『人気者で行こう』サザンのテクノが絶妙なさじ加減!
本記事はプロモーションを含みます。
どうもsimackyです。
本日はサザンオールスターズが1984年にリリースした7作目のオリジナルアルバム
『人気者で行こう』
を語っていきますよ。
よし!今回はツッコミどころ満載のアルバムジャケットをありがとう!
前回は普通すぎて困り果てました(笑)。
いや、でもいざツッコミ入れようと思ってよくよく見ると、これすごい秀逸ジャケットですよ!
見事に逆三角形に引き締まったマッチョマンを真っ黒で塗りたくった挙げ句、『へのへのもへじ』で落書きとはなんとも贅沢な使い方。
やってることはおバカ以外の何物でもないのに、この真っ赤な背景に黒い体が、まるで真っ赤なキャンパスに書道家が墨汁で書きなぐったようにも見えます。
さらには『へのへのもへじ』も金で、これがやたらと達筆なんですよ(笑)。
思いっきり笑ってやろうと思ったら
「あれ?これガチで書いたやつ?」
みたいな。
なんかやたらと達筆な上、金色の文字だと金屏風などの『和』をイメージさせて、ちょっと高級感まで感じてしまうじゃないですか。
そして頭には和傘、というのが和を意識もさせるし、妖怪のような怪しさまで想像させる。
その怪しさが『ジャパネゲェ』なんかの楽曲のイメージとシンクロするんですよね。
よく見れば見るほどもの凄く秀逸なジャケットで、『和』の高級感とか、厳かな感じとか、凄みとか、怪しげな雰囲気とか、いろんなものをイメージさせます。
よく洋楽なんかではピンク・フロイドのジャケットが「ヒプノシスデザインが秀逸」とか言われてますけど、こっちのほうがよっぽど凄さを理解できます。
私はレコード世代の人間じゃあございませんが、こういうジャケットだったらCDじゃなく、レコードで持っておきたいですよね。
しかし、このアルバム、すごいのはジャケットだけじゃあありませんよ!
サザン屈指の大人気アルバムを分析
2023年現在までに全15作品リリースされているオリジナルアルバムの中で名盤と呼ばれるアルバムは多いです。
これまでアルバム解説を1作目から1枚やるごとに全てのアルバムレビューに目を通すのですが、1作目の時から
「このアルバムが一番好き!」
という声はどのアルバムにも全てありました。
評判が悪いと言われる『綺麗』でさえ、結構な数の人が「一番好き」って言ってましたよ。
それらを読むたびに、サザンの楽曲の層の厚さを思い知らされるのですが、この『人気者で行こう』はこれまで語ってきた7作品の中で
「これが最高傑作!」
という声が圧倒的に多かったですね。
「一番好き」じゃなく「最高傑作」って断言しているのは他の作品にはなかった表現ですね。
評論家が言ってるわけでも作った本人たちが言っているのでもなく、他ならぬこのアルバムを買ったユーザーたちがレビューしているものなので信憑性が非常に高い。
「レコード時代に聴いていたのですが、CDでも欲しくなってまた買っちゃいました。やっぱりこれがサザンの最高傑作だと思います!」
みたいな。
世間一般的には『KAMAKURA』が最高傑作として認知されていると思っていたのですが、よもや『人気者で行こう』がファンからここまで支持されているという事実に驚きました。
ちなみに「サザン 人気アルバムランキング」とグーグルで検索して上位に表示されるサイトを8サイト(ひよこまめも入ってます)ほど見てみました。
ねとらぼみたいに投票型のものから、個人ブロガー・YouTuberが自分の基準でやっているやつまで色々です。
で、やっぱりサザンって人によってランキングがバラバラで、どの時期にサザンに入門したかっていうのがもろにランキングに反映しているんですよね。
なので、偏らないように、それらの8サイトで上位5位以内に入った回数をアルバムごとにカウントしていくという面白い試みをやってみました。
その結果がこれ⇩
1位5回『ステレオ太陽族』
『世に万葉の花が咲くなり』
2位4回『人気者で行こう』
『ヌードマン』
3位3回『KAMAKURA』
『熱い胸さわぎ』
『キラーストリート』
おもしろいでしょ?
もう『KAMAKURA』が最高傑作とされる時代は終わったんですね。
私が自分のランキングで押している『世に万葉の花が咲くなり』が1位で個人的には嬉しいのですが、『KAMAKURA』が3位というのが寂しいところではあります(個人的には2位なので)。
で、本作『人気者で行こう』は『ヌードマン』と並び4回で2位となっております。
つまり本作は名盤だらけのサザン作品群のなかでも、屈指の人気を獲得していることがわかります。
ちなみに最近読んでいるスージー鈴木著『サザンオールスターズ1978-1985』という本でも、本作を最高傑作に推していますね。
あくまで1985年までの作品を評した本なので、8作目までの中では最高傑作と言っている話ですが。
私と本作との出会いはと言えば、中学の頃、『世に万葉の花が咲くなり』でサザンに入門して、「過去作品を買おう」と友達とCDショップに行き、私が『KAMAKURA』『サザンオールスターズ』、そして友達が『ヌードマン』『人気者で行こう』を買いました。
で、お互いが買ったものを貸し借りしながら聴いたので、自分が買った2枚ほどは聴き込めていなかったんですよ。
まあ、短い期間の中でお気に入りの数曲ばっかり聴いて、それらをカラオケで歌いまくっていたので思い入れは強いアルバムではあるのですが、全曲を聴き込んだのはストリーミングで3,4年前ぐらいからですかね。
だから長い間、そんなに評価していなかったんですよ、アルバム全体としては。
まあ、お気に入りの数曲だけでも、サザンの中でトップクラスのお気に入りに入るほどの名曲なので、それらの曲が入っているというだけでも十分名盤だという認識はありましたが。
20数年ぶりにストリーミングで聴いた時は、
「こりゃ、思ってた以上にすごい作品だぞ!」と。
中学生当時はまだ難しくて良さが分からなかった曲たちが、さんざんロックを聴きまくってきた後ではガンガン心の琴線に引っかかってくるんですよ。
それでもやっぱり他のアルバムも傑作・名盤の多いサザンなので、私の個人的ランキングでは
5位以内に入っておりません。
正確には長い間入ってはいたのですが、ここ2年くらいで『ヤングラブ』に抜かれました(笑)。
『人気者で行こう』楽曲解説
さて、それでは楽曲ごとの解説に入る前に、アルバム全体としての作風を語っていきましょう。
一般的には「前作『綺麗』からのデジタル路線をさらに発展させた」とか言われてますけど、実はよくよく聴き込むと前作よりもデジタルを抑えめに使用していることが分かります。
前作『綺麗』は機材の進化に振り回されていると言うか、楽曲を良くするためと言うよりも、その機材で出来ることを確かめるために色んな事をやりすぎているように感じます。
今回は効果的に使いこなしている感じがするんですよ。
それがよく分かるのがドラムですね。
前作ではあれだけ、打ち込みや加工を派手にやっていたのに、今回はまるでやっていないかのように聴こえます。
けれどもよく聞くと曲によってドラムサウンドが違うので、全て加工はしてあるんでしょうが、あくまで曲を活かすためにちょっと色を変える程度で、曲の雰囲気をガラッと変えるような使い方はされていませんね。
前作ではちょっとやり過ぎなところがありましたので、今回は修正をしてきた、といったところでしょうか?
その替わり、キーボードはオーソドックスなピアノ的サウンドが鳴りを潜め、様々な音を使用してありますね。
また、冒頭2曲は日本語歌詞でどれだけ洋楽的な歌いまわしができるのかを実験しているようにも見え、
『愛苦ねば(あいくねば)』『愛倫浮気性(あいりんぶうけしょう)』
などなど、桑田佳祐以外では決して考えつかない日本語世界が広がってますね。
このあたりって桑田佳祐の作詞のターニングポイントだったんじゃないかな?
個人的には、いや、このアルバムを聴いた人はだれも異論を挟まないと思いますが、#7『海』から#8『夕方 Hold On Me』の流れが本作のハイライトでしょう。
「ベスト盤かよ!?」ってツッコミ入れたくなるくらい、ちょっとおかしいくらいの名曲2連発ですからね。
続く#9『女のカッパ』#10『メリケン情緒は涙のカラー』の2曲の流れを好きになれるかどうかが本作のお気に入り度の分かれ目になるとは思います。
#1『ジャパネゲエ』
“ジャパニーズ“と“レゲエ“を合体させた造語になっているくせに、全然レゲエ調ではないちょっとよく分からないコンセプトの曲です。
歌詞を読まないで聞いていると全編英語にしか聞こえませんが、全編日本語という珍しいパターンですね。
かなり怪しげで、緊張感のある雰囲気がみなぎっています。
初めて聴いた時は
「なんだこれ?ほんとにサザンのアルバムか?」
ってなるでしょうね。
和の打楽器を効果的に使っており、三味線が使われていないのに関わらず、和を感じさせることに成功しているのはすごいと思います。
#2『よどみ萎え、枯れて舞え』
前曲といい、今回のサザンは分かりやすいポップをいつまでもお預けにしてくれます(笑)。
のっけから2曲はまるでプログレバンドのアルバムみたいなんですもの。
けれど、じわじわと良さが分かってくるスルメナンバーなんですよね。
#3『ミス・ブランニューデイ』
さあ、ここで伝説級の名曲のご登場です。
これはサザンの歴史上でも間違いなく10本の指に入る名曲でしょう。
イントロのシンセから最高だし、Aメロからサビ並みにキャッチーで高音、そしてなんとサビで音階が下がります。
けど、この低いサビがなんとも言えないこの曲の魅力なんですよね。
1回目のサビが終わった後の余韻部分が個人的に大好きで、ここで鳥肌がゾワゾワ立ちます。
テクノが楽曲の良さを引き上げることに成功した瞬間ですね。
そして最後のサビの終わりと同時に切り込んでくる大森さんのリードギターで涙腺が崩壊します。
#4『開きっ放しのマッシュルーム』
テクノサイバーなロックナンバーで、非常にアグレッシブですね。
ここまでのハードロックはサザン初では?
この印象的なリフはキーボードじゃなくておそらくギター・シンセサイザーじゃないかな?
けど裏で珍しくアグレッシブに攻めてる関口さんのベースが全体をゴイゴイ引っ張ってます。
この曲はライブ盤をYou Tubeで見てみることをおすすめします。
#5『あっという間の夢のTONIGHT』
おしゃれなAORナンバーで、10作目『サザンオールスターズ(かぶとむし)』に入っていても不思議じゃないナンバーですね。
空間が非常に多い曲で、その分、ドラムが面白いサウンドを色々入れてます。
バスドラなんかサビの部分だけ思いっきりリバーブかけてるし。
#6『シャボン』
原さんソング。
本作までの原さんソングってちょっと暑苦しいというか(失礼)、ドストレート過ぎて自分にはちょっときついかな。
『私はピアノ』『そんなヒロシに騙されて』なんかも実はちょっと苦手なんですよね。
次作『KAMAKURA』収録の『鎌倉物語』から軽くなって妖艶な色気が増すんですよね。
#7『海』
サザンでシングル・カットされていない名曲は『希望の轍』『慕情』『旅姿六人衆』『切ない胸に風が吹いていた』などなど、たくさんありますが、それらの中でもトップクラスの人気を誇る楽曲。
まあ、この曲がライブで演奏されるときのお客さんの反応は別格ですね。
個人的にも大好きなナンバーで、癒やされるんですよね~。
この曲の心地よさって、やたらドラマティック過ぎないところなんでしょうね。
サックスソロもギターソロも派手になりすぎず、長すぎず。
しかし、桑田さんの声がちょっと和田アキ子みたいに聞こえる瞬間があるのは私だけ?
#8『夕方 Hold On Me』
これまで封印してきた派手なホーンを思いっきりぶっこんできました(笑)。
こうして聴くと、サザンの歌謡曲臭さ、ポップさっていうのはこのホーンでのキャッチーなメロディがその役割を担っていたのが分かります。
でもこれやられるとバンドっぽさは希薄になるんですよね。
ただなんかこの曲に関しては、サザンが突き抜けた瞬間というか。
近年の『整えられすぎたポップ感』がなくて好感が持てます。
どこを切り取ってもメロディが活き活きしてるんですよね。
だから聞いていてワクワクします。
『海』も名曲なんですが、このアルバムの格式を3段階くらい上げているのは間違いなく『ミス・ブランニューデイ』とこの曲です。
#9『女のカッパ』
デジタル化の影響をほぼ感じさせない本作でも珍しいナンバー。
スローブルースですね。
個人的にはいまいちピンとこないかな。
#10『メリケン情緒は涙のカラー』
『ステレオ太陽族』に収録せれていた『マイ・フォープレイ・ミュージック』を彷彿とさせるような緊迫感のあるキーボードリフですね。
でもちょっとうるさいかな。
このギターソロもいいね~。
なんか本作での大森さんは今まで一番いい仕事してる気がします。
っていうより、初期のサザンほどホーン隊があんまり出てこないので、リード奏者の原さんと大森さんが色々できる余白が生まれている気がしますね。
前作から歌謡曲っぽい雰囲気がなくなったのもホーンが減ったからでしょうね。
だから、デジタルサウンドを導入している割には、ハードロックバンドのテイストが昔よりも出ている感じがするんですよね。
#11『なんば君の事務所』
サザンには珍しいインストナンバー。
ドラムが打ち込みっぽいサウンドなんですけど、これもきっと松田さんが叩いているものを加工しているのでしょう。
機械的なグルーブに感じないんですよね。
シンセサイザーのピアノ(?)リフが引っ張っていくのですが、大森さんはリードギターでおいしいところを全部持っていきます。
#12『祭はラッパッパ』
まるで初期のレッチリのようにファンキーで切れのあるナンバー。
大森さんのカッティング、関口さんのスラップ・ベース、そして16ビードで刻む松田さんのドラムの疾走感が気持ちいいです。
野沢さんのパーカッションも久々に聴こえてきますが、そこに打ち込みも加えてますね。
ほんとサザンの楽曲って情報量多いな~。
#13『Dear John』
本格的なジャズナンバー。
以前はホーン隊がガンガン出てくるジャズパターンはありましたが、バラードのジャズパターンは珍しい。
アメリカの映画のサントラみたいにも聴こえます。
これをだらだら5,6分やらずに3分ちょいで切る潔さが好きです。