『サバス・ブラッディ・サバス』ブラック・サバスが行き着いた集大成!
どうもSimackyです。
本日はオジー期ブラック・サバスが1973年にリリースした5作目のオリジナルアルバム『サバス・ブラッディ・サバス』を語っていきますね。
これがスランプ?って言うほど充実した内容
はい、来ましたね~。
私の中でも特に大好きな一枚です。
本作の制作ではなんとサバスで初の『スランプ』に陥ったそうです。
メインソングライターである、あのリフマスター・トニー・アイオミがスランプに陥っちゃうのです。
デビューから3年。
これまでは溢れ出ていたメロディがついに枯渇してしまうのです。
って、
絶対嘘だろ!?
っていう内容になってます、はい。
スランプの頃の作品というのはもっと違和感が残るものです。
メロディが枯渇しているから、思いついたフレーズを苦し紛れに繋いで無理やり曲にしている感じとかが現れると思うんですよね。
「なんかこのメロディ前も聴いたことあるぞ?」
みたいなマンネリ感があったり。
「この展開ってちょっと強引じゃね?」
みたいな不自然な展開だったり。
それが本作からは微塵も感じられません。
しかし、オジーの自伝によるとトニーは本当に新しいリフが生み出せない状況になっており、トニーのリフを起点に楽曲を制作していくサバスとしては「トニーのリフ待ち」の状態だったとのこと。
4作連続で100万枚セールスを達成しているバンドならではのプレッシャーがトニーの肩に重くのしかかっていたのでしょう。
また前作から、
「ファンが求めるブラック・サバスらしさを追求するままでいいのか?新しいことに挑戦しなければいけないんじゃないのか?でもジャズとかブルースを今更やるのはおかしいし。どうしよう…」
みたいな迷いもあったらしいです。
普段の行動が行動なだけに、ホントにそんな真摯な気持ちになることがあったのかはなはだ疑問ですが(笑)。
そんな時、打開のきっかけとなったのがオランダのバンド・ゴールデンイアリングの最新作「ムーンタン」というアルバムだったそう。
このアルバムに着想を得たトニーは、あの超名曲でタイトル曲の「サバス・ブラッディ・サバス」のリフを生み出すことになります。
これで調子を取り戻したトニーはまた例のごとく次から次へと斬新なリフを繰り出していったとのこと。
え?たったそれだけで復活?
スランプってそんなもんなのか?
なんか大事な部分がはしょられ過ぎてるような…。
オジーの自伝はちょっと真面目に音楽の話をし始めたかと思うと、すぐに悪ノリしたメンバーのバカ話になる。
どうも5分と真面目な話ができないようで。
しかし、これらの馬鹿話から見えてくるサバスのメンバーたちの個性が愛らしくて、コミカルで。
本当に最強のチームワークだったことが伺えますよ。
サバスとイエス
3~4作目と2作続けてアメリカでのレコーディングだったのですが、同じスタジオはスティービー・ワンダーに押さえられてしまったとかで、本作は久々にイギリスでのレコーディングになりました。
幽霊屋敷みたいな場所で、毎日お互いを怖がらせるいたずらをしながら制作しました(真面目にやってくれ)。
で、最後の仕上げのレコーディングはモーガン・スタジオというところで行われるのですが、ここでちょうどイエスが『海洋地形学の物語』をレコーディングしていたことから、イエスのメンバーと交流が生まれます(イエスがスタジオ3、サバスがスタジオ4だったとのこと。)
当時キーボーディストとしては大スターだったリック・ウェイクマンはこの時点でメンバーとの仲がうまくいっておらず、また『海洋地形学の物語』の音楽性に強く反発しており、スタジオにある共有カフェでいつも一人で飲んでいたとのこと。
ここでオジーと仲良くなり本作の『サブラ・カタブラ』にゲストとして参加、その後はオジーのソロへ参加、しまいには息子であるアダム・ウェイクマンまでオジーのソロに参加する、といったように長い付き合いになります。
ウェイクマンが呼ばれてサバスのスタジオ4に来ると、サバスメンバーは全員泥酔状態でそのあたりに倒れていたそうです。
で、ウェイクマンが録音を終えるとオジーがムクっと起き上がって
「すごい…とってもいいよ…」
と言ってまた気を失ったそうです。
終始こんな感じなんですけど大丈夫ですか!?
こんなんでどうして傑作が生まれるの?
で、オジーはお礼にマリファナの中でも強烈な『ハシシ』をイエスのスタジオ3に差し入れします(差し入れがマリファナって…)。
オジーなりの精一杯の誠意だったのでしょう。
しかし、ハシシのあまりの強烈さに具合が悪くなったイエスのメンバーは全員ダウンしてレコーディングは中断しましたとさ。
って、
恩を仇で返すな。
『サバス・ブラッディ・サバス』楽曲レビュー
さあ、それでは楽曲レビューいきますよ。
ここまでの話を読んできて
「お前ら酒の飲み過ぎで全員●ねばいい」
と思った人も多いとは思いますが、作品としては傑作であることは私が保証しますよ。
なんなら最高傑作と言われることの多い「ボリューム4」よりもこっちを私は推してます。
前作『ボリューム4』では、サバスが「とんこつラーメン専門店」から「レストラン」へと生まれ変わろうと挑戦した作品でした。
あくまでこれまで通りのとんこつラーメンもあるけれど、他のメニュー開発に力が入りすぎちゃったんですね。
それぞれのメニューはかなりの力作ではあるのですが、
「で、結局この店の推しはなんなの?とんこつラーメンはもう出さないの?あ、メニューの隅っこの方に載ってはいるからまだ食べれるのね」
みたいな。
お客さんがとんこつラーメンで味わっていた感動ほどのものを他のメニューで満たすことができていないと言うか。
今回は堂々と
「うちは5つ星レストランなので全部推しです。一級品のメニューしか並べてません。どれを頼んでもかつてのとんこつラーメンに見劣りしない感動を与える自信があります」
と言える作品になったと言うか。
なので、ぶっちゃけ分かりやすく言うと「ヘヴィでなきゃ嫌だ」という初期のファンでも、その音楽性の高さによってねじ伏せるだけのパワーを持ち合わせています。
とにかく全編に渡ってメロディが素晴らしい。
メロディに関して言うならば全カタログ中で最高なのは間違いないです。
美しい。
そして分かりやすくフックが効いています。
「サバスはこうでなきゃ」っていう先入観がない人のほうが好きになりやすい作品なので、最初の1枚として聴いてもらいたいですね。
入門編としてはいいのかもしれません。
#1『サバス・ブラッディ・サバス』
キタキタキタ~!!!
名曲中の名曲。
ヘヴィロックの金字塔。
まるで3作目『マスター・オブ・リアリティ』に収録されていてもまったく違和感のない、まさに「That`s Black Sabbath!」なナンバーで始まります。
『サバスを救ったリフ』とまで呼ばれる名リフですね。
この泥臭さ。
このドラムのモタり具合。
そしてモコモコとやたらうるさいベースライン。
耳をつんざくようなオジーのシャウト。
すべてが完璧です。
ブラック・サバスで一番好きな曲として挙げる人も多いですよ。
「ブラック・サバスの必聴盤は2~4作目だな」
とか言ってるそこのあなたにお尋ねします。
この曲聴かないでサバスを聴いたうちに入りますか?
賢明なあなたら分かるはずですよね?
ノン・ノン・ノンでしょ?
そんなもの、せっかく一流の寿司職人の店に入ったのに魚ネタだけ食って帰るようなものです。
ウニまで食ってけ、間違いないから。
#2『ナショナル・アクロバット』
オープニングがあまりに強烈なインパクトだったため、影に入りがちですが実は隠れたとんでもない名曲。
私はこの5作目のアルバムを思い返した時に
「すごく明るい希望に満ちた世界観」
というイメージを持っていました。
今、思い返せばそれはこの曲がもっていた雰囲気そのものだったんですね。
インパクトはタイトル曲に及びませんが、この曲こそ本アルバムの印象を決定づけていると言ってもいい。
意識下ではタイトル曲、無意識下ではこの曲が引っ張っています。
本作はこの冒頭2曲だけでアルバムが終わっても名盤です。
苦情は来ないでしょう(笑)。
序盤はヘヴィなサバスらしいリフで進んでいくのですが、1曲の中でその顔がどんどん様変わりしていきます。
途中はなんかジミヘンみたくサイケになったりましますが5:00あたりからこの曲が真価を発揮します。
いきなりやたらポップで明るいメロディがきたかと思えば、轟音ギターが切り裂いてきて、そして最後は怒涛のリフで畳み掛ける…。
トニーに乗り移ったのは今回はサタンではなくゼウスのようですね。
トニーはこのアルバムからヘヴィリフメーカーとしての才能だけじゃなくて、そこからの『開放的メロディを生み出す』才能を開花させます。
これまでも幾度となくその片鱗は見え隠れしてましたが、この曲では特にすごい。
マジでやばいです。
頭の中がファンタジックになります(なんだそりゃ)。
#3『フラッフ』
初めて聴いた時
「天才か?」
と思いました。
物凄く美しいインストゥルメンタルです。
序盤2曲でノックアウトされた後にダメ押し感があります。
この手の曲って初期から短い『小曲』としてサバスのアルバムには登場してきたのですが、今回は4分ある立派な楽曲として完成させました。
ずっと成長しているんですね。
トニーはインストアルバム作らせたら歴史的名盤を生み出せたと私は思うのですがいかがでしょう?
#4『サブラ・カダブラ』
この曲なんかも絶対に再現できませんね。
キー高すぎ。
ギターリフのメロディも秀逸ですが、オジーのボーカルラインもかなりフックが強いです。
この曲が本作のポップさを象徴しているような気がしますね。
とにかく華やかに楽しい。
で、ゲスト参加のウェイクマンが神秘的なキーボードを加えてます。
メタリカが『ガレージインク』でこの曲と「ナショナル・アクロバット」をメドレーにしてカバーしてましたが、カバーセンス抜群のメタリカと言えども今回ばかりはオリジナルを超えることはできませんでしたね。
#5『キリング・ユアセルフ・トゥ・リブ』
高校生当時、一番好きだった曲。
あんまり名曲として目立った扱いは受けていないのが不満だったんだけど、You Tubeで当時のライブを見ると、テレビ出演時にしてもフェスティバル出演時でも結構演奏されていて嬉しかったです。
すごく地味な始まり方をするのでまったく期待しないで聴いていると、サビでいきなりガラッとドラマティックに変化します。
ここでのトニーのリフがかっこいいんですよね。
そのままギターソロへの流れは痺れますよ。
しかぁし!
この曲の主役はあくまでオジーです。
「そういうやブラック・サバスってこれまでオジーが主役じゃなかったよな?」
と気が付かせられる曲ですね。
#6『フー・アー・ユー?』
珍しいオジー作曲です。
ブラック・サバスらしくもないし、オジーソロっぽくもない。
一体この曲はどこから生まれてきたのでしょう?
というよりどことなくフランク・ザッパの影響があったりするのかな?
どのへんか分かりませんが(笑)。
#7『ルッキング・フォー・トゥデイ』
本作イチのポップなナンバーです。
ヘヴィリフではなくオジーのボーカルと楽曲の美しさで聞かせます。
ビートルマニアであるオジーの面目躍如ですな。
#8『スパイラル・アーキテクト』
美しいアコギのアルペジオで始まり、ここで盛大なオーケストラの導入です。
「映画のサントラみたい」
と思った人も多いのではないでしょうか?
よもやこういう楽曲をサバスのアルバムで聴く日が来るとは、当時のファンたちも驚いたでしょうね。
おそらく4作目までが傑作と言われ、本作の賛否が分かれるのは、ラスト2曲のこの振り切れ具合ゆえでしょう。
この曲なんてまるで「聖なる館」じゃないですか?
なんていうか、ツェップと同じ土俵に殴り込みをかけているのに、付け焼き刃感がなくて、がっぷり四つに渡り合えているというか。
サバスはヘヴィな音楽を思いついたからすごいのではなく、良質なメロディを生み出す根本的なセンスが卓越していることの証明です。
やっぱやばいです、このアルバム。
はい、というわけで今回は『サバス・ブラッディ・サバス』を語ってきました。
オジー本人としても本作がブラック・サバスのピークだったという手応えがあるみたいです。
このアルバムの後から税金未払い問題やマネージメントの不正、裁判沙汰、弁護士とのやり取り、深刻なドラッグ癖など、次々にトラブルが相次ぎ、メンバー関係もどんどん悪い方向へ進んでいきます。
その意味では音楽的にもバンド関係においても1つの頂点を迎えていた時期と言えるでしょう。