『スーパーコライダー』メガデス:歌モノ路線での頂点

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日はメガデスが2013年にリリースした14作目のオリジナルアルバム

『スーパーコライダー』

を語っていきたいと思います。

デイブ・ムステインという男の本質を見せた作品

ここにきて気持ちいいくらい振り切れた作品を出してきましたね~。

ここまでやってくれると爽快というか痛快というか。

本作を語る際、『リスク』を引き合いに出されることが非常に多いのですが、皆さんの言いたいことは分かります。

キャッチーでポップだと言いたいんじゃないかな?

概ね賛成ですが、渡しの場合はそれは悪い意味ではなく良い意味でです。

そもそも私は『リスク』を傑作だと思っているので。

実はキャッチーという意味では前作『サーティーン』からそうなのですが、『サーティーン』は歌モノだったし、かなりキャッチーだったにも関わらず、雰囲気がダークだったから『ポップ』と評するにはなんか違うんですよね。

『サーティーン』を解説した前回ではさんざん引き合いに出したマリリン・マンソンがまさにそのイメージにぴったりじゃないですか?

キャッチーなんだけどダークでデビリッシュだから『ポップ』かというとちょい違いますもんね(もろにポップな曲もありはしますが)。

本作では明るいメジャーな印象が強いため、今回はやはりポップに感じますね。

とは言っても各楽曲を聴き込むと、言うほど明るくはないのですが(実は『リスク』もそうですよ)。

つまり本作は、曲の雰囲気の違いはあれども本質的には『サーティーン』の延長上にあります。

めっちゃ乱暴な言い方をすると、メガデスが明るくキャッチーなことをやるとU2やボンジョビみたいだと言われ、暗い方でキャッチーにするとマンソンと言われる、と(笑)。

しかしね、今回は『リスク』の時みたくU2だボンジョビだなどとは呼ばせませんよ!

それが再結成後の新生メガデスの面白さです。

サウンドに迫力と攻撃性があり、常に良質なメタルとしてのかっこよさを内包しているんですよ。

これは『システム・ハズ・フェイルド』~『エンドゲーム』までの3作でスラッシュメタルの感覚を呼び起こした事が大きいでしょう。

大佐は虎視眈々と着実に進化をし続けているんです。

そもそも、私はデイブ・ムステインというお人は『ポップセンスをもったメロディメーカー』という側面も持ち合わせている人だとずっと思ってました。

それはあれだけのセールス規模を持つメタリカ以上に感じてましたね。

私が最初に出会った作品である『破滅へのカウントダウン』を聴いたときからそれは感じてました。

「この人って別にメタルをやらなくても、もの凄く多くの人に支持される売れ線曲を作れるのでは?」

そこにはマシーンのような無機質さ、冷徹さだけじゃなく、シンプルに美しいメロディセンスや茶目っ気というか、色気が感じられたんですよ。

「ガッチガチに脳みそまで筋肉のマッチョメタル」みたいな輩とは真逆というか。

で、遡って初期の作品を聴いていってもやっぱりそれは全ての作品に感じられたんですよね。

こういうこと言うと反発があるかもですが、キッスクイーンのように普遍性の高いメロディセンスがあるというか。

で、今回はブログを書くに当たって色々インタビューを読み漁ってみると『デイブ・ムステインが選ぶ15枚』という雑誌企画では、キッス、クイーン、AC/DCらが入っていたので、やっぱり大佐にはポップでキャッチーな要素がルーツとしてはっきりあるのだと思います。

本作ではそんな大佐の本質を丸裸にしているとも言える側面があります。

ここまで思いっきりさらけ出せるのも、やはり前述の3作で「俺たちはいつでもスラッシュメタルできるよ!」と証明しているからだし、それによってファンを安心・納得させているからできることなのでしょう。

ファンとの信頼関係っていうのも作風に影響を与えるのだと思います。

作風への影響という点では、環境的要因も挙げられますね。

本作からロードランナーを離れ自分で立ち上げたレーベルからのリリースということで、レーベル首脳陣に『メガデスは売ろうと思えばいつでも売れるバンド』ということを証明する必要もありました。

破天荒なキャラの割には、ビジネスに関してはやたら大人の良識も持ち合わせている大佐です。

ん?良識?

『したたか』の間違いでした(笑)。

解散から再びワンマン体制の確立、そしてサンクチュアリ~ロードランナーとレーベルを渡り歩いてついに完全にレーベルからも口出しされない環境を手に入れたことになります。

こうしたことも本作の充実、次作でのグラミー受賞に大きく関わっているでしょう。

『スーパーコライダー』楽曲レビュー

『クリプティック・ライティングス』でニック・メンザが脱退した時から数えて初の

2作連続で同ラインナップでの制作

となりました。

ギター:クリス・ブロデリック

ドラム:ショーン・ドローヴァー

ベース:デイブ・エレフソン(ジュニア)

クリスは3作目、ショーンはニックに並ぶ通算4作目の参加となります。

ショーンは在籍期間ならニックより長いんじゃないかな?

二人ともここまでくるとすっかりバンドの顔ですよ。

黄金ラインナップ(ニック、マーティ)にも引けを取りません。

ほぼ大佐のソロプロジェクト然とした2004年再結成から2000年代を歩んできたのですが、すっかりバンドとしての雰囲気を取り戻した感すらあります。

え?ジュニアを無視するな?

またいじるのか、と?

ああ、

あんなメガデスの看板に泥を塗る人は顔でもなんでもありまへん!

っていうか『いじって』あげないと禊(みそぎ)になりませんから(笑)。

ジュニアがジュニア(ムスコ)いじってる動画が流出しちゃっただけに。

そのあたりのくだりはまた次回いじり倒すとして(笑)、このラインナップ好きだったな~。

ビッグ4のライブ観た時もこのラインナップで完璧だと思ったんですけどね。

残念ながらクリスとショーンは本作をもって脱退し、二人で別のバンドを結成します。

そういうわけなんで彼らのメガデスでの最後の勇姿をとくとその胸に刻んでくださいませ!

それでは私のおすすめをご紹介していきましょう。

#1『キングメーカー』

高速シャッフルナンバーでの開幕です。

前作よりも強烈なオープニングナンバーを持ってきましたね。

私なんぞはワクワクとときめきが止まりません(笑)。

ショーンの得意技、バスドラ3連がグルーブを引っ張ります。

この人のバスドラ好きだったな~(故人じゃないんだから過去形やめろ)。

#2『スーパーコライダー』

超キャッチーなタイトルナンバー。

イントロだけ聴いたらオアシスの新作にさえ聴こえかねません(笑)。

サビでのギターのコード進行には、大佐が愛してやまないAC/DCの雰囲気も感じますね。

で、こうやってギターの音数が少ないと、ベースは結構面白いことができるっていう。

#4『ビルト・フォー・ウォー』

のっけから印象的なリフでつかみはオッケー。

ずっとシンプルで行くのかと思いきや、まさかの展開で大合唱必至。

メガデスのライブってお客さんがホント合唱するの好きなんですよね。

歌メロじゃないところでもリフのメロディを大合唱するっていう他では観られない現象が起きますから、ライブ映像みてると驚きますよ。

結構変拍子が多くてコピるのは難しいだろうな。

#5『オフ・ジ・エッジ』

韻の踏ませ方が後引きます。

そいうや、こういうのってあんまりなかったよね。

#6『ダンス・イン・ザ・レイン』

ミドルテンポの割には実はえらくスラッシーなリフが流れていたりします。

けど、それも前面に出してくるわけじゃなくボリュームを絞るのが『サーティーン』からの流れですね。

3:40あたりから雰囲気がガラッと変わり、1作目の『ラトルヘッド』みたいなリフが入ってきます。

ここからのショーンのドラムが面白くって、インダストリアル・メタルのようなサイバーで打ち込みな雰囲気がしているのにツーバスでゴリゴリメタルの雰囲気もあり、おもしろいですね。

#7『ザ・ビギニング・オブ・ソロウ』

序盤からシンセがサイバーな雰囲気出しますね~。

なんというか、本作はサイバーな雰囲気、スペイシーな雰囲気がところろどころに顔を出します。

近未来的な雰囲気というか。

そうするとジャケットの絵が妙にハマって見えてくるんですよね。

#8『ザ・ブラッケスト・クロウ』

マンドリンきましたね。

プライドアンドグローリーか!?

しかし、雰囲気はあんなにカラッとしたものじゃなくドロッとして怪しげかな。

こんなデビリッシュな世界観でマンドリンとスライドギターが同居するって、こんな芸当は大佐にしか出来ないでしょう。

このスライド・ギターはかっこいいね。

クリスってブルースの素養もある人なのか?大佐が弾いてんのか?

もうここまでくるとロックだメタルだブルースだというジャンルを超えたノンジャンルの領域ですね。

大佐の器のデカさの底が見えません…。

#9『フォーゲット・トゥ・リメンバー』

本作でもっともキャッチーなナンバーじゃないかな。

『リスク』の時は「U2みたい」と言われた大佐ですが、今回は80年代メタル風のキャッチーさというか、なんか懐かしくもあり、コテコテのくっさくさな雰囲気もあり(笑)。

「うわぁ、MTV全盛時代だぁ~」みたいな。

え?やっぱ大佐って実はこういうことも演りたかったのでは?

でも硬派でならしてるだけにやれなかっただけで、実はいつもカラオケでこんなん歌いまくってました、みたいな(笑)。

こういうとこが本作が『丸裸の大佐をさらしている』と先述した部分です。

ここまでくると赤裸々とさえ言えます(そこまで言うか)。

この衝撃を例えると、オルタナ全盛時代に「80年代のメタルはクソだ!」とかバカにしてたオルタナバンドがいきなり開き直って「実はモトリー・クルーが大好きでした」って告白してきたようなものです(笑)。

「もう1週したからこういうのやってもよくね?」

みたいなものを感じますね。

まさがメガデスに加入してこんなギターソロを弾く日がくるなんて…

あの『エンドゲーム』から加入したクリス・ブロデリックもびっくりでしょうよ(笑)。

#10『ドント・ターン・ユア・バック』

このリフかっけぇな~。

スラッシュメタルとは全く種類の違うセンスのリフでもリスナーを唸らせるようになってきましたね。

同じ歌モノでキャッチーな作品であっても90年代の作品群はまだそれまでのメガデスリフがスローになっただけとか、歌は良くてもギターは普通のバッキングとか、そんな印象がありました。

けど、前作『サーティーン』からの歌モノ路線では、明らかにかつてのメガデスになかった要素のかっこいいリフが顔を見せ始めてるんですよ。

つまり『昔とった杵柄』で勝負してるんじゃなく、未開の地を開拓しているということです。

さらに言えばこの曲ではもろに90年代メロコアな雰囲気、そう、グリーン・デイとかフェイス・トゥ・フェイスみたいな瞬間がありますよ。

本作がポップに感じてしまうのはこの辺のイメージが強烈だからで、実はアルバム1曲1曲を聴き込むとそんなにポップで明るい曲ばかりではない気が(笑)。

サビの歌メロなんてパンクバンドの誰かをカバーしてるみたいに聞こえます。

#11『コールド・スウェット』

シン・リジィのカバーです。

シン・リジーはメタリカが昔カバーしていたので、この曲が入っているアルバムをその時に買っていたのですが、

「こんなにカッコよかったけ?」

と聴き直してしまうほどの出来です。

 

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