『夜行性のカタツムリ達とプラスチックのブギー』イエローモンキーのメジャーデビュー作

本記事はプロモーションを含みます。

どうもsimackyです。

本日はイエローモンキーが1992年にリリースした2作目でありメジャーデビューアルバムでもある

THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE

夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)

を語っていきますよ~。

ジャケットとタイトルから分かるグラムロックへのリスペクト

ボーカルのロビンこと吉井和哉はデビッド・ボウイやT-REXに代表されるグラムロックが大好きで、それは1作目『バンチド・バース』のジャケにも影響が現れていました。

それについては前回解説しましたのでまだの方は読んでみてください⇩

今回もそれは継続、というかもっと直接的なリスペクトになってきているというか。

この化粧をして男か女かわからないけど美しいロビンはまるで往年のデビッド・ボウイのようです。

比べてみてください。⇩

『アラジン・セイン』

モロすぎますね(笑)。

ちなみにロビンの額のカタツムリは『両性具有=デビッド・ボウイ』を意味しているわけで、前作に引き続きのボウイ愛です。

で、この長たらしいタイトルもおそらくデビッド・ボウイの歴史に残る名盤タイトルのオマージュなんじゃないかな?

『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』

訳すと

「ジギー・スターダストとザ・スパイダーズ・フロム・マーズの栄枯盛衰」

ですね。

夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー

やっぱ似てますね。

デビッド・ボウイがかつてジギー・スターダストというキャラを演じ、そしてバックバンドをスパイダーズ・フロム・マーズと名付けていた頃の作品です。

バックバンドという言い方をしましたが、このメンバーにはボウイの盟友であるギタリストのミック・ロンソンという人がいて、ロビンはこの人にもめっちゃ影響受けてます。

ロビンは

「デビッド・ボウイになりたくてバンドを組んだ。デビッド・ボウイそのものになりたかった」

というくらい心酔しているので、もうこれをやりたくてしょうがなかったのでしょう。

さらに言うと、この『プラスチック・ブギー』というのはT-REXから来ているんじゃないかな?

ブギーというのは音楽ジャンルの一種ですよね?

で、このT-REXの音楽性は典型的なブギー調で、なおかつ日本版のアルバムに『ブギーのアイドル』と邦題を付けられるくらい「ブギーと言えばT-REX」というバンドなんです。

『ブギーのアイドル』

で、ここで言う『プラスチックの』というのは、音楽表現で使われていた言葉で

「偽物の、エセ」

という意味があります。

かつてローリング・ストーンズが黒人のR&Bやソウルを音楽性のバックボーンにしていることをアメリカ人に揶揄されて

「あんなのはプラスチック(エセ)・ソウルだ」

とか言われてました。

余談ですが、これにムカついたビートルズが

「ストーンズがプラスチックなら俺たちはラバー(ゴム)だ!」

というジョークを込めてつけたアルバムタイトルがあの名盤『ラバー・ソウル』なんですよ。

知ってました?

『ラバー・ソウル』

なので『プラスチック・ブギー』というのは『エセ・ブギー=T-REXのものまね』的なジョーク(自虐?)を含ませているんだと思います。

実に面白い!

(by福山雅治)

ちなみに、『ヴィジュアル系』という言葉の生みの親とも言われるHIDE(X)もデビッド・ボウイやT-REXなどのグラムロックが大好きなのですが、彼らヴィジュアル系の系譜に連なる人たちがそのグラマラスなファッション性に大きく影響を受けたのと違って、イエモンやマルコシアス・バンプのようなバンドは音楽性にも直接的な影響が強く感じられます。

彼らのブレイクがヴィジュアル系ブームと同時期で、派手なメイクをしているにも関わらず『ヴィジュアル系』のくくりで語られないのは、そのあたりに理由があると思うんですよね。

ヴィジュアル系って見た目だけのカテゴライズで、実は音楽性はバンドごとにバラバラだけど、イエモンやマルコシアスは明確にグラムロックというカテゴリの音楽を標榜していたから、ヴィジュアル系に誰もくくらなかったんじゃないかな。

楽曲解説

1作目だった前作『バンチド・バース』はインディだったこともあり、アンダーグラウンド臭がプンプン、いががわしさプンプンでしたが、本作はなんというかハートフルで優しいというか。

美しく暖かな雰囲気ですね。

メンバー全員が元ジャパメタバンド出身者である余韻は完全に払拭されてます。

本作はやはりメジャー作として予算の大きさが違うからか、キーボードやストリングスが結構目立ってきているのが、前作との大きな違いでしょうかね。

私のように6作目『フォー・シーズンズ』なんかから入門した人にとっては、この頃の楽曲は複雑に感じるというか、単純な繰り返しで終わらず何かしら一捻りあるのが面白いです。

その傾向を表すように、5分半くらいの長さの楽曲がなんと3曲もあるんですよ。

とにかく聴きごたえのあるアルバムなのでたっぷり楽しんじゃってくださいな。

#1『Song For Night Snails』

メジャーデビューのオープニングは美しいピアノで始まります。

前作の段階でこれを誰が予想できたでしょうか(笑)。

デビッド・ボウイの名盤4作目『ハンキー・ドリー』のオープニングでも(『チェンジス』)意識したのかな?

ファルセット(裏声)使ってるので、知らないで聞いたらロビンだとはまったく気づかないでしょう。

なんでオープニングなのに、まるでエンディングテーマやハッピーエンドで流れそうな雰囲気なんだ(笑)。

まあ、これは次曲への伏線というか。

#2『Subjective Late Show』

前曲では『らしくなさ』で焦らしておいて、たっぷりブギー調のギターリフが決まります。

イエローモンキー流ブギーは『ダラダラロック』(笑)。

いいですね~。

サビになると妙にハートフルになるんですよね。

なかなか一癖も二癖もある楽曲でして、単純な繰り返しで終わらない展開が本作を象徴しているとも言えます。

#3『Oh! Golden Boys』

なんかもうのっけから「イッツ・ロキシー・ミュージック!」って言いたくなりますよね(笑)。

ちなみにロキシー・ミュージックっていうのはグラムロックの4大バンドの1つで、T-REX、デビッド・ボウイ、モット・ザ・フープルと並ぶ人気バンドですね。

2:30あたりからの展開なんてほんとロキシーのノリそのものというか。

「これでサヨナラjewel loves me!」のとこなんて「Virginia plan」絶対意識してるでしょ?

近未来的で変態的でごきげんです(笑)。

#4『Neurotic Celebration』

なんかゲームサントラみたいな自由さと言うか、コミカルさを感じます。

特にギターソロなんて

「これコナミのゲームで流れてなかったっけ?」

っていう雰囲気まであります。

音色がQUEENみたいで、あの雰囲気も出てますよね。

アニーのドラムに耳を傾けると細かいハイハットプレイとかも演ってて、このあたりが初期らしさに感じます。

#5『Chelsea Girl』

ギターリフがグイグイ引っ張ります。

それに乗るボーカルJロックっぽいですが、コーラスがいかにもイエモンって感じで好きですね~。

後半の「夜よ破廉恥な想像を~」からさらにもうひと盛り上がりするとこは鳥肌が立ちます。

#6『不愉快な6番街へ』

かつてロビンのラジオ番組で人気ワースト楽曲に選ばれた不名誉な楽曲。

本人が気に入っているにも関わらず(笑)。

これは前作に入っているような雰囲気ですよね、このいかがわしさ。

ドラムの音をなぜ加工しようと思ったのか、なにやら安っぽいリズムマシンみたいな音になってしまってるのが残念。

まだ、マリリン・マンソンなんかがブレイクしてくる前からこういうダークなボーカルというのは、なかなかに個性的で面白いと思うんですけどね。

#7『This Is For You』

美しいクリーントーンのギターに大きなギターソロが初っ端から耳に心地いいです。

ずっとこんな感じで行くのかと思いきや、3:00手前あたりからいきなり力強いギターリフが切り込んで展開し始めるんでびっくりしますよ(笑)。

「これこれ、このブギーこそイエモンだね~」

とか思ってると今度は、ブワ~っとストリングスが入ってきたかと思えば、クールなギターソロ。

そこからまたもやQUEENっぽい音色でのメロディアスな展開。

エマってエアロスミスやチープトリックが好きだと聞いてたんだけどQUEENもやっぱ好きなのかな?

この頃はエマのギターソロ長いな~。

この構成見事ですよ。

結構目まぐるしく展開します。

こういう大作主義みたいなのってこの頃ならではなので、思わずニヤッとしますね。

#8『Foxy Blue Love』

さあ、やってきました代表曲!(と私が勝手に呼んでいる)

このあたりから

「もしやと思ってたけど…このアルバムってやっぱすごくない!?」

ってなるんですよね。

アニーのドンドコグルーブはいかにも初期イエモンっぽくて好きですね。

こういうのはアニーの十八番というか、見事にツボを突いてくる感じがさすが!

しっかし、この突き抜けたようなサビの明るさときたらどうでしょう!

そしてエマのスライドギターソロでテンションマックス。

この曲も一捻りの展開があってから最期のサビに向かいます。

この頃のイエモンたまりません…。

#9『真珠色の革命時代』

本作で一番長尺なナンバーで7分近くあります。

イエモンって実は長尺ナンバーってしっかり聴かせてくれてダレないんですよね。

最高傑作と言われる7作目「Sicks」のオープニング『レインボウ・マン』も7:40もあるけど全然ダレませんから。

その意味ではオープニングに持ってきてもイエモンらしかったのかも。

このエマのギターソロは熱いな~。

彼にとってのベストソロかもしれませんね。

感動的としか表現しようのないナンバー。

しっかし、このアウトロはどう考えてもアルバムラストをイメージさせるのに、なぜあと2曲も続くんだ(笑)。

#10『「Romantist Taste』

ここで初シングル曲の登場です。

いかがわしさ抜群のフェードインですな。

イエモンブギー炸裂です。

このあたりの楽曲の完成度を改めて聞いてみて感じるのは、ホントにブレイクは紙一重だったということ。

『フォー・シーズンズ』との違いはもはや音質だけというか。

この曲とか確かチャートの圏外だったと思うんですけど、メロディは後期の楽曲に全然見劣りしてないんですよね。

#11『Walkin’ In Sunshine』

なにかと不人気なナンバーです。

「この曲だけ捨て曲」

「ラストがこれじゃしまらない」

色々言われてますけど、う~ん、そんなに悪いかな?

まあ、他にもラストに持ってくるべきナンバーがあるからそういう声が出るんでしょうけど。

考えてみると1作目から通して、アコースティックで最初から最期までというのはこの曲だけじゃないかな?

イエモンの展開を広げた楽曲だと思いますよ。

 

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