『パラノイド』ブラック・サバス メタル史上の頂点に君臨するアルバム
どうもSimackyです。
本日はオジー期ブラック・サバスが1970年にリリースした2作目のオリジナルアルバム『パラノイド』を語っていきますね。
さあ、ヘヴィメタルの歴史的名盤たち、その頂点に君臨する作品の登場ですよ~。
「すべてのメタルはサバスに通ず」
名言ですね~。
え?誰が言ったのかって?
私です(笑)。
そしてこの名言は今後100年残ることになるでしょう。
なぜならこれは揺るぎようのない事実だからです。
メタルというジャンルに踏み込んだ以上、サバスの影響を受けていないなんてことは不可能です。
「サバス?そんな昔のバンド聴いたことないよ。俺は他のメタルバンドから影響を受けている」
と言い張っても、そもそもその他のメタルバンドがサバスから影響を受けているのですから。
地球上に空気がなくても生きていける人間などいないのと同じで、サバスの影響なしに存在するメタルバンドは皆無だと思ってください。
そのサバスがデビュー2作目にして早くもサバスサウンドの決定版とも言えるアルバムを生み出しました。
サイモン&ガーファンクルの最後のアルバムであり、グラミー賞も受賞した名盤『明日に架ける橋』を蹴落とし、自身初の全英NO.1を獲得しました。
ビートルズ『アビー・ロード』を『ツェッペリンⅡ』が蹴落としたり、サイモン&ガーファンクルをサバスが蹴落としたりと…
蹴りまくりの時代です。
よう蹴っとるね~。荒々しいですね~。
蹴落とされてる方もなかなかの歴史的名盤なんですけど…。
1960年代のバンドから1970年代のバンドへと世代交代をする真っ只中の時代・・・凄い時代ですよね。
今回は疑いようのない名盤中の名盤をご紹介するわけですがね?
しっかしね、今日という今日は言わせてもらいますよ?
このアルバムと出会ってはや20数年。
私が世間様に対してずっと声を大にしてお伝えしたかったその胸の内を。
ずばり…
このジャケが許せない!
・・・・・・・
ついに言ってしまった。
これで明日から開放される。
これまでの人生、私はまるで
『う●こ漏らしているのに頑なに知らぬ存ぜぬを押し通す幼稚園児』のように自分にさえ嘘をついて生きてきました。
「漏らしてるでしょ?」
「え?ぜんぜん違うよ?他の子じゃない?」
「じゃあどうしてさっきから内股でもじもじしてるの?」
みたいな。
「絶対漏らしてないもん。でもなんかおしりがムズかゆくはあるけど…。少しだけ臭うけど…気のせい気のせい」
みたいな。
そうモジモジしながら20数年を生きてきたんです。
そんな毎日ともこれでお別れバイバイです。
このジャケに関してはこの際、バシっと言ってやりたい。
全世界のモジモジ君を代表して私が。
名盤としてのオーラが微塵も出ていない。
そもそもこの謎の男の『ドラクエの主人公になり損なったような』格好ときたらどうでしょう?
アリアハンの王様から
「おお、よくぞ来てくれた勇者Simackyよ。ところでそなたは本気でそのナリで旅立つつもりか?っていうか魔王舐めてない?そんな粗末なナリでは魔王討伐は託すことはできんな。ついでにアリアハンもできん(出禁)な。」
って言われること請け合いです。
この装備じゃキメラも倒せません。
さらには「3人いるのかドラゴンボールの残像拳を使っているのか?」がよく分かりません。
そしてそれは未来永劫分からないでしょう。
ひどいな。
このジャケになった一般的な弁明としては、
「アルバムタイトルがもともと『War Pigs(戦争狂の豚ども)』だったからこうなった」
ですけど。
「ああ、なるほど!そういうことね。ガッテンガッテン試してガッテン!」
とはならねぇよ?
さすがの山瀬まみもこれにはガッテンボタンは押さないよ?
いや、もともとのタイトルだったとしてもおかしいよね?
『内容が良いのにジャケが残念選手権』があったら、おそらくロックの歴史上でぶっちぎりのトップでしょうね。
ああ、すっきりした(笑)。
本作に至る流れ
本作はデビュー作『ブラック・サバス』から半年後にリリースされました。
「ブラック・サバス」はあっという間にゴールドディスクを獲得し、アメリカでも売れ続けました。
その後すぐに100万枚も突破します。
その勢いを消さないように矢継ぎ早のリリースというわけです。
この頃は皆そうで、デビュー年にアルバムを矢継ぎ早に出すというのは珍しくありません。
ツェッペリンだって似たようなものです。
レコーディングにたったの2日間しかかけなかった前作とは違い、今回はなんと制作時間を倍増させております。
そう、5日間です(笑)。
さらに「パラノイド」に至っては「アルバムに2,3分の曲が必要になった」と判明したその場でちゃちゃッと作ってます。
名曲っていうのは意外にそんなものなんですね。
というより5日間で作曲からレコーディングまで済ませてるので、すべての曲が「ちゃちゃっと」作ってるわけですが(笑)。
その「パラノイド」の出来に関してはメンバーはそこまで良い印象はなく、オジーなんかは
「レッド・ツェッペリンの『コミュニケーション・ブレイクダウン』に似ているから却下しようとした」
とかも言われていますが、本人の自伝にはそんなことは一言も書いてありませんのでホントかどうか。
ただ、この曲を聞いた時のレコード会社の上層部の反応が異常に良く、シングルカットとアルバムタイトルの差し替えにすぐに動いたとのことです。
これはレコード会社の上層部の人たちに先見の明があったようですね。
シングルリリースされた「パラノイド」は全英4位を記録し、日本で言うところのMステみたいな番組である「トップ・オブ・ザ・ポップス」に出演することになります。
このことは当時のメンバーたちにとって相当嬉しかったことらしいです。
だって、イギリスのトップミュージシャンたちと肩を並べて出演するわけですから。
ちょっと想像して見ください。
半年前までは家族から『ロクに働きもしない無収入のニート』扱いされていたあなたが、お茶の間の人気者のSMAPと一緒にMステに出演しているところを家族がテレビで見たら、どれだけ驚き、感激するか想像できるでしょう?
つまり、このセカンドアルバムでブラック・サバスは一般人にさえ認知されるほどの有名ミュージシャンの仲間入りを果たすわけですよ。
1968年ぐらいから1970年代の初期の音楽シーンって、まるでルネッサンスのように「芸術は爆発だ!」みたいなのが起きていて、とにかく名だたるビッグアーティストが次から次へと現れてくる時期です。
今では大御所と呼ばれるバンドの多くがこの時期に歴史的名盤を生み出しています。
その中においてもツェッペリンは突出していて、アルバムセールスも毎回1000万枚クラス。
「1960年代におけるビートルズ並の影響力を1970年代に持っていた」とまで呼ばれていたので、その存在感は圧倒的です。
サバスは少しその影に隠れる形ではあるのですが、間違いなく確固たる存在感を示していたと思いますよ。
そして50年という長い年月をかけてその影響力はどんどん増していき、現代ではツェッペリンとほぼ同格の扱いを受けていることは嬉しい限りです。
オリジナル・メンバーでのみ起きる”マジック”
本作はあらゆる音楽雑誌における人気投票でほぼメタル部門ナンバーワンになるでしょう。
なぜ本作がそこまでの評価を受けているのか?
それは強力なアンセムソングの存在にあります。
#1「ウォーピッグス」#2「パラノイド」#4「アイアンマン」というヘヴィメタルのど定番中のど定番曲がなんとすべてレコードA面に集中していたんですよ(まあ、我々はCD世代なんであんまり関係ないですけど)。
これら3曲は、ブラック・サバス本家のライブでも、ソロとなったオジーのライブでも、そして後進のミュージシャンたちのライブでさえもずっと演奏され続けています。
もう半世紀(50年)に渡って歌い継がれており、そろそろ民謡の域にまで入っていくのではと心配になるほどです(笑)。
オジーも人生で軽く1万回くらいは歌っているんじゃないのかな?
しかし、いつ演奏されようとも決して色褪せないんですよね、名曲ってのは。
これら3曲はどれも非常にシンプルでありながら、楽曲の持つ『普遍性』が圧倒的に強い。
そして彼らオリジナルメンバーによって演奏された時、もしくは再現された時にのみ『マジック』が起きます。
この3曲は世界で最もカバーされているメタル・クラシックスですが、誰が演奏してもマジックは起きません。
それはオリジナルメンバーであるトニー・アイオミやオジーがそれぞれのバンドでやっても起きないんです。
この4人でなければ。
私の場合、3曲ともすべてサバスのオリジナルよりも先にオジーのライブ盤で聴いていたのですが、そりゃランディ・ローズやザック・ワイルドの方が上手く弾けるし、サウンドも現代版になっているし完成度は高いはずなんですよ。
この人たちのプレイを聞いた後にオリジナルを聴くと古臭くも感じるし、「下手っ」と思うこともあります。
けれど、このオリジナルの持つ魅力、中毒性、凄みは超えることができません。
唯一無二のオリジナリティというのはこういうのを言うんですね(こういうのをヘタウマとも言いますが)。
サバス以外のメンバーではおそらく世界で最もサバスのナンバーを演奏し、自身もカバーアルバムを出すほど心酔しているザック・ワイルドですらトニー・アイオミの味は再現できないんです。
そして、そのトニーの輝きはこれまたオリジナルメンバーの演奏と合わさらないとマジックが起きないんです。
ギーザーの粘っこく絡みつくベースが無いとサバスのリフにならない。
サバスのリフはギターとベースがほぼセットと言うか、2つで1つというか。
さらにビルのもたっているかのような独特のタメ、ゆったりとした重々しいリズム…ぶっちゃけ言うと、下手くそなドラマーが強引にリズム引っ張っているかのような独特の癖のあるリズムが合わさった時に初めてサバスグルーブになる。
それを痛感したのが1998年にオリジナルメンバーで再結成し、地元バーミンガムで行った伝説のライブ『リユニオン』。
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20年ぶりにオリジナルメンバーで復活したというのに、放たれるグルーブは全盛期サバスそのもの。
一度聴いてみてください。
この世には『このメンバーで演奏した時にのみ生まれるマジック』というものが本当に存在することを知ることになるでしょう。
実はB面に本当の凄みがある
歴史的名曲である3曲がA面に集中しているという強烈なインパクトを残す本作ですが、実は本当に凄みを感じるのはB面の層の厚さです。
正直に告白しますが、実は私はA面の代表曲たちがそこまで評価が高い理由がピンときてません(あと1作目の『N.I.B』だってそう)。
こういうことってありません?
世間一般的には名曲と絶賛されていても、自分的には「なんだかな~」みたいなことが。
特に私にとっては「ウォー・ピッグス」「パラノイド」の2曲が未だにピンとこない。
「まあ分かるよ?良いのは良いし普通に好きですよ?でもそこまで大騒ぎするほどか?サバスは他にすごい曲が目白押しじゃん?」みたいな。
はっきり言ってサバスには上記2曲よりも伝説的に凄い曲はたくさんあると思ってます。
挙げると50曲くらいになるので挙げませんが(笑)。
このB面すごいですよ。
「エレクトリック・フューネラル」のおどろおどろしさなんて、この時期のサバスの新境地と言うか、その後のサバスの原点とも言うべき曲だし。
「ハンド・オブ・ドゥーム」とかやばいですよ?
「この時代にその展開もってくるか?」
みたいな。
「こんな1曲の中で展開の多い大作がなんで扱い小さいんだ?」
みたいな。
「フェアリーズ・ウェア・ブーツ」もやばい。
これはもう『ヘヴィ・ブルース』とでも言うべきパワーを持ってます。
メロディが凄く哀愁があるくせにぶん回してきます。
トミーのリフとビルのドラムが喧嘩してるみたい。
で、それを囃(はや)し立てているかのようなオジーのボーカル。
このB面は圧巻ですね。
私は代表曲3曲は事前に知っていた状態で本作を聴いたのですが、とにかくB面のパワーにやられました。
ちなみに私のサバス入門はオジー期のベスト盤で、あんまり良いと思わなかったのでオリジナルアルバムを買い揃えていくか当時は迷っていました。
名盤と言われる本作からベスト盤に収録された代表曲3曲がピンとこなかったから。
そんな私が友達の家で聴かせてもらった本作のB面で「ガガーン!」とやられて、CDショップに行ったら本作がなくて3と5作目があったのでそれを買ったらドはまりした、という流れです。
もうね、これは1980年代のスラッシュメタルを完全に先取りしているし、1990年代にニルヴァーナとかがやるグランジを20年前に先取りしてます。
というより、1990年代のグランジ・オルタナティブとかヘヴィロックとか呼ばれるものは、ブラック・サバスがすでにやっていたことでしかなかった、とさえ思えます。
ライブ盤とか聴くと脳天直撃の刺激が味わえますよ。
こいつはマジでヤバい。
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圧倒的音圧の轟音を味わってください。
はい、というわけで今回は『パラノイド』を語ってきました。
それではまた!