
『怒りソング』というわけではないし、毒舌というわけでもないのですが、
手厳しすぎる森高の品定め。
#11『夜の煙突』
先ほど解説したのでこれ以上の解説は不要でしょう。
さっきは『SAVASAVAツアー』時のものでしたが、実はこっちのほうが好き⇩
うーむ、しかしこのイントロの振り付け一体誰が指示したんだ?
観てるこっちまで恥ずかしくなってくる(笑)。
#12『その後の私(森高コネクション)』
出ました名曲。
シングル級のクオリティを誇りますがれっきとしたアルバム曲です。
コンサートでのファン受けが非常に高く、人気曲に育っていきます。
この曲と、続編の『あるOLの青春』そして『私がオバサンになっても』『私の夏』といった代表曲たちは、印象的なシンセメロディが楽曲を引っ張っており、斉藤英夫の鉄板フォーマットですね。
このパターンが一番
「ああ!森高を聴いてる実感がある!」
って感じますよね。
それだけにこの曲も『あるOLの青春』もシングルで出せばヒットしたと思うのですが、まあ、それは結果論ですかね。
#13『夢の中のキス』
この曲の存在感がいまいちだから『17才オレンジミックス』で締めるしかなかったんでしょうね。
悪い曲ではありませんが、ちと弱い。
しかし、この曲はその後の森高ソングにとって非常に重要な存在なのかもしれません。
それは一発録りっぽいラフなサウンドで、ちょっとビートルズっぽいところ。
おそらく、このサウンドがヒントになって、その後『ペパーランド』以降の森高自身のドラム録りに繋がっていくのかな、と。
ほんと、何も知らないでこれ聴いたら『ペパーランド』の曲としか思えませんから。
#14『17才ーオレンジ・ミックスー』
さあ、ここで大トリです。
やっぱりシングルバージョンに近い、こっちのヴァージョンが圧倒的に素晴らしいです。
もっと言えば、ライブでもやってた『森高ランド』ヴァージョンがもっと凄いですが。
完璧な導入部です。
ここで男たちを
「オラ、ワクワクすっぞ」状態にします。
これぞ完成形ですね。
はい、ということで今回は『非実力派宣言』をたっぷりと語ってきました。
ジャケのイロモノ感が半端ないため、後追いの人からするとちょっと敬遠される匂いも放っていますが、森高の黄金期到来を告げる充実の内容になってます。
はい、これ読んで気になったらすぐにストリーミングでチェック!
Simackyでした。
それではまた!