『SAP』アリス・イン・チェインズ 絶対必聴のミニアルバム
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
今回はアリス・イン・チェインズが1992年にリリースした初めてのミニアルバム
『SAP』(サップ)
を語っていきます。
最初に言っておきましょう。
これは絶対聞くべきです。
これ聞かなきゃアリス・イン・チェインズを知ったうちには入りませんから。
アリス・イン・チェインズが天才であることを証明した作品
このアルバムとの出会いはいつだったかな~?
たしか2作目「ダート」にハマって、
「もう、ショップに並んでるアリスの作品は全部買うぞ!」
ぐらいにハマりまくっているタイミングだったと思うんですよね。
つまり3作目『犬』→2作目『ダート』→『SAP』→1作目『フェイスリフト』だったと思います。
けど、実はリリース順でいうと、『ダート』の7ヶ月前にリリースされてるんですよね。
なので、私ってきれいに逆順で遡ってしまったんですね(笑)。
『犬』『ダート』っていう作品は、アリスのダークな側面にどんどん特化していった作品だったので、この作風にはかなり驚いた記憶があります。
思いっきりアコースティックなナンバーで、全然アリスらしくなかったから。
しかし、本当に驚いたのは『ダート』のような超ヘヴィで激しい音楽を期待していた当時高校生の私が、この音楽に満足してしまった事実に対してです。
例えば、メタリカだったらあのスラッシュメタル(1~4作目)の爽快感を期待してアルバムを買うわけじゃないですか、メタルファンの皆は?
で、それが『LOAD』みたいな期待してた作風と違うとがっかりするわけじゃないですか?
けれども、本作の場合、そうはならなかった。
がっかりがなかったことに驚いたんですよ。
それほど内容が良かったんです。
らしくなかろうが、音楽性が良ければ人って納得するんです。
満足するんです。
つまりやっぱり『LOAD』ってあんまりいい作品じゃなかったのかな~、なんて思いましたね、高校生の当時(『LOAD』好きな人いたらごめんなさい:笑)。
まあ、でも本能的になんとなく分かっていました。
彼らがグランジ・ヘヴィミュージックをやっているから良いのではなく、彼らの作曲センスが根本的に優れているから良いのだと。
おそらく『ダート』を聴いていた時点で、
「彼らの底が見えない。まだまだ引き出しがあるはずだ。」
みたいな印象があったのかもしれません、直感的に。
その直感があながち外れではなかったことを思い知らされたというか。
「ああ、やっぱりね」
みたいには感じましたね。
凄まじいセンス。センスの塊。
本作が制作された経緯とセールス
本作は映画『シングルス』に楽曲提供を求められて、その契約でスタジオ入りしました。
これは最終的にアリスが『would?』を提供し、シングルヒットに繋がっていくのですが、実はセコい彼らは
「この契約でスタジオ入り出来たついでに他の曲もこそっと録っちまおうぜ」
と厚かましく10曲を作曲。
貧乏臭ぇな、おい(笑)。
その時のレコーディングで『would?』だけじゃなく、本作の5曲も、後に『ダート』に収録される「ダート」「ルースター」も録ってるんですよ。
ずる賢いな~(笑)。
けど、「would?」1曲を作るためのたかだか4,5日のスタジオ入り契約で10曲も作ってしまい、しかもそのどれもがクオリティが高い、なんて芸当が他の誰に出来ましょうや?
とんでもない男たちです。
本作の制作ではレインがジェリーにボーカルのアドバイスを行い、ジェリーにもリードボーカルを取らせています。
また、地元シアトルのバンド仲間たちもゲスト参加してます。
思いっきり’80年代メタル寄りなのに、オルタナブームの最中でもなぜかシアトルの人気者であり続けたハートからは、ボーカルのアン・ウィルソン。
そして同世代のバンド、マッドハニーからはマーク・アーム、サウンドガーデンからクリス・コーネル。
楽しんでるね~(笑)。
私は当時、輸入盤で本作を買ったのですが(確か新品でも1000円くらいだった)、輸入盤って解説はおろか歌詞もクレジットもなんにも情報が記載されていないので、
「ん~、なんか3曲目のコーラスってサウンドガーデンに似てない?もしかしてクリス・コーネル呼んでる?」
って思っていたのですが、雑誌でそれが当たりだと知ったときはガッツポーズしたもんです(笑)。
本作は1992年2月にリリースされるのですが、このタイミングってニルヴァーナが『ネヴァーマインド』でチャートトップに君臨していた頃なんですよ。
「ニルヴァーナが売れる直前に、『フェイスリフト』がゴールドディスクを獲得したことがグランジ勢力に追い風を与えた。グランジブームはニルヴァーナにアシストをしたアリスの存在あってこそだ」
みたいなことを『フェイスリフト』の記事でも書きましたが、今度はアリスがニルヴァーナのヒットの追い風を受ける中でリリースしたわけです。
なんと4曲入りのミニアルバムで、なおかつ本当のアリスファンを見極めるために一切のプロモーションを行わなかったにもかかわらず、ゴールドディスクを獲得しやがりました。
ちゃっかり与えた以上の恩恵受けとるがな(笑)。
他力本願にもほどがあるぞ。
いやいや、その前にちょっと待て…。
そもそもこのアルバムって
自分のレーベルの金じゃなく、映画製作会社の金で作ったアルバムなんですけど。
盗人猛々しいとはこのことです(笑)。
制作にもプロモーションにも金をかけずに利益だけかっさらいやがった!
これって純利益だったら100万枚売ったくらいの利益出てるのでは!?
だって普通、制作とかプロモーションにかかる費用って何千万単位、下手すりゃ億単位ですよ?
それが浮いているんならかなりの利益でしょう。
なんて悪党たちだ・・・。
ちなみにサウンドガーデンも、私が一番好きな『バッドモーターフィンガー』がこの4ヶ月前にリリースされ、初のトップ40入りを果たしており、シアトル勢が相乗効果を与え合ってのし上がっていったことが伺えます。
『SAP』楽曲レビュー
#1『Brother』
オープニングからジェリーのリードボーカルです。
レインはコーラスに回ってジェリーを支えてます。
このアコギの不穏な音からして気に入ったんですよ。
こんなコードはアコギでは普通弾かないから。
しかし、アコギも上手いな、センスあるな。
ショーンはドラムじゃなくてパーカッション叩いてるんじゃないかな?
まさに実力派っぷりを見せつけたオープニングナンバー。
#2『Got Me Wrong』
最初が囁くようなボーカルなんで分かりづらいんですが、メインはレインのボーカルですね。
サビではジェリーが歌います。
このあたりは目まぐるしくチェンジしてますね。
リリースから2年後に映画の「クラークス」に楽曲提供され、その際にシングルとしてリリースしたらヒットしてしまいました(笑)。
本作の4曲はどれがシングルカットされてもヒットするクオリティを持っていると思うんですがね。
#3『Right Turn』
「お?割と普通なコード進行だ」と思うとそうでもありませんでしたね(笑)。
またしてもジェリーとレインのツインリードボーカルです。
丁寧に丁寧に歌い上げるレインが新しい側面を見せてますね。
最後のコーラスで甲高い声を響かせているのはご存知クリス・コーネルで、「イントゥ・ザ・ヴォーイス!」って叫んでるのがマッドハニーのマーク・アームです。
#4『Am I Inside』
怪しさ100%のアルペジオがいきなり明るくなる奇妙な楽曲ですね。
でもこの牧歌的な感じすきだな~。
サビの女性の声がハートのアン・ウィルソンですね。
なんかアリスの曲で女性の声が聞こえるのって新鮮だな~。
妙に色気がでるというか、ちょっとブラックミュージック風にも聞こえるというか。
面白いです。
#5『Love Song 』※シークレット
先ほど、映画『シングルス』のためのレコーディングで本作の5曲をレコーディングした、と書きましたが
「あれ?『sap』は4曲入りでしょ?」
と思ったでしょ?
実はこのシークレットトラックが入っているからなんですよ(笑)。
これね、今はストリーミング版には収録されていないんですよ、悲しいことに。
私も今回久々に聴いていて腹抱えて笑ってしまいました。
メンバーが、それぞれの担当楽器を持ち替えてプレイしてます。レインはドラム、ジェリーはベース、スターはギター、で、ボーカルがなんとショーン(笑)。
このイントロのピアノもショーンなんですよ。
各パートやりたい放題にやっとりますな。
この頃のアリスってホントにバンドやってるのが楽しそうというか、おふざけ感がありましたよね。
それがあんなに悲しい結末になるなんて誰が思ったことでしょう…。
はい、というわけで今回は「Sap」を語ってきました。
ミニアルバムだからって舐めてると痛い目に遭いますよ~!